何を言っているか解らないと思うが俺も解らない、現実逃避とか言うチャチなもんじゃ断じてねぇ……
もっと)ry
早朝、都内某所
「ここか……」
「ここですね。」
無事誰にも気づかれることなく現代入りした小町と妖夢、しかし幻想郷を抜けて最寄り駅からここまで一日がかりもかかってしまった。
紫と四季曰く「協力者」を用意しているらしい、んでもって指定された二人の拠点となる場所。つまり自宅に到着した二人だったがまず驚いたのはその外見、どう見ても立派な一軒家である。
通常このような豪華な拠点などではなくボロアパートに二人で押し込まれるとばかり思っていたので拍子抜けであった、逆になにか裏がないかと勘ぐってしまうほどに。
そしてドアに入ろうとした瞬間に有ることに気付く二人。
「おい妖夢、これって……」
「ええ、でも何故こんな所に?」
二人が感じたのは霊力、それが家を包み込むように展開されている。所謂「結界」である、しかしこんな幻想の欠片もないここに何故?
と、背後から二人にかかる声。
「お二方、お早いご到着で。」
「「!!」」
咄嗟に振り向く二人、油断していたとはいえ二人とも其処らの妖怪とは比較に成らないほどの手練れ。その二人に気配を感じさせなかった、それだけで警戒すべき相手、二人が振り向いた先には―――
「ん?どうしたんですかい?」
「………ネコ?」
「ですね」
片目が傷で塞がれている隻眼のネコがいた、毛並みは血のような赤。しかし全身から霊力を発していた、警戒を解かない小町達にネコは慌てたように言った。
「あ、あっしは敵じゃないですぜい!?聞いていやせんか、現地の協力者のこと。」
「ああ、紫の言っていた?」
「左様、あっしは三代目ニャンと申しやす。三代目、とお呼びくだせぇ。情報収集を生業としてやす、以後宜しく。」
そう言って頭をペコリと下げるネコ、どうやら妖怪らしい。しかしこんな土地でも存在できる妖怪と言うことはそれなりに力のある妖怪である、確かにこれならば良い協力者だろう。
「この結界もアンタが?」
「へい、あくまで気休め程度ですが。」
「けど、こんな場所に結界なんて張る必要はあるんですか?」
「これは存在を薄くする結界、これを張っとけば空き巣も妖怪にも気にされないんでっせ。」
誰にも気にされない、それは決して強力ではないが個人に対する関心が薄い現代社会においてはかなり有効だ。それを心得ているあたり結構頭が良いらしい、そんなこんなで自宅に入り込んで生活空間を調える二人。
その時妖夢が一言、
「折角引っ越ししたんです、お隣さんに挨拶くらいしないと。」
と、言い出したのだ。めんどくさい…、と思いながらも渋々付き合う小町。事前に準備していたらしい粗品を持っていく二人、右隣はただの民家だったが問題は……
「ここはなんなんでしょう?」
「アタイに聞くなよ……まぁ、取り敢えず押して。」
そう言ってきたのはかなり大きい敷地を持つ家、場所が場所なら公民館と見間違えるほどのサイズであった。
ピンポーン
鳴り響く呼び鈴、しかししばらくたっても出る気配はなかった。
「………でませんね。」
「留守かねぇ?出直すかな。」
『どちら様でしょうか?』
「あ!隣に越してきた者です、ご挨拶に伺いました。」
『……………今開けます。』
ぷつっ
謎の間があった後、少し声色を低くして応じた声。高さからして恐らく小学生だろうか、にしては初対面の相手の言葉を信じすぎやしないか?と思う小町。程なくして扉は開かれた。
ガチャ
「ほ~、またこりゃ可愛い嬢ちゃんだねぇ。」
「ガラが悪いですよ小町さん、それよりお父さんお母さんはいないのかな?」
開いた扉から見えたのはまだ小さい小学一年から二年と思われる女の子、何故かその目から少し敵意を感じた――気がした。
その女の子は少し二人を見比べた後、「少し待って」と言われてドアを閉められた。
「小町さんは言葉遣いが荒いんです、あの娘警戒しちゃってるじゃないですか。」
「ん~、けどそれだけじゃない気がするのはなんでかねぇ?」
「………その意見には賛成しますね、確かにあの娘少しおかしいです。」
「ん?そりゃどういうことだい?」
「後で説明します。」
足音を聞いて会話を切る二人、再び開いた扉から出てきたのはあの娘だった。おや?と思う二人だったが……
「博士、ほらお客様よ。」
((博士?))
