超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第十二話 魔龍の咆哮

少しだけ背が伸びて、少しだけ体重が増えて、普段よりもずっと身体が軽く、動き易くなった様な感覚。本来人にはない筈の翼があって、それが最初からあったかの様に自在に動かせる感覚。そして何より、自分の…皆の思いが力となって内側から溢れ出してくる様な感覚。

全部、全部懐かしかった。そう、これは……正しく、女神化した時の感覚だ。

 

「ディールちゃん、ディールちゃんには後衛を頼んでも良いかな?」

「勿論です。わたしは後衛が、イリゼさんは前衛が本職でしょう?」

 

私は長剣を、ディールちゃんは杖を構え、互いに顔は相手に向けたままちらりと目線だけを動かして言葉を交わす。こういうのも、久しぶりだな…。

 

「じゃあ、早速…といきたい所だけど、まずは自分の治癒に専念して。今のままじゃ十全の力は発揮出来ないでしょ?」

「…その間、イリゼさんはどうするおつもりで?」

「ちょっとあいつと小手調べしてくるよ。…大丈夫、無茶はしないし…このまま戦う方が後々悪い影響及ぼすと思わない?」

「……分かりました。暫くは援護に期待しないで下さいね?」

「了解!」

 

私の言葉を合図とする様に、私は前へ、ディールちゃんは後ろへと跳ぶ。私の狙う先にいるのは勿論魔龍。

 

「何ガヤロウカ、ダ…直前マデ何モ出来ナカッタ小娘如キガ…!」

「返す言葉もないですね、『直前まで』って部分も含め…てッ!」

 

両腕を広げ正面から迎撃しようとする素振りを見せた魔龍の姿を私は確認。魔龍の腕の届かないギリギリの距離まで直進を続けた後、そこから大きく左斜め前へ跳ぶ事で一気に側面へ移動。そこから挨拶代わりの気持ちで一太刀放ったけど…魔龍はそれを想定していたのか、尻尾を振るう事で遠心力を生み出し、体勢を変える事で私の刃を回避する。

 

「当タルモノカ…!」

(やっぱりキラーマシンシリーズより動きが良い…)

 

巨体、ハイパワー、重装甲と言えばキラーマシンシリーズ。外見は大きく違うし龍とAIが同じ思考をする訳がないけど、方向性の近い敵ならば経験を元に戦う方が良い筈……と、思っていたけど、近くで見ると魔龍の動きは想定以上だった。このレベルだとむしろ経験に足をすくわれる事になりかねない。

 

「フンッ!」

「…っとぉっ!」

 

巨体を捻り、魔龍は正面から膝蹴りを放つ。それを私は前へ滑り込む事で回避しつつ長剣を振るって魔龍の脛を斬りつけるけど…力を込められる体勢ではなかった事もあって皮と表面付近の肉を軽く斬る程度に留まってしまう。更に次の瞬間、魔龍の下を抜けようとする私に丸太の様に太い尾が迫る。

 

「ち……っ!」

 

その場で横へ勢いよく転がる事で尾の一撃を避ける私。硬い床で前転とも側転ともつかない微妙な回転をしたものだから頭や肩に鈍い痛みが走ったけど…魔龍の攻撃を受ける事に比べれば大した事は無い。

その後も私は魔龍から離れず近距離で長剣を振るう。いかに自分の土俵に相手を乗せつつ相手の土俵に自分が乗らない様にするかが戦闘における重要なファクターだけど…それが出来たからといって安心出来る状況になるとは限らない。

 

「エエィ、鬱陶シイナ…!」

 

魔龍の爪が私の顔のすぐ側を掠めていく。図体のでかい敵と相対する時は相手の懐に潜り込むのが定石だけど、相手の攻撃が届かないアウトレンジから一方的に攻撃するのと違って、懐に潜り込む戦法は少なくとも相手の攻撃が届いてしまう。そして往々にして図体のでかさとパワーとは比例する。もし私の判断が少しでも間違っていたら、私の首は黒ひげ危機一発並みに吹っ飛んでいるところだった。

 

「……ッ!鬱陶シイトイッテイルダロウガッ!」

「な…っ!?無茶苦茶な……!」

 

魔龍からすれば私は身体の周囲でちょこまか動いてチクチクと致命傷にはならない攻撃を断続的に続けている様なもの。早かれ遅かれ業を煮やして無理矢理私を引き剥がすだろうとは思っていたけど…その方法は私の予想を大きく超えていた。

