FFXV:Another   作:祈Sui

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FFXV:Another chapter4 神話

クリスタルから顕れし神々は、

偉大なる竜神バハムート、気高き水神リヴァイアサン

物知りな雷神ラムウ、力持ちの巨神タイタン

心優しき氷神シヴァ、裏切り者の炎神イフリート

気まぐれな■神■■■■、■■■神■■■といいます。

 

創星記第1章 序の五

 

***

 

 車内は静かだった。イグニスは黙って車を走らせ。いつもは軽口をたたくプロンプトでさえ口を開かなかった。彼らが共通して感じていたのは、圧倒的な敗北感だった。車はやがて、深い森の端にたどり着いた。迷いの森。そう呼ばれる深い森。森の入り口からは道が極端に狭くなり、車で乗り込むことはできそうにない。降り続いていた雨も、森に着くころには止み、既に日が昇り始めていたが、森には濃い霧が立ち込めていて、ここから先を見通すことはできなかった。不意に森の奥、深い霧の中から生じたように、アンブラが現れ座った。

「アンブラか」

トラックから降りたコルに続き、王の形見であるレガリアから全員が降りると、アンブラは付いてこいと言うように吠え、歩き出した。ルナフレーナに会える。それは悲嘆の中にあってもノクティスを高揚させた。王都では結局会うことができなかった。映像では見ていても、実際に会うのは12年ぶりだ。ノクティスは初めて会った日の事を思い出す。

 

***

 

療養の為に訪れたテネブラエの宮殿で、ノクティスは初めてルナフレーナと出会った。ルナフレーナはノクティスよりも歳が上で当時からとてもしっかりしていた。次々に交わされる挨拶の途中でルナフレーナの番がやってきた時、ノクティスは何て綺麗なんだろうと思った。その後開かれた歓迎の最中、体調のすぐれないノクティスは用意された部屋で父親が戻ってくるのを待っていた。不意に犬の吠え声がしたと思ったら、どこから入り込んだのか、黒い犬がノクティスの近くまでやってきて、こちらを見ていた。試しに

「おいで」

と手を差し出すとその犬は嬉しそうに尻尾を振りながら駆け寄ってきた。ノクティスはその首筋を撫でてやった。

「ノクティス様、失礼します」

「は、はい」

その呼びかけにノクティスは、慌てて返事をしながら。ふと、部屋に犬が居てはいけないのではないかという考えがよぎった。自分が招き入れたわけではないが、咎められるのではないかと、ノクティスはどうしようかと思ったが、もう扉は開いてしまっていたし、身体の後ろに隠そうとしたその犬は横から顔を出してしまっていた。

「あ、この子は、その」

言い訳をしようとするノクティスの下から、その犬は、入ってきたルナフレーナの方へ駆けていきルナフレーナの身体に頬ずりをした。ノクティスはしまったと思ったが、ルナフレーナは驚くことも無く、その犬の身体をやさしく撫でた。

「アンブラ、私より先に御挨拶に来ていたのですね」

「アン、ブラ?」

「この子は私が飼っているんです。それにしてもアンブラが懐くなんて、私とゲンティアナ以外には懐かなかったのに」

そう言って彼女は笑った。

「ああ、ノクティス様、先ほども挨拶をさせていただきましたが・・・」

改めて自己紹介をしようとするその子の前にノクティスは答えようとした。彼女の名前をしっかり覚えていることを伝えたかった。

「うん、ルラフレーナ様」

ノクティスは堂々と言ったつもりがはっきりと発音できなかったことを恥じた

「ごめんなさい」

何度か試しても上手く発音できないノクティスに、ルナフレーナは、微笑んでいった。

「ルーナでかまいません」

「あ、うん。・・・ルーナ」

「はい。ノクティス様」

ルナフレーナは嬉しそうに答える。

「僕も、ノクトでいいよ」

「いいえ、ノクティス様は、指輪に選ばれし者なのですからそういうわけには参りません。ノクティス様はノクティス様なのです。これは、とても大切な事。だからそう呼ばせてくださいね」

「・・・うん」

ノクティスは良く分からなかったが、とにかく返事をした。自分よりも年上のルーナに、敬称をつけて呼ばれることが、誇らしいようなどこか寂しいような感じがした。それから帝国の急襲まで、ノクティスはルナフレーナと過ごしたのだ。立ち止まったルナフレーナに向けて伸ばした手が何も掴めなかった瞬間を今でも鮮明に覚えている。

