終わり無き孤独な幻想   作:カモシカ

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第四話 やっぱり彼は、魔法使いには敵わない。

 あの後女性陣の三人に押しきられ、結局魔理沙と弾幕ごっこをすることになった。ただ流石にスペカ無しで戦うのはつまらないから、ということで三十分かけて数枚スペカを作った。

 

「二人とも、準備は良いかしら」

「おう」

「ばっちりだぜ!」

 

 俺と魔理沙は、霊夢が物が壊れないように張った結界の中で五メートルほど離れて向き合っている。

 

「じゃあ、もう一度ルールを確認するわね。相手が戦闘不能、もしくは降参したら勝利。その時点で攻撃を止めなかった場合、私と紫が止めに入るわ。スペルカードの使用は、ハンデとして魔理沙は三枚まで。八幡は無制限。と言っても数枚しか無いでしょうけど。それ以外は特にルールは無いわ。……それじゃ、スタート!」

 

 霊夢の合図と共に、俺は五つ弾幕を飛ばす。修行の時に作った弾幕だ。五つ同時に魔理沙に迫るが、魔理沙は難なく弾幕で相殺する。それどころかこちらに弾幕を飛ばしてきたので、俺は霊力で日本刀を作り出して弾幕を相殺する。が、流石と言ったところか、俺の日本刀は弾幕を相殺して直ぐに壊れてしまう。

 

「一気にいくぜ!『魔符:スターダストレヴァリエ』!」

 

 初めてスペルカードルールを聞いたときはピンと来なかったが、これならば美しさで競うことも出来るのだろう。そう思わせるほどに魔理沙のスペカは美しかった。大弾と小弾が入り乱れ、空中を埋め尽くさんとする。その光景はどこか神秘的で、星屑の幻想という名に相応しいのだろう。

 だが、まだ開始して一分も経っていない。いくら初心者だとしても瞬殺されるのは勘弁だ。

 

「くっ、『独符:独房』」

 

 回避も相殺も不可能と判断した俺は、すぐさま防御特化のスペカ、『独符:独房』を発動する。これはその名の通り自分の周りに高密度の弾幕で形成された壁を築き、攻撃から身を守るというものだ。その性質上、発動中は移動も脱出も出来ないが、全方位からの攻撃から身を守れるのでプラマイゼロだ。と言っても破られてしまったら意味は無いが。

 幸い、魔理沙のスペカに耐えきった俺は、反撃をするためにスペカを発動する。

 

「お返しだっ、『独符:幻の本物』」

 

 このスペカは一風変わったスペカだ。弾幕の数は魔理沙のスペカとほぼ同じだが、入り乱れる大弾や小弾の半分が幻なのだ。幻の弾幕は相殺される前に消え、本物の弾幕が幻の中から現れる。幻の弾幕と本物の弾幕が展開され、不可避の攻撃となる。だが、その性質ゆえに与えるダメージは小さい。

 

「……今のは効いたぜ」

「どうだか」

 

 確かにダメージは与えたが、そのダメージは微々たる物だろう。ただでさえ初心者レベルの弾幕を、半分に減らしているのだ。例え全弾当たっても倒せるはずがない。

 

「まだ倒れるなよっ、『魔符:ミルキィーウェイ』!」

 

 魔理沙の星形の弾幕でできた天の川が俺に向かって物凄い速さで飛んでくる。範囲はさっきのスペカに比べれば狭いが、その分弾幕の密度が段違いだ。しかも一つ一つの弾幕が大きいので、一つでも喰らったら即刻戦闘不能だろう。

 

「そう簡単に終わるかよっ、『魔槍:ザ・ロンリースピア』」

 

 大きくて密度の高い弾を槍型にし、さらに霊力を練り込んで強化した、世界中の闇を集めたかのようにどす黒い短槍。それを本来は飛ばすものである弾幕としてスペカにし、弾幕自体を掴んで武器にする。そしてこの槍は、自身の霊力の三分の二を使って強化してあるため、ちょっとやそっとじゃ壊れない。

 槍を使って俺に当たりそうな弾幕を叩き落とし、突き刺し、相殺する。もちろん霊力による身体の強化も全力でやってる。それを三十秒ほど続け、漸く魔理沙のスペカが終わったところで、俺は最後のスペカを発動する。

 

「なっ、お前あれを槍一本で乗りきったのか!?」

「けっ!気合いで何とかするんだよっ!……これで終わりだっ!『独砲:バリスタ』!」

 

 さっきのスペカで作った槍を、『独砲:バリスタ』で作ったバリスタを使って打ち出す。バリスタとは巨大な弩で、本来人に向けて撃つものでは無い。だがこれは弾自体も大きいし、本物のバリスタほど速度は出ないから死にはしない。筈だ。

 だがそれを魔理沙が黙って見ているはずもなく、

 

「私だって初心者相手に負けられないぜ!、『恋符:マスタースパーク』!」

 