吐き出す様に魔龍の口から放たれる火球。その火球は私ではなく床へと落ち…そこから全方位へと爆発する。当然炎は私だけでなく魔龍の身体も激しく打つけど、それを受けても魔龍は涼しい顔。対して私はその場にいたらほぼ確実にロースト女神になっちゃうから致し方なく後退。そしてそれはつまり、私は魔龍の土俵に立つという事だった。

 

「ソォラ、潰レロッ!」

「そうは問屋が卸さない…ッ!」

 

リーチの長い腕での薙ぎ払い。それに続く形で次々と放たれる火球。腕は飛び上がる事で避け、火球は即座にシェアを圧縮する事で精製した剣を同じく圧縮したシェアを爆発させる事で推進剤として全て迎撃する。…が、最後に放たれた小型の火球は迎撃に失敗。何とか長剣で斬り払う事には成功したものの、魔龍に対して付け入る隙を与えてしまう。

正面から突進を仕掛けてくる魔龍。咄嗟に私は剣を掲げたけど…防御しきれるとは到底思えなかった。体格差があり過ぎる以上、正面からの突進を受け止められる訳がないし、避けるのもやはり体格差の問題で困難極まりない。

……筈だったけど、私は避けられた。…と、言うよりも避けていた。--------私の後方から吹き抜けた、唐突な突風によって。

 

「っとと…あれ……?」

「ふぅ…間一髪でしたね」

 

突風の正体…というか発生源は即座に判明する。その声を聞けば…いや、そもそもこの場で私に有利に働く事をしてくれる存在なんて、ディールちゃん一人しかいない。

再び並び立つ私とディールちゃん。一人ならともかく二人相手にただ突っ込むだけでは流石に押し切れないと魔龍も判断したのか、グルル…と唸りをあげながら私達と正対している。

 

「もう治癒終わったの?」

「応急処置は終わりました。本格的な治癒はいつ終わるか分からないので、この戦いの後にします」

「そっか…うん、了解」

 

本音を言えば、その本格的な治癒もすぐにしてほしい。けどそう言っても聞いてはくれないだろうし、ディールちゃんの判断が間違ってるとも言えないし、何より一人で勝てる相手ではない。悔しいけど、私は応急処置しかしてないディールちゃんに戦闘参加してもらうしかなかった。

 

「さて、それでですが…問題なのは奴の硬さです。イリゼさん、五分間だけでいいので身体能力が百倍になったりしませんか?」

「んー、ディールちゃんが『メテオテール』って呪文一つで色々出来る魔女っ子なら私をそうする事も可能かもね」

「じゃ、それは諦めます。…ですがわたしが本気で撃ち込んだ魔法を易々耐えるあいつにダメージ与える手段をまず考えないと、こちらに勝ち目はありませんよ?」

「その事なら問題ないと思うよ。だってさっき戦闘中に少し背中見えたけど…かなりグロい感じになってたし」

 

正対している今は見えないけど、魔龍の背には確かに強い攻撃を受けた痕があった。あの傷は、どう見ても軽傷だとは思えない。なのに魔龍の動きが殆ど衰えていないというのは……

 

「…もしかして、痛覚が鈍い……?」

「恐らくそうなんだろうね。鈍いのか全く感じていないのかは分からないけど…」

「そうなると、やはり強い攻撃を当てる必要がありますね…」

 

魂が崩壊しなくなったタイプのゾンビならともかく、痛覚が鈍いというのは最終的には弱点になる。だけど、それはダメージの蓄積に疎くなるからであって、短期的に考えればむしろ長所と呼んでも差し支えない。スタミナも相当なものと思われる魔龍に長期戦を挑むのは危険な以上、私達が勝つには最低でも後数発は重傷になる攻撃を叩き込む必要があった。

 

「…まずは、こちらの攻撃機会を作ろうか」

「ですね。…わたしはイリゼさんに合わせて援護、隙を見ての攻撃を仕掛けます。だから……」

「私はあいつが私を狙う様に立ち回れば良いんだよね?」

 

ディールちゃんが言い切る前に言葉を引き継ぐ私。するとディールちゃんは一瞬驚いた様な表情を浮かべ…その後強い意志を灯した瞳でこくんと頷く。

大雑把な方針しか決めていない作戦。でも、私達にはこれで十分だった。

 

