ムシウタ - error code - 夢交差する特異点   作:道楽 遊戯

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タイトルまんま伏線張ったあの敵との対決回。本当は一万字前後に収めたかったのに増えたよ文量
遅筆に研きがかかっていますが読んで貰えれば幸いです


夢壊す魔眼 "登場人物&用語解説"

厄介事って追い討ち気味にいらっしゃるのは何故なんでしょうね。

 

主観に基づく短絡的な視野狭窄、または只の邪推かもしれないが、こればかりは疑問視せざるを得ない。

キノの知る原作知識の史実と明らかにズレた乖離が起きている。

その名は

α(アルファ)|。

始まりの虫憑きであり、世界さえも終らせかねない災害である。

そのαの虫が今、無秩序に解放されている。

本来なら三年以上先に起こる出来事である筈なのにだ。

 

由々しき事態である。

 

Q、どれぐらいヤバい?

A、世界がヤバい。

これで説明完了する。

 

ちなみに解放された原因についてはわかっている。

正直わかりたくなかったけど。

行方不明中の元がつく円卓会の没落者。

キノが蹴落とした会員メンバーだった男がαの居場所を突き止め、眼を逃がしたのである。

 

私は悪くなくね? 逃がしたのは元円卓会の男だし。

例えソイツを追い詰めたのが私であって、結果没した元円卓会の男が血迷った行動の末、世界滅ぼす要因を取り逃がす羽目になったとしても、私に責任ナッシング。

うん、私悪くないな。

頼む誰か、私のせいじゃないって言っておくれ。

 

責任追及の話は後に回そう。

ごちゃごちゃ説明したけど実の所、それほど緊急かつ切迫した状況ではない。

世界を滅ぼし兼ねないとされるαであるが、どうやら赤瀬川七那の追跡時と同様、まどろみの状態であるらしく危険度は著しく下がっている。

特に破壊行為をする訳でもなければ、目的を感じさせることもなくフラフラ行動し、宙にプカプカ浮かんでは意味もなく、さ迷ってるだけ。

これで切羽詰まった世界の危機なんて嘘やん。

まどろんだまま、空を遊泳してるα。

言い換えれば怒りをチャージする日はまだまだ先の話なのだろう。

 

本体を隠した倉庫も再度、隔離閉鎖し直すことに成功しているらしい。

何故曖昧な表現なのかと言うと番人、いやオークショニアだっけ?

サザビィとクリスティに面識作らないようにしているからだ。

直接ではなく間接的な報告のみ受けている。

あの人たちがαを売り物にし、史実通り動いてくれると都合がいい。

そうすれば正しい迎え役がαを引き取りに現れる。

一号指定、杏本詩歌。

ぶっちゃけ、αのパンドラの箱を開けて無事なのは一号指定でも彼女しかいない。

円卓会バブル崩壊後の破滅の負債。

そんな厄介だが放置できない爆弾を彼女に押し付けようとしている。

これは非常にデリケートで重要なイベントだから、下手な乖離は起こしたくない。

今回のαの失態で学んだ事だが、私たちが彼らに接触することによる影響力は計り知れない。

慎重に行動し過ぎて損することはないのだ。

 

始まりの虫憑きα。

彼について私が知る事実はそう多くはない。

けれど彼こそ虫憑きの真相を知る重要なキーパーソンなのは間違いない。

どのような動機と経緯を得て彼が虫憑きになったのかは明らかでない。しかし始まりの三匹が誕生する前から虫憑きとして登場していた謎の存在。

 

真の始まりとは一体何なのだろうか。

虫憑きの誕生は始まりの三匹のせい。

始まりの三匹の誕生は魅車八重子のせい。

いや、それはキノが知ってる範囲での解釈に過ぎない。

そもそも始まりの三匹の誕生は魅車八重子のみに原因があったという訳といえばそうではない。

不死の研究に取り憑かれた魅車八重子の父親。

それを支援し続けた円卓会議。

実験体となったそれぞれ不死の適性を秘めた被検体。

そして父を影から操って研究を行っていた魅車八重子。

 

そしてーーα。

 

始まりの真実とは何か。

この世界で生きて物語を物語として知ることができなくなったキノ。

一人の登場人物となったキノには本を読むように全ての真相を知る事ができなくなってしまった。

キノは全知全能の神ではない。

だからこそ個人として知覚できることしか知ることができない。

 

ーーだけど真実を知らずにいるつもりはない。

 

物語を知ることは困難になってしまった。

だけど関係ない。それでも知りたいのだ。

困難だからといって知らなくてもいい理由にならない。

いずれは全てを知ろうと思う。

物語として知ってることも、知らないことも。

全部明らかにしてこの世界を知り尽くしてやる。

手探りであっても遠回りでも着実に真相を目指して辿り着こう。

だってそれはきっと物語のクライマックスじゃん?

エンディングに私たちはお邪魔して何が悪い?

それでハッピーエンドになって何が悪い?

最高のエンディングを物語の主役たちばかりに独り占めさせるなんて勿体ない。

私たちがおいしい所を掻っ攫ちゃおう。

物語の乖離? 知ったこっちゃない。

だって私は虫憑きなんだぜ。

夢の為なら全力を尽くすのだ。

変化を畏れちゃ前に進めない。

 

で、話を戻るのだけど。

このα解放の事件。原因もわかっているし対応もきちんとできている。

残った問題が逃げ出したαの眼の対処だけである。

全力のイチならばまず負けることはないだろう。

箱の中で眠る災害以外のαの脅威度は一号指定を上回らない。

つまりαの解決の目処が立っている。慌てるほどではない。

 

が、これは正攻法の場合だ。

私たち円卓騎士団の最高戦力の投与で事態の解決方法は簡単。力業で捩じ伏せるだけで終わるのだから。

だけど待って欲しい。

これはーー好機ではないのか。

倒すべき強敵α。

それを前にしてキノは思う。

感じてしまった劣等感。何も出来なかった無力感。

最強の虫憑きたちの戦闘で逃走するしかできなかった現実。それは戦術的意味合いよりも敗北の色が濃かったのはキノだけの感慨。

あの日キノは余りにも無力だった。

己の弱さを思い知らされ今までにない力への渇望を抱かされるたあの日。

そして払拭の為の丁度いい試金石がそこにある。

 

現状、キノが戦力バランスを考えず問答無用に倒せる敵がいなかった。

特環に属する相手は下手に手をだせなかったし、始まりの三匹を相手にするには手札が足りてない。

精々、無所属の野良虫憑きとの戦闘位だが、それとて勧誘目的を踏まえると強行に出て倒す必要は存在しない。

一切相手を気にせず、躊躇なく倒す必要性があって、手応えのある都合のいい敵。

その条件に適した相手がαであった。

 

危険はある。

はっきり言って手に余る格上の敵だと認めている。

αは強い。

能力も虫の耐久力も断トツでトップクラス。

かっこうが苦戦し、世界に滅びを与えかねないとされる強さ。

しかも自分一人で戦う以上仲間からの支援は許されていない。

幾つか安全策と保険を掛けるつもりだが、キノ一人で挑まなければならないのだ。

 

強力な戦力であるイチはキノに対して過保護だ。

こんな身勝手は許してくれないだろう。

だからこそ一計を案じて内密にしながらイチにはすぐに追ってこれない距離と時間を必要とした。

万が一の際には結局イチを頼ることになるだろう。

彼の存在そのものがαに対する切り札で保険。

別行動させつつも応援に迎えに来れて更に簡単には辿り着けない距離がベストだ。

最終手段として必要とされる戦力でありながら、戦闘の為に遠ざけなければならないイチ。

コトが終われば絶対怒られるよねコレ?

