終わり無き孤独な幻想   作:カモシカ

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第三話 彼は、博霊神社にて修行を開始する。

 その後、いきなり何の話だ、だとか博霊神社ってどこだよ、だとか言いたい事は多々あったがひとまず飲み込み、代わりに大きく溜め息を吐く。

 

「……なあ、八幡。大丈夫か?」

 

 後ろから聞こえてきたやけに優しげな声に、そう言えばここにはまだ人が居たなと思い出す。

 待てよ?こいつは八雲と面識があるようだった。ということは幻想郷の住人だろう。それならば、博霊神社とやらの場所も知っているのではないだろうか。そして俺を運んで欲しい。歩くのダルい、面倒くさい、働きたくない。

 

 というわけで俺は目の前の少女──魔理沙、とか言ったか──にダメもとで頼み事をしてみる。

 

「なあ、あんt「魔理沙だぜ」……あn「魔理沙だぜ」……魔理沙」

 

 何だよこいつ、別に呼び方なんて何でも良いだろ。というか名前呼び大好きとかこいつリア充か、リア充なのか……!

 とまあそんなことはどうでも良い。今大切なのは、如何にして魔理沙に博霊神社まで運んでくれるよう頼むかだ。知っての通り俺の目は尋常じゃないぐらい腐っている。自分で言うのもあれだが俺もこんな奴には近づきたくない。魔理沙は初対面の俺を特に怖がる様子も無いから物凄く良い奴か物凄くバカな奴かのどちらかだろう。そして間違いなく後者だ。こいつ絶対バカ。雰囲気がそう物語っている。

 しかしそれなら都合が良い。取り敢えず普通に頼んでみよう。

 

「なあ、魔理沙。博霊神社って何処だ?できれば送ってくれると助かる」

「んー、ここから結構遠いし、私もこれから博霊神社には行くところだったし、別に良いぜ!」

 

 いつもならどんな罠かと警戒するが、そうあっけからんと答える魔理沙からは悪意の一欠片も感じなかった。というか、物凄くバカで物凄く良い奴だった。これが八雲が言い出したことなら全力で警戒するが、こいつからはその手の腹黒さを微塵も感じられない。大丈夫かよこいつ、絶対詐欺に引っかかるぞ。

 

「よし、箒の後ろに乗ってくれ」

 

 魔理沙に礼を言って運んでもらう。空を飛べると言われても未だに半信半疑だが、八雲のスキマだの能力だのを考えれば別におかしくは無いか。

 

 

 

 ****

 

 

 

 博霊神社で俺(+魔理沙)を待っていたのは八雲と謎の脇出し巫女である。場所と服装を鑑みるに、あの脇出し巫女はここの神社の巫女であろうか。

 

「……あら、来たわね」

「は!?まさかあいつに教えろってんじゃ無いでしょうね!?」

「ふふ、そのまさか、よ」

「は!?何が悲しくて妖怪に教えなきゃなんないのよ!?」

「安心しなさい。一応人間だから」

 

 ニギヤカナトコロデスネ。どうも妖怪の俺です。話の流れからするとどうやら俺は失礼なことに妖怪扱いされているらしい。確かに腐った目とか妖気が宿ってそうだが俺はちゃんと人間だ。……人間だよね?

 

「あのー」

「なによ!?」

「ひゃうっ」

 

 ……死にたい。どうやら俺の変な声スキルは健在なようだ。そんなスキルいらねえ。

 

「はぁ、それで、何?」

 

 脇出し巫女が不機嫌を隠そうともせずに話しかけてくる。変に隠されるよりは良いが、露骨に不機嫌になられるのも困る。

 

「あー、えっと……そこに居る八雲に、ここに来いって言われたんだが……」

「はぁー、紫から聞いてるわ。外の人間だそうね」

「ああ」

「私は博霊霊夢。ここで博霊の巫女をやってるわ」

「比企谷八幡だ。よく分からんが、修行をしなければいけないらしい」

「ええ。そうでしょうね。あなた今霊力だだ漏れ状態だもの。ていうか霊力をそんだけ漏らしながら生きてることが驚きなんだけど」

 

