イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
今回は割とすんなり出来た······毎度この調子なら楽なんだけどな·······
八幡side
クレーリアが持ち込んだSDカードを束に回したばかりの頃。
俺はギャスパーに問い質されていた。
ギャスパー「······知ってたんですか? お父様は」
知っていた───とは、5年前の事件が再び動き出していることをだ。俺とヴァーリ、他何人かで極秘の調査をしていたのがあえなくギャスパーにバレたのだ。
無論、ヴァーリにも危険なことまで踏み込まないよう言ってある。危険がどの範囲を指すのか曖昧だし、そもそもヴァーリは俺の言うことに素直に従うわけではないから俺はそこにも目を光らせているが······
八幡「まぁな」
ギャスパーは俺に詰め寄ってくる。
ギャスパー「何で僕に教えてくれなかったんです?」
八幡「······今、何でお前はこんな所にいると思ってる? お前の療養もそうだが······ギャスパー、お前に頭を冷やさせるためだ」
1ヶ月······ギャスパーを、学園以外はほぼ冥界の屋敷に帰ってこさせている。一度心臓がダメになる大怪我を負った子供が心配じゃないわけがない。
今回は八重垣が飛び出して行って、探しに行きたいのは分かるが、今動いてまた怪我したらどうする気だ。
八重垣が飛び出してった段階で、そのうちこうなることは分かってはいたが······
ギャスパー「僕は冷静です」
八幡「そりゃあ言われればだいたいの奴はそう返すさ。パッと見冷静ではあるが、その実全然冷静じゃない。クレーリアのことを考えれば分からなくもないが、ギャスパーは焦りすぎだ」
ギャスパー「焦ってなんか───」
ギャスパーは焦っている。ディオドラのこともあるし、八重垣が似たような状況に陥るかもしれないと危惧している。
だから、ここは俺が言うのではなく────
八幡「後ろ見てみ」
ギャスパー「後ろ? あっ······」
黒歌「ギャスパー·······」
ギャスパーが好きで好きで心配で心配で堪らない黒歌の口から聞かせた方が早い。
八幡「黒歌がいたこと、気付かなかっただろ」
ギャスパーは黙り込む。沈黙は肯定と見なしていいんだろう。別に悪いこととは言わない。ギャスパーの感情は誰しもがもつ正当なものだ。怒りってのはヒトがもつ原初の感情の一つだからな。
だが······誰かを好きになるのも、誰もがもっている原初的な感情の一つだろう? ギャスパーが完全にその感情を失くさない限り、きっと何があっても戻ってこれる。
俺も、今まで何もしてやれなかった分、一つくらいは何かしてやるべきだな。
黒歌「······ギャスパーは、もういなくならないでしょ?」
ギャスパー「······ッ!!」
黒歌は儚げな表情を浮かべて、ギャスパーに問う。
······おお、これは凄い。俺がギャスパーだったら確実にコロッといってるな······どこでそんな技術身につけたんだ黒歌よ······ナチュラルにやってるから恐ろしい。多分意識してねえよな······?
ギャスパー「······うん、もういなくならないよ」
ギャスパーは黒歌の頬に手を伸ばし、そっと触れる。これが15歳がやることか?
黒歌「良かった······」
黒歌は自分の頬に触れているギャスパーの手に、自分の手を重ねる。こいつら俺がいることを忘れてるな······うんうん、未来の夫婦は安泰そうで良きかな良きかな。
出来ればこのままこの場を去りたいが、そうもいかない。声掛けづれぇ。
八幡「あ~······ちょっといいか新婚夫婦」
ギャスパー、黒歌「「新婚夫婦!? 」」
俺が声を掛けると、顔を赤らめて全く同じ感じにわたわたした後、何もなかったように装って俺に向き直ったが、全く出来てなくて面白いったらありゃしない。だが、弄りたいが野暮ったいことはあまりしたくない。
八幡「続けるのは別にいいが、少し渡しておこうと思ったものがあってな」
「「?」」
八幡「まぁお守り程度に考えとけばいい。ヴァーリにも何か渡すつもりだしな」
八幡sideout
小猫side
イッセー「ホントに俺達が天界に行ってもいいのか?」
兵藤家の地下で、天界への転移魔法陣を描くイリナ先輩に尋ねるイッセー先輩。
イリナ「もちろんよ。───」
ミカエル『······是非ともグレモリー眷属も連れて来て下さい。イリナは彼らにお世話になっているのでしょう? 第三天などは流石に無理ですが、治療施設のある第五天だけならば連れていくことも可能でしょう。貴女では気付かないことも、違う視点から見れば新たな発見となるかもしれませんよ』
イリナ「───って、ミカエル様が仰ったの」
そうして魔法陣を描き終わると、イリナ先輩とシスター・グリゼルダが礼拝の時のポーズで呪文を唱え出す。多分聖書の一節·······頭痛が·······
2人が詠唱を終えると、私達に天使が頭に付けているような輪───エンジェル・ハイロゥが配られた。これは私達のIDなどが登録されているらしい。これを付けておけば、天界の『システム』への干渉が限りなく小さく済むらしい。
ゼノヴィア「アーシア、私、天使になったみたいだ·······」
アーシア「はい!! 私もです」
