この手を伸ばせば   作:まるね子

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妄想と願望と自己満足で構成されています(多分)。
それでも興味が湧いたという方は……うん、よろしくお願いします。


第一部 ―変革者―
プロローグ「求めるもの」


 2013年、日本――

 

 某工業大学の電子工学科に通う大学一年、御巫悠平(ミカナギユウヘイ)は他に誰もいない自宅で幾度目かのマブラヴオルタネイティヴをプレイしていた。

 BETAという異星起源種によって滅びへ向かう絶望的な世界。その中にあって抗い続ける人の生き様。そして、白銀武(シロガネタケル)という一人の英雄の成長と足跡。

この物語に悠平は胸を焦がすような切なさを感じていた。

 悠平にはひとつの仮説――と呼べるようなものではないが自論がある。

 

 およそ物語と呼べるものには全て元があるのではないか。

 

 このような考えに至ったにはもちろん理由が存在している。

 全ての作家は頭の中で物語を構成し、それを形にしている。だが、マブラヴオルタネイティヴのなかで夕呼が語っていた因果律量子論による占い師の能力が正しいのならば、作家という存在はもしかしたら実際に()()が起きた世界の情報を虚数空間に散らばる無数の因果情報から取得し、それを物語という形に再構成することができる存在ではないのか、と。

 因果情報を取得するにあたっていくらかは欠損があり、つじつま合わせの空想で埋められている部分はあるだろう。だが、その中には真実も存在しているのではないか。

これらは所詮、空想の物語に影響されて勝手に作り上げた妄想・設定だと多くの者が揶揄するだろう。だが、悠平にはこれをそういったただの妄想だと切り捨てる確証がどうしても得られない理由があった。

 のどの渇きを覚えた悠平はおもむろに虚空へと手を伸ばし、そこに自宅の冷蔵庫に()()()()のペットボトルのスポーツドリンクを幻視した。

「――アポーツ」

 つぶやくように言霊を発すると、悠平の手の中にはペットボトルのスポーツドリンクがあった。まるで悠平の言葉をトリガーにしたかのように実際に悠平が手を伸ばした先には()()()()()はずのものが唐突に出現したのだ。

 遠隔瞬間移動現象。これはその中でもアポーツと呼ばれる遠くに存在する物質を取り寄せるものだ。インターネットで調べる限りでは、物体や人間が時間と空間を超越し瞬間的に移動する現象だといわれている。しかし、悠平が使うこの能力にはいくつかの制限が存在している。

 悠平には昔からこのような能力が存在していた。だが、こういった能力を持つ者が特別であるのと同時に能力を持つ者が差別されたり、人体実験のモルモットにされたりするということを当時見ていたアニメから学習していた悠平は誰にもその能力を明かすことはなかった。そして悠平はその能力を持っているという現実を受け入れるために、あえてそういったサブカルチャーにのめりこんでいったのだ。

 アニメの中には特別な力で悪と戦う主人公が存在した。

 マンガの中には特別な力で人を助ける主人公がいた。

 ゲームの中には特別な力で仲間と共に世界を救う主人公がいた。

 ならば悠平はこの()()()()で一体何ができるだろうかと考えながら、マブラヴオルタネイティヴのエピローグが流れているディスプレイに手を伸ばした。

(俺がもし、マブラヴオルタネイティヴ(この世界)に存在したら、武たちのために何ができたんだろう?)

 それとも何もできなかったか、と考えながらも悠平は手を伸ばす。届くことはないと知りつつも手を伸ばし続ける。

 悠平はマブラヴオルタネイティヴのエンディングを見るたびににいつも胸を締め付けられていた。

 白銀武の帰還に。

 鑑純夏の最期に。

 残される社霞に。

 そして、死んでいった者たちに。

 再構成され、武が帰還した世界では確かにみんな幸せになれるのだろう。だが、BETAに蹂躙されたあの世界はどうなるのか。武を想いながらもあの世界に残された霞はどうなるのか。あの世界に自分がいれば何かを変えられただろうか。彼らを死なせずに済んだだろうか。

 終わりの見えない欲求に、悠平はディスプレイに手を伸ばすのを止めない。

 己が夢想するご都合主義(ハッピーエンド)を求めて手を伸ばし続け――

 

 運命を狂わせる一筋の雷が――

 

        ――ディスプレイに触れ――

 

             ――空を染める闇から一直線に、御巫悠平を貫いた。




プロローグだからこんなものかな……
自身に理解力が不足しているため、これからいろいろな齟齬が発生するかも。
ついでに文章力も不足しているため、手に負えないったらない。
それでも楽しんでもらえたら、こんなに嬉しいことはない!……と、思う。

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