イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

107 / 157

この作品もとうとう100話ですか!!(少し前に同じこと言った)


こんな駄作を読んでいただいている皆々様方、誠にありがとうございます。




第100話 ある少女の分岐点

 

 

 

八幡side

 

 

 

『クリフォト』のリゼヴィムのゴミ屑が聖杯で作り出した黒いドラゴンもどきは先刻完全に討伐された。避難も完了し、事態は一応の収束を迎えた。

 

ただ、町の中でも被害の大きい所は瓦礫の山と化しており復興には時間が掛かるであろう。

 

 

 

この一連の出来事については、先程各勢力に報告しておいた。簡単にまとめたものだが。

 

それについては、ロキが『クリフォト』側についていた北欧神話では青天の霹靂だったらしく、大慌てしていた。

 

尚、ロキの消滅は確認出来ておらず、ギャスパーにやられながらもどこかに逃げおおせた可能性が高い。

 

 

 

 

 

そして、俺は今義兄であるアシェラに呼び出され、『阿朱羅丸(あしゅらまる)』の中にいた。

 

クルルは今戦闘の怪我を癒している。側にはギャスパーと黒歌がついており、その側でヴァーリはクロウと話している。

 

俺もそっちに加わりたかったが······アシェラの話には後回しに出来ないことが余りにも多かったため、急遽こちらに来ている。

 

 

八幡「······こっちに呼び出したのは『四鎌童子(しかまどうじ)』の件だよな?」

 

アシェラ「······ああ。今の君にはルシフェルの精神体が融合している。何か知ってるだろ?」

 

アシェラは、明らかに俺に疑いの目を向けている。

 

八幡「······いや、悪いが俺も知らない。お袋が何か隠してるのは薄々勘づいてたが、まさかこんな事態になるとは思ってもいなかったからな」

 

アシェラ「······そう。まぁ僕も彼女が向こうに与してるなんて考えてもいなかったから一概に八幡だけが悪いとは言いきれないか」

 

アシェラは溜息をついて、堅い表情を僅かに緩めた。

 

 

アシェラの言う通り、俺の魂にはお袋の精神体(正確にはその一部)が融合していたのだが、お袋(の精神体)は俺の記憶などを好き勝手に覗けるのに対して、俺からはほぼ干渉が出来ない。出来るのは話し掛けるだけだ。

 

八幡「知っての通り、俺からお袋の記憶だの精神だのに干渉することは出来ない。何度か試したが、突然お袋がリンクを切りやがるからな」

 

この会話も聞いている可能性があるが······

 

アシェラ「······それはないよ。ここは『阿朱羅丸』の中だ。僕の許可なく干渉することは出来ない。生前のルシフェルは怪しい点が多々あったからね。精神体が発覚しても許可を出さなかったのは我ながら懸命だった」

 

俺の考えを読んだのか、アシェラは簡単に説明してくれた。

 

ただ、俺の魂に融合してるせいでお袋側からの精神干渉を防げないんだよな······さて、どうしたものか。

 

アシェラ「そこで僕の出番だ。八幡の精神を『阿朱羅丸』の一部としてルシフェルの精神空間に侵入する。これなら『阿朱羅丸』がルシフェルの精神干渉を防いでくれる」

 

八幡「分かった。助かる」

 

俺が頷くと、アシェラは指をパチンと鳴らした。

 

アシェラ「じゃあ行こうか」

 

次の瞬間、真っ白な空間はブウンと音を立てて歪むと、一瞬だけテレビの砂嵐のように乱れた後また真っ白な空間に戻った。

 

だがそこは『阿朱羅丸』の中ではない。俺の母、ルシフェルの精神空間だ。

 

 

俺とアシェラの前には、母ルシフェルが金髪を弄りながら立っていた。その表情はいつになく堅い。

 

ルシフェル《······来たわね。来ると思ってたわ》

 

 

八幡「ああ······お袋、少し話をしようか」

 

 

 

八幡sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

ルシフェルside

 

 

 

八幡「·······お袋、少し話をしようか」

 

いつもとは違う手段で私に干渉してきた八幡。その隣には私がクルルを預けたアシェラがいる。

 

八幡への精神干渉が失敗したことから『鬼呪装備(きじゅそうび)』を使って私の精神空間に侵入してきたことが分かる。侵入のプロセスが分からない以上、私にはどうしようもないのだ。

 

ルシフェル《······ええ。こうなった以上、言い逃れは無理だから》

 

観念して両手を上げて降参のポーズを取る。多少軽く振る舞ってみたものの、2人は一切動じない。

 

2人の目は私に強い疑念を向けている。腹を痛めて産んだ子にそんな目を向けられるのは悲しいことだが、八幡やクルルに拒絶されることを恐れて言い逃れした私が悪い。

 