 

***

 

振り返りながら進むアンブラについてゆくと、そこは、森の入り口から少し入ったところにある。池の畔の開けた場所だった。アンブラはプライナのところへかけてゆき、頬をすり合わせる。側に居たゲンティアナがこちらにむけ軽く頭を下げ、畔に立っていたルナフレーナが気付いて振り返った。

「ノクティス様」

12年ぶりの再会を喜び、その声が弾んだ。

「ルーナ」

ノクティスは、嬉しくとも単純に喜べない気持ちの中で、それでもそれを悟られまいと応えた。

「しばらくここで休息を取ろう。俺は念のため周囲を調べてくる」

コルがそう言い。

「俺もいく」

グラディオが付いてゆく。

「俺は、食事を作ろう。プロンプト手伝ってくれ」

「え?俺料理とかしたことない・・・けど」

ルナフレーナに声をかけたそうにしていたプロンプトをイグニスが引っ張った。

「構わない。まずは車に調理器具を取りに行こう」

そして、ゲンティアナも、いつの間にかいなくなっていて、池の畔には、ノクティスとルナフレーナだけが残された。ノクティスは何を言えばいいか迷っていた。言おうと思っていたことは沢山あったはずなのに、いざとなると何も言葉が出てこなかった。レイヴスと戦い敗北したことも、彼の心に影を落としていた。先に口を開いたのは、ルナフレーナだった。

「陛下をお守りする事が出来ませんでした」

「ルーナの所為じゃない。俺は何もできなかった」

「・・・指輪を陛下から託されました。別れるとき、陛下はただ、すまない。そう伝えて欲しいと」

ノクティスは差し出された指輪を、黙って受け取った。そして掌に載せて、ただ眺めていた。ずっと父の左手の薬指に嵌っていた指輪。

「陛下は王としての責務を果たそうと為されました。それが、ノクティス様を傷つけると分かっていても・・・あの方は、王と父との間に挟まれ、ノクティス様に全てを伝えることができなかった。どうか、そのお気持ちは汲んであげていただきたいのです」

ルナフレーナの言葉にノクティスは頷く。

「・・・分かってる。俺は・・・不安なんだ。王として、親父の後継者として相応しいのか、俺はただ守られていただけで、何もできなかった。そんな俺がこの指輪を嵌めていいのか・・・」

ノクティスの震える手にルナフレーナがそっと触れた。

「ノクティス様。幼いころに交わした約束を覚えていますか?世界を救う事が出来るのは、指輪に選ばれたノクティス様だけ。私は全力で、ノクティス様をお支えします。あの時から、その覚悟は変わりません」

その言葉にノクティスは顔を上げる。

「どうして、そこまで」

ルナフレーナは微笑む。

「信じていますから、神凪としての使命からだけではありません、幼き頃のあの日々、交わした手帳のやり取りから・・・ノクティス様の優しさと強さを私は知っています。

それはきっと陛下も・・・」

「俺でいいんだよな」

「私が保証します」

ノクティスは目をつむり、指輪を嵌めた。瞼の裏の暗闇の中、体を撫でる風と共に温かい何かが、体中に満ちてゆくのを感じる。沢山の人間の意思が語りかけてくるような・・・その中に、懐かしい声を聞き、背を軽く押されたような気がした。ノクティスは驚きから目を開けた。けれど、前にも後ろにも期待した何かが見えることは無かった。

「少しだけ、分かった気がする。親父の気持ちが」

ノクティスの頬に一筋の涙が伝い。そして笑った。

「今、もう一度誓うよ。選ばれし王として、親父を継ぎ、ルーナとの約束を果たす」

ノクトは指輪を嵌めた右手を強く握りしめた。

「はい」

ルナフレーナは嬉しそうに言った。

 

***

 

森の外まできて、グラディオラスはコルに呼びかけた。

「将軍、久しぶりに稽古つけてくれよ。手加減せずに本気で・・・」

コルが振り返る。

「もっと強くなりたいんだ。いや、ならなきゃならねぇ」

「いいだろう」

そう答えるとコルは刀を召喚した。

 

***

 

