円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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ある日の会話

知人「ところで料理長時空の聖杯戦争ってあったのか?」
自分「(艦これもの書きつつ)最後は○○○時空だぞ」
知人「書けよ」
自分「え?」
知人「なんで書かないんだよ?」
自分「料理長出ないし、ほのぼのしないし」
知人「愉悦あるじゃねえか」
自分「いや、愉悦目的じゃ……」
知人「カルデア編は全部ほのぼの系じゃなくてアルトリアフルボッコ愉悦祭りだろうが!!」
自分「えー」

そんなわけで無理矢理書かされました。

とはいえ手抜きはしてませんけどね。

しかしこれじゃ終わる終わる詐欺なんだが……


『あちら側』のFate/Zero

 人類最後の防波堤ことカルデア。

 他のカルデアと違い異なる世界線の人類史に刻まれた特異なサーヴァントを擁するこのカルデアで新たな特異点がまた修復された。

 

「大丈夫ですかシロウ」

 

 修復を終え、心身ともに疲弊しきった様子の青年をそれ以上に疲弊しながらも労る少女。

 青年の名をエミヤシロウ、少女の名はアルトリアという。

 共に人理修復に力を貸すサーヴァントである。

 

「大丈夫だアルトリア。

 ああ、私は大丈夫だ。

 私よりも君こそ大丈夫なのか?」

「シロウに比べれば私の方こそ大丈夫ですよ」

 

 彼等が修復しに向かった特異点は20世紀末の冬木市。

 エミヤにとっては生前アルトリアと出合い想いを重ねあった思い出深い故郷であり、アルトリアにとっても大きな転換を得た地である。

 それだけを聞けば彼等が心身ともに疲弊しきっていることに首を傾げるだろう。

 だが、彼等が成した修復は冬木市の壊滅を起こすこと。

 かつて起きた第4次聖杯戦争の結末を正しく破滅させることが彼らの任務であった。

 だが、二人が疲弊しきったのは其だけではない。

 寧ろ……

 

「爺さん……あんたどれだけ疫病神だったんだ?」

「痛い痛い痛い。過去の私が痛すぎる」

 

 冬木市が特異点となった原因が『衛宮切嗣の不在による歴史変動』であったことだった。

 慕っていた義父の不在がここまで大きな波紋を呼んだことに頭を痛めるシロウ。

 アルトリアはアルトリアで第4次聖杯戦争に参加していた当時の自分の痛々しさを直視する羽目になり精神的にダメージを受けてしまった。

 と、そこに同じカルデアに味方するサーヴァントが通りがかる。

 

「お、父上にエミヤじゃん。

 もう戻ったのか?」

 

 何処をとは言わないが豊かに成長したアルトリア似の女性がそう声を掛ける。

 

「む? ……モードレッドですか」

 

 一般的にはアーサー王を討った反逆の騎士と名高い人物であるモードレッドだが、このモードレッドは異なる世界線にてアーサー王から正しく王位を継承しブリテンの崩壊をもっとも犠牲の少ない方法で成したのだ。

 故にアルトリアはこのモードレッドが何重にも苦手である。

 そこに正しく女性として成長できたことが含まれているのにカルデアの面々は気づかないふりをしてあげている。

 

 閑話休題

 

 気まずそうなアルトリアを尻目にモードレッドは頭の上で腕を組む。

 組んだときにたゆんと揺れたなにかに対しては殺意がわくので無視する。

 

「それはそうと此方の第4次がどうなったかちょっと興味あるから教えてくれないか?」

「待ちなさいモードレッド」

 

 然り気無い爆弾発言にアルトリアは食い付く。

 

「モードレッド、貴女があちら側の第4次に召喚されたのですか?」

「そうだぜ?

 つっても聖杯は即行で解体になったからあんまり戦わなかったけど」

「待て」

 

 いくら世界線が違うとはいえ当人であるエミヤからしたら悪夢としか言えない台詞につい声が固くなる。

 

「何があった?

 というより爺さんとイリヤはどうなったんだ!?」

「あー……、まあいいかな」

 

 空気からしてまた発狂されそうと察したモードレッドだが、言わなきゃ言わないで余計に拗れそうだと判断し素直に白状することにした。

 

「俺が第4次聖杯戦争に召喚されたのは父上の代理だったんだよ」

「代理?

 つまりそちらのアルトリアは」

「まだ生きてるぜ。

 死んだら座に捕らわれて料理長に正体ばれるってアヴァロンに逃げたんだよ」

「そちら側の私は何をやっているんですか……?」

 

 騎士として潔く死んだことを勝ったと愚にもならない思考を片隅に抱きつつ呆れ果てるアルトリア。

 

「で、そん時のマスターが随分拗らせててな。

 まあ、妻は生け贄になるし負けたら娘まで同じ目に遭うってなってれば多少同情もしたんだけどさ」

 