頭が痛くなるぜ、物理的にな!

 

αは正体が定かではないが一応分離型の複数操作系に分類される虫憑きだ。

逃げ出した眼はその一つに過ぎず、一部を倒した所で欠落者になることはない。

これを理由に遠慮なく殲滅行為を手段として選べるのだけどハッキリ言おう。それでも理不尽に強い。

具体的な号指定は明確にされていないけど、たった一体の眼を相手に一号指定かっこう、二号指定月姫、三号指定火巫女が出番ったこともある。

多少盛ってる要素があるけど、セーブしたかっこうでは決め手に欠け苦戦したのは事実である。

本気出せれば楽にとは言わずともスムーズに勝てただろうけど。

 

とにかく手強い相手、強者である。

相手にとって不足はない。......本音言うと勝てるか微妙、もしかしたら無理っぽい。

最悪イチ頼みに円卓騎士団勢力を使い殲滅する。

キノだけでも最終手段を使えば相討ちに持ち込むことができるかもしれない。

出来るならそうならないよう願いたい。マジで。

良くて欠落者、悪ければ死亡だからね。

αの能力特殊型と相性悪いんだよな。大喰いが司書さんの領域破壊した時に使った能力がαだったし。

 

軽口叩いているけど、本当はわかっている。

これは賢い選択ではない。

こんな無理する必要なんてどこにもないのだから。

だけど理屈抜きに行動したっていいじゃないか。

悩んで、迷って、間違っても、それをしちゃいけないなんて否定する権利はない。

私だって悩んで、迷って、間違う。

だけど立ち止まりたくないんだ。

何故と問われれば意地と返す。

私は虫憑きになって夢を叶える為に努力してきた。

一之黒守子と交渉し、円卓会に取り入り、円卓騎士団を創設した。

だけどそれだけ。

思い知らされた。キノでは入り込めない領域。

強者だけしか立ち入れない絶対領域。

花城摩理、かっこう、師子堂戌子、そしてイチ。

同じ戦場に立つだけで無事に生還できるかわからない強者だけの世界。

その世界にキノは圧倒的に無力だった。

それが、それだけがーー

 

ーー赦せない。

 

負けることが

勝てないと思わされることが

足手纏いになるのが

肩を並べられないのが

 

ーー赦せない。

 

だから戦う。

 

赦せないことが赦せるように。

赦せない自分を赦せるように。

強くなる為に。

 

理由があるなら、戦え。

キノより強いあのホッケースティックの少女は教え子の虫憑きにこう言った。

 

戦え!

戦え!戦え!戦え!戦え!戦え!戦え!戦え!戦え!戦え!

 

虫憑きの運命に抗うこと。それは即ち戦うことなのだ。

逃げ出さずに戦う。

 

そしてキノは、勝つ。

 

覚悟と決意を胸にキノはαを見上げる。

 

ーー虫憑きの戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

ソレはある日暗闇の中で光を得て、飛び出した。

光差すほんの僅かな亀裂。大きさギリギリの隙間を一度通ると自由へと解放される。

暗闇を抜けると海に出た。

懐かしさに感動し、更に外へと動き始める。

 

浮かび上がったソレは海を越え、山を越え、人の住む街へと進もうとする。

明確な目的はなかった。

ただ自由を満喫するのが楽しかった。

 

ソレは解放感を味わい上機嫌のまま、地上を俯瞰しながら飛行を続けていた。

そして自由を過ごす日々は唐突に終わる。

ソレは突如、異変に気がついた。

 

懐かしくも危険な存在の匂いを嗅ぎ付ける。

記憶にはない。というよりソレに備わっている記憶は曖昧であり、思考が正常に働いているのかも怪しい。

だが懐かしい記憶を喚起する、そんな匂いがした。

その匂いの本体が近づいてくる。

それが何なのかはわからないけど目的は自分なのだとソレは直感した。

そしてそれが自分にとって害なす者であることも。

それでもソレは待つことにした。

 

懐かしい何かとの再会を期待して。

それに出会えば何かわかるかもしれない。そんな願望もあり、懐かしい何かの姿を確認したくなった。

出会うことで戦うことも考慮しながら。

それでも思い出すことで得るものに淡い希望を抱いて。

 

待つことどれくらいの時間が掛かったか。

短いようで長くもあるような時の流れを感じ、懐かしい匂いの本体と出会いを果たす。

 

しかしその姿を見て疑問を浮かべた。

 

その懐かしい匂いをする人物は、まだ子供と呼べる少女だった。

髪は女の子としては短めで、白いフードに紺のジーンズと動きやすそうな格好。覚悟を秘めた顔つきは快活な笑顔が似合いそうだ。

やはり少女はソレが知る人物ではない。

だが懐かしい匂いは少女のものだとはっきりとわかった。

そしてその匂いは薄く。まるで少女に宿した残り香がソレに勘違いを錯覚せたようである。

 

ソレは知る人物に出会えなかったことに僅かばかり落胆を覚えた。

おそらく少女はソレの知り合いに関わった存在なのだろう。だけどソレの知る人物本人でなければ意味がない。

気落ちしたことで少女に対する興味が薄れた。

また空を飛び回り、匂いの正体である人物を探すのもいいかもしれない。

そんな思考に埋もれ、地上に立つ少女の存在を忘れ、かなりの高度を保ったまま空に浮かんでいた。

 

次の瞬間、視界に少女が真正面からソレと対峙していた。

 

「こんばんわ、α」

その名前は懐古を呼び起こす懐かしい呼び名だった。

不敵な少女の笑顔がソレを捉えていた。

 

「そしてーーさようなら」

宙に浮かぶソレに対し、少女もまた蒼き輝きを足場にして宙に浮かんでいた。

 

「蒼渦、最大」

目の前に巨大な群青の螺旋が覆い尽くしソレをそのまま呑み込んでいった。

 

 

 

挨拶は最大火力を叩き込むまでが挨拶です。

説明しよう!!

既に感知して居場所はわかっていた、山を越える前のαの眼に遭遇。

不意討ちで先手を獲るつもりが何故か待ちかまえていたので、さあ大変。

感知能力αになかった筈だけど......あっ、赤瀬川七那にディオレストイの気配を察していたような、なかったような。

私アレじゃん? アリアの元宿主じゃん?

その気配を察知されたらバレバレじゃん?

