Fate/Meltout   作:けっぺん

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悪ィがここから先はオリジナル展開だ。大人しく尻尾を巻いて(ry

しょうがないじゃない、リップが味方なんだもの。
そんな訳で今回で二章終了です。どうぞ。


Five/Two,white heart.

 

 

 五人の、BBと同じ雰囲気を持った存在。

 攻撃してきた一体。長身かつ冷静さの滲み出る女性。

 もう片方は短髪の少女。その手に握られているのは、歪な形の双剣。

 その後方、片方は豪奢な和服を着込んだ幼い少女。ただし彼女からは殺気のようなものは感じられない。

 反対側に立つ漆黒のドレスの少女はノートだ。旧校舎にカレンを抹消しにきた存在。

 そして、宙に浮かぶ巨大な瞳。小さな覗き穴から見つめているかのような、途轍もなく巨大な存在。

 まさか、最初にサクラ迷宮に訪れる前に襲われた巨大な手の持ち主だろうか。

「紹介は必要ですか? センパイ」

「え……」

 良く分からないが、少なくとも彼女らの正体は知らない。

「……ふうん。メルト、貴女は説明してないんですね」

「何をよ。BB、貴女はともかく他の連中は知らないわよ」

「まぁ、不思議でもありませんが。センパイ、彼女らはアルターエゴ。BB(わたし)から分かれた分身です」

「分身……エゴ……」

 つまり、凛やラニのようにSGを基にして作り出した存在なのか?

「彼女らは肉体労働。私は頭脳担当。それなりに強いですよ? 試してみます?」

「……」

 無理に決まっている。五人の能力は常識を逸脱している。

 強い。勝てない。間違いなく彼女らは、僕たちでは勝つ事ができない位置にいる。

「……メルト」

「無理ね。アレは女神の系列よ。普通のサーヴァントとはレベルが違うわ」

「女神……?」

「ハイ・サーヴァント。それを主軸にして作った人工サーヴァントって事よ」

 人工サーヴァントだって……?

 いや、ちょっと待て。それに驚く以上のことがある。

「……メルト、何故それを?」

「……」

「当たり前でしょう。私たちの見た目で分かりませんか? やっぱりセンパイは鈍ちんさんですね」

 メルトとBBは確かに似ている。だが、それはただの偶然だと思っていた。

 もしかして、違うのか? 彼女達が似ていることには、何か理由が……

「では、それを説明しましょうか。ノート」

「御意に」

 言って、ノートは足元から噴き出した黒い魔力に飲まれた。

 そして沈むように姿を消すと、程なくして戻ってくる。

「リップ!」

 ノートの傘を持つ手とは逆の手から伸びる白銀の鎖。

 仄かに光る強靭な鎖は、しかし金属のような無機質さがない。

 まるで生命だ。心臓が鼓動を刻んでいる雰囲気さえある。そして、リップはそれに捕えられていた。

「は、ハクトさん……!」

「くっ……ノート……!」

「そう睨まないでくださいな。すぐに解放しますわ」

 言葉と同時に、鎖の戒めは解放された。リップはすぐに此方に走り寄ってくる。

 リップ。彼女もBBに良く似ている。彼女を呼んだという事は、この二人にも関係があるというのか?

「さて。リップにメルト。率直に言えば、二人は欠陥品です」

「――――」

「アルターエゴ・アーキタイプ。この子たちを作る上での元型、それがリップとメルト。ですが、私は使えない存在はいりません」

 欠陥品。

 使えない。

 その二つは、二人の存在を真っ向から否定するものだった。

 二人の否定に対して感じる腹立たしさは、決して許容できるものではない。

「あら、怒りました? でも、私には勝てない。センパイ、分かってますよね?」

「っ……」

 それは確かだ。

 相棒が好き勝手言われるのは聞いて何も出来ないという状況。

「ハク、落ち着いて」

 メルトもリップも特段気にしていないように見える。

 何故――それは恐らく、BBに嫌悪感を持っているから。

 それが腹立たしさよりも上にあるから今は怒りを露にしていないのだろう。

「なら逃げていいですよ。離れていくアリさんを踏みに行く程暇じゃないですから」

 BBは嘘を言っていない。今逃げてもBBも、周りのアルターエゴなる五人も追っては来ないだろう。

 だが、本当にそれでいいのか?