 撃ってくることは予想通りだ。だが、いくら何でもでかすぎでは無いだろうか。人に向かってバリスタ撃っといて何言ってんだって感じだが、流石にこれは理不尽では無いか。そんなことを考えている間に、魔理沙のマスタースパークは威力と太さを増していき、俺が撃った槍と俺自身を飲み込む。そして、俺は意識を失った。

 

 

 

 side霊夢

 

 

 

 これから八幡と魔理沙が弾幕ごっこをする。本来ならド素人もいいところの八幡を魔理沙と闘わせるわけには行かないのだが、八幡なら勝てずともそこそこ良い闘いをするだろう。博霊の巫女としての勘が告げている。彼は間違いなく強くなる。今は未だ荒削りの原石だが、これから磨いていくとどこまで行くのか楽しみである。

 

「二人とも、準備は良いかしら」

「おう」

「ばっちりだぜ!」

 

 八幡は気だるげに、魔理沙は楽しみで堪らないかのように、それぞれ答える。

 

 

「じゃあ、もう一度ルールを確認するわね。相手が戦闘不能、もしくは降参したら勝利。その時点で攻撃を止めなかった場合、私と紫が止めに入るわ。スペルカードの使用は、ハンデとして魔理沙は三枚まで。八幡は無制限。と言っても数枚しか無いでしょうけど。それ以外は特にルールは無いわ。……それじゃ、スタート!」

 

 そして弾幕ごっこがスタートし、私は紫に疑問だったことを質問する。

 

「ねえ紫、八幡は本当に人間なの?」

「ん~、人間と言えば人間、かしら」

「は?どういうことよ。まさかあんたが改造したとか言わないでしょうね」

 

 あくまで冗談のつもりで言ったのだが、紫に僅かながら反応があった。

 

「別に改造したわけでは無いわ。ただ、私は――」

「一気にいくぜ!『魔符:スターダストレヴァリエ』!」

「くっ、『独符:独房』」

 

 いつの間にか互いに最初のスペカを使用していたようだ。魔理沙のは分かるが、八幡の独房とやらは一体何なのか。

 その答えは直ぐに分かった。八幡は弾幕を攻撃では無く防御として利用しているのだ。二人からは十五メートル程離れているが、ここからでも八幡のスペカに使われている弾の、一つ一つの密度がとんでもなく高いことが分かる。あれほどの密度の弾なら、魔理沙のスペカを防ぎきることもあるいは……

 ……防ぎきった。未だ初めて一日も経っていないのに、魔理沙の攻撃を防ぎきるスペカを、しかも三十分もかけずに作り出したということ。それがどれだけ異常なことか、これまで散々妖怪と戦ってきた私だからこそ、如実に感じる。彼はとんでもない才能を秘めている。それこそ私に匹敵する……いや、それ以上かも知れない。

 

「お返しだっ、『独符:幻の本物』」

「なっ……」

 

 これには驚かざるを得ない。隣の紫も珍しく絶句している。八幡は、実体のある弾幕と実体の無い弾幕を展開したのだ。幾らスペカがイメージによって作られると言っても、それが実現されるかは本人の力量次第だ。そして、あんなスペカを作って、使いこなせる人間がこの幻想郷に何人居るだろうか。いや、妖怪を含めてもほとんどいないかも知れない。しかもそれを数分間で作り、実戦で使える。私は妖怪や神も含め、これ程の才能を持った者を知らない。

 

「……紫」

「ええ。これほどとは、流石に予想外だわ。しかもあの調子なら未だ幾つか残してそうね」

 

「まだ倒れるなよっ、『魔符:ミルキィーウェイ』!」

「そう簡単に終わるかよっ、『魔槍:ザ・ロンリースピア』」

 

 そう言っている矢先に、また次のスペカが発動した。魔理沙の弾幕は最早見なくても分かるが、八幡のは一体……

 八幡は、スペカの発動によって作られた槍を掴み、投げずにそのまま魔理沙の弾幕を迎撃しだした。……ん?あの槍、霊力が練り込まれてるわね。あんな使い方、私だってしたことが無い。ただの弾幕に霊力を練り込み、強力な武器として使う。本当に八幡は昨日幻想入りしたばかりの人間かしら?

 

「なっ、お前あれを槍一本で乗りきったのか!?」

「けっ!気合いで何とかするんだよっ!……これで終わりだっ!『独砲:バリスタ』!」

 

 まじか……八幡は、どうやら本当にあの量の弾幕を槍一本でやり過ごしたようだ。所々掠り傷はあるようだが、魔理沙の弾幕を正面から迎え撃ってあの程度の傷で済んでいるなら上出来どころか満点以上だ。

 

「私だって初心者相手に負けられないぜ!、『恋符:マスタースパーク』!」

 

 しかし、瞬間的な火力で魔理沙に勝つことはできなかったらしく、マスタースパークに槍諸とも飲み込まれる。

 

 ……ん?今、八幡がマスパを正面から喰らって……

 

「ちょ、やばっ……!」

 

 その後大急ぎで八幡に応急処置を施し、結局八幡が目覚めたのは、二日後であった。

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