イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
八幡「······ここも久しぶりだな」
もう領に来てから疲れから何度も出た溜息を漏らす。
オーフェリアのお見舞いに行った翌日。俺はクルル、ヴァーリとともにうちの領の中心にある孤児院───名を『百夜孤児院』という───に訪れていた。この孤児院には、人間を始めとし、悪魔、堕天使、更にはヴァンパイアや妖怪の子供など、多種多様な種族の孤児が暮らしている。
貴族主義や血族を重んじる種族が多いこの世界では、混血の者を『忌み子』と呼んで迫害することが多々ある。ギャスパーもそう呼ばれていた。
そんな子共を受け入れるために設立した孤児院だ。当然、純粋な人間の子供などもいる。
『聖剣計画』の際にここを襲撃すると脅しをかけてきた奴はガチでぶち殺してやろうと思った。その時は殺さなかったが。······そして何も出来なかった結果、バルパー・ガリレイに逃げられ、殺処分を一人免れた木場 裕斗(当時はイザイヤ)がリアス・グレモリーの眷属になったと聞いた時は安堵し、脅しをかけてきた愚か者をぶっ殺したが。
······本音を言えば、俺みたいな子が少しでも減って欲しかったというだけの話だ。馬鹿みたいな話だがな。
ヴァーリ「······孤児院か。そう言えば、俺は来るのは初めてだな」
クルル「そうだっけ? まぁ、だいたい副院長のティアに任せてるけど」
ヴァーリは、ここに来たことはない。境遇的にヴァーリに近い子はいるが、引き取った当時、ヴァーリは姉と姪以外の存在を受け入れられなかった。今でこそこうして話しているが、最初は、誰に対しても遠慮か恐怖が先に立って
で、ティアはうちの『騎士』で、古株の眷属だ。眷属になったのは、メリオダスの次だ。『
メリオダス然り、駒を渡しただけだが。
ヴァーリ「·····副院長······!? あいつが、か?」
ヴァーリが驚く。
お前は知らんかったのかもしれんが、最初からずっとそうだったぞ?
八幡「まあ普通なら驚くよ。俺も引き受けた時は驚いた」
クルル「そうかしら。ああ見えて以外と面倒見はいいのよ。私は引き受けると最初から思ってたわ」
まあ女同士なら分かるってものもあるか······
ヴァーリ「······想像がつかない。娘がいるにしても、想像がつかない」
そう言って唸り出すヴァーリ。気持ちはよく分かるぞ。今じゃもう慣れたがな。
「さて、話を聞いてれば随分といってくれるわね2人とも」
声のする方に振り向くと、深い蒼の髪を靡かせるティアがいた。
人間態を取っていても、今はそのオーラを隠してはいない。
ヴァーリ「······!?」
八幡「よ、久しぶり」
ティア「久しぶりね。ヴァーリ、覚えておきなさいよ」
ヴァーリ「」
ヴァーリは言葉を失い、挙動不審になる。まぁ、
『
現在はレーティングゲームの真の審判を務める傍ら、孤児院の副院長をしている。
因みに、俺よりクルルとの付き合いが長い。比企谷家に来る前のクルルに会ったことがあるらしい。眷属入りした理由にはクルルがいたことも含まれるのだろう。副院長を引き受けた理由にもクルルの要請があるだろう。尚、この孤児院の副院長がティアだと知っているのは、うち以外ではアジュカのみだ。
「院長先生だー!!」
ティアの後ろから着いてきた子供達はクルルを見掛けて集まってきた。コカビエルの一件の時、クルルは一度こちらに来ている。この孤児院は冥界でも結構有名なので、万が一に備えて警備面の再確認をしたためだ。
俺はコカビエルの動向に注視する必要があったため駒王にいたが。
クルル「皆落ち着きなさい」
「遊ぼー!!」
クルル「はいはい、慌てないの。逃げやしないわ」
クルルは子供達に引っ張られて、向こうで一緒に遊び始めた。
ヴァーリ「······母さん、楽しそうだ」
八幡「そりゃな。子供はクルルの欲しかったものの一つだし」
クルルは屈託のない笑顔を浮かべている。俺が、クルルにあげられなかったもの······
ヴァーリ「ティア、俺は施設を見ておきたいんだが大丈夫か?」
ティア「えぇ。終わったら子どもたちの遊び相手もしてきなさい」
ヴァーリ「······まぁいいか」
ヴァーリが、見学に行ったのを横目に見ながら、ティアは言う。
ティア「クルルはここができてから更に表情が柔らかくなったわ。······ふと悲しい表情を浮かべることは未だにあるけど」
八幡「······あぁ、分かってる」
この孤児院は血統主義者、特に悪魔政府の上層部に蔓延する老いぼれが目の敵にしている。それでも手を出さないのは、俺や俺の眷属の報復が怖いからだ。当然、『
八幡「······クルル。ごめんな」
クルル「······楽しかったわ。やっぱり子どもって素敵ね。私達と違って、純粋で、見てて癒されるわ」
ばいばーいと手を振る子達に手を振り返して、クルルが言う。
八幡「見てて気持ちよかったよ。クルルもここに毎日いたいくらいだろ」
クルル「そう、ね······毎日は無理でも、週に一回は来れるようにしたいわ。設立したのは私だしね」
八幡「······そうか。ならこっちの仕事早いこと終わらせんとな。あ、ヴァーリ、悪いんだが一つ頼んでいいか」
そう言うと見学から戻ってきていたヴァーリが呆れたような目を向けてきた。
ヴァーリ「······やっとか。もう準備は済んでるぞ」
いつから気付いてたんだ、ヴァーリは·····
八幡「······マジで」
クルル「······何の話よ?」
え?何で知ってんの?