 

じゃん語で脳内推理により真相解明してヤッバイと一人盛り上がって所、いつの間にかこちらに向いていたαの意識が逸れていた。

 

今ですね、孔明。

 

中国史の偉人がヤレとお達ししてくれた気がしたので、蒼歩で空間の足場作って全力で駆け上がり、階段を全速力で駆け登ったような息切れを我慢しつつも、αの前まで接近。

そんで、こんにちは死ねの会話して能力の最高火力で沈めさせようとした所在であります。

 

経緯はこれでわかったよね。

それではピンチについてもわかって貰おうか。

 

キノの能力である、疑似ブラックホール。

その全力は、αを仕留め損ねました。

ピンチッス。

死ぬかも知れないッス。

ってか硬いし反撃喰らって痛いしヤバい。

 

そろそろ真面目にやらんといかん。道化してても反応してくれる敵じゃないし。

お巫山戯で死んだら元も子もない。

 

さ、戦闘、戦闘。

真面目に戦闘。

駄目だ切り替えはもっとちゃんとせん、じゃなくてしないと。

アレだ。

 

ーーこの間僅か三秒。

 

ん、切り替わった。じゃあ、やりますか。

 

 

 

 

予想以上に硬い手応え。

全力の一撃で完全に消滅させるにはもっと時間を掛ける必要性を感じる。

キノの最大火力の攻撃をαの眼によって熱線を放つことで打開された。

連動してアリジゴクの脚が一本吹き飛ばされてキノに精神的ダメージを蓄積する。

開幕の一撃としては余りに重たい一撃を貰ってしまっていた。

 

「普通にピーンチ」

一筋縄じゃいかない。

不意討ち程度では沈まない強敵の対峙にキノは笑う。

そうでなければ意味はない!

空での機動力の性能はαの眼に分があるので、地上戦へと場を移す。

重力のまま落下し、群青の監獄から抜け出したαの眼を睨み付けた。

地面に叩きつけられる瞬間、落下地点に生み出された蒼渦に圧縮された空気の解放により衝撃の緩和に成功し、しなやかな猫のように四肢は使って着地する。

背中越しに青い光がキノを覆った。

 

「ヤッバ!」

咄嗟に横に転がる。土に汚れてもお構い無しだ。

するとキノが居た場所に紺碧の光の柱が降り注ぎ、高熱で地面を焦がした。

上空からのαの眼の攻撃である。

 

「おっおっオオーー」

立ち上がって距離を取ろうとするキノであったが、αの熱線は途絶えることなく仰角を変えながらキノに追い続ける。

背を向け一目散に逃げ出すキノだが、傾きごとに加速する熱線とのデスレースに逃げられそうにない。

少しでも気を抜き、脚を挫けば即死亡。

減速しても背中越しの高熱に焼かれて死亡。

横に逸れるにもその一瞬が命取りになるほど余裕がなかった。

 

「それなら、それでーー蒼渦解放っ」

進行方向に蒼渦を作り到着時にその中で圧縮されていた空気を放出する。

横殴り気味に吹き飛ばされたキノは減速することなく光線の進路から弾き出される。

そして直進する熱線の攻撃が大地に一条の焦げ後を残した。

山肌の森林すら関係なく焼き払い、何もない空間だけの通路が完成される。

喰らっていたら間違いなくキノは焼け死んでいただろう。

 

「まあ、当たらなければいい訳だし」

引き攣りそうな顔を誤魔化してポジティブな言葉を絞り出した。

内心死にかけて冷や汗をかいたキノである。

αの眼の攻撃の的にならないよう動き木々に隠れて様子を伺った。

眼と眼が合った。

またもや嫌な汗をかく。

αの眼が青色に発光したのを確認し、キノはその場から全力で退散した。

紺碧の熱線が遅れて木々を焼き払った。

 

「そういえば気配バレバレでしたねー。しかも始まりの三匹専用。攻撃力高くて感知能力まであったら反則過ぎる、ちきしょー」

予想以上に悪い流れが生じていた。

上空のアドバンテージはαの眼にある。

視界の悪い地上戦に持ち込むことでそのアドバンテージを覆そうにもまさかの感知能力で裏目に出た。

キノも空中戦ができなくもないが遮蔽物がない空中だとαに分がある。

熱線の攻撃を走り避けながらも、考え戦術を練り直す。

 

一方的な現状はマズイ。危険だけど接近してもう一度攻撃を仕掛ける。それしか方法ないしね。

やり過ごすのは無理だと判断し反撃を選択するキノ。

アドバンテージの考えも一度捨て去る。取れる手段が余りにも少なかった。

足場の悪い山地から能力で生み出した足場へと駆ける。

目視するのも難しい透明に近い蒼の階段を走った。

直線的な軌道だと熱線の被害が怖いので螺旋状を描くようにして進む。

 

「坂ダッシュ&デスレースとか拷問なんですがっ」

群青の輝きが空間を支配していても地味な活用法しかできないキノは足を動かしつつも文句をこぼす。

無論αの眼はそれを見過ごしたりしない。

自身のいる場所に近づこうとする敵に熱線を放ち迎撃する。

キノは熱線を宙から落下して足場を作り直したり、蒼渦解放の圧縮した空気を利用しして直撃を免れていた。

接近するキノに対して不動にいるαの眼は熱線の攻撃だけを繰り返した。

 

「次は今までとは一味違うぜ。能力ーー完全開放」

やっとのことで接近したキノがαの眼に渾身の一撃の用意をする。

これまでキノは特殊型でありながらもアリジゴクの一部を出現させてしまう能力がネックとなっていた。

だから思い切って発想の逆転をする。

 

ーーどうせ一部出現してしまうのなら全部出してしまおう。

特殊型は実体が存在しない為物理攻撃を介さない。

しかし能力を全力を扱う際、実体化させてしまうとその道理は通用されない。

キノの場合、通常時でも物理攻撃の影響を強く受けているが、こうして完全に虫を実体化させたのは今回が初である。

リスクが余りにも大きいのだ。

身体の一部ならまだしも全体を実体化するとなると弱点を剥き出しにするのと同義である。

それでもキノは特殊型のアドバンテージを完全に捨てることでより強力な攻撃力を求めた。

 

「蒼渦連鎖」

一本脚を失った群青のアリジゴクがαの眼の前に完全に姿を現した。

それぞれの脚に巨大な渦を生み出しαの眼に襲いかかる。

αの眼は蒼の光を収束させた。

既に学習したようにキノの攻撃を熱線で撃ち破ろうとしているのだろう。

後ろに控えるキノをアリジゴク諸とも。

まるでガンマンの早撃ち勝負。

先に相手を殲滅した方が勝利の危険な賭けだ。

 

「ーーなんて真似しないよ。本命はこっち」

今にも熱線を放とうしているαの眼前から強力な螺旋を束ねたアリジゴクが消え去り、替わりに金属の球体が現れる。

ピンの抜かれた手榴弾はαの眼前で爆発した。

 

「ーー」

爆炎の中αの眼は無傷の姿で生還する。

近接の手榴弾でもダメージを与えることは叶わない。

生半可な攻撃はそれこそ意味をなさないのだ。

曇った視界の中αは熱線を打ち込み煙を吹き飛ばす。

しかしキノの姿はそこになかった。

カッと軽快な音と共にαの眼の上に何かが乗り移った。

 

「下へ参りまーす」

茶目っ気のある声が響いた。

キノは乗り立ったαの眼を下へと蹴りつけるように跳躍する。

本来ならその程度ではびくともしない筈のαの眼が何かに引っ張られるかのように下方へと堕ちていく。

そこに待ち構えていたのは、長い脚を天に向けた群青のアリジゴク。

周りの空間にアリジゴクの代名詞とも言える奈落のような巣が渦巻いていた。

 

