イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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え、前回の更新が二月前······? すみませんでした(gkbr)。




第144話 涙は流せない

 

 

ヴァーリside

 

 

 

四鎌童子の取引に応じた俺は、『刃狗』の4人がいた牢から引き摺り出され、ラヴィニアと共に建物の真反対の牢に放り込まれた。

 

ここから、すぐ近くに俺達からデータを取った研究スペースがある。抜き取られた神器(セイクリッド・ギア)もそこに保管されていた。まるで、牢から出て取ってってくださいと言わんばかりのザルさだ。この牢自体も、破壊しようと思えば簡単に出来る程度の脆さだ。

四鎌童子には、神器(セイクリッド・ギア)はそこまで重要ではないのだろう。

 

 

─────『復讐』、か。

 

 

 

どうにも出来ないまま無意味な時間が続く。そんな中、ラヴィニアが口を開いた。

 

 

ラヴィニア「······ヴァー君。その」

 

ヴァーリ「今は何も言わないでくれ。ラヴィニア。頼む」

 

母さんを売って、ラヴィニアを助けた。両方助ける方法は、きっとあったはずだ。はず、なんだ······

 

はぁ、こういう状況だと、碌なことを思い浮かばない。そうまでしてラヴィニアを助けたいのか、それとも母さんをそこまで大切に考えていないのか。疑心暗鬼に陥ると、その辺もまたぐちゃぐちゃになってくる。

 

しばし、沈黙が場を満たした。一分か5分か分からないが、ふとラヴィニアはその沈黙を破った。

 

ラヴィニア「ヴァー君、言い訳をさせてください」

 

ヴァーリ「言い訳?」

 

彼女に言い訳するような非はない、はずだ。彼女は彼女の最善を果たしているはずだ。

 

ラヴィニア「私は、ヴァーくんが好きです。でも、仲間を裏切ることは···私には出来ないのです」

 

ヴァーリ「ラヴィ······」

 

 

ここ暫く、こんなことばかりだ。

 

力の強い者が······いいや、徹底的に知恵を働かせられる者がそうでない者から、あらゆるものを搾取し(むしり取っ)ていく。それが戦争だ。そんなことは分かっている。誰かが虐げられ(生贄にな)ることが、唯一阻止出来る手段だ。

だが、それを許容し、受け入れることが出来る者は存在しない。例外などない。もちろん、現実はどうだったか、どうなったかは別の問題だ。

 

ただ、この場を支配するのは、戦争が終わっていないという子供でも分かる事実だ。

 

 

ラヴィニア「私の選択肢は2つ。仲間を裏切って一人だけ生き残るか、アシャーダロンで心身を癒していたヴァー君を(ワナの材料)として引き摺りだして生贄にするか、でした。私は、前者を取ったのです。恨んでください。恨んで欲しいのです。恨んで、欲し、い···」

 

ラヴィニアは、静かに泣いた。彼女を責めれば、当たり前だが楽だ。彼女を人殺しと、人でなしと罵ることは簡単だ。だが俺には出来ない。あまり言いたくはないが、愛だ恋だは、人の視野を強奪して人をいつまでも狂わせる。

 

······それに、俺にも退路はない。このまま狂って彼女を慰め続けることを、俺は、選んだ。もう、行くところまで行くしかない。

 

手を伸ばそうとして、止めた。

 

ヴァーリ「ラヴィニア、俺はラヴィニアを恨まない。俺は、自分を餌にすることで生き長らえる選択肢を取った。俺の······自分のためだ。だから────」

 

 

だから、泣くな。そんなに悲しまないでくれ。その言葉は、爆発音に掻き消された。

 

 

ヴァーリ「爆発······!?」

 

ラヴィニア「上で、何が?」

 

更に爆発音は続き、こちらにも振動が届いてきた。ここは多分地下だが、地上は大慌てだろう。魔力で探れないように仕掛けがされているから父さん達かどうか分からないが、おそらく、これは俺達を陥れるための爆発じゃない。つまり、チャンス(ピンチ)だ。

しかし、こんな早く来るとは流石に思いもしなかった。

 

ヴァーリ「ラヴィニア、出るぞ」

 

ラヴィニア「え、ヴァーく」

 

両手足の拘束具を強引に引きちぎり、ラヴィニアの拘束具を叩き割った。視線から四鎌童子がこちらを監視しているのは分かっているが、動く気配はない。やつの掌の上で踊っているのは分かっているが、今は神器を取り返して脱出するのが最優先だ。