池の近くの開けた場所。けれどノクティスとルナフレーナからは離れている場所でイグニスとプロンプトは料理をしていた。といってもプロンプトはほぼ見ているだけだった。

「でも良かったよね。無事にルナフレーナ様と会えて」

「そうだな」

「いやぁ、それにしてもルナフレーナ様綺麗だったなぁ。写真や映像で見るよりずっと」

「おかげでプロンプトが元気になったな」

イグニスの言葉にプロンプトが答える。

「まぁ、そのやっぱり不安とかはあるよ。でも俺がしょげてちゃいけないっていうか、ノクトの為にも、ルナフレーナ様の為にも」

「そうか」

イグニスはそう言って、出来上がった料理を味見して口元を綻ばせた。

「よし、完成だ。食事にしよう皆を呼んできてくれ」

「分かった」

プロンプトが走っていく。

「ノクト、ご飯できたって」

遠くからノクトが返事をする声が微かに聞こえる。そこへコルとグラディオラスもやってきた。

「あっ、将軍ちょうどよかった、ってグラディオどうしちゃったの!?」

グラディオラスの汚れきった姿を見てプロンプトが聞く

「ちょっとな」

「いやちょっととかいう感じじゃないんですけど」

「うるせぇな、特訓だよ。特訓。とっとと食事にしようぜ、腹減った」

プロンプトが小声でノクティスに言う

「ノクト、ほらルナフレーナ様呼んで」

「ん?、ああ、ルーナも良かったら、イグニス料理の腕はいいから」

「料理もだろ」

グラディオラスが言ってイグニスのところへ向かっていく

「ゲンティアナさんは?」

プロンプトがあたりを見回しながら言う

「ゲンティアナは食事をしないのです」

「そうなんですか」

ノクティスが笑う。

「プロンプトお前、人によって口調変わるよな」

「それは、まぁ、なんといいますか」

照れ笑いのような物を浮かべるプロンプトにルナフレーナが微笑みかける。

「あなたがプロンプトさん。プライナを助けてくださった」

「覚えていてくれたんですか」

プロンプトが喜ぶ。

「もちろんです。あの時は、ありがとうございました」

「いえいえ、そんな」

頭を下げられたプロンプトは恐縮した。

「なんだよ、そんな事あったのかよ。言えよ」

ノクティスが笑ってプロンプトを小突く。

「もうずっと前の事だよ」

当時を思い出し、懐かしい気持ちになるプロンプトにルナフレーナが告げた。

「それに、忘れたりしませんよ。ノクティス様とやり取りした手帳に、プロンプトさんの事はたくさん書いてありましたから」

「え?・・・あの、それ、ちょっと詳しく教えていただきたいんですけど」

「ルーナそれは駄目だ」

ノクティスが慌て始める。

「じゃあ、秘密です」

ルナフレーナが笑う。

「ノクト、さっさと来ないと全部食っちまうぞ」

グラディオラスが皿を手に持ちながら呼んだ。集まったノクティス達にイグニスが取り分けた皿を渡してゆく。

「頂きます」

ルナフレーナが丁寧な所作でシチューを匙ですくう。いつもなら、がっつくプロンプトも、それに倣いぎこちなく食べ始める。

「美味しい」

口に入れたルナフレーナ言う

「だろ?」

ノクティスが自慢げに言う

「いや、お前の手柄じゃねぇから」

グラディオラスが突っ込む。

「そう言っていただけると光栄です」

イグニスが軽くお辞儀し見せた。

「これは、強敵です・・・」

ルナフレーナは誰にも聞こえぬように小さくつぶやいた

「何かいいましたか?」

イグニスの問いかけにルナフレーナは首を横に振った。

「いいえ・・・ところで、ノクティス様は今何をなさっているのでしょう?野菜を別の皿に移し変えているように見えますが・・・まさかまだ野菜が食べられないとか、そんなことはありませんよね?」

ルナフレーナは、12年前のノクティスが野菜を嫌いだったことを思い出しながら聞いた。ノクティスは一瞬動きを止める。

「・・・いや、これは、イグニスが好きだから分けてあげようと思って」

助けを求めたノクティスの目を真っすぐに受け止めてイグニスは答えた。

「大丈夫だ。まだたくさんあるからな」

「だ、そうだが?」

グラディオラスが意地悪そうな笑みを見せて言う

「ノクティス様、それなら安心ですね」

「・・・そ、そうだな」

ノクティスは渋々取り分けた野菜を掬い。食べ始める。それを見たルナフレーナが微笑み。イグニスは満足そうに頷いた。プロンプトは驚きと共にノクティスを見ていて、グラディオラスは笑いをこらえていた。遠慮して少し離れた位置にいたコルはそれを見て、黙ってシチューを口に入れた。

