イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
3ヶ月ぶりの投稿、期待に添えず申し訳ございません。
八幡side
クルルと話し合う。あの時の俺には、そんなことをする余裕はなかったし、あってもクルルの話を聞き入れはしなかったと思う。
クルル『───八幡、聞いて? 信じられないかもしれないけど、私はね······八幡を守るために、八幡を傍にいたの』
八幡『は。なんだよそれ。守るって、親父もお袋も小町も! 皆死んだじゃないか! 何が守るだよ。冗談も程々にしてくれよ······』
俺もクルルに殺されるかもしれない。この当時は、毎日そんなことに怯えていた。アイツもクルルも、人殺しだ。この考えを改める機会も俺は見落としていた。見ないフリを続けていた。
クルル『聞いて八幡、まだ話は』
八幡『もういいよ······そんなの、聞いても虚しいだけだ』
クルル『待っ───』
八幡『ヴェネラナさん、やっぱ無理だよ。クルルの話聞いたところで誰も帰ってこないんだよ······』
ヴェネラナ『でも、生き残ったのは貴方ただ一人。辛かろうが、今の貴方にクルルの助け無しで生きていくのは不可能です。もう一度、今度はちゃんと逃げずに話し合いなさい。それでどうにもならないのなら、貴方とクルルはその程度ということです』
当時のグレモリーには、ヴェネラナさん以外に味方が誰もいなかった。サーゼクスは追い出す気まんまんだったし、グレモリー卿はまだ、俺を殺すかどうか考えていた。そうなると、必然的に、俺はヴェネラナさんの後ろ盾を失うわけにはいかなくなる。
そしてそのヴェネラナさんはクルルの味方をしている。
俺がクルルに向き合おうとした切欠で言えば、その程度だった。
八幡sideout
ヴァーリside
母さんは、切り落とされた腕を押さえて呻いた。ちょうど肘を切られていた。
クルル「くぁ······」
母さんは、二の腕の半ばあたりを
再生が始まらない。母さんの再生力は驚異的だ。1cm角の肉片が残っていれば、体を完全に修復出来る。人体の完全修復(或いは錬成)は技術的には不可能じゃないが、3秒で肉体を完全に再生させる術など存在しない。
現代医療の再生治療は年単位の時間がかかるし、父さんが知っている中で一番強力な禁術でも、一から3秒以内で治せるものと言えば、人体の中では比較的に構造が単純な腕や足くらいだ。それにも限度がある。
ラヴィニア「クルルさ······」
四鎌童子「驚いたろう? これを取り戻すのに随分時間がかかったが、やはり効果は折り紙付きだな。欲を言えば、比企谷八幡から引き剥がしたかったが
······」
四鎌童子がフッと口端を歪めると、俺に横目を向けた。加勢しろと、命令している。俺は······そうだ。ラヴィニアを護ると、決めたんだ。今は四鎌童子の言うことに従うしかない。
ヴァーリ「······
ラヴィニア「ヴァー君!」
『
ラヴィニアの瞳を無視して、出力を限界まで高めた。
ヴァーリ「フェザー!」
白銀の盾から平行四辺形の剣が分離し、動きが鈍った母さんの両足を、太腿から切断した。支えを失って倒れ伏す母さんだが、両足はやはり再生が始まらず、ただ血を流すだけだった。
ヴァーリ「何がどうなっている······?」
俺の呟きが愉快だったのか、は、と笑った四鎌童子はその手の楽器を演奏し出した。
ヴァーリ「······ダンテの神曲?」
地獄編。トランペット? だけだとかなり味気ないものだが間違いない。これにいったいどういう意味が。そう思った次の瞬間、母さんが残った左腕で頭を押さえ、そして叫び出した。
クルル「うぐっ、うぅぅあぁぁぁぁああああっ!」
トランペットの演奏で、叫ぶ、いや悲鳴を上げ、目と鼻から血を流してのたうち回る。そんな異様な光景に、俺とラヴィニアは気圧された。
ラヴィニア「何······?」
俺達の様子に見向きもせず、四鎌童子はトランペットを吹き続けた。一分半ほど演奏を続けた四鎌童子は、マウスピースから口を離すと仰向けで肩で息をする母さんの腹を踏み付けた。吹奏が終わると、母さんは悲鳴を上げるのを止めていた。あのトランペット、どういう代物なんだ······?
