イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
はい!!今回はヴァーリの過去回です。結構暗いです。不快に感じた方は、ページをお閉じください。
それは今から12年前のこと。
俺はアルビオンの気配を察知してある所に向かっていた。ある所、とはリゼヴィム・リヴァン・ルシファーの屋敷だ。確か、適当な口実を付けて、強引に入った気がする。。
その時はまだ、アルビオンの気配を感知しただけで誰が今代の白龍皇かは分からなかったのだが。
八幡「·······失礼する。リゼヴィムはいるか?」
勝手に玄関から上がって、使用人の1人に話しかける。リゼヴィムは大っ嫌いなので何とも思わん。
「は、はい。ただいま······」
ここの使用人が内線を使おうとしたその時────
────その時、俺の耳に声が届いた。あまりにもか細い声。余程近くなければ聞こえないであろう声だったが、その時は確かに聞こえた。聞き間違いであるとは微塵も思わなかった。
───···やめ····よ·····ね······んに·····いじょ······何す·····んだ······
八幡「······!! おい、今のは何だ?」
微かに声が聞こえた。今のは······リゼヴィムの孫のヴァーリか? 姉さんって言ったのか······? ヴァーリには一度だけ会ったことがあったが、姉がいたのか?
「······? 私には何のことだか······」
チッ······使えないなこいつ。
······前に会った時も違和感を感じていたが、ここでは何かを隠している。
八幡「もういい!!」
俺は微かに聞こえた声の方に全力で駆けて行った。止めようとしてきた使用人の足は適当に払っておいた。
八幡「······ここ、か?」
微かに聞こえた声は、厳重に閉じられていた部屋からだった。見た感じ、ドアも厚さ10cmはあるだろう。
八幡「型式『揚羽』」
俺は『
八幡「ここは───っ!!?」
「八幡······さ······? お姉ちゃ······助け···て···」
無機質なコンクリートの部屋の中に居たのは、ボロボロのヴァーリとヴァーリが姉と呼んだ少女。更に、ヴァーリの父とリゼヴィムだった。
この部屋の中に微かにアルビオンの気配を感じる。リゼヴィムとヴァーリの父は除外するとして······姉弟のどちらかだな。
八幡「今助けるから待ってろ······おいリゼヴィム。お前、ここで何してる?」
殺気を混じらせながらリゼヴィムを威圧するが、リゼヴィムはあっけらかんと返した。
リゼヴィム「うひゃひゃひゃひゃひゃ。何って、見ての通り息子に虐待させてるんだよ?」
八幡「······は?」
こいつ今何つった? 虐待させてるだと? 巫山戯んな。だからこいつは嫌いなんだ······命を簡単に屠るようなこいつが。命の重みを考えたこともねぇクセに!!