「堕ちろ。α」

完全に不意討ちとなったキノの攻撃はαの眼を引力でとらえて離さない。

遂にアリジゴクの脚に抱かれて蒼き破壊の螺旋に呑み込まれた。

 

「やったか」

二度目の落下を体験しつつも今回の成果に期待を抱かずにはいられないキノ。

群青の螺旋は確かにαの眼をボロボロに崩し消滅へと追い込んでいた。

硬質な表面を少しづつ剥ぐように削れ朽ちていくα。

アリジゴクに拘束されているその身体がグニャリとゴムのように引き伸ばされた。

そして二つに分離する。

 

「っ、まさか」

アリジゴクに絡まるαの眼は砕け散り、新たに誕生したαの眼は、アリジゴクから解放される形で宙に浮かんでいた。

ギロリと眼球に睨まれたキノは漸く膠着していた自身に気がついた。

 

ーー簡単に覆されたっ。

落胆するにしてもこうも衝撃を受ける未熟さを実感しながら、穏やかではいられない。

今までの努力を嘲笑うかのような理不尽なやり直しをさせられているのだ。

これを軽く受け流す余裕はキノにはない。

 

「あれで決めきれなかったのかよ!」

キノが少なからず危険な賭けをした代償は無意味なものとなった。

綱渡りでどこまでやれるか、消耗が身体を鈍らせ始めたキノにはわからない。

αの眼はキノの脅威としての認識を入れ替え、積極的な殲滅へと行動に移す。

キノもまた、これ以上の増殖を阻止すべく殲滅を行動する。

 

「ああ、もうっ。最初から仕切り直し! 次で決めてやる」

キノとαの眼の戦闘は第二ラウンドへと突入した。

地上からαの眼を睨め付けるキノだが月が陰った時その姿をしっかりと捉えることに失敗する。

油断していたキノを目掛けてαの眼は接近勝負を仕掛けてきた。

 

「おうふ。マジですか」

地上戦に持ち込むことができたのはキノにとって好都合だが突っ込んでくるのは承諾しかねる。

はっきり言って特殊型のキノには接近戦など言語道断なのだ。

同化型のイチやかっこうのような肉弾戦は無理。

 

「こっちくんな。わりと真剣に」

レーザーみたいな熱線を躱した後に体当たりまで対応できるかは運ゲーである。

実際青い熱線の後横に転がったキノに特攻かましてくるαの眼を蒼渦解放で辛うじて回避に成功した。

これを何度も繰り返す体力はキノにはない。

息が上がり頭も重くなりつつある。

長期戦はキノをどんどん不利へと追い詰めていく。

 

「......仕方ない」

諦めの溜め息を吐いた。

劣勢に抗う気力を失ったかのようにキノから力が抜けていく。

急に立ち止まったキノにαの眼は突っ込み体当たりをする。

諦めを覚えた獲物へと容赦のない一撃が迫る。

 

「仕方ないよね」

そこにアリジゴクの脚が待ち構えていた。

蒼渦にαの眼は掛かった。

それがその生物の生態なのだ。

待ち構えて罠を張り続けている捕食者の性質。

疑似ブラックホールに押し潰されるのに抵抗し熱線を放とうとする所で開放される。

能力を解除したキノが気落ちしたように立っていた。

 

「だから、円卓騎士団を頼ろう」

自力での討伐は無理だと判断したキノ。

αの眼を消滅にはキノの能力で時間を要する。

その間にαの眼の抵抗で突破されてしまうのならその前に解除すればいい。

それならば少なくともキノのアリジゴクにダメージはない。

この手段がまさにキノが単独での討伐を諦めた証拠になる。

今のキノには時間稼ぎ以外無理する必要はない。

 

「あー、あー。キノだけど通信オッケー?」

今まで戦闘の邪魔になるので回線を切っていた通信機に話しかける。

すぐに耳元から怒声が聞こえた。円卓騎士団情報班に任命された信也君である。

が戦闘中であることを考慮して切り替わったように冷静な説明があった。

曰く、イチを応援に向かわせているとのこと。

キノの戦闘を発覚した円卓騎士団の情報力の甲斐あって迅速な対応がされていたようである。

有能な部下ですね。

後αの眼の異常な強さと宿主が確認できないことから成虫化して暴走した虫だと誤認しているらしい。

好都合なので否定はしない。

 

「イチ以外足手まといだから応援の必要なし。私一人でも時間稼ぎ位なら十分対応できる。そう言うことだから通信切るね。バイバイ」

再び耳元がうるさくなる前に言葉通りに通信を切って戦いに専念する。

かなりスムーズに対応してくれた情報班の信也君には脱帽です。

上司に口うるさいのがなければもっとよかった。

 

「どのみち後で色々怒られるのだから後回しにして欲しいよね」

ともすれば開き直る気満々のキノである。

お小言を耳から流してαの眼と闘牛士よろしく回避、カウンター、解除を繰り返す。

決定的なダメージを与えられないものの戦闘のイニシアチブを握ることには成功した。

このままイチの到着を待つばかりである。

 

「ま、そう上手く進まないよね」

αの眼の硬質な表面がまたしても歪みはじめる。

一つの塊を無理矢理見えない何かに引き伸ばされてたかのように歪みが大きくなり分離しようとしている。

αの眼の増殖が始まった。

受動的なカウンターを狙っていたキノもこれを阻止すべくαの眼へと向かう。

 

「お邪魔します」

隙があるから好機に見えるが結構速く分裂が進む。

攻撃が間に合わなければ二体のαの眼から攻撃を受ける状態になり一気に窮地にたたされる。

アリジゴクが蒼い渦を生み出しαの眼を挟む。

ミシミシ音を立てながらも増殖は止まらない。

 

「うげっ。増えた」

片方はひしゃげながらも消滅せず生き残り、分離して誕生したαの眼は殆どダメージなく切り離された。

もう無理ぽ。

早速瀬戸際にいるキノだがそれも当然のことだ。先まで苦戦していた相手に少しばかり上手く立ち回ろうがこちらの方が不利なのは変わらない。

αの眼の攻撃力はキノではまともに受けることは不可能だし、防御力は堅牢すぎて歯が立たない。

無理すればダメージを与えられるがその無理が祟れば即死亡。

そしてトドメの増殖能力。

時間稼ぎを一人で十分って言ったのは本当の事はない。

勝てる見込みはイチしかない。

それでもキノ以外の円卓騎士団メンバーでは相性の問題もあり手に負えないのだ。

 

「このままだとイチが来る前にどんだけ増えるの」

懸念は多い。αの眼一体なら苦戦しても総力を結集すれば殲滅は難しくない。

一号指定かっこうは多くの世界的危機を救ってきたと言えるのは彼以外の虫憑きがその危機を解決できないからだ。

それを省みるとαの眼一体程度特環の二号指定の上位局員数名で挑めば何とかできなくもない。

数という物量の力は歴然だ。しかしαの眼はその物量を押し返す能力を持っている。分裂による増殖能力。

今も隔離された施設で増殖し続けているαの眼。

その全てが本気で災害を齎そうとすればどうなるのかなんて知りたくもない。

 