ヴァーリ「ああ。いつ呼び出すかだけだ」
八幡「······そこまでバレてたのか」
クルル「呼び出す?」
クルルは突然のことに話についていけてない。クルルのためにやるからな。とはいえ本当はもっと先になる予定だったんだが。
ヴァーリ「まあ。分かりやすかったしな。父さんが考えてたことなら多少は想像つくからな。いつがいい? あいつならいつでも大丈夫だと思うが」
八幡「そうだな······なら2日後だな」
ヴァーリ「分かった。2人はあの洞窟で待っててくれ。俺が連れていくから」
八幡「ああ······ありがとな」
クルル「? ······そうじゃあ」
首を傾げるクルルだが、誰も伝えてないのだから当たり前だ。サプライズくらい、させて欲しい。
ヴァーリ「じゃあ、俺はそろそろ戻らないと。もう抜けようとは思うが」
八幡「ああ。またな」
そう言って頭をクシャッと撫でると「ああ」と柔らかな笑みを浮かべて魔法陣でジャンプしていった。
クルル「·····ねえ八幡。何の話?」
事情を知らないクルルが、懐疑的な目を向けてくる。
八幡「サプライズのつもり、だったんだけどバレたし隠す必要ももうないか」
クルル「何をするつもり?」
八幡「······お前の体から、『毒』を除去出来るかもしれない。大丈夫、俺もヴァーリも危ないことはしてないから」
クルル「ッ······どうして? 私は────」
目を見開いて驚くクルルの姿に自分を殺したくなる欲求を抑えながら続ける。
八幡「よく辛そうな顔をしてるのは俺だけじゃなく皆知ってる。だからヴァーリが協力してくれた。ヴァーリだけじゃない。皆が協力してくれてるんだ」
あの戦争で俺を庇った時、入り込んだあの蜥蜴の魔力がクルルの魔力と混ざって変質化し、クルルの体に今でも残っている。クルルはそのせいで幾つかの臓器不全、身体能力の極端な低下、魔力も殆ど練れなくなった。受けた時の傷も傷跡となって未だに治らない。
クルルの体はそれに蝕まれていた。今は俺が奪ったアルビオンの力を使い、限界まで毒と化した魔力を減少させることで事なきを得るには得たが、身体能力や魔力は戻らず、傷跡も治らなかった。
そして、クルルを最も苦しませているのが、
······俺のせいで。
変質化した蜥蜴の魔力だが、完全に抜き出さないといけなかった。当然、考えつくあらゆる方法を試したが結果はダメだった。
そして······サプライズという名目で、最後に思い付いたのが、二天龍を上回る龍、即ち『ムゲン』から力を借りるということだった。提案したのはティアだ。ただ、2体が何処にいるかは総力をあげて探しても全く掴めず、『夢幻』は次元の狭間の何処かにいるとは分かったが、ほぼほぼ探しようがない。
『無限』は『夢幻』に負けて次元の狭間を抜け出してから全くの所在不明だった。
そこに降って湧いたかのように『
だから、なんとかオーフィスに接触出来ないかを考えていたのだが、ヴァーリ達が動いていてくれたらしい。親孝行にしては上出来すぎる。本当に、感謝してもしきれない。
俺は前々から考えていたことを全てクルルに話した。
クルル「わ、私······なんとかなるの·····?」
クルルは涙を零しながら聞いてきた。
八幡「ああ。·······もしかしたら子供も産めるようになるかもしれない」
クルルの体に残る魔力によって生殖機能は停止したので、もしかしたら、時間はかかるだろうが回復を見込めるかもしれないのだ。
俺が言った瞬間、クルルは飛び込んできた。
クルル「わ······私······!」
八幡「ああ。よく今まで頑張ったな」
クルルを抱き締めそっと撫でる。暫く涙を流し続けた後
クルル「ありがとね」
クルルは涙も拭かずに顔を上げてニッコリ笑った。
俺も、涙を堪えきれなかった。
八幡が語ったクルルの体については、プロローグから少し経った頃発覚したことです。又、クルルは、戦闘面では原作通りのイメージで書いてますが、それ以外(プライベートとか)では(終わセラ原作での)クルルの3000年前はこんな感じかな?という想像のもとキャラを書いてます。
※ティアに渡した駒は一つです。
又、ティアの強さは眷属内で5番目になります。