なんだかカオスな感じになっていく気がしますが、こういうマブラヴ二次を待っていた!と言う人がいてくれたら幸いです。
輸送機のカーゴブロックへ格納されていく完成した不知火・弐型の姿を見て、ユウヤは感慨深いものを感じていた。
ユウヤにとっては約二年越しに計画を完遂させることができたのだから、その思いもひとしおだ。
技術漏洩の問題はアクティブステルスやステルス以上の機密である新概念補給装置であるジャルスの非搭載化だけで回避することができ、外装はほぼそのまま使えることとなった。
また、それらの機能の排除に伴って予定よりもコストを大きく抑えることに成功し、不知火からの改修も行いやすくなったことがXFJ計画完遂に大きく貢献することとなった。
ハイネマンは、元々想定していたYF-23に最も近い機体に仕上がったと嬉しそうに語っていた。聞いたところによると、機体の半分ほどはYF-23からステルスなどの機密の高い技術を省いたものが流用されているらしい。元々YF-23にステルスを積みたくなかったと言っていたハイネマンにとって不知火・弐型は、本当に作りたかったYF-23の形に仕上がったのかもしれない。
「ついに、終わったのだな……」
隣で一緒に格納されていく不知火・弐型を見ていた唯依もまた感慨深げにつぶやいた。
穏やかな風に髪が緩やかに舞い広がる唯依の足元にはまとめられた荷物が詰め込まれた鞄が一つ。同じようにユウヤの右手にも同じくらいのサイズの鞄がぶら下がっている。輸送機の準備が完了次第、搭乗して日本へと発つためだ。
「なあ、ホントに行っちまうのか?」
見送りのために集まった小隊の仲間たちからタリサが代表して尋ねた。いつもは勝気な彼女だが、どうやら少し寂しいらしい。
「日本へ行かなかったとしてもまた別の場所へ配属になるんだ。どっちにしろ俺はここにいられない」
XFJ計画の完遂が目前まで迫ってきた頃、基地司令にユウヤには二つの選択肢があることを知らされた。一つはユウヤ自身と国連軍横浜基地副司令、双方の希望である横浜基地への転属。もう一つはF-22の後継機のテストパイロットへと就任すること。
そしてユウヤが選んだのは、やはり横浜基地へ行くことだった。横浜基地には待たせている者たちがいるのだ。
「寂しくなるわねぇ」
「ああ、まったくだ」
ステラの言葉にVGが続いた。二人とも名残惜しむような目でユウヤと唯依を見ている。
「そんな顔するなって。生きてりゃまた会えるさ」
「ブリッジス
所用でこの場にいなかったイブラヒムがそう言いながらユウヤたちの傍へとやって来た。
ユウヤはXFJ計画完遂をもって中尉へと昇進していた。前の世界では中尉最終階級は中尉だったため、ようやく元の位置へ追いついたような気分だ。
「けどよ、もっと時間があればユウヤのあの戦闘機動についていけたのになぁ」
「確かにあれはすごかったわね……一体いつの間にあんなのをモノにしたのかしら」
タリサとステラの言葉にユウヤは苦笑いを浮かべていた。
XM3に慣れた今となっては旧OSはとても重たいものではあったが、ユウヤなりに武たちから得た高次元戦闘機動をある程度再現して使用していた。その結果、イーダル小隊に新たに配属されたビェールクトの衛士――恐らくクリスカたちと同じ生まれだろう――に圧勝し、不知火・弐型の有用性をこれでもかというほど見せ付けることができたのだ。
その弊害というほどのものではないが、二番機に搭乗していたタリサとの明確な差が出てしまい、タリサには非常に悔しい思いをさせてしまったのだが。
「積み込み完了だ!定刻どおりに出るから二人ともそろそろ輸送機に乗って準備してくれ!」
不知火・弐型が格納された輸送カーゴの設置を完了させたヴィンセントがユウヤたちに声をかけた。
「お世話になりました」
「隊長、お元気で」
「そちらもな」
ユウヤと唯依はイブラヒムたちと敬礼を交わし、輸送機へと歩いていく途中でヴィンセントと合流した。
「お前は良かったのか?」
「ああ、俺は昨日済ませたからな」
結構盛大にやったぜ、とヴィンセントは笑みを浮かべた。
ユウヤが横浜基地へ転属を希望したことを聞いて、ヴィンセントもユウヤと共に横浜基地へ行くことを決めたのだ。
「いやー、言ってみるもんだな。お偉いさん方にはお偉いさんの考えがあるんだろうけど、許可してもらえてよかったぜ」