 

***

 

 「ノクティス様、ファントムソードを展開してみてください」

食事が終わったあとルナフレーナが言った。

「でもファントムソードは・・・」

「指輪を嵌めた今、展開できるはずです」

「わかった。やってみる」

ノクティスは集中し、手をかざした。同時に、青い輝きと共に複数の剣が空中に現れる。

「おお、ファントムソードが復活した」

プロンプトが歓声を上げる。

「いや、なんかおかしい」

言い終わらないうちに、展開されていた青い光の剣は散るように消えた。

「あれ?消えちゃった」

「ノクティス様のファントムソードの源は王都に有ったクリスタルからレギス陛下の指輪を経由し供給されていました。それが今は、指輪の力のみによって展開されています」

「つまり使用に制限が有ると?」

イグニスが聞く

「そうです。指輪の力のみでは、それが限界です。ですが、神々から力を借りる事が出来れば、たとえクリスタルが無かったとしても神々から指輪に提供される力によってファントムソードを維持することができるようになるはずです。かつてと同じ、いえ、それ以上の力の行使も可能になるでしょう」

「神々の力を集める」

「ええ、それがこれより先、ノクティス様の目指すものとなります。王都が襲撃されクリスタルが奪われた事で世界のバランスは乱れ、雷神ラムウが目覚めました。雷神は、この森の奥で王の訪れを待っています」

「それでこの森なわけか」

「そうです。世界の崩壊は、本来もう少し先の筈だった。けれど、帝国の侵攻でその日は急速に近づいています。巨神タイタンもじきにノクティス様を呼ぶでしょう。そしてオルティシエの水神リヴァイアサン・・・ノクティス様、雷神ラムウ、巨神タイタンの啓示を受け、力をお付けください。私は一足先に水神の眠るオルティシエでお待ちしております」

「えっ?ルナフレーナ様も一緒に」

当然ルナフレーナも一緒に来ると思っていたプロンプトが驚きながら問う。

「そうしたいところですが、私が各地で神凪としての役目を果たしながらオルティシエへ向かえば、帝国は私の生存を認めざる負えなくなり、帝国の目は私へと向くでしょう。少しは動きやすくなるはずです」

ルナフレーナの目には決意が見えた。

「わかった。神々の力を手に入れて、必ず向かう」

「では」

そういって、出発しようとするルナフレーナをプロンプトが呼び止めた。

「あ、そうだ。ルナフレーナ様。少しだけ待ってください」

 

***

 

「はい、並んでください」

プロンプトが構えたカメラの前で湖を背にして、ノクティスとルナフレーナが並んでいる。

「ノクト、もっと寄って」

そういわれて、ぎこちなく半歩だけ近づいたノクティスにルナフレーナが寄り添って微笑む。

「はい、撮ります」

湖畔に軽いシャッター音が響いた。

「しっかし、避難するときにカメラなんぞ持ってくるかね」

グラディオは呆れた様子で呟いた。ルナフレーナが出発する直前ゲンティアナがどこからともなく現れ、ルナフレーナの横に並んだ。慣れていないプロンプトとイグニス、グラディオラスが驚く。ノクティスとルナフレーナは平然としていた。

「それでは皆さま、ノクティス様をよろしくお願いします」

ルナフレーナは、そう深々と頭を下げた。

「任せてください」

プロンプトが元気良く返し、イグニスやグラディオも応じる。コルは軽く頷いて返した。

「ルーナ、気を付けて」

「はい、ノクティス様も」

ルナフレーナは微笑みながら頷いて、ゲンティアナと一緒に出発した。

「さて、俺達も出発するか」

グラディオラスの声に

「そうだな」

ノクティスが同意する。

「いざ、迷いの森、雷神の元へ。さぁ将軍、行きましょう」

「その事だが、俺はこれから、残った王都警護隊を率いて遊撃戦を開始する」

「え?将軍も付いてきてくれないの?」

「ああ」

「レイヴスがまた来たら・・・」

プロンプトは言葉を重くした。先ほどまで、ルナフレーナがいたから口に出さなかった言葉だ。グラディオラスが自分の不甲斐なさを思い出し、拳を握りしめる。その肩を、コルは軽くたたいた。

