円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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ある日のことでした。

いつものごとく星四鯖に恵まれず爆死を繰り返していた私に愉悦が提案してきました。

愉悦「星五引いたらこのネタ書こうぜ」
俺「人のネタ帳勝手に読むなや」
愉悦「いいから書けや」
俺「聞けよ」
俺「……じゃあ残り九個の石でマーリン引けたらな」

召喚➡金エフェクト➡金魔術師➡マーリン

俺「(゜д゜)」
愉悦「おめでとう」ゲス顔

そんな訳でどうぞ。

それといつものごとく捏造設定多数です。


人理修復後もカルデアで頑張る料理人
料理人とおとうさん


 人理は修復された。

 

 そうして世界は再び回り始め余り役に立つこともなかった俺も現世に余り未練はなく『座』に帰ろうかと考えていたんだが、そう簡単にお役御免とはいかなかった。

 理由は女神ロンゴミニアドこと獅子王(アルちゃん)である。

 現在の槍アルちゃんは女神としての神性が殆ど眠っている状態らしい。

 同じ女神のアルテミス(オリオン)曰く原因は分からないが俺という存在が楔となって人の枠に留まっているとのことらしく、女神ロンゴミニアドを封印するためにも還るに還れないという謎の事態に落ち着いた。

 序でに俺から離れたくないとヒロインXことアルちゃんとガレスもカルデアに残っている。

 平行世界の、しかも存命中のアーサー王が二人も在籍しているカルデアって……まあそこは責任者に任せよう。 

 

 そんな訳で人理修復後も残留し今日も今日とて厨房にて日々の活力源をと料理に勤しんでいた俺に相談事を持ち込んできたものがいた。

 

「娘が塩対応なのが辛い」

 

 彼の名はランスロット。

 人理が修復された後もカルデアに居残ったサーヴァントの一人であり、生前からの知己の騎士である。

 といってもそいつは平行世界のなんだがな。

 

「自業自得だろ」

「何故だ!?

 私はただ生前叶わなかった父としての役割を果たしたいと」

「で、マシュ嬢ちゃんとマスターのデートに乱入したと」

 

 罪状を語れば明後日の方向に顔を背けるランスロット。

 ランスロットは息子であるギャラハッドが霊器を託したマシュ嬢ちゃんを実の子として見ており、件が先日起きた第三次ランスロット抹殺未遂事件に繋がる原因であった。

 因みに第一次は召喚直後にアルちゃんと槍アルちゃんとガレスを侍らす俺(ランスロット視点)を始末しようとして三人に擂り潰された。

 第二次は擁護しようが無いので省くが……ほんと、俺以外のサーヴァントって頑丈だよな。

 

「なあランスロット。

 お前さんがギャラハッドに悔いがあってせめてマシュの嬢ちゃんをという気持ちは分からなくもないが、だからって年頃の娘のデートの邪魔をするのはやり過ぎだろう?」

「し、しかしだ」

 

 そう前置くとランスロットは血の涙を流しかねん程に悔しそうに漏らす。

 

「どうして狂戦士の私とこんなにも扱いが違うのだ……?」

 

 このカルデアにはランスロットが二人居る。

 一人は目の前のランスロット(ダメ親父)

 そしてもう一人はマシュ嬢ちゃんに並んで冬木からの最古参のバーサーカーとして顕現したランスロット。

 オルレアンでは敵側にもバーサーカーのランスロットが居て大惨事になったらしいが余録はさておき、同じランスロットながらマシュ嬢ちゃんの態度は天と地ほど扱いに差がある。

 バーサーカーに対してはマシュ嬢ちゃんは信頼できる仲間として柔らかい対応をするのに対しランスロットに対しては表情筋が全く仕事をしない。

 それはもう見事な塩対応である。

 そんなランスロットに思ったまま感想を漏らしてしまった。

 

「主に付き合いの長さと、特に女癖の悪さが改善されているから?」

「貴様!?」

 

 つい生前のままに駄目だしした俺に激昂したランスロットだが、直後にその首を二本のエクスカリバーが挟み込んで拘束した。

 誰がやっているのか言うまでも無いがヒロインX(アルちゃん)である。

 

「料理長の時間を借り受けながら貴様、その握った手をどうするつもりだった?」

 

 自分からはその表情は伺い知れないがまるで地獄の釜から漏れ出したような低い声に俺の背筋も凍る。

 

「お待ちください王よ。

 確かに気を昂らせたのは事実ですが彼に害を為すつもりはありません」

 

 まるでシザーマンのように剣をシャリシャリ鳴らせるアルちゃんに冷や汗をダラダラ流しながら必死にそう言い繕うランスロット。

 

「私は貴方の騎士王ではありません。

 それと……次はありません」

 

