FFXV:Another   作:祈Sui

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FFXV:Another chapter2 再起

永い戦いの果て、女神も混沌も深手を負い、斃れました。女神の左目は太陽となり、傷ついた右目は月となり、身体は大地となりました。そして大地となった身体から、女神の力の結晶であるクリスタルが生まれました。太陽は一日の半分を照らし、もう半分は月が照らしましたが、傷ついた月では世界を照らしきれず、混沌の残骸である闇に覆われる夜となりました。

 

創星記第1章 序の三

 

***

 

古びた偽装トラックが、舗装の悪い道を進んでいた。カーステレオからはラジオが流されていて、緊急ニュースを繰り返していた。ルシス側による一方的な協定破棄により発生した戦闘。レギス国王と王子ノクティスの死。帝国側の犠牲者として将軍グラウカ、そして神凪ルナフレーナの死。また、皇帝イドラ・エルダーキャプトの声明により王都インソムニアでの戦闘が終結した事。これ以上の戦闘継続を望まない事。抵抗を続ける勢力は即座に武装を放棄し投稿するようにも告げられていた。帝国軍の駐屯は、王都の治安維持の為であり、王都市民を害する意思は無いとも。

「どう思うよ?」

後部座席でグラディオラスがイグニスに問いかける。

「王都は、実質的に帝国の支配下に置かれるだろう。ルシスの協定破棄による裏切りと言う形で帝国はこの制圧に大義を与えるつもりだ。レギス陛下、ノクト両名の死を発表したのは、未だ抵抗しようとするルシス人の戦意を削ぐ為だろう。だが、これはこちらにとって悪い事ばかりではない。帝国自らが王子の死を喧伝してくれれば、大規模な捜索は行えないだろう。捕捉される危険は減る。問題は現神凪であるルナフレーナ様を死んだと伝えている事だ。これによって世界の敵意の一部はルシスに向けられるだろう。だが、12年前のテネブラエ襲撃で帝国は当時の神凪であったルナフレーナ様の母シルヴァ様を殺害している。この事実は、一方で人々の間に疑念を抱かせるだろうが・・・将軍、ルナフレーナ様は確かに生きておられるのですね?」

「ああ、別経路から脱出したことが確認されている」

「だとしたらなんで帝国は、ルナフレーナ様を死んだことにしようとしているんだ?自らに疑惑を抱かせる可能性があるにもかかわらず」

「恐らく帝国は、ルナフレーナ様を殺そうとしている」

「なんだと?」

最後部座席に座っていたノクティスが反応する。

「シルヴァ様の死により、ルナフレーナ様が神凪に選ばれた。ならばルナフレーナ様が死ねば、また新しい神凪が選ばれる。ルナフレーナ様はノクトと親しくしていたし、陛下やルシス王家ともつながりが深い。まして我々と同様に帝国から逃れたとなれば、帝国にとってもはや邪魔な存在となっている。帝国はもっと自分たちにとって都合のよい神凪を生み出すことで、テネブラエの支配、ひいては世界への影響を強めようとしている」

「だったら」

いきり立つノクティスにコルが告げる。

「王子、今は俺達にも準備が必要だ。無理に合流を急げば、帝国を引きつけてしまう。それに、神凪にはゲンティアナが付いているそうだ」

「ゲンティアナが?」

その名前にノクティスが驚く。

「ああ、王都警護隊と共に行動していた神凪の前に彼女が現れ、神凪は王都警護隊の護衛を断り、王都を脱出したと連絡があった」

「ゲンティアナっつうのはそんなに強えのか?」

グラディオラスが口を挟む。

「ゲンティアナは12年前、帝国軍の襲撃からルーナを守り、俺と親父をテネブラエから脱出させた」

ノクティスはそう言って、また深く腰掛け沈黙した。

「でも、二人だけなんだろ?危なくねぇか?」

その疑問にはコルが答えた。

「いや、むしろ人数が少ない方が帝国の目を逃れやすい。それにたとえ護衛についていたとして残念ながら今の王都警護隊に帝国と一戦交えて退かせるだけの戦力は無い」

グラディオラスに変わりイグニスが聞いた。

「護衛が、むしろリスクを高めてしまうと?」

「そうだ。彼女もそう判断したのだろう。よって王都警護隊は、帝国の陽動に当てている。落ち着き次第、合流場所を連絡するとゲンティアナは言っていたそうだ」

「どうやって?」

「アンブラだろう」

「そうか、確かにどうやってかは知らないが神使であるアンブラならば、こちらがどこにいても情報を届けることができる」

「ああ、恐らく王都警護隊の連絡網を使うよりも安全だろう。一応暗号化が行われているとはいえ、用心するに越したことは無い。なんにしても今、我々ができることはほとんどなく、装備を整えながら神凪からの連絡を待つしかないのが現状だ」