「無駄話ハ終ワッタカ?雌共ガ…」

「えぇ終わりましたよ、わたし達が勝つ算段ですけどね…!」

 

複数の氷弾を撃ち込むディールちゃん。それと同時に私は飛翔し、山なりの軌道で魔龍の上へと回る。直線軌道と曲線軌道による挟撃。しかし魔龍はサイドステップによって難なく回避し、そこから勢いを付けて私へと飛びかかる。

……が、魔龍の反撃は空を切る。

 

「ヌゥ……ッ!?」

「残念でし…たッ!」

 

横蹴りをする様に足を振るって即座に反転した私は、素早く魔龍へ肉薄する。

私は確かに魔龍の方へと接近していたけど、実際には魔龍よりもかなり上へ向けてだった。けど、直線よりも軌道の読み辛い曲線軌道でもって接近した事と、同時に読み易い直線軌道の氷弾が放たれた事によって私達の予想通り、魔龍は私の位置を誤認した。

そして、誤認はこれだけではない。

 

「小賢シイ…!」

「それは褒め言葉として…受け取るよッ!」

「ナ……ッ!?」

 

私同様反転を行う魔龍。それを視認した私は、それ以上接近せずに力を抜きひらりと落下する。そしてその瞬間、魔龍の後方…ディールちゃんの所から放たれる鋼の刃。本命の攻撃は私が行うと思っていた魔龍はそれに気付く事も出来ず、魔龍の背の傷口へと刃が深々と刺さる。

どんなに強い存在でも、勘違いしてしまえば相手の意図を読めなくなるし、気付いていない攻撃に対処する事は出来ない。そしてそれを狙える事は、対魔龍における大きなアドバンテージだった。

 

「深追いは禁物ですね…イリゼさん!」

「魔龍…私を見ろッ!」

 

痛みはなくとも怪我を増やすのは気分が良くないのか、背へ腕を回して無理矢理刃を引き抜く(というか引っぺがす)魔龍。魔龍は下がり、私達の両方を視界に捉えられる位置まで移動する。

 

「貴様ダケニ構ッテイラレルカ!」

「なら、あんたの視線を釘付けにする…ッ!」

 

長剣を片手で構え、魔龍の懐へ飛び込むと同時に振り回す私。両手振りですらそう簡単にはダメージを与えられない魔龍だけど、先の一撃で油断は禁物だと判断したのか左の爪で防御を、右の爪で反撃の一閃を放つ。それを私はシェア推進を利用してギリギリ回避。その後も私はシェア推進による加減速により正面からの殴り合いを演じる。

 

(くっ…こんなやりとり、もって数十秒…!)

 

魔龍の爪や腕と打ち合う時は激突の瞬間に、回避の時はギリギリまで引きつけてから発動する事で先程以上に魔龍との組み合いを行う私。シェア推進はシェアエナジーの浪費に繋がるし、結局は爆発の勢いを推進力にしている訳だから短時間にそれを何度も使えば身体への負担も馬鹿にならなくなるけど…これならば魔龍を私への対処に専念させられる。そして私への対処に専念するという事はつまり、ディールちゃんにとっては絶好の攻撃チャンスになるという事だった。

機を見計らい、魔龍の攻撃の衝撃を利用して後退する私。私に追撃をかけようとする魔龍の背には、ディールちゃんの姿。

 

「馬鹿みたいに前しか注意しないとは…成長しませんね」

「頼むよディールちゃん!」

「愚カナ…二度同ジ手ヲ喰ラウ我デハナイワッ!」

 

にぃ、と口元に笑みを浮かべ、後方に迫るディールちゃんには目もくれずに私へ火炎を浴びせにかかる魔龍。確かに私が陽動ではなく本命だったのなら面制圧のこの攻撃はカウンターとしては最適だし、当たらずとも私の攻撃を挫く事が出来る。

だから魔龍は笑みを浮かべたのだろう。そしてその笑みは、次の瞬間驚愕へと変貌する。

 

「……だから、馬鹿だと言ったんですよ」

 

氷剣…というよりも氷山から削り出したかの様な巨大な矛をガラ空きの背へと突き刺すディールちゃん。さしもの魔龍もこれには耐えきれずに身体が弓なりに曲がり、そのまま床へと落下する。

氷塊を背に突っ伏す魔龍。その背に私は呟く。

 

「…残念だけど、二度同じ手を使う私達でもないよ」

 