 そう言うとまるでハサンのように溶けるように消えるヒロインX(アルちゃん)

 

「……念のため言っとくが、お前さんに気安いのはアルちゃん云々じゃなくて、生前『向こう側』のランスロットと気安くしてたからだからな」

「そ、そうか」

 

 ヒロインX(アルちゃん)を警戒してかぎこちなくそう納得を示すランスロット。

 そしてすぐにしかしと首を傾げる。

 

「どうしてそちらの私は貴様と懇意にしていたのだ?」

 

 そう言うのも仕方ない。

 当時の騎士と厨房番での立場の違いなど言うまでもなく大きく隔たっていたし、ある件があるまで俺に対するランスロットの評価は腕は確かだが、だからといって特に関するに値しない厨房役としか見られてなかった。

 散々っぱら酒を掻っ払っといてそれな辺りは時代的価値観の違いがあったとはいえ当時は流石に思うものはあったな。

 

「たぶんあれだな。

 アグラヴェインと和解させてエレイン姫から逃がしてやったからだろ」

「……………………はぁ!?」

 

 暫し固まった後天井に突き刺さる勢いで飛び上がるランスロット。

 まさに身体能力の無駄遣いだ。

 

「どどどどどどどどうやって!!??」

「取り敢えず落ち着け」

 

 見事なほど取り乱すランスロットを嗜めることしばし、漸く落ち着いたのを見計らって俺は言った。

 

「先に確認しておくんだがランスロット、お前さんアグラヴェインを斬ったか?」

 

 アーサー王物語曰く、ランスロットはギネヴィア姫との不貞を明かしたアグラヴェインを激昂のままに斬り殺したという。

 その問いにランスロットは無言で首肯し、俺はつい溜め息を吐いた。

 

「ほんと、円卓は地獄だな」

 

 どちらにも関わりが深くかつある程度腹の中まで知っているだけにこちら側の酷さを余計に痛感してしまう。

 しかし今はあまり関係無いので脇に置きつつ俺は言う。

 

「ともあれだ、と言ってもとりたてて大したことはしちゃいない。

 エレイン姫の時は本人が諦めるまで匿っただけだし」

「……あれから匿うことが出来たのか?」

 

 当時を思いだしガタガタ震えながらそう漏らすランスロット。

 いや、うん。気持ちはよくわかる。

 

「ああ。

 俺の居たキャメロットには厨房の地下に食糧庫を設けておいてあってな。

 そこに隠れてやり過ごしたんだよ」

 

 保存の関係上あまりやりたくはなかったが、あの様を見ちゃあそうも言えなかったよ。

 

「しかし災難だったな。

 歳の差40だったか?

 そんなんに見初められたっつうのは素直に同情するよ」

 

 そう言うと言わんでくれと沈んでいく。

 姫といって若い女性を思い浮かべるだろうが甘い。

 姫というのは王の娘を指すものであり例え40、50を過ぎていようと后にならなければ当時は全て姫なのだ。

 因みにエレイン姫の来訪の後、ガウェインは仲間を見つけたとそれまでの友好に加え同族意識を芽生えさせ、色漁りに不快感を募らせていたあのアグラヴェインでさえ同情したのだ。

 若くて美しい姫と結婚した筈が、ある日婆になったらそら逃げるわ。

 そんな事情もあってランスロットのそれまでの風当たりは大分和らいだのだ。

 因みに来訪はギャラハッドが結婚した祝いを理由に本心は今度こそランスロットを拉致監禁するために誘拐しに来ていたらしい。

 

「そ、それで、アグラヴェインとの和解とは一体……?」

 

 勤めて思い出さないようにしつつ声を震わせるランスロット。 

 

「それは私が説明しましょう」

 

 いつの間にか俺の隣に座ってたアルちゃんがそう口を開く。

 その手にはさっき作ってたロールケーキが丸ごと握られている。

 

「料理長、以前私が身分を偽って相談したことを覚えてますか?」

「ああ。

 よく覚えているよ」

 

 ……って、待てよ?

 あの頃はなんも知らずにアルちゃんに餌付けしていたが、よく考えたらアーサー王として食った上で俺のところに食いに来ていたわけだから、つまり他の奴等の倍の量をいつも食っていたってことか?