ゼノヴィア先輩とアーシア先輩は感無量になったのか、涙を流していた。
イリナ「じゃあ、天界に入る前に記念でお祈りしましょう!!」
ゼノヴィア「ああ!!」
アーシア「はい!!」
「「「ああ主よ!!」」」
天使の光輪を付けているからか、神々しく感じる。悪魔の私が神々しく感じてよいのかは分からないが。
魔法陣に私達が乗ると、魔法陣が輝き出す。
魔法陣の光が収まると、私達の目の前には巨大な白亜の門が現れた。ただ、今回はこの門を潜るわけではないらしい。悪魔である私達ならば仕方ないのだろう。
私達は門から少し離れた所にある壁の前まで案内された。ここで何が? と私達が思案し始めた時、イリナ先輩が壁に触れた。
イッセー「すげぇ·······」
イリナ「ごめんね、本当なら門を潜ってもらいたかったけど、流石に信徒の魂や一般の天使に騒がれないようにしないといけないから······ここは裏口みたいなものかな」
イリナ先輩が壁に触れると、普通の壁だった所に縦に切り込みが入り、門のように開き始めた。先輩は裏口と言ったが、それでも6メートルくらいの大きさだった。
イリナ「さぁ皆入って。これ、第五天まで行けるエレベーターなの」
全員が裏口から入ると、白い空間が広がっており、足元に描かれていた金色の紋様が輝き出した。
不意に、体が浮遊感に包まれたかと思ったら、体が宙に放り投げられたような感覚を得た。イリナ先輩を見たら、特に何かあるという表情ではなかったから、これがエレベーターが上昇しているということなのだろう。
体を包んでいた浮遊感が収まると、研究所らしき建物が多い所に出た。ここが第五天のようだ。人間界の建造物に近い建物も多い。
堕天する以前の『
と、シスターが思い出したかのように言う。
グリゼルダ「言い忘れていましたが、天界のルールとして、人間界や冥界の俗世のものにあまり強くありません」
人差し指を立てて付け加える。
グリゼルダ「簡単に言うと、邪なものに弱いのです。また、天界では天使の堕天防止のために、必要以上煩悩が発生すると自動で発動する機能があります。流石にそんなものが発動するような機会はないと思いますが······一応付け加えさせてもらいました」
更に暫く歩いていると、患者服のような服装で、車椅子に乗った男性を見つけた。
イリナ「······パパッ!!」
トウジ「イリナちゃん!!」
イリナ先輩は、車椅子の男性に抱き着く。この柔和な人が紫藤トウジさんで間違いないのだろう。それにしても、本当にちゃん付けだったとは·······
·······今は亡き私の両親だったら、私をなんて呼ぶだろうか? 名前で呼ぶのか、何か愛称を付けてくれるかも······
トウジ「······やぁ、イッセー君。おじちゃんのこと覚えてるかな?」
イッセー「あ~、えっと、何となく、ですけど。すいません、ちっちゃい頃であんまり······」
トウジ「いやいや。まだこんなだったからね。覚えてなくても仕方ないさ。それにしても、大きくなったね」
イッセー「あ、はい、ありがとうございます」
トウジさんは久しぶりだというイッセー先輩を懐かしそうに見ていた。
イリナ「パパ、体調は大丈夫なの?」
イリナ先輩が尋ねると、明るい顔をしてトウジさんは答える。
トウジ「もちろんだよ!! マイエンジェルの顔を見たら怪我なんて吹っ飛ぶさ」
マイエンジェル······私から見ても明らかに分かる溺愛っぷりだ。
イッセー「(ま、マイエンジェル······そう言えば、前もそんなこと言ってたっけ······)」
トウジ「受けた呪いもここの設備のおかげでもう体に残ってないし、少しリハビリの期間を設けたら、元の生活に戻って大丈夫だそうだよ」
トウジさんが言うには、ここには通常の(例えば普通の生物が生成するような)毒とは違う、特殊な毒や呪いなどの治療に特化した施設があるらしい。同盟によって堕天使から齎された技術で、更に医療技術に進歩が見られたそうだ。
イリナ「良かった······ねえパパ。私、パパを攻撃した八重垣って人のこと調べてるの」
トウジ「なんだって!? ······イリナちゃん、気持ちは嬉しいけど、今すぐにその件から手を引きなさい」
トウジさんは驚いた後、イリナ先輩を諭すように言った。何故······? 多少危険はあるだろうが、イリナ先輩の実力があればよほどのことがない限り何ともなさそうなことだと思うのだが·······
イリナ「どうして?」
引き下がらないイリナ先輩に、トウジさんは返す。
トウジ「どうしても、だよ」
その目には有無を言わさぬ光があり、イリナ先輩を身じろがせた。
そこで、イッセー先輩が一歩前に出て、頭を下げた。
イッセー「おじさん、お願いします。イリナはずっとおじさんのために、って調べてたんです。危ないことだったら、これ以上は俺もイリナを止めます。だから、せめて、事件のこと教えてもらうことは出来ませんか?」
トウジさんは暫く考え込むが、イッセー先輩の圧に負けたのか、観念するかのように言った。
トウジ「分かった······イッセー君にもこうまでしてくれたなら流石に話さないわけにもいかないね。でもイリナちゃん、これ以上の深入りはダメだよ。それだけは分かってね」
イリナ先輩は深く頷いた。その頷きが何を示しているのか私に推し量ることは出来なかった。