それは、どんなに強くとも、単騎では…正面からの殴り合いだけでは限界があるという事を、如実に表している瞬間だった。

 

 

 

 

「動かなく、なりましたね…」

 

内包させて魔力が尽きて消滅する氷塊を横目に見ながら、イリゼさんの近くへとわたしは移動する。魔龍はといえば、氷塊を背に受けて以降動く事なくその場に倒れ、不気味な位静かになっている。

 

「…倒したんだと思います?」

「どう、かな…でも少なくとも、十分致命傷と呼べるダメージは負ってる筈だよ」

「だと良いのですが…」

 

魔法攻撃の手は一切抜いていないし、二回とも開いた傷口に向けて放ったのだからむしろ致命傷になっていない筈がない。……だけど、それまであれだけ動いていた魔龍が突然ぴくりともしなくなったのはあまりにも違和感があった。

 

「…なら、確かめてみようか」

 

そう言って、剣を精製し長剣を持つのとは逆の手に持つイリゼさん。イリゼさんはそれを振り上げ、魔龍の頭部へと向けて思い切り投擲する。

女神の腕力を受け、一直線に魔龍の頭部へと飛来するシェアの剣。そして…残念ながらと言うべきか、やはりと言うべきか、剣は魔龍の頭部を貫く事なく運動エネルギーを失う。--------魔龍の牙によって受け止められ、その場で止まってしまう。

 

「やっぱりか……」

「チッ…油断シ近付イテ来タノナラ、ソノ瞬間ニ捌イテヤッタモノヲ…」

「…威勢ばかりなのはどっちでしょうね…」

 

何やらそれまでとは少し様子の違う魔龍。ゆっくりと身体を起こす魔龍だけど、わたし達はそれに手出しをしない。だって、妙に余裕があったから。完全にわたし達の術中に嵌まり、重傷を負った事は魔龍も分かっている筈なのにその様子からは全く焦りの様なものが感じられない。…こういうのは、ただ強いだけの奴よりも油断ならない。

 

「我ガ威勢バカリダト?フッ、笑ワセテクレルジャナイカ……驕ルナヨ、ガキガ…ッ!」

『……ーーっ!』

 

反射的に後ろへと飛び退くわたし達。魔龍は何か攻撃をした訳でも、攻撃の素振りを見せた訳でもない。ただわたし達を睨み、凄んただけ。ただそれだけなのに、わたし達は下がらずにはいられなかった。そして、同時にわたし達は気付く。魔龍には、まだ奥の手があるのだと。

 

「…ディールちゃんが煽る様な事言うから…!」

「い、言わずとも追い詰めればこうなっていたでしょう…!」

「どっちにしろ……分かってるよね、ディールちゃん」

「…えぇ、当然前衛の方が危ないんですからお気を付けて」

「--------コンナ浅マシイ雌共ニ全力ヲ出サネバナラヌトハ……貴様等ハ塵一ツ残ラント思エ…!」

 

構え直すわたしとイリゼさん。対する魔龍は身体をだらんと下げ、一見戦いを放棄したのかと思える体勢になる。……が、それも一瞬の話。次の瞬間には魔龍の身体が闇色に変色を始め、更に身体の一部は赤く染まる。それはまるで地獄の光景を身体に宿したかの様なものであり…魔龍の纏う嫌な気配も一層濃くなっていた。

 

「……ッ…ゥ…ガァァァァァァァァッ!」

『速い……ッ!』

 

力の抜けた体勢がぐらりと解けたと思った次の瞬間、もう魔龍はわたし達に肉薄していた。その勢いのまま魔龍は腕を振るい、爪によって咄嗟に左右へと避けたわたし達の髪が数本宙を舞う。

 

「ディールちゃん下がってッ!」

「分かってますッ!」

 

シェア推進により魔龍の正面へと躍り出て、大上段から斬りかかるイリゼさん。わたしはその援護の為魔龍の両腕に魔弾を放ちつつイリゼさんの後ろへ後退。次なる援護と火力支援の為に杖の先端を魔龍へと向ける。

鼻先に長剣の一太刀が、両の二の腕に魔弾が直撃する魔龍。一撃一撃は致命傷に程遠くとも、ほぼ同時に三ヶ所へぶつければ僅かにでも隙を作れる筈。わたし達はそういう算段で攻撃を仕掛けた。……だけど、その作戦は大きな間違いだった。

 

「ソノ程度カァァァァッ!」

「ぐぅっ!?」

「きゃっ……!」

 

