GOD EATER Reincarnation   作:人ちゅら

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投稿時間で分かると思いますが、書き上がって即投稿しています。
ろくに推敲していませんので、修正が入る可能性があります。

では。
人修羅ブートキャンプ! はーじまーるよー!(鬼畜生)


#047 諦めが肝心

「で、どうよ。新人の具合は」

「とりあえず【ディア】(小回復)は使えるようになった」

 

 

 タバコを咥えたまま器用に尋ねるのは、フェンリル極東支部(アナグラ)のゴッドイーター第一部隊で、次期リーダーと目されている青年・雨宮(あまみや)リンドウ。

 それに愛想のない声で答えるのは、同じくフェンリル極東支部のゴッドイーターの間薙(かんなぎ)シン。彼はリンドウと同じく第一部隊所属だったのだが、現在は一時離れ、新人四名を相手に技術指導の真似事をしていた。

 

 今日は訓練を休みにした。というか、させられた。

 シンの教え方はおそらく合理的なのだろうとは思えるものの、それ以上に情け容赦の欠片もないものだったためだ。折角の新人たちが壊されては堪らないと、訓練を依頼したシックザールと、戦闘訓練を担当する百田(ももた)ゲンの方からストップをかけてきた。

 

 とはいえ、それも無理のない話。

 何しろ彼の人生観は万事「生き残るために命を賭けろ。できなければ死ね」というものなのだ。いくらアラガミが跋扈し人類文明が死にかけた西暦2068年とはいえ、ボルテクス界基準のそれを受け入れられる修羅など、そうそういるものではない。

 

 

 初日。

 まずシン自身が自身に傷を付け、それを【ディア】で回復させて見せることで「魔法が実在すること」を理解させた。そしてその方法として神機コア(マガタマ)を意識的に励起する手順を説明する。

 とはいえこれは、新人ゴッドイーターにはそう簡単なことではなかった。

 なにしろ「神機コアの励起」とは、すなわち適合試験の再演である。

 その激痛を思い出し、新人たちの腰が引けてしまうのも仕方のないこと。

 

 自主的に励起実験を行ったのは、癒やされる傷口を凝視し、何故か酷く興奮したエリックただ一人であった。

 彼は何度となく苦痛によって断絶する励起実験を繰り返す。

 痙攣する肉体を無理やり押さえつけながら、うわ言のように「兄さんが」「エリナ」などと呟き、やがて耐えきれなくなって気絶する。

 しかし戦士たるゴッドイーターの肉体はそれを許さない。

 彼はごく短時間で目を覚ますと、再び神機コアの励起を行おうと、神機を掴む。

 

 その様子に、却って恐れを強くしてしまう新人三名。

 

 だがシンは容赦しない。

 「生き残るために命を賭けろ。できなければ死ね」とは決して単なる標語ではないのだ。

 すなわち彼は、その激痛に慣れさせるため、まず()()()()()()()()()ことにした。

 

 何気なくシンに触れられた新人の一人が、最初にそれを体験した。

 悶絶し、数秒で気絶した新人をそのままに、二人目へと手をのばすシン。

 

 そして始まる鬼ごっこ。

 追いかけてくるのは本物の鬼。必死に逃げ惑う三人を、容赦なく追い立て、気絶させる。

 三名全員が気絶したところで、シンは【メディアラハン(集団完全回復)】で全員を回復させた。

 

 ふたたび始まる鬼ごっこ。

 ふたたび気絶する新人三名。

 うち一名が過呼吸となり、死の淵を落ちてゆく。

 容赦なく行使される【サマリカーム(完全蘇生)】。

 

 みたび始まる鬼ごっこ。

 ……以下同文(リピート)……

 

 結局、新人たちが諦めの境地に至り、自ら励起し、その苦痛に耐えられるようになるまで、丸二日を要した。

 

 

 とんで三日目。

 励起の苦痛に慣れたところで、魔法の使い方を改めて説明する。

 とはいえさほど難しいことはない。神機コアを励起した状態で、ただ対象の傷を「癒せ」と考えるだけでよい。悪魔(マガタマ)の魔法とは、世界の法則に優越する権能である。たとえば【ディア】の魔法なら、本来あるべき負傷を癒やし、そのものの体力を回復させる権利と能力なのだ。そうあるべし、と権利者が決定したなら、その能力は正しく効果を発揮する。

 

 かくして新人ゴッドイーター四名は、とりあえず【ディア】を行使できるようになった。

 

 

「おお。そりゃ助かるな」

 

 

 だが。

 

 

「いや、駄目だ。まだ励起に時間もかかるし、連発も補充も出来ない」

 

 

 シンが習得させる技術は、負傷回復の魔法のみ。

 そのため当初は負傷をたちまちに癒やす【ディア】を教えるだけで終わりかと思っていたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 新人たちの貯蓄するマガツヒ(MP)が足りないのだ。

 

 訓練で分かったことは、二回から三回【ディア】を発動した段階で、彼らのマガツヒはほぼ尽きてしまうということ。

 

 これは盲点だったと、今更ながらにシンは考え込むことになる。

 【ディア】が魔法であるからには、その身に蓄えたマガツヒを消費しなければならない。だが混沌王たるシンにとって、マガツヒはその身の底から無尽蔵に湧き出すもの。もちろん高位の魔法を連発すれば、多少の休憩は必要になるが、それでもマガツヒが不足する、などといった状態は遠い昔のこととなっていた。

 

 故にシンは、新人たちのマガツヒを急速回復させる手段を考えなければならなかった。

 

 

「なるほどなあ。それで、お前さんはどうやって克服したんだ?」

「ひたすら悪魔を狩り続けて、力をつけた」

「あー……他には?」

「他に。他に……」

 

 

 周囲に散ったマガツヒを集めて薬とする宝重・チャクラ金剛丹は、他の宝重と同じく、何故だか取り出すことが出来ない。

 あ、いや。そういえば。

 

 

「チャクラドロップ」

「なんだそれは」

「マガツヒを回復する飴だ。そういえばあったな、そんなのも」

「おいおい……」

 

 

 自分で使うことが無くなっていたため、すっかり忘れていたのだった。

 と、思い出したは良いものの、

 

 

「しまった」

 

 

 現物は先日、サカキ博士(もじゃもじゃ頭)楠リッカ(スパナ少女)に研究資料として渡してしまったのだった。

 

 

「返してもらえば良いんじゃねえか?」

「それはそうだが。四人に使わせたらあっという間に無くなるだろう」

「それもそうか。だったら量産できるように、研究開発に回した方が良いな」

「だろう」

「となるとだ。あー……結局あれか。新人にアラガミ狩らせて力付けさせるしかないのか」

 

 

 黙って頷くシンを横目に、咥え煙草のリンドウは頭を掻きむしって「面倒くせえなあ」とボヤいた。

 




本作におけるリンクエイド(疑似)の説明です。

本章ではエリックが準主役くらいになるかもしれません。
新人三名は名前とか特に決まってない(予定してたキャラが公式年表見たら既に加入済みだった)ので、候補とかあったら感想の方にいただければ参考にさせていただきます。まあその、過酷な運命を背負うちょい役、というあまり報われないポジションですが……

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