 

アシェラ「······じゃあまず僕から聞こう。クルルの父親は何者だい? 君の渡した資料にはただの一般人としか記載されていなかった。母親のことが多少書かれていただけで、最も重要な部分は何も書かれていなかった」

 

ルシフェル《······クルルの父親はある集落の一族の後継ぎだったのよ。で、四鎌童子───ティリネ・ゼクスタはその双子の姉》

 

尤も、四鎌童子がティリネだったことに気付くのには暫く時間が掛かったのだが。()()()の彼女からは殆ど人間の気配がしなかった。

 

「「·······は?」」

 

ルシフェル《続けるわ。クルルの父親は666(トライヘキサ)·······まぁ当時は名前もないような土着の神ね。恋をしたのよ、その神に。八幡がクルルに初恋だったのと同じよ》

 

よくよく考えれば、八幡はひと回り以上歳が離れてるクルルが初恋の相手だしクルルの父親も何年生きてるか分からない神だし、ギャスパー君も猫又の黒歌とは歳がひと回りくらい離れてるし······上手い具合に年上好きばかりなような·········その相手達は揃って年下好きだし。

 

ルシフェル《666っていうのはクルルの母親が黙示録のバケモノの特性を自分に取り込んで誕生したものよ。その頃に生まれたのがクルルで、クルルの父親は成長して一族の後を継いだその幼子》

 

八幡「······待てよお袋。四鎌童子がクルルの父親の姉? ならなんで四鎌童子はクルルを殺そうとした?」

 

八幡は動揺を隠せないまま私に問い掛ける。

 

ルシフェル《······あまり詳しいことは分からないわ。でも、クルルの父親はクルルの情報を漏らさないようにするためだけに死んだのよ。私の手で》

 

八幡「·······っ!!?」

 

何の変哲もない自分の手を見つめる。

 

今でも、精神の欠片に成り果てても忘れることはない。クルルの父、ロランの目を。あの日私は666を封印し、情報が引き出されないようロランを手に掛けた。

 

ロランの目は、自分は今から死ぬというのに、驚くほどに穏やかだった。最後に聞いたのは、『······怖くないの?』だった。ロランの答えは────

 

 

ルシフェル《四鎌童子はクルルがいなければ、クルルの父親が死ぬことはなかったと思ったんでしょうね。あの娘が人間をやめたのも神との取り引きで、弟を巻き込みたくなかっんでしょうし》

 

アシェラ「······それはおかしい。その考えでいくなら、クルルの父親を殺したルシフェルの息子である、八幡が狙われない理由がない。でも八幡の前に四鎌童子が現れたことは一度もない。この差は何だ」

 

ルシフェル《······それが分からないのよ。もしかしたら四鎌童子の中での優先順位がクルルの方が上ってだけかもしれない》

 

八幡「······なら、クルルを殺してから俺を殺すつもりだと?」

 

八幡を通してクルルの話を聞いた限りでは四鎌童子は、クルルが感じたのは怒りや殺意以上に─────怨念だった。四鎌童子は八幡を殺さない······?

 

ルシフェル《かもしれないわ······でも、もしかしたら·······》

 

私は、頭に浮かんだ仮説を口にする。本当なら考えたくもない仮説を。

 

「「?」」

 

 

 

 

ルシフェル《······八幡()()を生かして苦しめる気なのかもしれない》

 

 

それは、彼女の破滅を呼び込むだけなのに。私はどこかそう思った。

 

 

 

ルシフェルsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルシフェル『怖くないの? 貴方はこれから私に······』

 

ロラン『······いいえ。不思議なんですよルシフェル様。普通なら、死は怖いものである筈なのに、私は平然と死ぬことを受け入れているんです』

 

ルシフェル『······どういうこと?』

 

ロラン『······きっと、私に希望があるからです。娘が幸せに生きていて欲しい。何もルシフェル様のような強い人になる必要はない。友達と笑い合って、恋をして、家族を持って、子供を授かって······それだけが幸せの形とは言いませんが、とにかく一人の人間として生きて欲しい。それだけでいいんです』

 

ルシフェル『······』

 

ロラン『ルシフェル様、娘をお願いします。願わくば、クルルが笑顔でいれますように』

 

ルシフェル『······分かったわ』

 

 

ロラン・ゼクスタは生涯の幕を下ろした。

 

 

 

 

 

その時から、小さく細かな蝶の鱗粉は歴史を変え始めていた。

 

 

 






この時のルシフェルは、まだクルルを自分の手で育てられるとは考えていません。この時のルシフェルにはまだ出来ないでしょう。この直後から各地を転々とするようになり、ルシフェルは信頼出来そうな組織を見つけそこにクルルを預けた後、四鎌童子が掴むように誤情報を流して情報工作を行いました。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。