「私はどれだけの数捌けるかな」

増え続ければイチとは言え危険。それならキノはもっと危険だと言える。

数が増えれば脅威は増す。そして時間稼ぎとは言えそれまでキノが耐えきれる保証はない。

許容量を越えればキノの敗北は必須。

撤退は最初から考慮してなかったから無理だろう元々放置して逃避は許されていない。

 

二体となったαの眼がキノの周りを迂回している。

まだ終わりじゃない。ダメージを受けた一体を潰せば数は減りキノの負担は最初からになる。

 

「第二ラウンドはこっちの攻撃をやり直しさせられた。今度はそっちの増殖をやり直しして第三ラウンドへと洒落混もうじゃないか。ーーα!」

キノが啖呵を切って手負いのαの眼に走り出す。

二つの魔眼がキノを向かい撃つべく青く光を束ねた。

蒼の閃光と螺旋が山を照らした。

 

 

 

 

どれだけの時間が経ったのだろう。

倒すべき敵はαの眼。

最初の目的は殲滅。次が時間稼ぎ。次は増殖の阻止。次は増えた個体を減らすこと。

そうやって目的を変更する度にキノは追い詰められた状況にいて目標達成が困難になる程次策の手段を取らざるを得なくなっている。

 

幾度やり直ししているのだろうか。

こちらの成果は殆ど意味をなさない。

αの眼は完全に消さない限り増殖は止まらず消耗すら見えない。それに対してキノは体力も精神力も削られ、傷を負うごとに身体も鈍くなり終わりの見えない作業に心までも折られそうだった。

繰り返される行為に同じ映画のフィルムを終わったら最初から見直ししているような既視感すら感じる。

 

分裂の隙を突くのは困難だった。

何時どのタイミングで増えるのかもわからないαの眼を相手に休憩すらなく攻撃の回避に専念しているキノは対応が難しい。

例えば距離。増殖の兆候があった時キノはαの眼の攻撃を逃れる為に離れつつあった。

同化型の虫憑きなら強化された脚で距離を詰めることも可能かもしれないがキノはすでに疲弊しつつあり特殊型の虫憑きだ。

それでも何とか阻止すべく攻撃を伸ばし対応するが威力が不十分で増殖を許す結果になっていた。

 

そして僅かばかりダメージを負ったαの眼を叩き、数を減らしたと思えばまた分裂を繰り返す。

破綻は時間と共に表れた。

キノの処理能力の限界。

 

今やαの眼は闇夜の空に四体浮かんでいた。

そして、キノはーー

 

「はあ、はあはあっはあっ」

過度な運動で上がった動悸をおさえながも懸命に生存に全力を尽くしていた。

四つものαの眼の動きを目視していたら判断が遅れる。そう考えたキノはこれまでよりも感知能力に意識を割いて攻撃の前兆を読み取り回避能力を向上させている。

 

「ックーー」

後ろから渦の力場が揺らめいた。

咄嗟に斜め横の地面に転がり熱線を避ける。

αの眼は時々感知しにくくなる。その時動きが鈍く大事になることは少なかったが位置を把握し難く時に予知しない場所から反応があってキノを窮地へと追いやった。

そして一度避けて終わりじゃない。

残り三体ものαの眼がキノに向けた青い熱線攻撃を撃ち放つ。

上空に足場を作り跳んだ。その瞬間に鉄の球体を地面へと投げ転がす。

最後の手榴弾が三体のαの眼を巻き込み爆炎をあげる。

 

「ゲホッッ。っガハ」

腕力も落ちているのか目標より手前に落ちた手榴弾の煽りを受けてキノは後方へと飛ばされる。

身体のどこかを打ち付けて手足を擦りむいた。

キノは見た目服も破けておりあちらこちらに裂傷がたえない。

辛うじて眼だけに意志が灯っているのはまだ絶望をしていない証拠である。

 

「ッッイチなら、こんなことに負けないもんね」

最後の希望を口にする。

でもそれに縋るには消耗が限界に近すぎた。

最終的なαの眼の問題はキノは気にしていない。

イチを信頼しているから、この程度の数のαの眼ならなんとかしてくれると信じている。

でもキノの安否まではどうなるかわからない。

自分自身で始めて招いた自業自得。

αの眼を甘く見ていた自分への罰なのだろうか。

 

「ああ、納得いかねー」

招いた結果次第でキノはただの愚か者になる。

けど生き延びれば何かを得ることができるかもしれない。

どうなるかはキノ次第だ。

足掻いた先の結果で自分の行動を評価しよう。

爆炎に巻き込まれなかったαの眼がキノに突撃してくる。感知能力をフルにしているキノは油断なく備えた。

そして、その結果ーー

 

安堵に胸を撫でおろした。

 

「αーー」

キノは遥か頭上で破壊的エネルギーを光らせているαの眼に言葉を語りかける。

そこに一切の緊張はなかった。

 

「試合には負けたけど」

青く発光した眼球がギロリと睨み付けいるがキノはお構い無しに話し続ける。

気安くそして笑みすら浮かべて。

 

「ーー勝負は私の勝ちだ」

勝利を宣言した。

そして放たれようとしていた破壊の熱線を収束していたαの眼は真っ二つに引き裂かれる。

分裂の兆候はなかった。

そして増殖はしなかった。

その断面は綺麗に垂直を描いておりαの眼は分断していた。

 

ナニカが地面へと降り立った。

かなりの高所から飛び降りたのか着地の音は大きく、土埃を巻き上げる程激しい勢いだった。

αの眼を刻んだ大剣を片手にその人物はゆっくりとキノへと顔を上げた。

 

「キノ」

「イチ」

お互いの名を呼び合い無事を確かめる。

イチの顔には安堵と怒りが浮かんでいた。

キノの顔には後ろめたい苦笑いと疲弊が浮かんでいる。

眼が合えば言いたいことが伝わった。

キノを責めるイチの視線とそれを受け止めるキノの視線。

イチの心配が伝わった。だからキノは言葉にする。

 

「ごめんなさい。イチ」

「反省しろ」

謝罪の言葉に間髪入れずお小言言われた。

まあ謝って看過されることじゃないけどちょっとそのお顔は怖いとキノは思う。

長く語り合うにはまだ危険が去っていない。

αの眼はまだ三体も残っている。

イチは同化したムカデの大剣を上段に構えてαの眼に向き直った。

 

「サポートはいる?」

「休んでいろ。ーーすぐに終わる」

キノに背を向けたまま何よりも頼もしく言葉を発する。安心感がゆっくりキノを緊張から開放してふらつき木に寄り掛かる。

疲労困憊のキノは安心感に包まれた途端に倒れ込みそうになった。

まだ戦闘が終わっていないのにだ。

イチの頼もしさもあるがキノが限界寸前であることも原因だろう。

近くに人の気配を感じた。

 