「あの力は特別なものだ。それに魔導機関を用いた義手で力を増大させている。敵わなかったと言っても恥じる必要は無い」

「でも、将軍は対抗できた。いや、押してすらいた」

「あれは、経験のなせる技だ。それに戦う前にレイヴスの力を見ていたからこそできた事。王子、あの魔法を見てどう思った?」

「どうって・・・親父の、魔法みたいだと思った」

「そうだ。陛下の用いていたホーリーと魔法防壁。奴は魔法防壁を足場にも利用していたが・・・。身体能力の強化は、魔導機関により無理やり引き出したものだろう。王都にて王の剣が討伐したグラウカ将軍が魔導機関式甲冑により似たような力を引き出していた。だが、陛下の魔法とレイヴスの魔法には決定的な違いがある」

「魔法陣」

「そう、陛下は魔法の発動に魔法陣を必要としなかった。だが、レイヴスの魔法には、魔法陣の事前展開が必要不可欠なのだろう。そしてレイヴスの言った指輪の力の一端という言葉。フルーレの血のなせる事か恐らくレイヴスは王都にて指輪の力の一部を手に入れたのだ。だが、それは完全なものでは無い。王子が神々の力を手に入れれば少なくとも対抗可能なはずだ。あとは経験次第。シフトはルシス王家だけが使える特別な力だが、いつでも通用する万能な技ではない。相手がそれを理解し、対抗策を持っていた場合。罠に飛び込むようなものになってしまう」

ノクトはレイヴスとの戦いを思い出し苦い顔をした。

「もっとよく考えて使え、そして、基礎鍛錬と剣術を疎かにしてはいけない。・・・それからなによりも、お前たちは一人で戦ってるんじゃない。それを忘れるな」

イグニスは自分が参謀役として適切な指示を何もできなかったことを思い出す。

「それにしばらくはレイヴスの襲撃を心配する必要は無いだろう。恐らく次に帝国と正面からぶつかり合う事になるのは、オルティシエになる」

「どうして?」

「フルーレ家で神凪の兄であるレイヴスはこちらが神々の力を集めようとしていることを知っている筈だ。そして現在確かな神々の所在地は4つ、その中で、帝国領でないものは3つ。迷いの森は広く深すぎて、軍の展開が難しい。タイタンが居るというカーテスの大皿付近は飛空艇の運用が不可能らしい。帝国の飛空艇がカーテスの大皿付近で墜落したことは知っているか?」

コルの言葉にイグニスが頷く。

「ええ、随分昔、帝国は整備不良だったと発表したと思いますが」

「ああ、だがその一件以来帝国の飛空艇があの付近を飛行した記録は無い。恐らくはメテオの影響だろう。レスタルムが飛び散ったメテオの欠片から電力を得ているように、メテオはクリスタルではないがそれ自体がエネルギーを発している。それが帝国の使う魔導機関の動作を不安定化するのだとルシス研究部は考えていた。もしもカーテスの大皿で戦端を開こうとすれば、帝国は飛空艇の支援無く戦わなければならない。故に、帝国とは、水神の眠ると言われるオルティシエで一戦を交える事になるだろう。どちらにしても王都を陥落させた帝国の次の狙いはアコルド、その首都であるオルティシエだ。・・・王子、神凪の導きに従い、神々の力を集め、王の意思を継げ、これはお前にしかできない」

 

***

 

 ルナフレーナとコル、それぞれと別れ、残された四人は、雷神が眠るという迷いの森へと踏み込んだ。霧は未だ晴れず、先は見えない。初めの内こそ警戒していたが、何か害意のある生き物が襲い掛かってくることは無かった。というよりもどこの森でも見られるような小動物を見かけることも無い。異様に静かな森だった。

「しっかし、神使ってのは凄いな。気配が読めねぇ」

「昔から何処にでも現れるし、歳も取らねぇみたいだし、魔法も使える。やっぱ人間とは違うんだろうな」

グラディオラスの疑問に、ノクティスが答える。

「魔法、か・・・でも、なんでそんなに凄いのに、テネブラエはすんなり占領されちゃったんだろうね?」

プロンプトの質問にはイグニスが答える。

「テネブラエは大した軍事力を持たなかった。彼女の強さがどれほどのものであったとしても、独力で帝国を退けられるほどのものでは無いだろう。それに仮にその状態で迎え撃てばテネブラエの被害は大きくなる。テネブラエが受ける被害を避けたかったのかもしれない。実際テネブラエは帝国の属州となったが、神凪という象徴までは手を出せず。自治権を認めざる負えなかった。帝国軍の駐留こそ許したが、街も人々の生活も変わらずに続いている」