 

「アルちゃん、後で槍のアルちゃんと一緒に説教な」

「なんでですか!?」

 

 どんなに厳しい状態でもせめてアルちゃんにはと色々切り詰めていたのに、そういう真似をしていたのなら反省させねばならない。

 

「で、相談といっても結構な回数を重ねてたからどれと言われなきゃ思い出せねえぞ?」

 

 弁明の隙間もない事にこの世の終わりのように絶望するヒロインX(アルちゃん)を信じられないものを見る目で見遣るランスロットを尻目に俺がそう問い返すと、ヒロインX(アルちゃん)は煤けた状態で口を開いた。

 

「ええと、あれです。

 料理長が不倫の解決策を薦めたその次の相談です」

「……ああ、あれか」

 

 そう言われて俺は記憶を振り返りすぐになんの事か思い出した。

 旦那公認の妻の不倫を穏便に済ませる方法として去勢させることを提案した翌日、アルちゃんはまた相談を持ってきた。

 曰く、ある性別を偽っていた女性騎士が主君からの奨めでさる貴族の娘を娶ることになってしまったそうなんだが、その後、娘は騎士の同僚と懇ろな関係になってしまったそうなんだ。

 そして今回の問題は当人たちではなく騎士の従者に当たる若い騎士。

 彼は同僚の騎士を非常に嫌っており、どうにか説得しなければ事態は悪い方向に転がるやもしれないと解決策を俺に求めたのだ。

 今なら女性騎士がアルちゃん、貴族の娘はギネヴィア、同僚はランスロットで従者はアグラヴェインだと気付けているが、当時の俺はそんな事とは露知らず思い付いた案をそのまま提示した。

 

「彼はなんと?」

 

 食い付いたランスロットに対し嬉々として饒舌に語るヒロインX(アルちゃん)

 

「料理長はこう言いました。

『その従者に貴族の娘の状況を正しく説明させて理解させたらどうだ?』と。

 なので私は後日、マーリンの協力の下言われた通りアグラヴェインにギネヴィアの不貞の原因を理解してもらいました」

「あの野郎が協力したのか?

 つうか、アグラヴェインは大丈夫だったのか?」

「それはもう見たこともないほど協力的でした。

 アグラヴェインは……その、可哀想なことをしてしまいました」

「何をしたんだ野郎は」

「マーリンは、ギネヴィアの立場を白昼夢という形で追体験させました」

「普通に屑じゃねえか」

「ええ。

 彼の話では夢の中で私がアグラヴェインにパーシヴァルとの婚姻を強要し、その後どうにかしようとガレスに相談しているうちに恋に落ちる展開だったそうです」

 

 登場人物全員顔見知りとか間違いなく悪夢じゃねえか。

 しかもガレスはアグラヴェインの実の妹だからその展開は洒落であっても許される次元を踏み越えてんぞ。

 

「その後、私は自身が女であることをきちんと明かし、ランスロットも重い罰を受ける事でとけじめを取らせるので二人を咎めぬよう頼みました。

 先の悪夢もあってアグラヴェインはけじめの内容如何でという条件の下に二人を見逃すことを了承しました」

「……けじめの内容とは?」

 

 とてつもない経緯があるとはいえあのアグラヴェインが折れたことに緊張しながら先を問うランスロット。

 その様子はどこか生前の禍根が晴れる場に立ち会うような期待に満ちている。

 

「………ランスロットのアロンダイト()を手ずから折れと」

 

 ちょっと顔を赤くしてそうアルちゃんは言った。

 

「グハッ!?」

 

 聞いた途端ランスロットは血を吐いて崩れ落ちた。

 

「お、王に裁きを下していただいた事は良いのですがそれはあまりに……」

 

 その顔は苦悶に満ちながらも恭悦に染まるという非常に気持ち悪いものだった。

 突如がばりと身を起こすと焦った様子でアルちゃんに詰めより出した。

 

「ギネヴィアは、ギネヴィアはどうなったのですか!?」

 

 ちょっとしたズレで顔がくっつきそうな程詰め寄る鬼気迫るランスロットを押し遣りながらアルちゃんは困った顔で答えた。

 

「表向き子を成せなかった事を理由に離縁させました!?

 だから離れなさい!!」

 

 そう言いながらランスロットのアロンダイト()を蹴り飛ばすアルちゃん。

 

「はぉぁっ!!??」

 

 男としてこれ以上ない激痛にランスロットらしからぬ情けない悲鳴を上げて悶絶する。

 

「……大丈夫なのか?

 なんか、今際の際みたいな痙攣してるんだが?」

「ランスロットなので問題ありません」

 

 寧ろ折れてしまえばいいと吐き捨てるとアルちゃんはそのまま立ち去ろうとする。

 が、そんな事は許さん。

 

「料理長、何か?」

「何か?じゃないだろアルちゃん?」

 

 惚けるアルちゃんの肩をがっしり掴み逃がさないようにする。

 どさくさ紛れてうやむやにしようたってそうはいかんよ。

 

「アルちゃん、正座するか1週間ガウェインを専属料理担当にするか好きな方を選「私が愚かでした」

 

 いっそ清々しい態度で土下座するアルちゃん。

 

 その後、ヤバイ痙攣をするランスロットを背後に正座しながら俺に説教されるアルちゃんと槍アルちゃんの姿は多くの者達に目撃されたという。


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