「では、これからどこに?」

「とりあえず、信用に足る陛下の古い友人のところへ向かっている。あそこならば、しっかりと休息を取ることができる。それに陛下があらかじめ用意されていた車や装備品もある。この車一台では、少々手狭だからな」

そこまで言って、コルは一度口を閉じ、何かを考え込んでから改めて口を開いた。

「・・・さて、プロンプト」

「は、はい」

突然のコルの呼びかけに、今まで口を開かず、助手席で小さくなって座っていたプロンプトは、恐る恐る返事をした。

「君には基本的な射撃訓練を与えたが、それは、銃が最も短期間で身を守るだけの力に成りえるからだ。戦場で前に出す為ではない。・・・本来なら何処かに避難させたいところだが、君はもう帝国と一戦交えてしまった。帝国に認識されてしまった可能性がある。そうであればどちらも危険だが、君はどうしたい?」

「僕は、・・・一緒に行きたいです」

「銃には銃の距離がある。王の盾として、英才教育を受けてきたグラディオラスとは違う・・・力になりたいという君の気持ちは良く分かるが、君は、グラディオラスではない。王子でも、イグニスでもない」

「・・・はい」

「君が劣っていると言いたいわけじゃない。グラディオラスはイグニスではないし

逆もまた然りだ。他の誰かのようになろうとしなくても、君にできることを精一杯やればいい」

「じゃあ」

「ああ、それが分かったのなら同行を認めよう」

「ありがとうございます将軍」

 

***

 

その後、簡単な隠れ家で夜をやり過ごし、早朝からまたトラックは走り続けた。そして、日が落ち始めた事。トラックは、小さな宿場の工場のような建物の前で止まった。

「ついたぞ」

コルが告げる。

「ハンマー、ヘッド?」

プロンプトが読んだ看板にはそう記されている。車を降りるコル、プロンプト、イグニスも降り、堅くなった身体を伸ばす。ノクティスはグラディオラスに連れ出されるように降りた。車を整備していた女が手を止めて近づいてきた。やけに露出度の高い服装、プロンプトが、その姿を見て固まった。

「やぁ、シドさんはいるかな?」

コルが軽く手を上げて挨拶をする。

「じいじ?奥にいるよ」

「そうか、君が」

「シドニー・オールム、シド・ソフィアの孫娘。じいじの知り合い?」

「コルだ。そう伝えてもらえばわかる」

「わかった。ちょっとまってて」

そう言って、奥へ去ってゆくシドニーをプロンプトが茫然と見送っていた。

「おい、プロンプト。鼻の下伸びてんぞ」

グラディオラスが小突く

「あ、いや何言ってんの、そんなことないから」

慌てた、プロンプトとグラディオラスが騒いでいた。ノクティスは反応を示さず、それを見てグラディオラスはそれ以上プロンプトを揶揄うのをやめた。やがてシドニーに連れられて、老人が現れ、シドニーは車の整備に戻っていった。

