終わり無き孤独な幻想   作:カモシカ

13 / 20
第十三話 彼は、みょんな剣士と戦う。

「……避けますか」

「そりゃあ殺気丸出しだったしな」

 

 いきなり飛び出してきたその少女は二本の刀を構え、俺に肉薄する。俺としてもただ黙って斬られる訳にはいかないので回避をしながら武器を作り出す。

 

「『魔槍:ザ・ロンリースピア』、『魔刀:欺瞞者』」

 

 槍型の弾幕と反りの無い刀型の弾幕を形成する。そこに霊力と魔力を注ぎ込み、ただの弾幕から武器にまで昇華させる。

 

「八幡っ!あんたそいつは頼んだわよ!」

「了解!」

 

 先程の攻撃と言いこの少女は見た目通りの相手では無いようだ。だが少女から感じ取れる妖力は決して強くは無いし、俺には切り札もある。楽勝とは行かないが何とかなるだろうと判断し、了承する。

 

「行かせると思いますか?」

 

 しかしその少女は霊夢と魔理沙に斬りかかる。随分と速く動いているが三対一で防ぎきれる筈もなく、俺が少女を抑えている間に霊夢と魔理沙は上へと向かって行った。

 

「くっ……大人しく帰ってくれませんか?」

「俺としてもそうしたいんだけどよ。そうも行かねぇんだ」

「そうですか。残念です。――魂魄妖夢、参るッ!」

 

 妖夢は数メートルの距離を一瞬で詰め、両手の刀で斬りつけて来る。俺は『欺瞞者』で妖夢の左手の刀を捌き、右手の刀の攻撃を妖夢の後ろに回って避ける。そしてすれ違い様に『ロンリースピア』で妖夢の右肩を突く。しかしその瞬間、能力によって大きな『負』を察知し、霊力で足を強化して後ろに跳んで距離を取る。

 

「これも避けますか……」

「お前殺す気かよ……」

 

 俺の居たところには妖夢の刀が静止しており、後一瞬でも下がるのが遅れていたらと思うとヒヤッとする。

 これまでの戦いは五分五分。だが俺は特に武術をやっている訳ではない。霊夢や八雲に習い始めてはいるが、相手はガチの剣士。元々接近戦で勝ち目は無いからこれは恐らく手加減されていると思われる。

 

「まさか。元から今のを当てられるとは思っていません」

「まあ手加減してるんだろうしな」

「ですが次は当てさせて貰います」

 

 そう俺に告げると、妖夢の纏う雰囲気が明らかに変化する。研ぎ澄まされた刃のように鋭い視線を俺に向ける。ヤバイ。どのくらいヤバイかと言うと超ヤバイ。

 はぁ……面倒だがあれを使うしかないか。

 

「『召符:腐り目三兄弟(ミニ八幡)』」

 

 俺はミニ八幡を三体作り出す。『召符』とか言ってるが実際は霊力使って作っただけだ。

 妖夢は俺が作り出したミニ八幡を見ても特に反応はしない。

 なので俺は妖夢が来たら足止めをするようにミニ八幡に指示を出し、次の準備に取りかかる。

 

「『集負:負情集積』」

 

 俺の家にある八雲から貰った中継機を使い、人里の方まで『負』を集める範囲を広くする。

 敵意、害意、憎悪、寂寥、悲嘆、狂気、殺意、恐怖、絶望、失望、そういったありとあらゆる『負の感情』が中継機を介して俺に流れ込む。流れ込んだ『負』は霊力、魔力、妖力に変換され、俺の力へと変化する。

 

「これは……霊力、魔力……妖力まで……」

 

 妖夢も俺の異変に気づいたらしい。ミニ八幡を警戒していたのか近づいてこなかったが、ここでようやく動き出した。

 刹那のうちに五メートルほどの距離を詰め、本体である俺を叩こうと斬りかかってくる。しかし今に降り下ろさんとされる刀をミニ八幡が二人がかりで受け止め、もう一人のミニ八幡が手に持った短刀で斬りかかる。しかし妖夢は難なくそれを避け、まずミニ八幡を倒そうと判断したのか少し後ろに下がる。

 