八幡「ならこいつらは俺が連れてく」
こんな所に軟禁されてる子供を見捨てられるか。まだ未来があると言うのに。無理に決まってる。
リゼヴィム「あっそ。勝手にすればいんじゃね? でも、その前に一つやらにゃあかんことがあんだけどね」
リゼヴィムはそう言って、
ヴァーリ「ヒッ······!!?」
八幡「お前何を!?」
リゼヴィム「さあさあどうぞ? こいつらを連れてくんでしょ〜?」
リゼヴィムはそう言ってヴァーリとその姉に掌を向けた。その手には魔法陣が展開されている。
八幡「チィッ!!」
ヴァーリ達の前に移動し、リゼヴィムが2人に飛ばした魔力弾を『塵外刀・真打』で全部叩き切る。
八幡「
リゼヴィムに黒丸を飛ばせるだけ飛ばして、足止めさせる。リゼヴィムクラスだと、この数じゃ仕留められないからな。
八幡「······動けるか?」
黒丸でリゼヴィムを足止めしている間に、2人の両手両足に付けられた金属の枷を切る。魔力封じの術がかけられていた。こんな衰弱した子どもじゃ、人外といえど術がなくても絶対に外せない。
ヴァーリ「うん。でもお姉ちゃんが······」
ヴァーリが姉の横顔を覗き見る。少女の顔からは生気が完全に抜け落ちていて、目には一切の光も無かった。
八幡「······君、大丈夫かい?」
出来るだけ優しい口調で少女に話しかける。精神はもう崩壊しきっていると言っていいほどかもしれない。明らかに、ヴァーリよりも身長が小さい。多分、栄養失調で······
「······」
俺が尋ねたら、ゆっくり頷いてくれた。かろうじてだが······なんとか応答は出来るらしい。心身ともに相当衰弱している。いつからこんなことを······
八幡「逃げるぞ。ヴァーリ、掴まれるか?」
羽織っていたローブを着せて、左手で抱き抱える。
ヴァーリ「はい。お姉ちゃんは······?」
八幡「大丈夫だ。弱ってはいるがちゃんと生きてる」
ヴァーリ「よかった·······」
八幡「逃げるぞ」
塵外刀真打咥えて、首にしがみつくヴァーリを右手で抱きとめる。塵外刀・真打を仕舞わない理由は、もう暫く黒丸に足止めさせるからだ。刀を仕舞っても黒丸自体は使えるが、若干性能が落ちるので出来れば避けたかった。
リゼヴィム「······あひゃひゃひゃひゃひゃ!! ま、精々そのゴミ共を宜しく~!」
リゼヴィムの一言に今ここでぶち殺してやろうかと思ったが、子供2人が見てる前ではそんなことするわけにもいかなかった。
俺は2人を連れて全力でリゼヴィムの屋敷から離れた。
「······八幡様、こちらが検査結果です」
ある程度リゼヴィムの屋敷から離れた俺は魔法陣でジャンプして俺の領にある、お抱えの病院に来ていた。2人には速攻で検査を受けさせた。
八幡「······っ。ああ、にしてもこれは酷いな······」
俺は医師から渡された紙を見て、絶句した。
「そうですね······」
ヴァーリは服で見えない位置だけが、青痣塗れだった。それこそ普通の健康的な肌がないと言える程に。更に、多数の火傷や刃物で切ったような痕もあった。
八幡「······この娘、オーフェリアって言うのか」
「らしいです。弟の子の方が教えてくれました」
八幡「こっちの娘はもっと酷いな······リゼヴィムっ······!!」
検査結果が記された紙を持つ手に力が入り、グシャッという音が部屋に響いた。
「そうですね······まだ9歳の女の子が、
ヴァーリが姉と呼んだ少女───オーフェリアに至っては妊娠していた。しかも7ヶ月。あの歳でパートナーがいるとは考えられないので、乱暴されて身篭ったのだろう。近親相姦の可能性も······
······あいつ(ヴァーリとオーフェリアの父)がリゼヴィムに向ける目は、恐怖が殆どを占めていた。子供に性的虐待をやってもおかしくはないくらいには。
何度も会っていたのに、その事実に全く気付かなかった自分が憎い······
それに、後から調べて分かったが、あの子達には日本でいう戸籍のような、身分を示すものがなかった。一つもだ。
······にしても、年齢もそうだが、あの栄養状態の子が妊娠出来るのか? なんらかの魔法でも使われて、強引に身篭らされた可能性も······否定は出来ない。
「······それに、彼女の場合自身の持つ魔力に体が耐えきれていません」
