イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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巻きで書いたせいで、色々変です······



(夏目友人帳の映画もう1回観に行きたい。)




第134話 ミッドナイト・サン⑪

 

 

ギャスパーside

 

 

ギャスパー「こぉのぉぉぉぉぉおおお!!」

 

ロキ「チッ······」

 

ブリューナクの砲撃で、ロキの杖の雷を打ち消しながら肉薄する。

こうも近づけば、フルで杖の能力は使えない!!

 

 

────が。

 

 

 

カラン。そんな音を立てて、ブリューナクが落ちる。

 

 

ロキ「ククッ。どうした? ギャスパー。ブリューナクが落ちたぞ? 拾わなくてよいのか?」

 

ギャスパー「ぐっ、ぐぅぅ······」

 

腕が痺れる。ぐ、使()()()()の反動が······

 

 

両手が麻痺した僕を見て、ロキは嗤う。

 

ロキ「語るに落ちたようだな。もうバロールの能力もブリューナクも使えまい。幾ら貴様が神性を得ていようが、元はただのハーフヴァンパイア。融合しきっていない貴様では使うだけで()()の部分が捻り潰されるような負担を負う」

 

ブリューナクに拾って構え直すが、ブリューナクの力を引き出せない。

 

一進一退の攻防で、僕もロキもボロボロり余力もどちらもほとんど残っていないが、精神的に余裕が出来たロキと、限界がきて追い詰められた僕では雲泥の差。

何か、何かないのか······!!

 

そこで、ふと思い出す。

 

ギャスパー「······ロンゴミニアド」

 

レプリカの魔剣や魔の鎖(グレイプニル)なども全て破壊されて、残ったのはこれだけ。絶対に使いたくなかった。けど、まだ死にたくない。死ぬわけにはいかない。

 

ロキ「ようやっとか。それだ、それを使わせたかった」

 

ロキは杖を向ける。あの杖は、風と雷を操る。あの杖の能力で発生する風はバロールさんの闇さえ吹き飛ばし、雷は闇を焼き払う。ロキの奥の手であるのは間違いないだろうが、どうやって攻略する?

接近しても、奴から有利は取れない。ロキは、僕の年齢を1000倍しても足りないほどの年数を生きている。年季が違う。

今までは、ロキがあの杖を使わなかったからバロールさんの闇で優位に立てた。

 

闇が使えないと、魔法だけで回復しなきゃだから、どうしても遅い。

それに、再生の禁術は僕には使えない。お父様やクロウさんは割と普通に使っているけど、どんな代償を払えばいいのか、想像するのも怖い。

 

ギャスパー「おおぉぉあぁぁ!!」

 

慣れない幻術で撹乱しつつ、ロキに迫る。

 

ロキ「ぐっ······甘い!!」

 

疲弊していようと僕の幻術に引っかかるような価値を感じないのか、幻術には目もくれずに僕の攻撃を杖で受け止めた。ロキは傷が傷んで顔をしかめたが、それも極一瞬のことですぐに雷の反撃をかけてくる。

 

ロキ「足りん······貴様にはまるで足りん!! 他者を傷付ける覚悟も!!」

 

ギャスパー「がっ······」

 

後ろに回り込もうとしたが、腹から蹴り飛ばされゴムボールのように弾みながら吹っ飛ばされる。

 

ロキ「誰かを愛する痛みも!!」

 

ギャスパー「悪神風情が······!!」

 

片手で体勢を立て直し、ロンゴミニアドを投擲しロキの右肩を僅かに抉る。

 

ギャスパー「来い!!」

 

彼方へと突き進んでいくロンゴミニアドを魔法で呼び寄せ、ロキの頭を狙う。が、首を傾けるだけで避けられる。

 

ギャスパー「力を寄越せ······!!」

 

飛んできたロンゴミニアドを掴み、残った力で一気にロキに接近する。

 

ギャスパー「がぁぁああッ!!」

 

ロキ「クッ······!! かハッ······」

 

心臓を狙って突きを放つが杖で逸らされて、右脇腹に突き刺さった。

 

ロキ「まだ、だ······貴様如きに殺される我ではない······!!」

 

血を吐きながらロキは杖を放り投げ、ロンゴミニアドを右手で掴む。そして左手で僕の肩を掴んだ。

 

まず、い······!!

 

ギャスパー「離、せっ······!!」

 

強引にでも引き剥がそうとしても、ロキの左手は僕の肩を掴んだまままるで離れようとしない。

 

ぐ······離れ、ない。 ロキは、どこに力を残して······

 

ロキが、恨みを込めて一言だけ呟いた。

 

ロキ「······爆ぜろ」

 

 

その瞬間、僕とロキを爆発が包んで、そして、吹き飛ばした。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

黒歌をクロウに送り届けた俺は、俺を追っていたコマチに逆に強襲する。

光の矢を嵐のように吹き荒れさせ、オールレンジ攻撃もどきで、彼女から自由を奪う。隻腕の彼女が無傷で凌ぐのは不可能だ。

 

 

八幡「はぁ···ふぅ···」

 

