円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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前回の投稿にてスキルが全てEX評価であることについて多くの意見があったため補足をさせていただきます。

料理と心眼は唯一無二かつ信仰によるバックアップを受けているためEXですが、陣地作成と道具作成のEXである理由は固定スキルだから必要なので類似しているだろうブレイクスルーを無理矢理当て嵌めたけど、そもそもにして厨房でしか役に立たないのにどう評価しろと? と座のほうが評価を放棄したため評価不可能としてEXとさせていただきました。

平行世界なのに信仰が届くのかと思うでしょうが熱心な信奉者はこちらにもいたりするので
……

多数のご意見はあるでしょうがここではそうなのだと緩く受け止めていただければと思っています。

最後に言えることは、全部マーリンって奴の仕業なんだよ。




料理人とゆみとたて

 やはり香辛料こそ神。

 胡椒は食えない金よりも価値があるのは当然の事実だ。

 

「ふむ。

 成程」

 

 生前は遂に縁がなかった香辛料との再会に興奮しつつ料理をして居るのだが、何故かその背中を観察されている。

 そいつの名前はエミヤというアーチャー。

 正直、俺はこいつが苦手だ。

 いきなり殺されかけたこともそうだが、その後も何かにつけて観察してくるのが不気味なのだ。

 まあ、殺されかけたことは惚れた女を泣かせた俺が悪かったんだしちゃんと謝罪を受けたので水に流しているが。

 

「さっきからなんなんだ?」

「いや、円卓の厨房を取り仕切っていたというのでどれ程の腕前か興味があってね」

 

 いいかげん決着を付けようと尋ねてみればエミヤはあっさり理由を答えた。

 

「別に大したものでもないだろう?」

 

 ブリテンでなら料理の化身とか言われていたが、それはあくまでブリテンでの話だ。

 信仰によるバックアップとかいう身の丈に合わないものを差っ引けば研鑽を重ねた現代のシェフに比べ然して腕が立つとは思わない。

 

「謙遜の必要はあるまい。

 貴殿の研鑽は見る価値のあるものだ」

「そいつはどうも」

 

 賛辞には聞こえない誉め言葉にそう返しつつトマトをたっぷり使ったビーフシチューを煮込む。

 

「で、本当に聞きたいことはなんだ?」

「たいした話じゃないさ。

 貴殿は平行世界のアーサー王を支えていたそうだが、そちらのアーサー王の最期について少しな」

 

 ああ、つまり平行世界では惚れた女がどんな最後だったか知りたいのか。

 アーサー王がいないタイミングを狙った辺り聞かせたくはないが知っておきたいってあたりか。

 そもそも性別が違うはずなんだが……まあいいか。

 

「俺も伝聞きだが、隠居先で老衰だったそうだぞ」

「隠居しただと?

 後継者はまさかモードレッドか?」

「ああ。

 短命を克服して後継者候補に認めて貰った後ブリテン国内の不穏分子を一掃した功績でアーサー王から戴冠したぞ」

 

 戴冠式では一日中ひたすら料理を作り続けていたから見る暇もなかったけどな。

 

「そういやその時にはギャラハッドと結婚してたっけ」

「は?」

「なんでも聖杯探索で死にかけていたのを助けた時に一悶着あってそのままくっついたそうだが式は挙げなかったんだよな」

「……」

 

 エミヤの顔がまるで作画崩壊した漫画みたいになっとる。

 

「ち、因みにだ。

 トリスタンは」

「アーサー王が隠居する際に奥さんと旅に出たな。

 大分前には同じ名前の昔の女と重ねていたことを詫びてその後は仲睦まじくやってたぞ」

「それは何処の世界の話なんだ」

 

 感情が一周したらしく真顔になってるエミヤ。

 

「い、いやまだランスロットがいる。あいつはそう変わる筈が……」

「ランスロットなら不貞の責を自分で去勢することで償ったからギネヴィア姫共々許されたぞ」

 

 ガクッと膝から崩れ落ちるエミヤ。

 

「これは確かにアルトリアが泣く事態だ……」

「なんかすまんな」

 

 そうなったのも俺がアルちゃんに色々口出ししたのがアーサー王の耳まで届いたせいみたいだし。

 

「いや、貴殿は何も悪くない」

 

 そう言うとヨロヨロとアーサー王の時のように力無く立ち去るエミヤ。

 

「あの、今すごく辛そうなエミヤさんが出てきたんですがなにかあったのですか?」

 

 そこに入れ替わるようにマシュ・キリエライトが食堂に入ってきた。

 エミヤがアルトリアを泣かせたとガチギレして殺しに来た時に全力で守ってくれた彼女には、俺に厨房で働かないかと誘ってくれたケイと同じぐらい恩がいっぱいあるのだ。

 

「それがさ」

 

 自分が居た円卓が物語とはかけ離れて円満だったことにショックを受けたらしいと告げるとマシュは困った様子で笑った。

 

「それは確かに難しいですね」

「エミヤはアルトリアと恋仲だしな」

 

 なにより今更どうしようもないしな。

 

「それで、マシュは何か食べていくか?」

 

 時間的に昼食には少し早いが連日の種火集め? で疲れているみたいだし甘いものとか用意してもバチは当たるまい。

 

「いえ、まだお腹は空いていないので後でお願いします。

 ですが飲み物を頂きたいと」

「何がいいんだ?」

「蜂蜜と生姜のお湯割りをお願いします」

 

 珍しいものを頼むな。

 

「好きなのかお湯割り?」

「いえ。

 ですが、料理長の顔を見たら何故か飲みたくなったんです」

 

 何ででしょう? と首をかしげるマシュの後ろに俺は懐かしい男の影を見た。

 ……そっか、お前もこっちに来てたんだな。

 

「分かった。じゃあとっておきの一杯を用意してやるよ」

「お願いします」

 

 そう言うと俺は生前何度も彼に頼まれ作った少し薄味のお湯割りを作るのだった。

 




 料理長の中ではアルトリアとアルちゃんは同じ顔の別人だと本気で思っています。

マテリアル風スキル解説

料理EX:対象の食材に対して最適な調理方を実施できるスキル。
 本来ならB+だが唯一無二かつ信仰により大幅修正を受けている。

なおエミヤが有した場合Aを与えられる。

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