人間とのハーフであるヴァーリとオーフェリアだが、ルシファーの血族であるため、莫大な魔力を、この歳で既に有していた。が、体は栄養失調もあってその魔力に耐えられていなかった。
八幡「······そっちはなんとでもなる。明日魔力の生成を抑える器具を持ってくる·····で、妊娠の方はどうにかならないのか?」
「もう堕ろせないところまできていますし······普通に考えれば、中絶が一番いいですが、あの歳の娘にそれを······
それ以前に、今の状態では手術もままなりませんよ」
クソ、打つ手なしかよ······
八幡「こう言うのはなんだが、仕方ないのか······?」
「かもしれませんね······母子ともに衰弱してはいますが、これからの治療で回復を見込めるなのが唯一の救いでしょうか······」
八幡「······分かった。また明日来る」
「分かりました」
医師との相談を済ませ、俺は帰宅することになった。オーフェリアとヴァーリは、当然のことながら入院することになった。ヴァーリはそのうち退院出来るだろうが、オーフェリアは退院すら出来るか分からなかった。
その翌日。俺は魔力の生成を抑える器具(リストバンド)を持って病院に訪れていた。クルルと共に。
実は、昨日リゼヴィムの屋敷に訪れることは誰にも言っておらず、一度帰宅したところブチ切れたクルルが待っていた。事情が事情なために、すぐに有耶無耶になってしまったが。
クルル「·······一言ぐらい私くらいにも言ってくれてもよかったんじゃないの?」
八幡「それは······悪い」
内緒で行ったことは事実なので、何も言えない。
クルル「もういいわ。で、ヴァーリとオーフェリアって娘は?」
八幡「······昨日言った通りだ。精神面で言えば、ことさらオーフェリアが酷かった。肉体云々もそうだが、心が死んでた。あれは······あの歳の子どもの目じゃない」
全てを諦めて、全てを手放したような目だった。もうあの瞳には何も映っていないのかもしれない。
クルル「そう······」
八幡「気付かなかった俺の所為だ。もう少し、踏み入って調べられたはずなのに······」
そう。今回は俺がもっと早く気付くべきだったのだ。とヴァーリの母親が死んだと聞いた時点で、調べ上げて、無理矢理にでも保護するべきだったのだ。
クルル「それは······違うわ。あんな暗い部屋に子どもを閉じ込めたのよ、あの外道は!!」
クルルが顔を顰め、拳を握る。その後、俺達はヴァーリのいる病室に着くまで一言も喋らなかった。
八幡「······入るぞヴァーリ」
「······どうぞ」
ドアをノックして帰ってきたのはかなり弱々しい声。昨日は姉のために無理をして声を張っていたのだろう。
明るい場所でよく見ると、ヴァーリは同年代の子どもと比べて、かなり痩せていて、7歳の男の子には見えなかった。サングィネムには孤児院があるが、そこの子でもここまで衰弱してる子は中々いない。
八幡「······少しは落ち着いたか?」
ヴァーリ「はい······」
クルル「久しぶりねヴァーリ」
ヴァーリ「······はい。久しぶりです。八幡さん、お姉ちゃんは······?」
八幡「医者曰く、安静にしてれば回復は十分可能だそうだ」
先生はここまで言っていなかった。が、真実をそのまま告げることが、出来なかった。
ヴァーリ「よかった······俺、お姉ちゃんが殴られてるのに、何も出来なくて······!!」
ヴァーリの目から大粒の涙が零れる。恐怖からではない。目の前にいた姉に対して何も出来なかったという自責の念からだろう。
八幡「いいや、昨日お前は声振り絞って助けてって言ったんだ。······よく、頑張ったな」
ヴァーリ「グスッ······うわぁぁぁぁぁ」
ヴァーリは泣いた。いつ折れてもおかしくないまだ7歳のその小さな体と心を、俺とクルルは抱きしめた。それしか出来なかったから。
それから1ヶ月と少しの後。ヴァーリの退院と共に、オーフェリアとヴァーリを引き取ることを決めた。
今回でヴァーリのお姉ちゃん、オーフェリア(学戦都市アスタリスクより)の登場です。12年前の時点では、オーフェリア9歳、ヴァーリ7歳の設定です。ギャスパーを引き取るのはこの5年後です。後編でちゃんと書きます(予定では)。
作者から見ても中々に雑ですが、本編と関係ない誹謗中傷はご遠慮願います。