「ふ~ん」

プロンプトたちは感心しながら森を進んでいく。

「もう一つ聞きたいんだけどさ、イグニスは、俺にも対抗策があると思う?」

「対抗策とは?」

「レイヴスの・・・ほら、俺魔法とか使えないし、唯一の武器である銃もレイヴスには通用しなかった」

「レイヴスの魔法は決して無敵ではない。例えば、将軍がやっていたように、発動する前に展開された魔法陣を破壊すれば魔法は発動しない。しかし、遠距離からとはいえ銃弾に対応してきたレイヴスにこれをやるには、かなりの早撃ちと、あるていどレイヴスに接近する必要がある」

「そっか近づかなきゃいけないのか」

「ただ、それはリスクが大きくプロンプト向きとは言えない」

「・・・だよね」

「もう一つ近づかなくて済む方法もある」

「それは?」

「射撃速度と、命中精度を高める方法だ。クリスタルから直接発生する魔法障壁と違い人が作り出す魔法防壁には弱点がある」

「弱点?」

「強力な攻撃を受けると減衰し、崩壊するところだ。防壁は魔法の上書きによって再生するが、その間、防壁は消滅する。銃弾をできるだけ早く、続けてほぼ同じ位置に打ち込むことができれば、防壁を貫き崩壊させる事が出来るかもしれない」