狙い違わず三ヶ所への攻撃は成功した。だが、魔龍は一瞬の隙も…それどころか、わたし達の攻撃を気にする事すらせずにイリゼさんを蹴り付け跳ね飛ばす。

体勢を大きく崩して飛ばされるイリゼさん。直前にイリゼさんの後方へと回っていたわたしは当然その延長線上にいる訳で、結果わたし諸共後ろの氷壁へと叩き付けられる。

 

「……っ…大丈夫ディールちゃ--------」

 

わたしよりちょっとだけ早く復帰したイリゼさんは、わたしを心配する様に口を開き……言い切る代わりにわたしを横へと突き飛ばす。

一瞬なんの冗談を…と思ったわたし。けど、その直後に突っ込んできた魔龍によって氷壁が破壊されるのを見て全てを理解する。……これは、下手すると一人で戦ってた時より不味いかも…。

 

「潰レロ潰レロォッ!」

(こんなの喰らったら洒落にならない…!)

 

半ば狂った様に腕と足での打撃を繰り返す魔龍。しかも困った事に標的は後衛担当であるわたし。回避しながら強力な魔法を放つ事は流石に出来ず、イリゼさんも魔龍に攻撃を仕掛けてくれてるけど魔龍は止まらない。

爪を避け、蹴りを交わし、尾での攻撃を氷を纏わせた杖で何とか逸らす。…が、そこで猛攻を凌ぎきるのも限界に達し、魔龍の踏み付けを避けた途端によろけてしまう。

そこで再び魔龍の前へと躍り出るイリゼさん。でも、それは悪手だった。

 

「吹キ飛ベッ!」

「しまっ--------!?」

 

魔龍の豪腕から放たれる打撃。イリゼさんはわたしと魔龍の間に割って入る事を最優先にしていたせいか防御が間に合わず、その打撃をもろに受けてしまう。

そう、イリゼさんはわたしと魔龍の間に割って入った。という事はつまり……先の氷壁直撃の再来である。

 

「痛た…わたし見た目年上の同性と何度も密着して壁にぶち当たる趣味は無いんですけど…」

「それは私もだよ……これ、勝てると思う?」

 

今度は大広間の壁にぶつかり、幸か不幸かそれによって煙霧が舞った事で追い討ちの危機を避けられたわたし達。ほんのりと人型の跡が付いた壁から身体を起こしつつ、互いに目を合わせる。

 

「……最大級の一撃を当てる。勝つにはそれしか無いと思います」

「…って事は、まだ諦めてはいないんだね?」

「イリゼさんが諦めていないのに、わたしだけ諦める訳にはいきませんから、ね」

「……そっか、じゃあ…もうちょっと頑張ろっか」

 

頭や肩に残った瓦礫を手で払い、立ち上がるわたし達。わたしも、イリゼさんもまだ全ての手を尽くして、何も出来なくなるまで戦い抜いた訳じゃない。なら、まだ諦めるには早過ぎるじゃないか。ならば、諦めるなら……負けた後でも遅くはない。

わたしの、イリゼさんの瞳に灯る炎は……まだ、消えていない。




今回のパロディ解説

・「〜〜五分間だけでいいので身体能力を百倍に〜〜」
TIGER&BUNNYに登場するNEXTの一つ、ハンドレッドパワーの事。元々身体能力が飛躍的に上昇してる女神が更に百倍になったら…最早軽いチート級ですね。

・メテオテール
超人幻想 コンクリートレボルティオに登場するヒロイン、星野輝子が使う魔法の呪文の事。同じ呪文で多種多様な効果を発揮出来る魔法使いというのも中々珍しいですね。

・魂が崩壊しなくなったタイプのゾンビ
これはゾンビですか?に登場するヒロインの一人、ユークリウッド・ヘルサイズの力により生まれたゾンビの事。私が知るゾンビの中でもかなり頑丈なタイプな気がします。

・「魔龍…私を見ろッ!」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場するメインキャラ、ガエリオ・ボードウィンの名台詞の一つのパロディ。勿論イリゼは擬似阿頼耶識は使っておりません。

・「〜〜あんたの視線を釘付けにするッ!」
機動戦士ガンダムOOに登場するメインキャラ、グラハム・エーカーの名台詞の一つのパロディ。敵に愛だとか宿命だとかいうイリゼ…な、何とも言えませんね…。
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