そう考え、監視用に設置されていた魔法を全て破壊し、檻の格子を魔力で弾き飛ばす。そのままラヴィニアの手を引いて外に出た。

 

粗雑な封印が施されただけの達の神器······何故ここに保管され······いや、トラップの類いは仕掛けられていない。破壊するかも考えるが、やはりここは回収するべきか。おそらくこの先、戦力のキープはインフラの確保並に最重要の問題になる。

 

ヴァーリ「ラヴィニアは神器を。俺はここのデータを破壊する」

 

ラヴィニア「っ。分かったのです」

 

手分けして作業を急ぐ。

······にしても、この研究装置に使われている機材、けっこう前のものだな。確か、2003年あたりのものだ。今は2016年だぞ。クリフォトがそこまで資金難だったとは思えないし、態となのか?

 

ヴァーリ「チ······束に仕込まれた知識が、こんな所で発揮されるとはな」

 

見つけた。しかし、この研究データ、どこかに送られている可能性もある。そこにはトロイの木馬でも送り込めば······どこにも送られていない? 神滅具(ロンギヌス)3つに四凶2つと人工具現型だぞ。ここの誰かが持っているのか、コピーだけして手作業で運んだのか。

こっちはフェイクの可能性もあるか。だが情報も時間もない中考え出しても仕方ない。

 

ラヴィニア「ヴァー君、こっちは終わったのです!」

 

ラヴィニアが叫ぶと同時に、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)が俺の背中に飛んできて、間もなく粒子化して俺の体に取り込まれた。何らかの違和感があったわけではないが、やはりあった方が収まりがいい。

 

アルビオン『······ヴァーリ、何やら複雑な事情の板挟みになっているようだな』

 

アルビオンめ、勝手に記憶を読んだな······全く、やめてくれ。

 

アルビオン『そうも言ってはいられまいだろう』

 

ラヴィニアの方を見れば、ラヴィニアの氷姫が主の傍で跪いていた。黒狗と獅子、白虎に大鷲もラヴィニアの傍にいた。これで全部か。

 

ヴァーリ「······行こう」

 

 

 

 

 

 

俺達が鮫島達がいる牢に向かった時、牢の格子は破壊され、中にいた全員が外に出ていた。全員、拘束具からも解放されている。

 

ヴァーリ「······一夏か」

 

織斑一夏にクレア・ナンム。2人とも、父さんにも母さんにも直接命令権はないはずだがここにいるということは、志願したのか、誰かに押し付けられたか。後者はなさそうだな。

しかし、直接命令出来ないとはいえ母さんの息がかかった一夏を出し抜いて、本拠地にいる母さんを殺すなんて······俺と『刃狗』の全員でかかってもまず不可能だぞ。四鎌童子め。いったい何を考えている·······

 

一夏「ん? ヴァーリ。ラヴィニアさんも。自力で出られたのか?」

 

ヴァーリ「あ、あぁ···」

 

一夏は神器のナイフを展開していたものの、それ以外の武装は装着していなかった。だが爆発音は、一夏かクレアが起こしたものと考えていいだろう。

 

にしても、よくクレアが出てきたな。クレアの父親はこういうことに絶対に関わらせないようにしているものだとばかり思っていたが。

 

クレア「一夏さん、この人が······?」

 

思考の纏まらない頭でそんなことを考えていると、クレアは、ラヴィニアを見ながら一夏に聞いた。ああと頷き返した一夏は、亜空間からバズーカを出すと、天井と壁の境目に向けて撃った。

 

一夏「脱出するよ。『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』の君達は動けるかい?」

 

一夏に尋ねられ、俺達は言葉もなく頷いた。疲労が溜まっていた4人は、一夏が男2人、クレアが女2人を両脇に抱えて風穴から飛び出した。俺はラヴィニアの手を引いて、そのあとに続いた。

 

この腐ったアジトを飛び出して、爆煙を突っ切る寸前、俺は強烈な気配を全身で感じ取った。

 

ヴァーリ「ッ······」

 

 

ナンム·····!! 出て来たのか······!!?