「なるほど、正確な射撃力と射撃速度が必要になるんだね」

「そう言う事だ」

「ありがとうイグニス、俺もっと射撃の腕を磨くよ」

それを聞いて、グラディオラスも決意を新たにした。

「次は勝とうぜ」

ノクティスも頷く

「ああ」

森は何処までも続く

「それにしてもよ、ちょっとおかしくねぇか?なんかずっと同じ場所を周っているような・・・」

「あー、俺もそんな気がしてた」

プロンプトもそう言う

「ほら、あの像さっきもあったよね」

そこには、小さな祠のような岩の中に人を象ったような像が置かれていた。

「でも一本道だったよな」

「やっぱあの像怪しくない?ちょっと動かしてみる」

プロンプトが祠に近づき像に手を伸ばした。

そしてその手が像に触った瞬間。

「あああああああああああ」

叫び声と共にプロンプトが飛びのいて転げまわった。

「どうしたプロンプト!」

「いってぇえええ、なんか、びりっとした、やっぱなんかあるよ絶対。ノクトやってみてよ」

「いや、やだし」

「じゃあグラディオ」

「なんでだよ・・・仕方ねぇノクト一緒にやろうぜ」

「はぁ?一緒にやる必要ねぇだろ」

そう言って逃げようとするノクティスの手は、既にグラディオに掴まれていた

「待てグラディオ」

ノクトが逃れようとする

「電気?雷神のものだとしたら、もしかしたらそれは・・・ちょっとまてグラ・・・」

「せーの」

グラディオがノクティスの手を掴みながら像に触れた。

「おおうっ」

「グラディオが崩れ落ちる」

残った手で防ごうとしていたノクティスがあたりを確認する。

「何やってんだ?なんともねえじゃねぇか」

ノクトが不思議そうに告げる。

「遅かったか・・・恐らくその像はノクト以外が触れると感電する」

「もっと早く教えてくれ」

「すまない」

「んで、この像をどうしたらいいんだ?」

「方向を変えてみたら?」

「こうか?」

「おい、今なんか動く音聞こえなかったか?」

「そういえば途中に妙な石壁があったな」

「行ってみよう」

途中の石壁のところに至ると、石壁が横に動き道が出現していた。

「おお、道ができてる」

プロンプトが喜んだのもつかの間。

「あー、また同じとこだよ」

「いや、良く見ろ、像が増えている」

「あっ、本当だ」

「迷路みたいだな・・・」

「こんなめんどくさい仕掛けつくる雷神ってどんな奴なんだろうね。ってか今更だけど神々って昔話とか神話に出てくるあれだよね」

「なんだよ、プロンプト神々も知らねぇのかよ」

「じゃあグラディオ説明してよ」

「それは、お前あれだよ。すんげぇ力を持ってる奴らだよ」

「説明になってないんですけど」

イグニスがため息をつきながら説明を引き受ける

「神々、俗に言う八神は、ずっと昔この星を創った女神の遺骸から生じたクリスタルから生まれ、クリスタルと星を守護する存在だと言われている。召喚獣とも呼ばれるのは、世界の始まり、女神と混沌の争いにより無まれた原始生物が、生存競争により多様化した現行生物とは異なり、女神のクリスタルから直接化生せし存在、女神により喚起された存在であると考えられているからだ。神話に記されているのは、物知りの雷神ラムウ、裏切り者の炎神イフリート、心優しき氷神シヴァ、力持ちの土神タイタン、気高き水神リヴァイアサン、偉大なる竜神バハムート」

指を折りながら数えていたプロンプトが、そこで途切れたイグニスの説明を元に聞き返す。

「あれ?六つしかいないよ?もしかしてイグニスも」

プロンプトが笑みを作る。イグニスはそれを無視して続ける。

「あと二神は創星記にも正確には記されていない。何処かで途絶え忘れられたか人の前に現れたことが無いか」

「じゃあ、なんで六神じゃなくて八神っていうんだろうね」

「それは、ノクトの方が詳しいな」

「あ?俺?なんか聞いた覚えがあるような、ないような」

イグニスは呆れる。いつもの事だ。

「まったく。伝承によれば、竜神バハムートが人に指輪を授けた時。この指輪を継承し、いずれ来る危機に備えよ。世界に残った女神の断片、クリスタルと八神の力のみが世界を救いうる。と」

「言い間違えたんじゃないのか?」

「竜神が?」

「もしくは、受け取った人が伝え間違えたとかな」

「なんかノクト見てると、そんな気がしてきた。だってノクトの御先祖様でしょ?」

「俺はそんな間違いしねぇ」

「どうだか」

「しかし、世界の危機か・・・なんか大きすぎて分かんねぇな」

「ノクトが背負っている物は、王都や帝国、国家の問題ではないのかもしれないな」

「神話が事実だったっていうのか?」

「わからない。だが、事実として指輪とクリスタルは存在している」

「まぁ、ここで考えてても仕方ねぇか、それがなんであれ、神々の力を手に入れなきゃな。今のノクトには力が必要だ。まず目の前にある帝国の脅威に対抗するためにも」

「そうだな」

「それで、雷神以外の場所は?」

「タイタンがメテオを支えているダスカ地方カーテスの大皿。水神リヴァイアサンが眠るという、アコルドの首都、水の都オルティシエ、氷神シヴァの亡骸があるという極寒の地、グロブス渓谷だな」

イグニスの説明をプロンプトが慌てて遮る。

「いやいや、ちょっとまってよ。亡骸?死んでるの?なんで?」

「伝承によれば、かつて氷神と炎神の間で戦いが起こったらしい。戦いの理由については諸説あるが、最も一般的な物によれば、氷神は人を守ろうとし、炎神は人を殺そうとしたらしい。二神は人を巡って争った。そして共に斃れた。神々は人の誕生を祝福したと言われている。その証が、神々が人に授けたとされる指輪。今ノクトが持っている光曜の指輪だ。だが、いつしか炎神は、残りの七神と違い人を憎むようになった。それが裏切り者と呼ばれる由縁だ。炎神の爪痕というものは大陸の至る所に残っている」

「ふ~ん、イグニスは物知りだねぇ」

プロンプトは感心したように言う。

「神話ぐらい学んでおけ。・・・話がそれたが実際氷神の亡骸はあるらしい」

「それそれ、死んでたら力貰えないじゃん、どーすんの?」

「伝承が事実なら最悪二神の力が手に入らないわけだが」

「炎神も亡骸があるのか?」

「いやそのような話は聞いたことが無い」

「でも、生きてたとしても力貸してくれないでしょ。人を憎んでるんだから、ねぇ?」

「まぁ、あんまり期待せずに行くだけ行ってみるしかねぇだろ。あとの炎神と竜神の居場所は?」

「残念ながら不明だ。竜神に関する記述は少なく、炎神のものとされる戦いの跡は全土にあるから、炎神がどこで斃れたのかも分からない。ただ氷神の亡骸がグロブス渓谷にある事を考えれば、その付近。帝国領内の何処かである可能性が高い」