クソ。ラヴィニアさえ無事なら、今すぐにでもやつの首を刎ね飛ばせるんだが。
四鎌童子「どうだ。惨めだろう? 貴様も私も」
母さんの腹に足をグリグリと押し付け、その度に聞こえるうめき声に、俺は目を逸らした。生殺与奪の権利は、俺達にはない。
クルル「ぐっ、うぅぁ······」
とその時、四鎌童子が張った結界が破られ、父さんが束と美猴を連れて突入してきた。形勢逆転、吉と見るか······いや、大凶だな。下手な手を打てば、俺達2人とも四鎌童子の前に父さんに殺されかねない。
せめてもの対抗策として、
八幡「······クルル」
四鎌童子「お早い登場だな。お前の女は死に体だぞ」
四鎌童子は母さんの首に光で出来た剣を突き立てた。
父さん、意外に冷静だな······だが、こっちにも殺気が飛んできている。動けば殺すと、本能に脅迫してきている。
八幡「そうなる前に、お前を殺せばいいだけだろ。まだなんとかなる」
父さんが魔法を仕掛けると、一瞬で姿が消えて次の一瞬には四鎌童子の左から切りかかっていた。受け止めた四鎌童子を力で壁に押し付けると、そのまま壁をぶち破って外に出る。間もなくして、外からは地鳴りのような轟音が届いた。
美猴「おいヴァーリ。どういうことなのか、俺っち達に説明して貰おうじゃねぃか」
ヴァーリ「······それは」
美猴が如意棒を出現させ俺達の前に来ると、美猴を壁にして束が母さんに駆け寄っていた。
束「くーちゃん、すぐ治してあげるから······」
束が治癒魔法陣を展開させた瞬間だった。
八幡「束!」
上空で四鎌童子と戦闘していたはずの父さんが壁に空いた穴から突っ込んできて、束を突き飛ばした。
束「え」
八幡「がはっ······!!」
父さんの胸は紅いオーラでできた剣で貫かれていた。貫いたのは。
ヴァーリ「ルエルト・グレイヴィー、どうしてここに────」
あのクリフォトの拠点にいた、謎の女。四鎌童子からこの女が来ることは聞いていない。俺を信用しなかっただけかもしれないが。
いや、四鎌童子の気配が消えかかっている······?
八幡「な······づぅぁっ!」
「残念。殺し損ねた」
父さんから剣が引き抜かれて、壁に蹴り飛ばされた。父さんは手に小さな魔法陣を展開して胸に押し当てつつ、即座に体勢を立て直す。
美猴「八幡!」
父さんは血を吐きながら魔法で傷を修復し、ルエルトの周りに光の矢を展開した。
八幡「げほ、がほ、お前がルエルトか······死んだんじゃなかったんだな」
この口ぶり、父さんはこの女のことを知っているみたいだな。
周りが訝しみ、父さんが警戒を強める一方で、ルエルトは
·······と、横を見れば、美猴と束も既に戦闘体勢を整えていた。
美猴「八幡。誰なんだいコイツは」
ルエルトの柔らかい笑みに、俺は恐怖を覚えた。こんな感覚は始めてだ。リゼヴィムに殺されかけた時だって、ここまでおぞましい感覚を感じてはいない。
そんな俺の様子に気が回らないのか、父さんはルエルトから目を離さず、さらっと言った。
八幡「あぁ。死んだっていうクルルの娘だ。実のな」
娘······? そんな話聞いたことは·······
束「はーくん。冗談キツいよ」
八幡「本当だ。嘘は言ってない。それより束、外に転がってる四鎌童子を回収しろ。そこの女にやられて瀕死だ。生かさなくていい、殺すな」
本当に、四鎌童子がやられたのか。父さんとの戦闘に介入して。オーラを隠しているせいで実力を正確に出来ないが、『
束「それこそ冗談でしょ。なんであんな奴を」
誰も動けない状況の中束が吐き捨てたが、美猴が待ったをかけた。額に脂汗をかきながら、如意棒を構えた。
美猴「束、八幡の言うことに従った方がいいと思うぜい。コイツはヤバい」
ヴァーリsideout
八幡side
八幡「そのラッパ、随分といい使い勝手だな!」
四鎌童子「だったらどうするっ」
四鎌童子は俺の蹴りをさがりつつ腕で防ぎぎると、光の剣の刺突を俺に繰り出した。光力のジェットで加速を続けながらそれを回避しつつ、後ろに周り込んで胴体を真っ二つにするべく切り払う。それはギリギリで届かず、逆に反撃の魔法が飛んでくる。
八幡「投降しないなら殺すぞクソ
四鎌童子「その前にお前が死ね」
視界を埋める魔法をまとめて消滅させ、物量による死角からやつの顎を蹴り抜いた。が、同時に蹴った足を太腿から切断された。
四鎌童子「ぅあ·······」
八幡「チッ」
