GOD EATER Reincarnation 作:人ちゅら
アナグラに混沌をもたらした男・
といって出撃するわけではない。彼の蛮用に耐えうる専用神機はまだ出来上がっていないのだ。開発局は現在、どうにか撮影された彼の神機が自壊するまでの映像を検証しながら、対アラガミ装甲の技術を応用できないかと悪戦苦闘の真っ最中だ。
ジッとしているのが嫌いなわけでもない。
とはいえ今回は「気まぐれ」ですらない。流石に例の一件以来、神機保管庫――職員には
ということで今回シンがここに居るのは、新人整備班員にして前整備班長の忘れ形見・
「どうやってコアの魔法を知るのか、実際に見せてくれる?」
「構わないが……」
「どうしたの?」
「ある道具を使うんだが、貴重な品なんでな。ここで見せるのは構わないが、貸し出したりは出来ないぞ」
「そっか。まあその辺のことはまた後で」
とまあ、そんなわけでシンは出撃ゲート内にある神機保管庫――使用者を失った墓標の方ではなく、使用者の生きている現役の神機を収めた方――にいた。左右の壁面にずらりと並ぶ保管用の台座は、墓標のようだったあちらとは違い、三分の二は空いていた。今日もそれだけの数のゴッドイーターが出撃しているということだ。
そんな光景になんら感慨を示すでもなく、シンは無造作にデニムパンツのポケットに手を突っ込むと、手のひらに収まるくらいの小さな筒を取り出す。
ピッタリとボディラインを露わにする彼のパンツに、そんな膨らみはなかったはずだとリッカは驚くが、シンは気にせずそれを摘んでするりと伸ばした。
螺鈿細工の施された、小さくも綺羅びやかな望遠鏡。
広げた手のひらに載せて、それをリッカに差し出して見せる。
「そのものの持っている力を暴き立てるのは、この万里の
「ホウチョウ?」
「この世に一つしか無いくらい貴重なもの。宝物という意味だ」
「へぇ」
「本当に一つしか無いかは分からんが、な」
あの日あの時、世界がトウキョウだけになってしまった時、トウキョウ中を駆け回って探してみたが、これはひとつしか見つからなかった。それに誰もがこれを貴重な品だと言い、かの
それに悪魔たちが伝承によってのみ得られる
実際シンは、力を優先して【アナライズ】の権能を封印してから長い間、何度も遭遇戦で死ぬ思いに遭っており、その都度後悔していたものだった。旧世界の神話伝承を手繰れば、悪魔の能力にはおおよその見当は付く。だがそもそもその悪魔が何者であるか分からなければどうしようもないのだ。攻略本を片手にゲームを進めるのとはわけが違った。
「それでそれで? これで見れば良いの?」
「そうだ。ゲームみたいに見えるようになる……はずだ」
「ゲーム……?」
間薙シン。彼は
だがこの時代に彼の知るようなデジタルゲームは残っていない。アラガミの大量出現により人類文明の崩壊が決定的になった2051年より後の、電力事情の厳しい時代に生まれたリッカにとって、ゲームとはカードやブロックを使ったアナログゲームのことを指す。
リッカのキョトンとした表情に、自分の説明が伝わっていないことを理解したシンは、言葉での説明をすぐに諦めた。
「……見れば分かる」と言いながら遠眼鏡を構え、使い方を説明するようにシンはそれを覗き込んでみせる。彼の視界には悪魔を覗いたときと同じように、神機の基本スペックがパラメータ化され視界に
――名称:神機コア“OGRE”
――属性:NEUTRAL
――特徴:身体を強化する/保有者と共に成長する
――相性:アラガミに強い
――能力:【変形/捕食形態】【熱量変換】【突撃】【
――名称:神機コア“COCOON-MAIDEN”
――属性:NEUTRAL
――特徴:感覚を強化する/保有者と共に成長する
――相性:アラガミに強い
――能力:【変形/捕食形態】【熱量変換】【
「ふんふん、なるほど。視界に情報がオーバーラップするんだね。スマートゴーグルみたいだねえ」
「スマートゴーグル?」
こちらの世界ではAR技術を軍事転用し、センサーによって得た情報を視界に上書きする軍用ゴーグルがあるらしい。とはいえAR技術などサイバーパンクのアニメくらいしか知らないシンである。「なにかすごい便利な技術があるんだな」という大雑把な理解しかしていなかった。
何であれ、説明の必要がないのであればそれに超したことはない。
……と思っていたのだが。
「“属性”って何?」
「
「“特徴”って?」
「悪魔の傾向を大雑把に表したものだ。
「“能力”の【熱量変換】って?」
「それは俺にも分からん。吸収した熱量を別のなにかに変換するとか、そういう能力だろう。悪魔の中には熱だの冷気だの電撃だのを吸収して生命力にしたり、魔力にしたりする連中が居たが。神機の能力にそういったものは無いのか?」
「なんだろう。取り込んで変換するものっていうと、オラクル変換かな。じゃあこの【九十九針】って?」
「たくさんの針を作り出して連射する悪魔の
畳み掛けるように質問を繰り返しながら、リッカは一つ一つメモを取り、咀嚼する。
シンも分かる範囲で答えてゆく。スキル名はシンの知っているものとほぼ同じだったので、それほど戸惑うことはなかった。
そうしてリッカはいくつかの神機を眺め、大凡のデータを取り終えると最後に一つの質問をシンに投げかけた。
「さっきから言ってる