「どっちにしろ帝国とは、やり合うしかねえか」

グラディオラスの言葉にノクティスが重ねる。

「避けるつもりもねぇしな」

「取りあえず、雷神、巨神の力を手に入れて、水神の待つオルティシエへ向かおうぜ」

グラディオラスの言葉に頷きながら、幾つかの像の迷路を抜けると不意に開けた空間に出た。奥には巨石がそそり立っている。

「さて、どうやらここが最深部の様だな」

「うわっ、さっきより大きな像がたくさん並んでる」

(・・・知恵を、見せよ・・・)

「あ?」

「どうかしたノクト?」

「いや、今なんか聞こえなかったか?知恵をみせろとか」

「いや、何も聞こえなかったが」

「雷神の声か?」

「分かんねえ、とりあえず進もうぜ」

「でも、なんかやばそうじゃない?近づいた瞬間動き出しそうなんですけどあれ」

「確かに怪しいな」

「この像の配置、何かに似てないか、下の苔の模様も」

「チェスか?」

「取りあえず一つ動かしてみろよ」

「んじゃあ、まずこいつを、プロンプト、手伝ってくれ」

「いやいや無理だって、ノクトにしか触れないもん」

プロンプトは感電する事を恐れ拒否した。

「仕方ねぇなぁ。お?以外に軽い」

ノクトはひとつ持ち上げて動かして見せた。

「うぉおおお、向こうのも一個動いた」

プロンプトが興奮する。

「知恵を見せろとはこの事か、相手は雷神だろうな」

此方が一つ駒を動かすと、向こうも一つ駒が動く

「あー、なんかこれめんどくせえな。そうだ、別に律儀にひとマスずつ運ぶ必要ないんじゃないか?一気に敵陣の奥まで運んで終わらせてやろうぜ」

「待て、ノクト、それは嫌な予感がする」

「これだって知恵だろ」

「ノクト止めて」

「なんだ、これふたマス以上進めようとするとめっちゃ重くなる。おらぁあ」

ノクトが強引に像を投げ飛ばしたとたん像が砕け散った

「あれ?」

そして向こう側に有った像が全て台座から立ち上がった。

「ほらぁああ、ズルするからぁあああ」

プロンプトが叫ぶ

「感電するぅうう」

逃げ回り始めたプロンプトに

「銃なら平気だろ」

グラディオラスが冷静に告げる。

「あっ、そっか」

「初めからこうすりゃあよかったんだ」

ノクトが、そう言って像を破壊していく

プロンプトが距離をとりながら銃を撃ち

イグニスとグラディオラスは剣を投げては像を壊していった。

「よし、全部倒したな。いこうぜ」

ノクトがそう言った瞬間、砕け散った像が消え去り、両陣営の像が最初と同じ位置に復元された。

「あー、勝つまでやれってか?」

「ノクト次はズルしないで勝って、もうあれと戦いたくない」

「たしかに、何度も戦えば体力的に限界が来るぞ」

「わかったわかった慎重に行こうぜ。まずは定石だな」

「待った」

手堅い一手を打とうとしたノクトをイグニスが止めた。

「戦いながら気付いたことがある。あそことあそこ、地面が苔ではなく岩になっている」

「ああ、つまり?」

「これは、対等な遊戯ではなく恐らく絶対に勝てる手が存在する」

 

***

 

奥の巨石に現れた穴に枝分かれした奇妙な石が鎮座していた

ノクトの頭に若干呆れたような声が響く、

(まァ、よかろう。石に指輪を翳すがよい)

ノクトが言われたように指輪を翳すと、指輪と石の間に雷撃が生じ、ノクトの眼が赤く光った。雷光はすべて指輪に吸収され消えた。

「いやぁ、やっぱイグニスだよねぇ。イグニスいなかったら永遠に抜けられなかったかも」

「事実過ぎて怖いからやめろ」

「まぁ、でも良かったんじゃねぇの?雷神の力手に入ったし」

「良くない、もっと慎重に行動しろ。最初からこれでは先が思いやられる」

「少なくともまだ二つはあるもんね」

プロンプトの明るい声と共に、ノクティス達は森を後にした。

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