「キノ君、じゃなかった。副団長」

「オッス。清太さんお疲れ様」

「君の方がね」

ボロボロのキノの姿を見て清太は言う。

助っ人ととして近くに待機していたのにいつまでも応援の拒否をしていたキノに想うことがありそうだ。

何度も救援に来ようとしていた清太を宥め留めていたのはキノの命令。

近接物理の清太と遠距離攻撃のαの眼との相性は最悪に近い。

足手まとい。この言葉が彼の足を止める理由でキノもまた嫌った言葉である。

 

「せめてもの役目として護衛に徹するよ。手伝おうにも今の団長はちょっとばかり怖いからね」

「......怒っていた?」

「見ての通り、怒ってるようだよ」

軽口叩けるのも生きた実感を感じさせる。

上空にハビロイトトンボに乗った早瀬君と治癒能力を持った稀少な円卓騎士団の虫憑きがいた。

彼らもキノを心配した仲間たちだ。

そして一番心配しただろう、イチは激情の発露をする為の生け贄と対峙する。

強力な化物、αの眼三体。

それに囲まれ逃げ場のないイチはしかし捕食者の眼光をしていた。

 

「私かなり苦戦したんだけどなー」

「僕も団長が負ける気がしないよ」

見ている側の気分はボクシングチャンピオンに絡む不良位滑稽だった。

一体のαの眼が青く光る。

それを注意する暇なくαの眼は轟音と共に吹き飛んでいった。

イチは同化した身体能力で接近し殴り飛ばした。

恐るべき速さ。眼で追えない速さである。

 

「......硬いな」

拳で殴り潰す位のつもりだったイチがそう呟く。

木々を倒し地面に陥没したαの眼はそれでも消えなかった。

それでも青白い光がかなり弱まっており、拳だけでも数回殴りつければ倒せそうと言うのが感想だった。

一瞬の出来事で何が起こったか理解できなかった他のαの眼は対処しきれずにいた。

 

「一撃で倒していたし今更突っ込むのもアレだけどチートも大概にして欲しい。何アレ」

「チートって今自分で言っていたから多分それだよ」

かっこうですら苦戦してのにインチキ臭い。

いやセーブしたかっこうと怒り心頭で全力全開のイチを同じように比べるのもなんだけど、人が苦戦していた相手を軽々と殴り倒そうとしないでくれるかな。

唯でも実力差に悩んでいたのにその劣等感が増してしまいそうだ。

αの眼は今度こそイチを倒すべく動いた。

青く発光し熱線が飛び交う。

これを直撃すればイチとて重症を負う。

だから避けた。同化型の脚力で余裕たっぷりにだ。キノのような危うさがそこにはなかった。

 

「この能力。その姿。見覚えがある。ーー大喰いとやり合った時にな」

イチは慢心していない。何せ知ってる敵なのだ。

虫憑きになって最初に戦った敵が操った虫の一つ。

そして決定的な敗北を招いた憎き怨敵の姿だった。

この虫さえなければ大喰いに一矢報いることができたかもしれなかった。

最後の全力の一撃を阻んだ虫、αの眼。

そしてーー

 

「想うことは多々ある。が一番気にくわないのはキノを傷つけたことだ」

人形のように乏しいイチの表情に変化が生じる。

眼がつり上がり怒りを露にしているのだ。

睨まれたαの眼はイチに怯えたように距離を取り始める。

 

「消え失せろ魔眼の虫」

最も大切な人を傷つけた敵。

倒す理由はあれど倒さない理由がない敵だ。

加減も容赦もイチの心中にはなかった。

電光が夜を明るくする。

電を纏った大剣が剣鞭へと変形する。

ありたっけの夢を喰らうダイオウムカデが大きく顎を開いた。そのままαの眼を目掛けて胴体をしならせる。

 

ガキンッッ、と音がし鎌刃の手足がαの眼にぶつかった。

衝突の瞬間αの眼は熱線を放ちダイオウムカデを撃ちつけている。

しかし雷を纏った剣鞭は勢いを削がれたものの熱線ごとαの眼を切り裂こうとする。

硬いもの同士がぶつかりあった音が響く。

威力を失った為切ることまでは叶わなかった剣鞭。イチはそれを気にすることなく腕力任せに振り抜いた。

 

「フンッ」

大地に打ち付けたダイオウムカデの剣鞭。地響きをたてて衝撃を起こし辺りの樹木を凪ぎ払いαの眼を地面に埋め込む。

すかさず何度も剣鞭を打ち付ける。

轟音。轟音。轟音。指揮者がタスクを振るうように剣鞭を振り回すイチ。

地形が変わるほど力の限り打ち込まれ攻撃によりαの眼はひび割れ潰されていた。

淡く透明になって消え行く。

 

「こんなものか」

「いやいや」

αの眼を圧倒するイチに遠くから突っ込みをいれるキノ。自分の中に何か葛藤が生まれていた。

戦闘中だというのに、あんなのアリ?と疑問を浮かべている自分はオカシイのだろうか。

それとも遠いと感じてしまった自分は烏滸がましかったのだろうか。

なんにせよキノはイチが一号指定という事実が紛れもないものだと再認識させられた。

残り二体となったαの眼がそれぞれブルブル震えて出す。柔軟な物体のように柔らかく伸びたαの眼が分裂を始めた。

 

「今度は増えるか......面倒な」

様子を伺っていたイチが嘆息の吐息を吐いた。

焦燥もなく落ち着いた態度で剣鞭を引き寄せる。

減らした数が補充されて攻撃の意味がなくなろうとしている。そしてこのまま増殖が続けばイチの手に追えない程の数まで増え続けるかもしれない。

十や二十では相手にならなくても百や二百あるいは千の数となってαの眼は災害となす。

それがαの本当の恐ろしさ。

 

「だが俺には関係ない」

それでもイチの心に焦りは生まれない。

増えるのならば増えればいい。

どうせその全てを俺は破壊するのだから。

幾らでも増やせても、何度でも増やせてもその元を完全に絶ってしまえば終わるのだから。

本当に簡単なことだ。

αの眼の増殖能力よりイチの殲滅能力が上回っているのなら焦る必要はない。

 

「抵抗の無意味さを知れ」

引き戻したムカデを剣鞭にして振るう。

収納したムカデの大剣が顎を開きうねるように蛇行しαの眼を捕らえ噛み砕かんとする。ミシッと軋むαの眼。もう一体のαの眼は二つに分裂する前の変形した姿となりすぐにでも分離してしまいそうだ。

 

「シッ」

そこでダイオウムカデは鋭利な顎をαの眼に突き立てながら残り一体の分裂中のαの眼も鎌刃足が並ぶ胴体で攻撃する。

顎に意識を割かれてるのかダイオウムカデの一撃でαの眼は凪ぎ飛ばされる結果に終わる。

どちらも嫌な音をたてて激しくもがき苦しんでいた。

顎に掴まれた方のαの眼が分離を果たして自由な三体目が誕生した。代わりにいつまでも解放されなかったαの眼がダイオウムカデの顎に音をたてて噛み砕かれる。

弾き飛ばされたαの眼も二体に分離している。

合計三体のαの眼。

それぞれが増殖の準備を始めた。

「出し惜しみはしない」

イチもまた準備を始めた。

分裂中のαの眼は隙だらけだ。面倒な熱線の攻撃を警戒する必要はない。

だからこちらも力を溜めて強力な一撃の備えに時間を宛がえる。

一本の大剣。この状態の方がイチには力を収束させやすい。雷が放電しイチの同化しているオレンジと黒のラインが活性する。

 