 

 

 

ヴァーリsideend

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

664年前。

 

 

 

ヴェネラナ『いい加減になさい! 2人とも何をしているの!』

 

八幡『あ、ヴェネラナさん·····』

 

サーゼクス『母様······』

 

グレモリー家本邸地下の決闘場で、俺とサーゼクスは揃ってボロボロだった。

 

 

 

 

当時12だった俺は、親父が持っていた僅かなコネを辿って、グレモリー家に匿ってもらっていた。

 

 

······そして、情けないことに、匿われている身でありながら、俺はグレモリーの跡取り息子だったサーゼクスと度々喧嘩していた。

 

 

ヴェネラナ『────で、今回は何でこんなことになったのかしら。答えなさい』

 

サーゼクス『······八幡が男なのにいつまでもメソメソしてるから······です』

 

八幡『サーゼクスが、クルルだって悲しいのにその前で自分だけ泣きわめくなんて、家族として失格だって·····』

 

 

そして、喧嘩を止めるのは、決まって割って入るヴェネラナさんの滅びの魔力だった。

 

 

ヴェネラナ『はぁ······毎回毎回。サーゼクス、それだけですか?』

 

サーゼクス『だって、八幡はその後、クルルは血が繋がってないし僕を騙してたひとなんて家族でもなんでもないだなんて言うから······そんなの、クルルが可哀想だ』

 

八幡『だって······』

 

 

両親と妹が殺されて1ヶ月。俺は毎日のように赤ん坊のように泣きじゃくってクルルを困らせ、それを見つけてイライラしたサーゼクスに引っ張り出されては強引に喧嘩相手にさせられていた。

といっても、当時の俺は魔力はほとんど使えない、光は出すのにも苦労するというレベルで、ほとんどは俺が地面に這いつくばったあたりでヴェネラナさんが止めに入る、の繰り返しだった。

 

 

原因は、当時クルルに片思いしていたサーゼクスの目の前で、泣き喚きながらクルルに八つ当たりで毒を吐いていた俺なんだが、今でも何故俺はクルルと結婚出来たのか、不思議だ。この時の俺は、クルルがどんな思いで俺の傍にいたのかも考えようとしていなかった。

 

 

クルルの目が親も妹もなくして可哀想と笑ってくるようで、完全にクルルを間の仇にしていた。少なくとも、当時の俺にはそうとしか感じられなかった。

 

 

 






唐突に復活した設定解説。(トバシてくれて構わない)

『アシャーダロン』

建国:1739年(王国制として建国。1990年に共和制に移行)
首都:サングィネム市

八幡が建国した国。冥界随一の軍事政権国家。傀儡国家とも言う。元々はグレモリー領辺境の町サングィネム。三竦みの戦争が終結後、魔王政権が危険分子である八幡を政府から遠ざけるための軟禁場所として指定したこと町。
ただし、戦後の混乱の中八幡を危険視した一部の悪魔(旧魔王派、大王派の一部)が襲撃。八幡は襲撃部隊を壊滅させるもそれが4度続き、業を煮やした八幡が町の議会を制圧し、グレモリー領と隣接していたアンドロマリウス領とムールムール領を壊滅させて吸収。アシャーダロン王国としてクーデターを起こした。
この建国が1739年で、この後八幡は独立戦争をふっかけて更にフールフール領の一部を吸収。八幡は講話を引き出すためにソロモン72柱の内19家を滅ぼして、1749年、魔王政権をテーブルに引きずり出した。独立の際、取引(裏工作)でバアル領の一部も吸収している。
また、1829年、1956年のオリュンポス戦争で八幡はギリシャ神話を半壊に追い込み属国化。貿易規制で追い討ちをかけ、アシャーダロンに依存せざるを得ないように財政を崩壊寸前まで傾けた。

サングィネムは、中心部にクルルが経営する冥界最大規模の孤児院があり、そこを中心として高層ビルが立ち並んでいる。都市中心部の上空(250〜300m)には、建造物群が魔法によって円を描くように浮遊しており、主にテーマパークやショッピングモールで構成されているが、僅かに居住区もある。魔法は大方クロウ・クルワッハのもの。事業開始当時、観光客が落ちかけるという事故が頻発して批判を浴びた。

面積はスカンジナビア半島2つ分。ただし、サングィネム市以外は一部を治安部隊(旧鉄華団)が農牧地、訓練施設として所有している以外はほとんど手付かず。アシャーダロン東部には使い魔の森の一つがあり、北東部にはドラゴンアップルの群生地がある(貿易品に出来るほどの収穫量はない)。
一応、福利厚生はルシファードやシトリー領を抜いて冥界でもトップクラスで、悪魔のような階級制度も存在しない。
農産品、観光業で莫大な利益をあげているが、建国者に八幡に黒い噂が絶えないため、ここ3年ほど国内の観光関連企業の業績が軒並み右肩下がりを記録している。

また、今の八幡は国家元首ではないが、特別外部軍事顧問などといううさん臭い地位を得ている。




(この情報量(1000文字オーバー)でSS一本書けないのが作者クオリティ)
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