 僕の任務はこのまま前に足を踏み出し、表側に帰還することだ。

 このまま帰っては結局何の解決にもならない。一体どうすれば――

「BB、侵食が三層に達しました。ここはカズラに任せるのですね?」

「はい。とりあえずの時間稼ぎです。他に良い衛士も見つかりませんし、まだ貴女たちの出番じゃないので」

「……」

 迷宮の三階層が……?

 つまり、まだ表側に帰ることはできないのか?

「カズラ。分かっていますね? 貴女もアルターエゴなのですから、最低限の役目は全うしなさい」

「…………」

 カズラ。そう呼ばれた和服の少女は何も言わずに転移した。

 どうやらBB自身、そこまで彼女に期待をしてはいないらしい。

「さて、後は……ノート、始末をお願いできますか?」

「残酷な。放っておいてもさして問題にならないでしょうに。ですが命とあらば、すぐにでも」

 カズラに続くように転移していくノート。……始末と言っていたが、まさか。

「……BB、何を?」

「ふふ、センパイ? 早く戻らないと、手遅れになりますよ?」

「――――!」

「ハクっ!」

「ハクトさんっ!」

「次に来た時はカズラがお相手しますから。良くしてあげてくださいねー?」

 上に通じているであろう、背後にあった階段を昇っていく。

 思い違いであってほしいが、“始末”に該当する人物。ディーバは既に消滅した以上ただ一人しかいないのだ。

 今まで降りてきた、サクラ迷宮の階段よりも遥かに長いそれを必死で昇る。

「――――ラニ!」

 戻ってきた六階。

 階段のすぐ近くに立っていたラニを見て、一先ず安心する。

 が、

「――」

「まだ、この程度ではありませんよね? たった三丁で倒れる程軟弱なサーヴァントとは思いたくないですが」

 ――従者たる巨人は、傷を負っていた。

 その傷は心臓には至っていない。

 しかし、左わき腹、右肩、左脛に一丁ずつ刺さった槍と剣。それぞれが一級品の宝具だ。

 恐らくは蒐集癖というノートの特性によって集められた、古今東西多種多様な英雄の奇跡たち。

「バーサーカー――ラニ」

「ハクト、さん……」

 ラニの弱い声は震えていた。目の前の光景を見ての事だろう。

 先ほどの戦いで、バーサーカーはフランから受けた打撃以外損傷を受けていない。

 戦闘は十分可能であり、ラニと契約した以上彼は完全なのだ。

 完全の状態で、バーサーカーは戦っている筈なのだ。

「戻ったのですねセンパイ。あのまま突っ込まなかったのは正解でしたよ」

 自らが行っていることが何でもないことであるように、ノートは此方に目を移す。

「■■■■■■――――――ッ!」

 それを隙と見るや、バーサーカーが得物を振るう。

 筋力と勢いに任せただけ――だからこそ、バーサーカーとしての単純かつ最強の攻撃。

「――そうでなくては」

 さぞ嬉しそうにノートは微笑み、反撃した。

「ッッッ」

 体から引き出したように出現した二本の剣がバーサーカーに突き刺さる。

 四、五撃目の攻撃を受け、バーサーカーの動きが止まる。

 そして更に追撃をしようとノートがまたしても宝具を取り出す素振りを見せる。

「ッ」

「く――」

 とにかくそれを防ごうとして展開した盾。

 同じタイミングでラニも術式を紡ぎ、二重の防壁がバーサーカーとノートの間に出現した。

「あら……安っぽい盾ですこと」

 しかし、通じない。

 ノートの細い体から出てきたとは思えない、三メートルはあろう巨大な剣の一振りによって、二つの盾は一瞬にして砕け散った。

 無論それだけで剣は止まらず、咄嗟に回避行動を取ったバーサーカーの鎧を掠めた。

 補助ではどうしようもできない。では――

「――メルト」

「……無理ね」

「……リップ」

「ごめんなさい……私も……」

 助ける事が出来ない。ならば、リターンクリスタルで旧校舎に戻れば。

「無駄ですよセンパイ。私が旧校舎に入れること、ご存知でしょう?」

 ――そうだ。どうにもできない。ここで逃げたところで、ノートが来ようと思えばいつでも来れるのだ。

「まぁ、今回の標的はバーサーカーだけですので。ラニさんについては黙過します。バーサーカーを置いてすぐに戻る選択を勧めますが?」

「……ラニ」

 その場合、バーサーカーはどうなるのか。

 ラニと正式な契約を結びなおしている以上、バーサーカーが消えればラニは――

「……ハクトさん」

 それをラニは分かっているのだろう。

 結局ラニが旧校舎に戻れたところでバーサーカーがいなければ聖杯戦争には戻れない。

 バーサーカーがいなくなればそもそもラニは存在していられない。

「ごめんなさい。ミス遠坂とは違い、私は障害にしかなれないようです」

 つまり、この場で出来る事は目の前の障害を――

 

「――令呪を以て命じます。バーサーカー、軍神五兵(ゴッド・フォース)全解放。標的サーヴァントを討伐しなさい」

 