「俺について来るんだから、これからもよろしく頼むぜ」
「おう、任せとけ!」
そう言ってユウヤとヴィンセントは拳をぶつけ合った。
隣を歩く唯依がその様子を少し羨ましそうに見ていたことに、ユウヤは気づかなかった。
日本への空の旅を終えた唯依たち三人は帝国技術廠・第壱開発局副部長である巌谷榮二の執務室へ呼び出されていた。せっかく日本へ来たのだからXFJ計画完遂の挨拶をしたいということらしい。
「よく不知火・弐型を完成させてXFJ計画を完遂させてくれた。この計画を推す者を代表して礼を言わせてもらうよ」
「自分はあの不知火のテストパイロットを務めたに過ぎません。全ては篁中尉の努力の賜物です」
「うん。そうかそうか。唯依ちゃんもご苦労だったね。一時は危うかったXFJ計画をよく完遂してくれた」
「い、いえ、その、人前で唯依ちゃんは、ちょっと……」
巌谷は笑ってごまかした。何度言っても直らないためいっそ諦めたほうがいいのだろうかとも考えるが、己がそれで諦められる様な人間ではないことは唯依自身理解していた。
「そういえば君たち二人は横浜基地へ行くんだったな。奇遇だな。唯依ちゃんにもこれから横浜基地へ行ってもらおうと思っていたんだ」
「え……?」
唯依にとってその話は寝耳に水だった。輸送機に乗る前からユウヤと一緒に横浜基地へ行けるヴィンセントのことを羨んでいた自分がバカらしく思えてくる。
一応機密のこともあるので二人には先にエントランスで待っていてもらうことになり、唯依は巌谷と二人きりになった。
「そういうわけで、早速で悪いが唯依ちゃんには横浜基地へ向かってもらうことになる」
そう言って手渡された命令書に書かれていた内容は、早くも横浜基地にて行われる不知火・弐型の改修・運用アドバイザーと部隊規模の実戦運用データの収集を目的として横浜基地に滞在するというものだった。必要であれば独自の判断によって武御雷で部隊に随行することも許可されている。
不知火・弐型の開発責任者だった唯依がアドバイザーにつくことは理にかなっていると言えるし、これほど早く実戦の運用データの収集ができるのならばそれに越したことはないのだが、
「あの、これだけでしたらわざわざ私が行かなくともよろしいのでは……?」
「ああ。命令書には書いていないが、内密に頼みたいことがある。といっても、あくまでも可能であればやってほしいといったものでしかないがね」
話を聞くと、巌谷は横浜基地――その中でも横浜の魔女の動向や例の新型の詳しい情報がほしいらしい。もっとも、必要以上に関係を悪くするのは避けたいため、無理をする必要はないという。
すでに別件で横浜基地に駐屯している斯衛の小隊にも同様の命令が出ているらしい。
また、横浜基地に駐屯している斯衛に試験的に新OSを実装して運用テストを行うための交渉が進められているため、交渉が通れば唯依の武御雷もその対象に入るという。新潟のBETA上陸時に常識外れの戦果をたたき出したという噂の新OSの性能を巌谷もよく知る唯依に試してほしいのだという。
己にスパイのようなことができるとは思えないが、新OSについては交渉さえ通れば巌谷の期待に応えられそうだと唯依は思っていた。
技術廠のエントランスでユウヤたちと合流した唯依は車で移動を開始した。
「それにしても、日本ってのはなんだか狭苦しいねぇ。道の幅やら建物の間隔とかさ」
後ろに流れていく日本の町並みを見ながらヴィンセントが感想を述べた。
「日本は小さい島国だからな。国土が小さい分そう感じてしまうのは仕方ない」
広大な国土を持つ米国にくらべれば日本の町が狭く感じるのは仕方ないことだろう。
「横浜基地には
「横浜基地にいる知り合いはその二人だけじゃないが……ま、すぐにわかるだろ」
「なんだそりゃ?日本に他に知り合いなんているのか?……って、そういや一人それらしいのはいたか」
「いちゃ悪いのか」
「そういうわけじゃないけどよ……ちなみに知り合いってのは一人なのか?男か?女か?」
「どっちもだ。あとは実際に会ってからにしてくれ」
そう言ってユウヤは視線を流れる帝都の町並みへと向けた。初めての日本の町並みに興味があるのだろう。しかし、
(どっちも……ということは、まさか女性の知り合いもいるということか……っ?)