「ふぁ~なんじゃね哀君、ワシは今から寝ようと……」
「すいませんこんな早朝に、隣に越してきた妖夢と小町と申します。」
「おお、どうもそりゃご丁寧に。」
女の子に博士と呼ばれた男は白髪頭の初老の男性だった、明らかにお父さんとは思えない二人。しかし気は良いようで、少しばかりの世間話をした。と、不意に哀と呼ばれた女の子が質問をしてくる。
「そう言えば二人はどのような関係なの?姉妹、それとも親友?」
「ああ、私たちはかれこれ長い付き合いなのさ。」
「そう………」
「そうじゃ、お礼と言っては難じゃがこれを……」
「あ、どうも!」
変わりに男性が差し出してきた饅頭をもらって失礼する二人、聞けばあの男性は阿笠
それより二人が注目したのはあの少女、名を灰原 哀と言うらしい。年齢の割には大人びた雰囲気、そして小学生に似つかわしくない知性を湛えた瞳。帰り道、と言っても隣だが、そこまで話でもしようと口を開きかけた妖夢に対して手で制す小町。不思議そうに見る妖夢を尻目におもむろに饅頭の箱を破いて蓋を開け、底を取り出す小町。
急に何を……と言った様子の妖夢に小町は指で摘まんだ物を差し出す。
「!!これって……!」
「どうやらあの家、やんごとなき事情があるらしい。」
小町が指で摘まんだ物―――それはとても小さな盗聴機であった。
それを即座に潰して家へと帰宅する二人、あの家をよく知る三代目と共に会議を始める。議題は勿論、あの家について。と言っても仕事があるので一時間程度だが。
「んじゃ答え合わせの三代目からの情報は最後にするとして――妖夢、アンタはどう思った?彼女、灰原 哀のことを。」
「はい、私は霊を管理する以上魂の成熟度をある程度見極めることが出来ます。」
先を促す小町
「それであの娘に関してなのですが……明らかに魂と魄の年齢が不一致なんです。」
魂、それはどんなに偽ろうとも只一つ変わらない物。そして魄とはそれを入れる器、つまり肉体の事である。二つはそれぞれと結び合わないと存在できず、どちらかが欠けると成り立たなくなる。俗に言うキョンシーが代表的な例であろう、あれは魂を失った魄が他の魂を求めてさ迷い歩く現象なのである。
「ん~、けどそれじゃあの娘が大人びているのが原因じゃないのかい?」
「確かに魄の年齢の割に魂が若かったり老いていたりというのは時々あります、しかしそれにしては極端過ぎるんです。まるで身体だけが縮まったような……」
ほう、と呟く小町。さらに妖夢によると魂と身体の年齢差は少なくとも十年以上、そんな者は見たことがないと言う。
そして先程大人びた雰囲気、と小町が言っていたがそれでは妖夢に対する反論にはならないのだ。と言うのも大人びている、と言うのは回りと比べてと言う意味であり、例え本当に言動や行動が実年齢とかけ離れていたとしても、魂の年齢とは一切関係ないのだ。
そして次は小町の番である、彼女は自らの意見を言い始めた。
「アタイは魂を送る仕事柄、他人の感情があの覚妖怪ほどじゃないがどんな感情を抱いているかくらいは解るのさ。」
「じゃあ、あの娘は一体どんな感情を我々に?」
「ん、理由は解らんが何故かあの娘、アタイ達に対して敵意とは別に強い恐怖を抱いていた。あの時アタイが脅かしたくらいじゃこうはならない、何かもっとこう……原始的な恐怖を感じ取ったんだよ。」
そう、彼女は敏感に感じ取ったのだ。巧妙に、また必死に隠してはいるが少女が凡そ人に向けるべきではない恐怖、それもかなり物を。
そして極め付けが……
「あの盗聴機、絶対に彼女、いや彼女等かな?はアタイ達を敵と仮定している。」
「そうですね、ただの隣人に盗聴機なんて普通は仕掛けません。にしてもなんで気づいたんですか?」
「少し準備が良すぎたのさ、あんな都合よくお返しの品が有るなんておかしいじゃないか。少し霊力を中に通したらすぐに異物が有ることが解った、それも箱の隙間っていう本来有り得ない所にね。つーわけで、答え合わせの時間だ。」
そう言って二人は三代目の方を見る、彼は咳払いを一つすると簡潔に言った。
「それなんですが……あっしにもよく解らんのです。」
「「へ?」」
拍子抜けする二人、聞けばあの娘はこの三代目がいたときにはもう居たらしく、同じく違和感を感じた三代目が調べても殆ど解らなかったらしい。
ただ一つ解ったこと、それは彼女が何かヤバイ所から逃げてきたらしい。と言うことのみ、それ以外は解らず仕舞いだったらしい。逆に情報収集を生業とする彼が調べられ無かったと言うことはかなり秘匿されるべき情報らしい、引き続きこの件に関しては調べておくと言うことでとりあえずこの会議は終わった。
