――オイリオス・ヘリオドールという男は、幼い頃からその類い稀な才能を発揮していた。
僅か4歳で文字の読み書きを完璧に習得。
7歳の頃から始めた護身の為の武術は、たった半年足らずで一流の格闘家をも容易く圧倒する程までに成長。
8歳からは海軍本部の者から『六式』と呼ばれる体術を学び、1年という短い期間で全ての技を完璧に体得。
10歳になると覇気という力を独学で覚え、遂には2年の期間で『見聞色の覇気』、『武装色の覇気』、そして『覇王色の覇気』を自在に扱うという、まさに天才と呼ぶに相応しい男だった。
加えて、その出自も十分に恵まれていた。
800年前に世界政府を築いたとされる20人の王達の末裔、天竜人。
その一族の1人が彼である。
しかし不幸にも、両親は数年前に起こった奴隷達の反乱の際に重傷を負い、そのまま他界。その後、運良く無事であった彼は、特に親交の厚かった天竜人の家に引き取られ、何一つ不自由の無い生活を送る。
だが、彼の性格は他の天竜人から見れば異端であった。
下々民を無闇に奴隷にしたり傷つけたりしない。
息苦しく感じるからと、天竜人専用のマスクをよく外す。
更には、購入した奴隷達には働いた分の給料を支払い、その働きに応じて奴隷から解放する。
以上の事に加え、彼自身の性格が自由奔放な部分が多い為、天竜人の中では彼の行動に疑問を持つ者達も少なくない。
そんな彼には、8人の優秀な部下がいる。
万が一があった際に己が身を守る為という名目で、海軍本部、
彼ら9人はその圧倒的な力から“九頭竜”と呼ばれており、かの“海軍大将”、“王下七武海”、“四皇”にも匹敵する勢力として知られている。
権力と武力を兼ね備えた男、オイリオス・ヘリオドール。
その存在は、この世界を揺るがす可能性を秘めている――。
「――んじゃ、後は任せた」
「行ってらっしゃいませ。ヘリオドール聖」
まるで城のような豪奢な邸宅から執事や侍女に見送られる1人の男。
紫色の外套を肩に羽織り、腰にはきらびやかなサーベルを差している。
背は高く、その全身が鍛えぬかれた筋肉に覆われており、一目見ただけでも相当な実力者だと窺えるだろう。
彼こそが、“九頭竜”のリーダーにして天竜人の1人、オイリオス・ヘリオドールである。
「チハット様、アメージュ様。どうかヘリオドール聖をよろしくお願いいたします。近頃のシャボンディ諸島は悪名高い海賊達が数多く集っているようですので」
「ええ。任せて下さい」
「
そんな彼に付き従うのは2人の人物。
片方は、ヘリオドール聖の長剣に並ぶ程の長刀を背に差した美少年、チハット。
もう片方は、黒色のスーツを身に纏ったサングラスの男性、アメージュ。
2人共に“九頭竜”の一員であり、それぞれ“
「ところで、本日はどちらに向かうので?」
「あー、今日は俺の
「……はぁ、また奴隷を購入するつもりですか?」
「海賊はいらん。モーガニアだろうとピースメインだろうと自業自得だ。だが、ただ拐われてきたってだけの奴隷なら、まあ買ってやらん事もないな、っと!」
そう話をしながら、おもむろにヘリオドール聖はサーベルを抜き、それを突如頭上へと放り投げた。
「さあ、出番だ『フルンティング』!」
「――グルゥウオオアアアッ!!」
そんな彼の呼び掛けに応じるかのように、長剣は徐々に姿を変え、あっという間に唸り声をあげる深紅の翼竜となった。
悪魔の実の1つ、『リュウリュウの実』の幻獣種
元々は彼の家に伝わる名剣『フルンティング』に、とある技術を用いて悪魔の実の力を与えた姿である。
「いつものように背中に乗せてくれ。この2人も一緒にな?」
「グルゥ」
ヘリオドール聖の言葉に頷きながら、その背中へと彼と部下の2人を乗せるフルンティング。
そして3人がしっかりと背中に掴まった事を確認すると、その立派な翼を大きくはためかせ、そのまま空へと舞い上がった。
「では行こうか。まず最初の目的地は、安くて旨い酒と飯が食える所だな」
「またそのような場所に……。他の天竜人が見聞きしたら呆れるどころか怒り狂いますが?」
「いいんだよ。そういう場所の方が気楽だからな。それに、シャボンディ諸島の住民達にとってもそっちの方が接しやすいだろう?」
「……まあ、ヘリオドール聖の行動は既に知れ渡ってますからね」
彼がよく足を運ぶシャボンディ諸島において、その行動や言動は周知の事実である。それでいて、住民達も暗黙の了解としてその事を無闇に広めてはいない。
もしも他の天竜人の耳に届けば、住民達だけでなくヘリオドール聖にも多大な迷惑になると理解しているからである。
「さあ、目指すは1番
「……グルォオオッ!」