 

~~~~

 

 

「テメエ、いい加減にしろよ?」

 

 召喚されてから暫く、まるでいないものとして自分を扱う切嗣にモードレッドは完全に頭に来ていた。

 最初は我慢した。

 パスを通じて知り得てしまった彼の道程に限界まで摩りきれていたアーサー王を重ね、同情から多少は妥協してやろうと思った。

 だが、切嗣が娘のイリヤと接している姿を、その娘の辿る末路を想像してモードレッドはキレた。

 

「止めてセイバー!?」

「お前もお前だアイリスフィール!!

 こういう奴は甘やかしたら甘やかしただけ勝手に暴走するんだ!!

 そうやって一人で暴走した挙げ句最後は全部巻き込んで大爆発するって少し考えれば分かるだろうが!?」

 

 合理的に、ただ合理的な機械に徹して成せば全てが解決するなんて事はあり得ない。

 人は天秤には従わない。

 かつて崩壊寸前だった円卓でトリスタンが漏らした台詞だが、今ならその通りだと同意する。

 自分は機械に徹したアーサー王に反発し爆発する前に料理長に諭されたから立ち止まれた。

 そうして立ち止まって、足りないものを補うために多くの回り道をしたから最後は父上から全てを託され人としての幸せも手にいれて満足して死ねた。

 あそこで立ち止まらねばきっとブリテンを道連れに父上を殺していただろう。

 だからこそそんな末路を引き起こそうとしている切嗣が赦せなかった。

 

「……」

 

 しかし切嗣は一切反応しない。

 自分の理想を叶えるため妻の命を賭け代に乗せ、それでも足りないと言われたから娘まで質に入れて漸く揃えた時点でテーブルに立った切嗣に聞く耳などありはしない。

 

「……そうかよ」

 

 そうまでするというのならモードレッドもまた手段を問うのを止めた。

 

「何をするのセイバー!?」

 

 モードレッドの凶行にアイリスフィールが悲鳴を上げる。

 

「決まってんだろ?

 降りるんだよ(・・・・・・)

 

 アーサー王より賜った選定の剣を自らの首に当てるモードレッド。

 

「話しもしねえ話も聞かねえ。

 そんな奴に付き合う義理なんて騎士にも無いんだよ」

 

 元より聖杯に託す願いなど無い。

 ただアーサー王を呼ぼうとしていたから代わりに来てやっただけ。

 強者との戦いに後ろ髪を引かれはするがこいつの下ではそれも碌に叶いはしないだろう。

 

「じゃあな」

「待て」

 

 このまま戦わずしてリタイアするなどあり得ない。

 令呪で縛ってもいいが使いどころとしてはあまりに不合理。

 故に相手に合わせることが一番合理的だと判断し切嗣は対話に付き合うことを選んだ。

 自分を見ていることを確かめたモードレッドが剣を下げると、最短で終わらせるため切嗣は言葉を発する。

 

「君は僕に何を言いたいんだ?」

 

 想像できる範囲全てに一言で返す用意をした切嗣の問いにモードレッドは問いを放つ。

 

「お前の願いを教えろ」

「必要ない」

「ならサヨナラだ」

 

 再び剣を握り直すモードレッドに切嗣は舌打ちをした。

 

「……世界平和だ」

「は?」

「この世から悪を無くし恒久的平和を実現する。

 それが僕が聖杯に託す願いだ」

「…………」

 

 その答えに呆気に取られるモードレッド。

 その反応にやはり英雄なんて戦争を煽るだけの存在かと改めて侮蔑の感情を抱き打ち切ろうとした切嗣だが、それより早くモードレッドは口を開いた。

 

「あー、うん。いい願いだとは思うけどさ」

 

 だからこそ間に合った(・・・・・)

 

「その平和はどんな過程を辿って(・・・・・・)なんだ?」

「…………」

 

 それは切嗣がどうやっても気づけない、いや、気付いてはいけない思考。

 

「何をいっているんだ?」

 

 憎悪さえ籠めて睨み付ける切嗣にいぶかしがりながらもモードレッドはその疑問をぶつけた。

 

「そっちこそ何を言ってんだよ。

 聖杯は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺だって国を率いた身だ。

 その願いが叶うなら悪くはねえと思う。

 やり方さえマトモならな」

 

 その事は聖杯から刻まれた基礎知識にも含まれている当たり前の常識だ。

 故になんの気兼ねもなくモードレッドは方法について尋ねただけ。

 

「…………」

 

 だがそれは、壊すことでしか何も成せなかった男にとって一番聞いてはならなかった問いだった。

 

「…………どうしよう?」

「あ?」

 

 悲願の達成を望んでいた。

 だけど過程が分からなかった。

 だから、

 

「どうしたら、世界は平和になるんだ?」

 

 縒る辺に過程を求めた衛宮切嗣(殺戮兵器)は崩壊した。

 

 

~~~~

 

 

「まあ、そんなことがあってその後マスターは聖杯を完成させる事を諦めて妻と娘を生かすために……って、二人共、大丈夫か?」

 

 膝から崩れ落ちた二人を心配するモードレッドだが、二人は聞いちゃいなかった。

 

「形すらなしていない爺さんの夢を追い続けた私は一体……」

「ああ……漸くわかりました。

 私がキリツグに感じていた不快感は同族嫌悪だったんですね。

 うふふふふふ……」

 

 死んだ魚のように濁った瞳でブツブツ呟き続ける二人。

 どう見ても再起不能である。

 

「……どうしよう?」

 

 その後、主戦力であった二人の穴を埋めるためカルデアは総力を掛け奔走する羽目になり、第6特異点の手前でこちら側のモードレッドが召喚されるまで続くのであった。 




ということで愉悦出来ましたでしょうか?
先に読ませた知人はマジ愉悦とほざいてマジキチスマイルかましてたけど。

ちなみにケリィ達はプリヤ時空に行きました。

……プリヤ勢まで書けとかいわないよね?

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