ユウヤの答えに唯依は内心焦りを隠せずにいた。クリスカやイーニァだけでも強敵だというのに、まだ他にライバルとなるかもしれない者がいることに不安を感じていたのだ。
ユウヤは知らないだろうが、ただでさえ腹違いの兄妹というハンデがある唯依にしてみれば、まだ見ぬユウヤの知り合いの女性は十分強敵となりえるのだ。
(しかし、日本嫌いだったユウヤに日本にいる知り合いがいたとはな。一人は恐らく御巫大尉だろうが……)
そもそもユウヤと悠平がいつから知り合いなのか、唯依にはわからない。以前のユウヤは日本嫌いだったはずだが、そんな状態の時からユウヤと親しくなれたのだとすれば自分より前にユウヤと親しい日本人がいたことになる。
(――ちょっと待て!私はまた御巫大尉に嫉妬しているのか……!?)
唯依が悶々としたものを抱えたまま、三人を乗せた車は横浜基地へ向かっていった。
横浜基地が近づいてきた頃、周囲の景色はすっかり荒れ果てたものとなっていた。G弾の爆心地が近づくにつれて被害の様が酷くなっていくのだ。
だが、少し前に悶々としていたものが収まった唯依ではあったが、横浜基地が近づくにつれてまた別のことで悶々とし始めていた。
(あれから一ヶ月と少し、ビャーチェノワ少尉は元気になっているだろうか……やはりユウヤもビャーチェノワ少尉のことは心配しているのだろうな……)
唯依の心はこれから再会するであろう恋敵とユウヤのことで頭がいっぱいだった。
やがて横浜基地のゲートが確認できるようになると、遠目ではあるもののゲートの前に数名の人間が立っているのがわかった。初めは衛兵かと思ったが、それだけではなさそうだ。
車がゲート前の桜並木の半ばへと差し掛かる頃、ゲート前に立っている人間が二名の衛兵と二名の銀髪の女性であることに気づいた。
その銀髪の女性二名の顔が視認できる距離にまで近づくと、ようやく唯依は恋敵との戦いが再び始まるのだと実感した。
ゲートの前に車が横付けされると、銀髪の恋敵――クリスカの元気そうな様子がはっきりとわかった。
「ユウヤ……」
クリスカが口を開く。一体どんな感動的な再会を演出するのだろうかと、唯依の喉が本人の意思とは無関係につばを飲み込んだ。
クリスカの行動次第ではここで勝負がついてしまう可能性すらあるのではないかと不安になる。
ヴィンセントもまた、クリスカの次の行動に注目しているようで、横から口を挟むことなく待っていた。
そして――
「――ご飯にする?お風呂にする?それとも、にゃんにゃんするかにゃん?」
「「「………………は?」」」
以前の彼女からはとても考えられないような言葉がクリスカの口から飛び出し、唯依たちはそろって呆けたように口を開いてしまった。クリスカが猫を意識したかのような妙に媚びたポーズで上目遣いをしていることも輪をかけていた。
ポーズをそのままにクリスカが怪訝そうにする中、イーニァと衛兵二名は妙にホクホクした顔をしていたことに唯依は気がつかなかった。
後で聞いた話によると、クリスカの治療を担当した女医が吹き込んだものだったらしく、他にどんなことを吹き込まれているのかを考えると唯依は頭が痛くなる気がしていた。
感動的な再会がダイナシダー!
……ん?ダイナシダーってなんかロボの名前っぽいな(ぉぃ
犯人はもちろんあの女医さんです。他にどんなことを吹き込まれているのか、俺も予想がつきません。
というか何も考えてないので感想欄に面白そうなネタがあったら使わせていただくかもしれませんw
結局ユウヤについてきたのはヴィンセントだけですが、どんな風に扱ってやろうかなー。