落ちこぼれ提督が着任します〜ブラック鎮守府の立て直し〜   作:ティーズ

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2話 噂の落ちこぼれ

長門に連れられてきたのは、鎮守府の建物の最上階。

ある一室の前だ。

扉の上に付いているプレートには『執務室』と書いてある。

 

長門が扉を開け執務室内に入っていくのに続き、俺も中へと入る。

 

「へー」

 

室内は予想に反して、質素なものだった。

執務机と必要最低限のものしか置かれていない個人的に落ち着ける執務室だ。

窓からは最上階ということもあって鎮守府を見渡せる。

 

「どんな部屋を想像していたんだ?」

 

俺の反応に気づき長門が声をかけてくる。

 

「自分の力を誇示したいがために、馬鹿みたいに豪華に飾り付けたゴチャゴチャした部屋」

 

基本権力が取り柄の能無したちは、自分の権力を誇示、ひけらかしたがる習性があるからな。

てっきり前提督もその類いだと思っていたんだが......

勘違いだったか。

 

 

「確かに私が片付ける前はその様な部屋だったな。」

 

訂正勘違いじゃなかったらしい。

 

「提督不在の間、私が提督代理として使っていたからな。 不必要なものは全て取り除いた。」

 

「ふーん」

 

長門の話を適当に聞きながら執務椅子へと腰掛ける。

提督用の椅子だけあって座り心地がいい。

大本営にいた頃使っていた椅子とは大違いだ。

 

「偉くなった気分だ。 悪くないな」

 

俺の言葉を長門はサラリと聞き流す。

全く真面目なヤツだ。

 

「本来はさっきの時点でお前を追い返すはずだったが、お前を提督として迎え入れたことで事情が変わった。 もう少しすれば出撃している者たちや、遠征に行っている者たちも帰ってくる。 そしたら、着任式を.........」

 

「いらん。 放送で十分」

 

バッサリと長門の言葉を切り捨てる。

 

「何故だ? 他の艦娘たちとの顔合わせという意味もある。 形式だけでも必要なーーー」

「俺と顔合わせ何てしたくないだろ。 まぁ俺っていうより『提督と』だが......」

 

「む......」

 

「大嫌いなヤツとの顔合わせ......そんなのにでたがるやつなんでいないし、顔合わせだけならいつでもできる。 着任したことを伝えるなら放送で十分だ 」

 

そう言いながら、俺は執務机に積まれている書類を一枚手に取り目を通す。

どうやら資材関連の書類らしい。

流石に前提督が無理してたことによって、資材は十二分にあるようだ。

 

書類を眺めていると、まだ納得してきれてないのか長門が口を開く。

 

「......それはそれで不満や非難の声が出てくると思うが?」

 

「それについては任せる。 どうにかしてくれ」

 

俺の発言に反応してピクリと長門の眉が動く。

 

「丸投げか」

 

「適材適所っつーだろ。 その時はお前の出番だ。 お前なら艦娘たちをどうにか言いくるめるだろ?」

「では、お前の適所はどこなんだろうな」

 

「雑務。 書類仕事とか得意だぞ? 大本営でずっとやってたからな」

 

手に取っていた、書類に愛用のペンを取り出し書き込んでいく。

長門が何やら言っているが無視する。

書類に必要なことを書き込み終えると長門へと書類を突き出す。

 

長門はそれを受け取ると目を通していく。

 

「間違いは......ないな。 自分で言うだけはあるようだ。 聞いていた通り雑務は優秀なようだ。」

 

「聞いていた?」

 

聞いていたってことは大本営の連中からか。

まぁ、提督を寄越すってことで連絡した時に余計なことを言ったんだろう。

 

雑務だけは(・・・・・)優秀な人間が来ると聞いていた」

 

ほら嫌味だ。

 

「これまた、大本営の方々にしては俺を高く評価してくれたものだな。」

 

乾笑をしながら、長門へと答える。

 

「確かに雑務に関しては出来るようだ。 しかし、他の事に関してはどうなんだ?」

 

他の事、とは提督として、司令官としての仕事のことだろう。

 

「どうもこうもない。 どうせ聞いてんだろ? 」

 

執務机に積まれている書類から次のものを手に取りながら言う。

 

「あぁ、聞いている。 これは大本営からではなく、憲兵の噂からだが.........落ちこぼれだとな」

 

「ハハッわかってるじゃねぇか。 そう俺は落ちこぼれだ。 そうやってきたからな」

 

書類仕事を続けながら俺は答える。

 

そう、俺は軍に入ってからずっと落ちこぼれとしてやってきた。

軍事はできない。 軍人としてのスキルも人並み以下。

できることと言えば、下っ端仕事の雑務だけ

そうやってやってきた。

 

 

目をつけられないように。

 

だが今は大本営の連中の目はない。

更には隠れ蓑がある。

 

長門を見ると、長門と目が合う。

俺は直ぐに書類へと視線を戻す。

 

「落ちこぼれを止める......か」

 

 

「止めたくて止められるなら誰も苦労しないだろう。」

 

俺の呟きが聞こえていたのか長門がそう返してくる。

 

「そうだな」

 

それに俺は笑って返した。

 

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