「御無沙汰しております」

コルが老人にあいさつした。プロンプトやイグニス、グラディオラスもそれに倣った。

「コル坊が、ずいぶん大きくなったじゃねぇか」

老人が笑う。

「最後に会ったときは、まだこんなだった」

そういって手を自分の肩ぐらいの位置に移動させてみせた。

「シドさん、そういう話はまたいずれ」

「そうだな、それで、レギスの野郎はどうした」

その問いに重い空気が流れるのをプロンプトは感じた。コルが口を開こうとして、それよりも前にシドが口を開いた

「死んだっていうのは事実なんだな。馬鹿が、手前で来いっていったのによ。30年前となんも変わってねぇ。本当に大馬鹿野郎だ」

「なんだと?」

それまで黙っていたノクティスが苛立ちを露わにする。

「わぁ、ノクト」

今にも剣を出現させてしてしまいそうなノクティスをプロンプトが慌てて宥めようとする。ノクティスを塞ぐように背をいれたグラディオラスも不満そうにシドを見る。

「クレイラスの息子に、お前が王子だな。レギスによく似てやがる。まぁあいつはそんな辛気臭ぇ面してなかったけどな」

コルが手で自重するように合図する。

「じいじ!」

騒ぎを聞いて近づいてきたシドニーに叱責され、シドは肩をすくめてみせた。

「こっちだ、ついてこい」

そういって、シドは背を向けて歩き出し、コルがその後に続く

「ごめんね。悪気はないんだけど、じいじは口が悪いんだ」

シドニーが、シドを庇うようにノクティス達に謝罪した。ガレージの奥、被せられていたシートをシドが取り払った。

「整備は済ませてある。ナンバーも外装も変更済みだ。外観から判断するのは難しいだろう」

「ありがたい」

コルは満足げに頷いた。

「え?これ?」

プロンプトは首をかしげた。もったいぶって披露された割に、それは今まで乗ってきたトラックと同じぐらい古ぼけた車に見える。こんなものをわざわざ取りに寄ったのかと思ったのだ。

「侮るなよ。こいつは特別製だ。銃撃はおろか、携行ロケットの直撃にも耐えられる。レギスの愛車レガリア。・・・まぁ、今となっちゃあ形見だがな」

シドニーがやってきて言った。

「もうじき日もおちるし、今日は泊まっていきなよ。部屋も余ってるし、ねぇ、じいじ?」

「好きにしな」

シドは、自分の仕事は済んだとばかりに告げた。

「最初から、そのつもりだったくせに」

シドニーが、小さくつぶやいた。

「今日は、暖かいとこで寝れるー」

プロンプトが歓声を上げる。

「食事は隣にあるダイナーのタッカに作ってもらって、後で取ってくるよ。食べに行ってもいいんだけど、王子はあんまり出歩かない方が良いでしょ?」

「心遣い感謝する。俺も手伝おう」

「あっ俺も、俺も手伝う」

「ありがとう、じゃあまずは部屋に案内するよ」

「ノクト行くよ」

シドニーを先頭に、イグニスとプロンプト、ノクトがついていく。それにグラディオラスも続こうとした。

「グラディオラス、少しいいか?」

コルは、そういってグラディオラスを外へ連れ出した。空は夕焼けに染まっている。

「イリスは無事に脱出して、今はレスタルムに向かっている」

「そいつは良かった」

「クレイラスの事だが・・・」

「死んだんだろ?陛下と一緒に」

「もう、知っていたか」

「いや、親父は、王の盾であり友だった。それだけだ。俺は、それを誇りに思う」

「ああ」

少しだけ冷たくなった風が頬を撫でていった。グラディオラスが呟く。

「将軍、・・・俺も、なれるだろうか?」

「なれるさ」

グラディオラスは、少しだけ笑って、そのまま一人、陽が沈みきるまでずっとそうしていた。

 

***

 

 気を張っていたからだろう、プロンプトはすぐ眠りに落ちた。グラディオラスもイグニスも眠っている。コルは別室にいる。ノクティスは、誰も起こさないように、そっと起き上がると部屋から出た。イグニスはそれに気づき目を覚ましたが、呼びかけることは無かった。

 

***

 

僅かな明かりが灯るガレージには、あの車が置かれていた。外装に面影は無いが、何度も乗った父親の車であるらしい。触れたドアノブは冷え切っていた。それを引っ張ると微かな音と共にドアが開く、開けてみると内装は昔のままだった。いつかのように乗り込む、僅かに沈む座面、その懐かしい感覚と匂い。ノクティスは、溢れそうになる涙を必死に抑えた。そうしている間にも、あの時見上げた姿が、肩に乗せてもらった思い出が、困らせてしまったときの独特の表情が、脳裏に浮かんでは消えていった。今思えば最後に会った時どこかおかしかった。胸を張れと言われた。あの時、なぜもっと何か言えなかったのだろう。本当の事を教えてくれなかった父に腹が立ち、同時に気の利いたことを言えなかった自分にも腹が立っていた。それでも胸に詰まるのは憤りではなく、懐かしさと悲しみだった。どれだけそうしていたのか、ノクティスはドアを開けて車から降りた。