「……って小町さん!時間!」
「うっわ!?もうこんな時間かい、早く着替えて行くよ!初日から遅刻とか洒落にならない!」
「小町さんがそれ言いますか……って、電車の時間が迫ってます!早く着替えましょう!」
この後、空を飛ぼうとした小町に妖夢が小一時間電車の説明をしたことで更に時間が絶望的になるのはまた別の話。
一方、その隣である阿笠邸では……
「―――っ!?」
ガシャンッ!!ザー……
「どうしたんじゃ哀君!?」
「………………」
ヘッドセットを装着した少女、灰原はただただ絶句していた。巧妙に隠された盗聴機、それも箱の隙間に入る程のサイズだ。いつか捨てられて聞こえなくなると言うのは予想していた、が訪問してきた二人がもらった物をすぐに捨てるのは考え難い。よって導き出される答えは――
「………盗聴機に気付かれたみたい。」
「なっ!?あれはワシの最新型の盗聴機じゃぞ、重量も通常の箱とほぼ変わらないぞい!」
博士が狼狽える中で、灰原は必死に思考していた。どうする、どうすればいい、と。
何故灰原がこんなにも二人を警戒するのか、それは一重に四季と紫の準備不足である。
彼女達は確かにしっかりとした拠点、協力者を迅速に用意してよりスムーズに仕事ができるようにしたのだ。
だが余りにも「迅速すぎた」、急に知らない人が知らぬ間に。加えて生活用品は殆どを事前に用意していた為引っ越し業者を使うこともなく、つまり予兆もなくきたとなると誰しも警戒してしまう。
ここまでは予想されていた、しかし予想外だったのは隣が阿笠邸であったことだ。
灰原 哀は「黒の組織」という犯罪グループから抜け出してきた女である、そんな彼女がなんの前触れも無しに引っ越してきた二人に会えばどう思うだろう。
まず真っ先に組織の人間ではないかということを疑う、そして死神、そして庭師兼剣士というバリバリ戦闘系の二人の雰囲気から勘違いしたのだ。
こいつらは組織の人間の可能性が高い、と。
そして灰原は柄にもなく焦ってしまったのだ、事前にこの事態を想定していた灰原は博士に饅頭という隠語を使って盗聴機入りの饅頭を用意し、彼女等に渡した。
これで会話の内容から関係なければよし、関係あれば即座に連絡、もしくは逃走の準備をしていたのだが、事態は予想外方向に向かった。
なんと受け取って自分たちと別れるや否や盗聴機を即座に看破、そして破壊したのである。
灰原とて気付かれることは予想していた、だがそれは無言で持ち帰られて破壊力される、という可能性。確かに準備が良すぎる為に警戒され、持ち帰った後で調べられて気づかれる可能性はある程度はある。だがそれは疑いを持ってしっかりと調べた場合、そうしなければ発見されない程に見つけにくいのだ。それは決して過信ではない、まさかお土産一つに金属探知機なんて使わないだろう。
だが相手が悪かった、霊力などという概念を彼女等が理解しているはずもない。
だがそこからは早かった、博士と顔を見合わせて準備を始めようとした瞬間――
ピンポーン
「「!!!」」
呑気に呼び鈴が鳴った、恐る恐るモニターを覗きこむ灰原。そこに写っていたのは先程別れたばかりの隣人の顔だった、果たして彼女は決断を迫られる。すなわち
居留守を使うか、素直に出るか。
ここに来て彼女は自分が如何に危険な橋を渡ったかを理解した、しかし先程応答した以上居留守という選択肢は恐らくない。ここにきて、彼女も覚悟を決めた。
ガチャ
「…………………何かしら。」
目の前に居たのは髪を両端で纏めた小町と名乗っていた女性、彼女は酷く焦っている様子を見せていたが灰原がかおを出すや否や一気に捲し立てる。
「時間がないから手短に言うよ。今回のことはアタイ達にも責任があるから深くは追及しない、けどこれだけはハッキリさせておくけどアタイ達は少なくともアンタの敵じゃない。だからアンタもこれ以上の詮索はよしてくれ、いいね?「小町さーん!早く早く!!」っと、んじゃね!」
タッタッタッタ………
「…………」
立ち尽くす灰原、小町は門の前に居た妖夢という女と共に走り去っていった。だが話しているときの小町の目は優しく、必死に訴えていることが伝わった。
(今回は少し焦り過ぎたみたいね。)
到底信用できない小町の言葉、しかしあの必死さから少なくとも敵ではないようだ。我ながら丸くなった、と少し自嘲気味に灰原は思うのであった。
今度こそ本当に暫く更新しません
多分