「『獄炎剣:業風閃影陣』」

 

 妖夢はスペルを宣言する。すると妖夢の持つ二本の刀が炎を纏い、妖夢がその刀を振るうと二つの大きな火の斬撃の弾幕が飛ぶ。その弾幕は俺に向かって放たれたが、ミニ八幡が俺を庇って消えた。まあ霊力でできてるからいつでも元に戻せるのだが。

 そして何だか厨二くさいスペルだと思ったが俺もあんまり人のこと言えないなと思い直す。

 

 さて、ミニ八幡は消えてしまったが俺の用意はできた。後はさっさと妖夢を倒して霊夢たちと合流しちゃっちゃと解決だ。

 

「『創負:終わりの始まり』」

 

 俺はフランを止めるときにやったように『負』を作り出す。あのときは全身に纏わせたお陰で負荷が凄いことになってしまったが、今回は両手に持った槍と刀だけに纏わせる。この一ヶ月間、これを実用段階まで鍛えてきたのでもうほとんど負担は無い。ほんと慣れって凄い。

 

「『負撃:負極槍・負狂斬』」

 

 俺は新しく作ったスペル『負撃:負極槍・負狂斬』を繰り出す。『負』を宿した槍と刀は妖夢の二刀をすり抜け、肉体をすり抜け、妖夢の精神のみを攻撃する。すると一瞬にして意識を失い、膝から崩れ落ちる。この技は俺が集めた『負』の一部を体感させるというものだ。今回は俺が集めた害意と敵意の一部を渡した。今ごろ悪夢でも見ているだろう。まあ所詮は一部でしかないので少ししたら目を覚ますだろうが。

 どっからどうみても技名が厨二病な気がするが気にしたら負けだ。

 

「さて、行くか」

 

 そう呟き、未だ延々と続く階段に若干うんざりしながら飛行を開始する。

 

「少し良いかしら?」

「ひょやぁっ!……って、八雲かよ。いきなり話しかけんな」

 

 飛んでいるといきなり横から八雲が現れた。ほんとにビビって心臓に悪いから止めて欲しい。切実に。

 

「あらごめんなさい。けどそうも言ってられないのよ」

「……何かあったのか?」

「ええ。この異変の犯人の目的は話したわよね?」

「ああ。あの西なんたらっていう桜を咲かせるってやつだろ。……ったく、巻き込まれるこっちは迷惑だっての」

「そう。その西行妖がもうすぐ咲いてしまうの」

「は?まあ別にそれで被害があるわけでも無いだろ。ただの桜みたいだし」

「いえ。あの桜はただの桜では無いわ」

「は?」

「!……時間がないわ。急いで!」

 

 八雲の口調に緊急事態が起きたのだと察し、飛ぶスピードを最速にする。

 

「ただの桜じゃ無いってのは?」

「……あの桜は、一度封印されているの」

「封印?」

「ええ。それも西行寺幽々子。つまり、今回の異変の犯人の手によって」

「は?てことは自分で封印しといて自分で解こうとしてるってことか?」

「そうなるわね」

「何でそんな……」

 

 完全に無駄なことをしているとしか思えない。どうせ咲かせるなら最初から封印なんかしなけりゃ良いのに。

 ……まあこんな訳分からんことも『幻想郷だから』で片付いちまうんだが。

 

「覚えていないからよ」

「覚えてない?」

「ええ。彼女は生前、その身を楔として西行妖を封印した」

「生前?」

「彼女は亡霊なの。西行妖を封印し、その後記憶を無くして亡霊となり、今は冥界で幽霊達の管理人をしているわ」

「ほーん?まあそれは分かったが何で西行妖は封印されたんだ?」

「それは、あの桜が人を死に誘う力を持ってしまったからよ」

「はぁ?どういうことだよ」

「そのままの意味よ。西行妖は咲く度に自ら人を死に誘うようになったの。幽々子自身もこの影響で『死を操る程度の能力』を持ってしまった」

 

 そんなどう消化して良いのか分からない話を聞きながら、犯人の元に急ぐ。

 そしてようやく犯人の元にたどり着き、最初に俺が見たのは、満開の大きな桜だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。