 そう言って博霊は俺を値踏みするように、頭のてっぺんから爪先まで舐めるような視線を注いでくる。そしていきなり、

 

「……あんた一体何者?」

「は?」

「まあ紫が連れてくるだけのことはあるってことかしらね」

 

 その後もぶつぶつ言っていたが突っ込むと色々疲れそうなので放っておく。すると、思考が纏まったのか一つ頷き、

 

「さて、直ぐに修行を始めるわよ」

「お、おう」

「それで、八幡は霊力の使い方とか、弾幕とかスペルカードのことは紫から聞いているかしら?」

 

 さらっと名前呼び……こいつらがリア充なのか、幻想郷では名前呼びが普通なのか。まあどうでもいいか。

 

「いや、特に聞いてないが」

 

 弾幕?何?サバゲーでもすんの?って感じだ。

 

「はぁ、じゃあ先ずは霊力から説明するわ。霊力っていうのは、ほとんどの人間が持っている力のことね。まあ使いこなせるかは別問題だけど」

 

 そんなこんなで二十分ほど霊力、弾幕ごっこについての説明を受けた。それで今は、霊力の制御と弾幕を出す練習をしている。

 

「霊力を使えば、自分を強化したり」

 

 そう言って霊夢(名前呼びを強制された)は足に霊力を纏わせ、神社の屋根に軽く跳んだだけで飛び乗る。明らかに普通の人間の動きではないから、これが霊力による自身の強化なのだろう。

 

「空を飛んだり」

 

 霊夢は屋根の上から空へと昇っていく。……もう俺何が起きても驚かない自信があるよ。この調子だと魔理沙辺りが魔法でもぶっぱなしそう。魔法使いだし。

 

「物を創ったり……なんて事が出来るの」

 

 空から降りてきた霊夢がぐっと手に力を込めたかと思うと、次の瞬間には手にお祓い棒が握られていた。

 

「さ、やってみて」

 

 いきなり出来るわけ無いだろと思いながらも、見よう見まねで足に霊力を纏わせる。体中のエネルギーを足に集中させるようにイメージし、神社の屋根に飛び乗る。……おお。案外出来るもんだな。でも外の世界じゃこんなことは出来なかったよな。出来てたら中二の頃には世界を征服してた。ということは幻想郷に来たから霊力が解放された、もしくは幻想郷に来たから霊力が付いた、ということか。

 

「あんた結構やるじゃない」

「そりゃどーも」

「さ、さっさと次行きなさい次」

「へいへい」

 

 その後も何やかんやで空を飛べるようになったり、日本刀を霊力で創ったりした。

 そして次は本日の目玉。弾幕とスペルカード作りである。

 

「次は弾幕を作って貰うけど、霊力の制御ほど簡単じゃないから頑張りなさい。と言ってもほとんどイメージだけで作るからコツとかは無いわ」

「了解っす霊夢師匠」

「いいからさっさとやんなさい」

 

 何となく師匠呼びしてみたが、霊夢は少し嬉しそうだ。師匠と呼ばれるのが密かな夢だったりしたのだろうか。

 

 それはそれとして、言われた通り弾幕をイメージする。五分ほど掛けて弾幕の形、大きさ、速度をできるだけ具体的にイメージし、霊力で物を作る要領で弾幕を作り出す。すると出来たのは、先の尖った四角垂形の真っ黒の弾幕で、大きさは拳大だ。

 

「へぇ、見た感じスピードタイプの弾幕かしら。いや、随分と弾自体の密度も高いしこれでパワーもありそうね……」

「八幡、本当に初めてなんだよな?」

 

 魔理沙が訝しげに尋ねてくる。ここまでぽんぽんできてしまうと、俺自身本当に初めてなのか若干自信が無くなってくるが、記憶には無いので初めての筈だ。

 

「初めてだぞ。多分先生が良いんだろ」

「いやー、あの指導でここまでできる八幡のほうがすごいと思うぜ」

「んなことねえだろ」

「謙遜するなよ」

 

 魔理沙はそう言いながら、何が面白いのかケラケラ笑っている。楽しそうで何よりだ。

 

「そうだ!私と弾幕ごっこしようぜ、八幡!」

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