コマチは、コマチの力は正直予想外だった。俺の妹、小町ではどう罷り間違っても手に入りそうにない力を行使している。あいつもお袋譲りで俺と同じくそこまで魔力を持っていなかったし、魔力の色も、お袋や俺と同じ紫黒だった。

 

だが、コマチは形容し難い色の莫大なオーラを保有している。それに、一度も光を使わなかった。あれが、奪われた666(トライヘキサ)さんの力なのかもしれない。

 

 

片腕のコマチは瓦礫を消し飛ばしながら俺を攻撃出来る位置まで戻ってくる。やった俺が言えたことではないが、コマチは左腕を失い、右腕も変な方向に曲がっており、右足を引きずっている。

俺も、右目を失って左腕は捻じれ、左足の骨はおそらく粉々だろうが、まだマシだな。

 

八幡「今なら、投降すれば、俺はお前を殺さなくて済む。それでも戦うのか」

 

ここにきて、決心が鈍る。なんて情けない野郎だ。

 

コマチ「当たり、前だ······!!」

 

八幡「······そうか」

 

塵外刀真打を現出させ、型式を揚羽へ変化させる。うぐ、普段からこんな体力持ってってやがったのかこの刀は。

 

 

八幡「コマチ······」

 

コマチ「うああ、おあぁぁぁぁぁ!!」

 

捨て身に等しい状態で攻撃してきたコマチ相手に、刀を向ける。そして、下段に構えて俺も駆け出す。

 

 

僅か10歳で何も分からずに命を奪われた俺の妹、小町と瓜二つの少女。ルーマニアでは、ジンとシフラが彼女と接触した時は見た目相応の女の子だったらしいから、きっと、ずっとこんな殺気を振りまいたりはしていないのだろう。

 

 

八幡「······今度生まれてくる時は、女の子として普通の幸せをもってくれ。俺は、きっと来世でもお前の笑顔は見せてもらえないだろうけど」

 

脳裏に、()()()が過ぎる。

······子どもを手にかけるなんて、もう二度とないと願いたい。かなしすぎて、心が潰れてしまいそうだ。

 

八幡「······さようなら」

 

 

すれ違って両者が止まった直後。コマチは左の脇腹から右肩にかけて傷が裂け、血飛沫を散らしながら倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

コマチ「·········あぁ。また、こうなってしまった」

 

倒れ伏し、仰向けになったコマチが呟く。先程までとはまるで違う口調。()()()()ではあっても、いざこうなっては驚きを隠せない。

 

八幡「また、か。やっぱ人格の上書きか」

 

塵外刀真打の力で洗脳が解けた。そう見ていいだろう。本来の用途とはかけ離れたものではあるが。

 

ある程度、察しはついていた。彼女の行動は不自然さの塊だった。俺を殺すと言いながら、真正面からしか仕掛けてこない。アジ・ダハーカやアポプスがいるんだから、俺に毒を盛るなり睡眠中に叩き潰すなり出来たはずで。

 

そうしなかったのは、彼女の本来の良心か。はたまた。ともかく、彼女はコマチであって比企谷小町ではなかった。

 

八幡「俺に恨みがあるからとかじゃなく、上書きされた人格に俺を殺すことが本能下でインプットされてたんだろ。お前の殺意には()()がなかった。怨恨でも、利益を求めてたわけでもない。快楽殺人者には見えなかったしな」

 

コマチ「······察しがいい。流石、ルシフェルの息子だよ。比企谷八幡君」

 

足を引きずりながらコマチの隣に座って彼女の上体を支えると、先程とは打って変わって別人の口調で続ける。

 

コマチ「我は『獣』。黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)666(トライヘキサ)。まぁその役割を唯一神だとか宣う侵略者に押し付けられただけの、ただの死に損ないだ。好きに呼べ」

 

なるほど。道理で封印を全て解いても起きないわけだ。魂がここにあるのなら、向こう(サングィネム)にあるのはただの抜け殻ということになる。

可能性として考えてないわけではなかったが、存外世界は狭いらしい。俺は四鎌童子が魂だけ消したのかと思っていた。

 

八幡「······はぁ、まぁ好きに呼びますよ」

 

しかし、この人に人格を上書きするとなると、それ相応のリスクが伴う筈だが······まぁいい。束が回収したデータを見れば、分かることだ。

 

八幡「娘さんには、お世話になってます」

 

コマチ「クルルが? あぁ結婚してたか。君も随分と物好きだね。あの娘は、昔からこちらの手に負えないじゃじゃ馬な娘で、今も本質的には変わらんだろう?」

 

まぁ······9割方俺が引っ張られてますが。

 

八幡「そんなこともないですけど」

 

コマチ「嘘をつくな嘘を······それより、幾つか伝えておきたいことがある。時間がない。心して聞いてくれ」

 

捻れた右腕に顔を顰めながら、その手で俺の腕を掴む。

 

 

 

コマチ「────八幡君。世界に散らばる『鍵』の一つが君の中にある」

 

 

 

八幡sideout

 

 

 


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