 完全にこの場で切り捨てると。

 一つ数を減らして二画となっていたラニの令呪が光り、二画目の消費と共に命令を許諾した。

「■■■■■■■■■■■■■■■■――――――ッッ!!」

 強大な咆哮を上げたバーサーカーが振るう得物は先ほどとは違い、ただ力で振られるのではなく命中を第一とした計算しつくされたものだった。

「ふ――」

 その攻撃に対して、ノートは出現させた剣で応戦する。

 細身の剣との打ち合いはバーサーカーが勝り、砕け散った剣を意に介することもなく突き出された刃はノートの首へと真っ直ぐに向かう。

 だが――

「まったく。神殺しの剣に威力で勝るなんて、さすがは猛き狂戦士といったところでしょうか?」

 展開されているのは黄金の魔力。四つの鋭利な黄金で構成された盾のような魔力の中心が、バーサーカーの刺突を受け止めていた。

「覚えましたわ、千変万化なる軍神の矛」

 真っ向から攻撃を受け止められたバーサーカーに、ノートは大斧による一閃を刻んだ。

 しかし、倒れない。標的(ノート)を討伐しろという令呪の命令が働いているのか、絶対に目標を打ち果たさんとバーサーカーは咆哮する。

「巨人と言ってもただ背丈が高いだけでは効果は発揮しませんか。お気に入りの初お披露目だったのですが」

「■■■■■■――――――――ッ!」

「まぁそれは置いておくとして……宝物を使い潰すのは私も惜しい。それに、後幾つ耐え凌がれるかも分からない」

 斧を仕舞いこんだ後横に伸ばされたノートの細い腕。

「なので、終いにしましょう。できれば――」

 それはノートが襲い来る狂戦士の打倒を確信しえる一手の始まり。

 腕から浮かび上がってくる泡沫のようなもの。それはノートから離れるなり変貌していく。剣。槍。矢。

 今までの様な宝具ではない。一つ一つに特別な効果もなく、戦いを可能とできるだけの“ただの”武具でしかない。

 だが、驚くべきはその量。ノート固有の能力なのか。尽きる事無く生み出される無限の武器。

 土塊の形を変えて、無駄を削り、一つの作品に作りかえる。端的に言えば、それだけだ。

 ただその土塊が、作品が、殺しを可能とする武器になるだけの話。

「もう()()、欲しかったのですが」

「■■■■■■■■―――――――――ッッ!」

 一斉に襲い来る土塊の武器を、バーサーカーは回避も出来ずに受ける。

「バーサーカー!」

 悲痛な声を上げるラニに、絶えず続けていた咆哮を止めたバーサーカーは目を向けた。

 視界に映ったマスターに何を思ったのか。バーサーカーは再びノートを見ると宝具である矛を変形させる。

 弓へと変わった宝具。武器の雨の中で、尚も矢を番え、最大の一撃を放たんと引き絞る。

 ディーバを一撃で倒しせしめた、バーサーカーの宝具の最大展開。今回は令呪の力も働いている。その威力は先の比ではない。

 砲の攻撃の引き金となっていた手に剣が刺さる。しかし、まるで痛覚を遮断しているかのように意にも介さない。

 マスターを守るため。或いはただの、令呪の命令。いずれにしてもサーヴァントとしての役目を尊守すべく、限界を超えてもバーサーカーは諦めることはない。

「■■■■■■■■■■■■――――――――――ッッ!!」

 体はまるで剣山だった。

 目も片方潰れ、一つ残った右目だけでノートを見据える。

 乾坤一擲。必中無弓。バーサーカーがノートへと放った矢は、襲い来る武器を押しのけて進む。

 今までのバーサーカーの攻撃とは比べ物にならない、真のマスターの魔力供給と令呪の命令を以ての最後の一撃。

 

 