「一気に片をつける」

夢。願い。想いが詰まった結晶を糧にダイオウムカデは力を発揮させる。

イチに眠気のような気だるさが襲う。

力を出し尽くすことは夢を喰われることと同義だ。

代償は確かにイチから損なわれている。

そして代償を経たダイオウムカデのパワーは高まり紅の電流が迸っていた。

荷電粒子が紅く光りを放ちつつもダイオウムカデの顎へと集まる。

 

「俺の夢は尽きない」

虚脱感を大剣を掴む手に力を籠めることで抗った。

イチは夢を注ぎ込むことに留意しない。

虫に負けるつもりも夢を無くしてしまうことも頭の隅にすら存在しない。

ただ夢を叶える為に尽くすのだ。

イチ自身の願いの為に夢を使うことになるなら本望だ。

灼熱の電流がいまにも弾けそうなほど危険なエネルギーを蓄えて空気を揺るがす。

増殖したαの眼が六体。

イチを焼き殺そうと青く光る。

だがもう襲い。イチの準備は終えていた。

 

「消し飛べ」

ダイオウムカデの大剣が紅い荷電粒子砲を放つ。

極大の閃光が三体のαの眼を呑み込みことごとく消滅していく。奔流が途絶えることなくαの眼を逃さず狙い撃った。

辛うじて範囲外にいた残りのαの眼も荷電粒子砲を受けて跡形もなく消しとばす。

二体となったαの眼が荷電粒子砲に抵抗し青い熱線を放った。

 

「おおォォオオおおおッッ」

二つの熱線と荷電粒子砲がぶつかりあう。

青い閃光と紅い閃光。

拮抗すらなくイチの咆哮により勢いが増した紅い荷電粒子砲が青い光りを呑み込んでいく。

力負けしたαの眼はそのまま紅に呑まれ、時間とともに光りが途絶え攻撃が完全におさまると姿形はなかった。

感知能力を持つキノがαの眼の完全消滅を確認する。

イチの勝利だった。

 

「αが消えた」

「終わったぞ」

イチも勝利を確信しているのか警戒することなくキノへと向き直り歩み寄ってくる。

円卓騎士団メンバーの治癒能力により傷を癒したキノはイチを迎えた。

 

「キノ。説明しろ」

「怪我はないイチ?」

「話を逸らそうとするな」

「そんな顔すると綺麗な顔に皺ができるぜ」

「今まさに眉間に皺ができそうだ」

茶化して誤魔化すキノにイチは渋面を作る。

 

「怒っている?」

「怒っている」

「私が勝手な単独行動をしたから?」

「それもある。危険な真似して心配させたことに一番怒っている」

「ごめんなさい。どうしたら許す?」

「理由を先ずは話してキノ。何を考えどうして行動したのかを」

自分に非があるのがわかっているからこそキノはどうしたらいいのかわからない。

愚かな行動だったと思う。

正しくない判断だと思う。

結果が誰よりも大切な人が顔を曇らせるようなものだった。

キノは自分自身が間違ったと思うようなことは一度たりともなかった。

何年も生きて二度目の人生すら歩んでいるけどここまで実感のある過ちを犯したのは初めてのことであった。

本当はどんな顔をしたらいいのかわからない。

でも苦くても自分らしい笑顔を浮かべた。

 

「負けず嫌いなんだよ私って」

「キノ?」

「正直何でこうなったかはわからない。でも」

「......」

「強くなりたかった」

イチは何も言わなかった。

 

「焦っていたし、冷静じゃなかったかもしれない。でも私は自分で考え私の意志を貫いた」

「そうか」

「迷惑一杯かけたし。失敗だったけど。それでもあの時の私は私らしくあろうとした。私は自重しないんだよ」

言葉にすればイチの顔の強ばりがとれた。

納得はしていないだろうし許す気はないだろうけど。

キノのことを理解してくれたような気がした。

だから笑う。キノらしく。

 

「次は上手くやるよ」

不貞不貞しく見えるように笑い強がってみせるキノにイチは嘆息する。

 

「反省してくれ」

笑顔に毒気が抜かれてしまい呆れたように苦言することしかイチにはできなかった。

 

キノの焦りは嘘ではない。

色々なことが起きた。

覚悟を持って虫憑きになった。でもキノの予想を上回る現実はそこにはある。

イチが一号指定の素質をもち。魅車八重子との対面。

一号指定かっこうとの戦闘。そして敗北。

キノには足りない物が焦りを生んだ。

 

でも本当はそんなことすら原因ではなかったのかもしれない。

 

 

 

数日後、花城摩理は死亡する。

 

ーーキノの知る結末通りに。

 

強くなれば

 

こんな結末でも受け入れられるのだろうか?

 

 

 




登場人物&用語解説

公式設定

夢を喰らい宿主に絶大な力を与える昆虫に酷似した超常の存在。思春期の少年少女に取り憑き寄生する。
分離型・特殊型・同化型の三種類存在する。

虫憑き
夢を抱き始まりの三匹と接触されて、虫に寄生された少年少女たち。政府の公式見解ではいないものとされる。世間では噂が広まっており恐怖と忌避の対象である。

欠落者
虫を殺された虫憑きの成れの果て。感情や意思を失い命令で動く生きた人形のようになる。元に戻ることは不可能とされており欠落者からの蘇生例はない。

成虫化
虫が宿主の夢を喰い尽くすことで起きる現象。夢を喰い尽くされた虫憑きは死亡する。宿主の制御下から抜け出し独自に動き出した虫は肥大化され凶暴で危険である。無指定の虫でも成虫化すれば上位局員数名がかりの戦力を必要とする。

分離型
実体をもち虫憑きと虫が離れている。大喰いに生み出され最も数の多い虫憑きの種類。基本的にお人好しで感情的なタイプが多い。珍しい種類に装備型、複数操作タイプの虫などがいる。

特殊型
実体がなく媒体で構成された虫を操る。浸父ディオレストイに生み出され比較的に少ない虫憑きの種類。基本的に歪んだ性格の持ち主や精神の偏った人物が多い。自然系や精神系の能力が多く一定の領域内で力を扱える。
強力な特殊型には領域を強めた隔離空間を生み出すことが可能で空間内で強力な力を発揮できる。

同化型
虫が無機物と宿主自身に同化する。三匹目アリア・ヴァレィが生み出す発見例の少ない稀少な虫憑き。普段は人畜無害だが敵には容赦しない二面性をもつ人物が多い。同化した虫憑きは身体能力が高まり超人的なパワーを発揮する。同化武器は強化された上能力が付加される場合がある。虫憑きとなる時に同化に適した身体に作り替わる為人体の損傷がなくなり傷が治る。数は少ないが強力で性格的に扱い難い虫憑きが多い。

号指定
特別環境保全事務局の虫憑きの危険度を示す階級。
十から一までの数字があり、一号指定には強さ以外の特別な素質が求められる。
号指定されない虫憑きは無指定と呼ばれ実力のない虫憑きを指す。