「もういいのか?」

呼びかけられる声。カンテラの柔らかな明かりの中で、椅子に座ったシドが部品を磨いていた。隣にある机の上には、アルコール飲料が入っているのだろう金属のボトルが置かれている。

「いつから?」

「俺はずっとここにいた。お前さんが気付かなかっただけだ」

ノクティスはそのまま立ち去ろうとした。それにシドが独り言のように告げる。

「30年前そいつで旅をした。俺とレギスとクレイラスにウィスカム、それにコルの坊主。もう二人も欠けちまった。俺が一番最初だと思ってたんだがな・・・」

その言葉にノクティスは足を止めた。

「旅の途中からはほとんど帝国との戦いになった。レギスとは旅の終わりに喧嘩別れしてな、それっきりだ。別にずっと喧嘩してたわけじゃねぇが、意地になってな、会いに行く事ができなかった。手前が来いなんて言ってな。来れねぇのなんて分かり切ってたのにな。・・・難しいもんだ」

部品を磨いていたシドの手が止まり、部品を強く握っているのが分かった。

「車だけ寄こしやがって、30年経ってもそいつだけはあの頃のままだった。レギスがどれだけそいつを大事に扱ってたのか俺には分かる。お前の親父はな。強かったよ。いや、そうあろうとしていた。最初は生意気な若造だと思ったが、あれはただ口が下手だっただけだ。まぁ、俺も人の事は言えねぇな・・・大切だと思うなら、言葉にして伝えなきゃいけねぇ、分かり合えるまで何度でも言葉を交わさなきゃならねぇ、まぁ、できなかった俺が言っても説得力なんてねぇけどよ。付いてきてくれた仲間に気を使わせるんじゃねぇよ。・・・くそ、歳をとると湿っぽくなっていけねぇ。素直にはなれねぇのにな。年寄りの戯言だ。忘れてくれ。俺はもう寝る。お前さんも寝な」

そう言って、シドはカンテラの火を落した。

 

***

 

「ノクト、アンブラだ。アンブラが来た」

そう言って、部屋に飛び込んでくるプロンプトの声でノクティスは起こされた。日は既に上っている。

「おせぇぞノクト」

外に出ていくと、今まで鍛錬していたのか、大剣を壁に立てかけ、汗を拭いていたグラディオラスが呼びかける。ノクティスは未だ眠そうに欠伸をして頭を掻きながら

「あぁ、わりぃ」

そう返した。そんな普通の返事が返ってくると思っていなかったグラディオラスは驚き。

「お、おう」

と、戸惑いながら言った。外で待っていたアンブラは嬉しそうに尻尾を振りながらノクティスに近づき、ノクティスはその頭を撫でてやりながら、アンブラがもってきた手帳を受け取った。プロンプトがアンブラを撫でまわしながら聞いた。

「なんて書いてある?」

イグニスや、コルも集まってくる。

「迷いの森で待つ、ってさ」

「迷いの森?」

グラディオラスの問いに、イグニスが答える。

「ここから北に進んだところにある広く深い森だ。神話によれば雷神ラムウが住むともいわれているな」

「へぇ~」

「じゃぁ行こうぜ」

「では、ここから二台に別れよう。俺はトラックで行こう。あと車を運転できるのは」

「はい将軍、俺、俺運転できます」

プロンプトが元気良く手を上げる。

「イグニスにしようぜ」

グラディオラスが言う。

「賛成」

ノクトが賛同し

「わかった」

そう、イグニスが応える。

「なんでだよ」

「いや、おまえ初心者だし・・・」

ノクトが、アンブラの持ってきた手帳に返事を書いている間に、イグニスはシドニーから簡単な操作説明を受けた。グラディオラスは、武器や装備品をコルのトラックに積み込む。

「おい、金髪の小僧」

シドがやってきてプロンプトを手招きした。プロンプトがちょっと不満げに近づく

「お前さんは銃を使うらしいな」

「ああ、はい。そうですけど」

それを聞いたシドは、一丁の銃を差し出した。

「持ってけ」

「え?」

「お前さんにやる。元々帝国の武器である銃はこの辺じゃ手に入りにくいからな。今持ってる銃と、状況に合わせて使い分けな」

「おぉ~、ありがとうございます」

そして一行は、シドとシドニーに見送られ出発した。プロンプトはシドニーの姿が見えなくなるまで身を乗り出して手を振っていた。

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