 爆風と共に広がっていく光に目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

 煙が晴れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けた時、先と同じように盾を展開したノートは健在。

 

 

 

 そして、静かになった戦場からは巨人の姿は消えていた。

 

「バー、サーカー……」

 崩れ落ちるラニ。しかし、令呪は消えない。

 サーヴァントを失ったマスターは、このムーンセルにおいて生存権を失う。

 だが、

「どうですか、センパイ。サーヴァントを失ったマスターは死ぬ。そのルールは月の裏側では適用されないのです」

「ッ……」

 ラニが消えないという事実に安心するも、ノートは校舎に潜入できるというアドバンテージがある。

 あのバーサーカーを無傷で打ち倒すという圧倒的戦闘力。

 その気になれば、校舎のサーヴァント全てを倒しマスターの抵抗を出来なくすることも出来るのだ。

「ご安心を。他のサーヴァントは迷宮に来ない限り手を出しません。今回は見せしめという事で」

「……どういう事だ?」

「迷宮に潜るのはセンパイとメルトリリス。他の者が入ってきた場合は命の保証はしません。まぁ、センパイも油断はしませんよう。迷宮にいるのは、私だけではありませんので」

 言うべきことを言い終えたのか、ノートは転移した。

『――ハクトさん!? 大丈夫ですか!』

「レオ……」

 どうやら通信が戻ったらしい。焦った様子のレオの声が聞こえてくる。

『リップは!? 何ともない!?』

「は、はい。大丈夫です」

 白羽さんは心底安堵している。当たり前だが、リップを相当心配したらしい。

『映像も受信できなくなったので何があったかと思いましたが、無事なようですね。ではそのまま。すぐに帰還の術式を組みますので』

『……って、あれ? ラニ、バーサーカーは……?』

 凛の言葉に、返すものはいない。

『……そんな……バーサーカーさんの反応が……迷宮に存在しません』

 震える声で告げられる桜の結論。

 迷宮にいる以上サーヴァントを傍に置くのは当たり前であり、そもそもそれがない時点で有事であるのは確定的。

 そして桜は上級AIとして、バーサーカーが迷宮にいないことを確認した。

 この場で起きた出来事の一部始終を見ていなくても、それだけで悟れるだろう。

 バーサーカーはノートにより倒れたのだ。

『っ……』

 誰かの息を呑む音。状況を知る者は、僕とメルトとリップ、そしてマスターであるラニのみ。

 新たな敵の存在。それに、皆はどんな反応をするだろうか。

 脱出戦線はまだ続く。そして難易度は更に上がる。凛とラニ(これまで)より遥かに強い敵を相手にするのだから。




アーキタイプ(自分で作ったとは言ってない)
別にミスリード狙ったわけではないんでちょっとしたヒントでした。

そしてバーサーカーさん、お疲れ様でした。
皆生存で平和ルート? その幻想をぶち殺す!

明日、明後日と構成の関係で二分裂した茶番を上げ、三日後に本編三章を投下します。
四連続更新だぜ……ん? 三日後って何かあったような。

↓茶番に置こうかどうか迷ったけどやっぱり本編の後書きに置いた方が自然だよな予告↓
「……アーサー王って、大変だったのね」
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