すぐに切られた足をくっつけ直しながら四鎌童子の腕を切り落とす。そのまま片腕のやつと何回か切り結んだところで、仕掛けを一つ発動させた。
四鎌童子「ぐぅあ······!」
ボン、という音とともに俺の魔力が炸裂して、赤黒い光に四鎌童子のもう片手も飲み込まれた。もう少し遅かったら勘づかれてたかもしれない。
怯みに乗じて女を地面に叩き付け、バウンドしたところを
四鎌童子「まだぁ······っ!」
四鎌童子は身動ぎして、拘束を引きちぎらんばかりに前のめりになる。反抗されてもめんどくさい。心臓に当たらないように、右胸に直径5cmくらいの風穴を空けて、強引に黙らせた。痛いだろうがまぁ、人外ならこのくらいじゃ死ねない。
八幡「さて、何から聞くべきか······」
しかし、こいつの強さがイマイチ分からんな。俺みたいにズルで強化してるタイプだとは思うが、前は束一人に殺されかけたのに、今回はクルルを瀕死に追い込んでる。それに、俺のスピードに着いてこれた。クルルや束より俺の足の方が速いんだが。
やっぱこのラッパ擬き? が原因なのか。前2回の戦闘では使ってなかったし、理屈は置いといて、それっぽいドーピング系か。
八幡「全く、これだから復讐の対象も絞れないやつは」
四鎌童子「それに、触るな······」
往生際の悪い女だな。そう思いながらラッパ擬きに触れた瞬間、頭に激痛が走った。
八幡「ぐぅあっ·······!?」
四鎌童子から距離を取る。そして顔をあげて、気付く。
四鎌童子の胸に、腕が───手刀が突き刺さっていた。
四鎌童子「あ、ごは······ルエルト、貴様」
八幡「ルエルト······!?」
黒の革手袋をした金髪の女は、血が滴る腕を引き抜き、ラッパを拾った。そのまま片手を振り上げ───
八幡「────やべっ」
俺は魔力を凝縮した剣で女の胴体を真っ二つにした。いや。
八幡「あの女、どこに······」
手応えがない。消えた。全く気付けなかった。俺は、感知だったらオーディンもシヴァも上回れる。と、急にあの女の存在が
八幡「クソが······!」
束が渋々と転移でこの場を離脱した。
ルエルト「やっと会えた。お母さん」
ルエルトは、しゃがみこんでクルルの頬に手を添えた。
ヴァーリ、ラヴィニアの前に立つ美猴に視線を移した。臨戦態勢は出来ている。だが、今俺と美猴で2人を見張りながらの戦闘は無理だ。こいつが本当にルエルトなら───いや、本当にルエルトなんだろう。クルルや666と同じ匂いを感じる。どれだけ捜しても見つからなかったが、生きてはいた。
俺が知っている限りでは、ルエルトは俺が11の時に産まれている。当時単独任務中のクルルが、潜入中にヘマをして捕まり、ウリエル派の組織のシガマドゥに乱暴されて産んだ子······で、脱走途中で編んだ草木に毛布を詰めた粗野な籠に入れて川に流した、だったか。
クルルから聞いた状況で赤ん坊が生きていられる確率なんてたかが知れてるし、どれだけ捜しても見つからなかったから、死亡として扱ってたが、まさか生きてたとは。
それに、その組織はクルルが脱走時に邪魔になりそうな末端の構成員は殺して回ったって聞いている。クルルが仕留め損なったシガマドゥも、後にメリオダスに殺害されている。存在を知る人間はもうほとんどいないと思われていた。
八幡「確かに、お前はルエルトみたいだな。お前のオーラはクルルにそっくりだ」
俺がルエルトに目を向けると、彼女はキッと俺を睨んだ。まるで、さっきまで俺が目に入ってなかったみたいだな。俺を刺した女とは思えん。そういうタイプか。
ルエルト「私の邪魔をするな」
八幡「は。不法侵入者がいっちょ前にほざくな」
ルエルトは、クルルを抱えて立ち上がる。随分大胆なやつだな。っても、メリオダスもクロウもティアも今はいない。勝永は別件中、それ以外のやつはここに呼びたくはない。
ルエルト「······付き合うだけ時間の無駄だな」
ルエルトが、クルルを抱えた。
八幡「美猴! お前はここに残れ!」
次の瞬間には、ルエルトは窓を突き破って脱出を図っていた。
······こいつの狙いはクルルを殺すことじゃなかったのか!
慌てて開けた窓枠から飛び出したが、その時にはルエルトもクルルも、影も形もなかった。
ルエルトが飛び出してから1秒も経っていないはずだったが、転移の痕跡もなし、オーラの残滓も窓を飛び出してすぐに途切れていた。監視カメラの映像くらいはあるかもしれないが、どこまで役に立つか·····
八幡「ごめんクルル······」
八幡sideout