火種
純粋に戦闘能力に秀でた虫憑き。
異種
極めて特殊な能力をもつ虫憑き
秘種
その他の秘匿性の高い重要な能力をもつ虫憑き。


始まりの三匹
虫憑きを生み出す存在。大喰い 侵父 三匹目のことを指す。夢に誘われ喰らうことを目的とし、その結果虫憑きを生み出す。原虫とも呼ばれ彼らに虫憑きにされた者はその親と同じ分類の虫憑きとなる。
共通の弱点に夢の持ち主に拒絶されることがあり一時弱体化する。

大喰い
分離型を生み出す原虫指定。エルビオレーネの名をもつ。大喰いの名の通り多くの夢を喰らい虫憑きを生み出している。
丸いサングラスに虹色の瞳をした女性の姿をしており神出鬼没である。
能力は生み出した分離型全ての能力を扱えることであり、不死の虫憑きの生み親としてその能力を扱える。
夢を喰らう時、巨大な紫のアゲハチョウを呼び出す。

浸父
特殊型を生み出す原虫指定。ディオレストイの名をもつ。ボロボロの法衣を纏い壊れた十字架のネックレスを身に付けた老人の姿をしている。
歪んだ夢を好み、わざと貶めたりすることもある。
隔離空間の教会に呼び込み虫憑きを生み出す。
虫憑きの王を求めており夢を喰らうこと以外の目的をもつ始まりの三匹。
戦闘時には芋虫を扱う。

三匹目
同化型を生み出す原虫指定。アリア・ヴァレィの名をもつ。目撃情報もなく正体は知られていない。
特定の姿を持たない。眠りから目覚めると夢の持ち主と近しい人物に接触し同化する。
自我を失いその時の宿主の人格ベースに形成される。
役目を果たすと眠りにつき宿主の記憶を消し去ってしまう。
最弱の始まりの三匹で戦闘力は低いが嗅覚に優れている。
始まりの三匹で唯一罪悪感をもつ。
同化能力を応用して透過したり攻撃もできる。
休眠時は碧色の蛹の姿をしている。


特別環境保全事務局
通称、特環。政府が増え続ける虫憑きに対処すべく設立した秘密機関。虫憑きを秘密裏に捕獲・隔離し、また“虫”の存在、虫憑きによる事件を隠蔽している。赤牧市を拠点とする中央本部の他、東西南北を主とした支部を置き全国にいる虫憑きを管理している。

むしばね
特環に反発している虫憑きとその考え方に賛同する一般人らによって作られた組織。リーダーはレイディー・バード立花リナ。レジスタンスとしての活動していた虫憑きたちを立花リナによりパトロンを得て組織化され纏まる。特環を倒し、虫憑きが自由に生きられる居場所を作るという目的の下、特環との戦闘、虫憑きの保護などの活動を行っている。

円卓会
入会条件の難しい、資産家による会員制の秘密倶楽部。歴史は古く経済界で影響力をもつ。一之黒家当主が会長を務めている。
虫憑きの誕生に大きく関わり秘密を隠している。

非公式設定
円卓騎士団
キノが円卓会に取り入り作り上げた組織。
従来のストーリーでは存在しない。キノと一之黒守子で結託している。特環と不干渉の約束を取り付けることに成功した。
団長のイチを始め強力な虫憑きが集まりつつある。
キノはブレインとして補佐役、副団長の身分。
表向きは虫憑きの雇用団体となっている。

オリジナル登場人物
円卓騎士団
月見里
ヤマナシ
キノ
特殊型の異種?号の虫憑き。 夢は二度目の人生を謳歌すること。原作知識ありの転生者。かつてアリア・ヴァレィの器としてイチを虫憑きにした後、一部の記憶を失った過去をもつ。
変態。自重しない。バカップル。
一方、虫憑きでない一般人のころから普通ではない片鱗をみせ、始まりの三匹全てを手玉にとり、イチの蘇生に利用した。
円卓会を後ろ盾に使い独自の虫憑き勢力を創設するほど切れ者である。
憑いてる虫は群青のアリジゴク。
媒体は空間。能力は擬似ブラックホール。感知能力をもち元アリア・ヴァレィの嗅覚と合わさり広範囲で精密な感知ができる。媒体となる空間が攻撃されやすいので実体のない特殊型としては耐性が低いという弱点がある。

一 人識
ニノマエ ヒトシキ
(イチ)
同化型の火種一号の虫憑き。夢はキノのように楽しく生きること。大喰いに挑み欠落者になるもキノの尽力により非公式の蘇生者となる。
感情的にならない冷めた少年だったがキノとの出会いを切欠に変わった少年。最もキノに影響を受けた人物である。その影響力は一号指定としての不死性に及ぶ。
無自覚であるがキノに甘く、天然のタラシである。
人畜無害のようで割りと危険人物。
憑いた虫はダイオウムカデ。
ワインレッドの胴体にオレンジと黒のラインが入っている。同化武器はムカデの剣鞭に可変する大剣。布地の長物などと同化する。雷を使える。

川波清太
分離型の火種?号の虫憑き。夢はしがらみに捕らわれないこと。道場の跡取り息子で剣術を習う少年。
もとは虫憑きの事情に明るくない一般人だった。
特別環境保全事務局に追われながらも成虫化しかけた虫を追い詰めた実績がある。
イチに諭され着いていくことを選んだ。
常識人で苦労人。
虫はボクサーカマキリの大鎌。
分離型では珍しい装備型の黒い大鎌。腕力を強化と大鎌自身の変形攻撃の物理特化。清太の技量は達人級である。

長瀬八千代
特殊型の異種?号の虫憑き。夢は誰かを元気づけること。
一人で特別環境保全事務局の局員を相手していた少女。
虫の制御を独自にマスターした。
普段から相談者に能力を使い有効活用している。
キノから採用されて能力を悪用していることに不満がある。
虫は不明。
緑色の煙状でミントの匂いを放つ実体のない虫。
効果は興奮作用。濃度によって抗鬱から高揚、果ては錯乱させることまで可能。

早瀬タクミ
分離型の無指定の虫憑き。夢は人を護ること。
小学生だが真面目で率直な少年。
虫憑きになったことを気にしていたところ七歌の事情に巻き込まれていく。
最終的に円卓騎士団に引き取られ撤退や回収作戦で活躍する。
虫は巨大なハビロイトトンボ。
分離型としてメジャーなタイプ。大きさに反して動きは素早いが戦闘力は低い。

信也
特殊型の虫憑き。戦闘力はない。情報処理に長けている。クラッシャーを自称しセキュリティの破壊を得意とする。非常にものぐさだがそれ故プログラマーとしての才能があるとのこと。イチが苦手で特環と色々やらかした過去がある。
虫は不明。
能力は機械類に関するものだと判明している。

その他
竹内七歌
?の虫憑き。夢は不明。
小柄で小動物を思わせるボブカットの女の子。とても気が弱く言葉が力ない。嘘をつく時テンパる。毒舌な面をもち周囲を呆れさせることもしばしば。
早瀬タクミの同級生で彼に不良から助けて貰った過去がある。
虫は詳細不明。

アスナ
セアカゴケグモの宿主。夢は不明。成虫化しかけたが欠落者になることで命は助かる。

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