超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude 作:シモツキ
「お金持った?ちゃんと道覚えた?困ったらどうすれば良いか分かる?お母さん心配だよ…」
「私ネプテューヌの娘になった覚えないよ……」
イストワールさんから特務監査官としての役目を引き受けた日の翌々日。二日間かけてそれまで請け負っていた仕事の引き継ぎと遠出の準備を行った私は、今まさに出発するという段階に至っていた。
その場に居るのは私の他にネプテューヌとネプギアとイストワールさん。守護女神に女神候補生に教祖という、プラネテューヌでも屈指のお見送りだった。
「あははー、でも実際大丈夫?初めて行く場所ではないとはいえ、一人旅なんだよ?」
「大丈夫だって。確かに場合によってはダンジョン行ったりするかもしれないけど、基本各国の教会にお世話になるつもりだし」
「アヴニールに乗っ取られてたり、女神がまともに機能してなかったり、マジェコンヌに牛耳られてたりするかもしれないよ?」
「ネプテューヌの中で百話以上にも及ぶ私達の物語はどこへいったの…」
「もしかすると、イリゼが戻ってきたのはイリゼの知る信次元じゃないのかも…」
「コラボ最終話が台無しになる様な事言わないでよ!?後時系列的にややこしくなるから今はまだそのネタ出さないでくれるかな!?」
出発する私に何かいい感じの事言ってくれるかなぁ…と思っていたけど、全然そんな事無かった。しかも時系列的には未来の話であるコラボネタまでぶっ込んできた。ネプテューヌはいつもいつでも厄介過ぎる…。
「ネプテューヌさん、気持ちは分かりますがあまり困らせてはいけませんよ?( ˘ω˘ )」
「そうだよお姉ちゃん。それに会いにいけない距離じゃないし電話だって繋がるんだから我慢しなきゃ」
「ぶー…だって、だってさ……」
「え…ネプテューヌ、もしかして私と離れたくなくてそんな事を……」
イストワールさんとネプギアの言葉を聞いて、改めてネプテューヌの顔を見る私。言われてみると、ネプテューヌは一見普段ボケてる時と同じ、愉快そうな表情をしているけど…同時にどこかつまらなそうな顔にも見える。…ネプテューヌ…そんなに私との日々を好いていてくれたなんて、私は凄く嬉し……
「だって…これじゃ仕事中にイリゼを引き合いにして休憩したり突っ込みを期待したボケかましたり出来ないじゃん!」
「じゃっ、行ってきまーす!」
「ちょっ!?嘘嘘、今の嘘だから!…いや100%嘘って訳じゃないけど、とにかくストーップ!」
多くも少なくもない荷物を手に、ずんずんと私は行こうとするもネプテューヌが腰に抱き付いてくる。それなりの密着度がある状態で、これが普段なら軽く顔を赤らめる私だけど…今回はこんな感じだった。
「…何なのこの駄女神は……」
「そんな本気で嫌そうな顔しないで!?謝るから!何なら今日のプリン半分あげるからぁ!」
「お、お姉ちゃんが半分とはいえプリンをかけた…!?」
「どこに驚いてるのさネプギア!?わたしそこまで驚かれる程のケチでもプリン狂でもないよ!?」
「はぁ…プリンは帰ってきた時でいいから…」
「うぅ、イリゼぇ……」
肩を落としつつも、歩もうとするのを止める私。ネプテューヌもロクでもない事言った分のダメージは受けただろうし…私自身、長期間ではないとはいえそれまで生活していた場所を離れる(しかもいつ帰るかは未定)んだから、お見送りしてくれるならもう少しちゃんもしたお見送りを受けたいしね。
「どうしても休憩したいなら、女神として近況報告を受ける必要がある〜…とか言って電話すればいいでしょ?ネプテューヌも監査対象だから何でもかんでも話すとは限らないけど」
「おぉ、その手があった!……まぁ、それはいいよ。ぶっちゃけ二人の言う通り駄々こねてた様なものだし」
「えぇ…結局どっちなの…」
「…えーと…出来れば行ってほしくないけど、自分の仕事ならともかく他人の仕事の邪魔するのは駄目だと思うから、せめて行く前にボケかましておきたくて…」
「理解はあるけど素直になれないヒロインか!…出来るだけ早く戻ってきてあげるから、ね?」
「…イリゼの方こそ、何かあったらすぐ連絡してくれていいからね?女神だって、一人で出来る事なんて高がれしれてるんだから」
「ネプテューヌ…うん、やっぱ教祖はおろか、元々別の仕事してた友達や指導してあげなきゃいけない妹にすら仕事出来てるか心配されてるネプテューヌが言うと違うね」
「ゔっ……」
ぐさり、と言の葉が胸に刺さったかの様な動きをするネプテューヌの様子にその三人で苦笑する。なんか、いいオチついた感じだよね。お見送りのいいオチって何なのかは謎だけど。
「それじゃあ改めて…そろそろ行くね」
「必要であればこちらからサポートの手配はしますから、イリゼさんは自分の思う様に進めて下さいね( ^_^)/~~~」
「勿論です。ネプギアも女神としての勉強頑張ってね」
「はい!イリゼさんもお気を付けて…で良いんだよね…?」
「良いと思うよ、ネプギアらしいし。じゃ、イリゼ…行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
行ってからの事を心配してくれるイストワールさん、見送りに慣れてない様子のネプギア、そしてもう多くは語る必要もないと言わんばかりのネプテューヌ。三者三様のお見送りを受けて、私は改装中のプラネテューヌ教会を後にする。
これは初めての一人旅。マジェコンヌとユニミテスを足止めした時も単独行動だったけど…一つの目的の為に単独行動を取るのと旅とではやっぱり心持ちは違う。そんなちょっぴりの不安を抱きながら、私は最初の目的地へと向かうのだった。
……まぁ、行く先々に知り合いやら友達やらがいるから、正直そこまで旅じゃない気もするけどね。
*
プラネテューヌの街中を通り、人の生活圏から段々と離れ、国境付近へと歩みを進める。今私が向かっているのは接岸場……じゃなくて、『元』接岸場。元接岸場というのが正式名称、という事はないけど、少なくとも今その場所を接岸場と呼ぶ人はいない。
「今日はいい旅立ち日和だなぁ…」
適度な日差しと雲の浮かぶ空に目をやりながら、国境管理局へと近付く私。
国家間を移動する際には手続きが必要で、ここを使う場合は友好条約締結と同時に設立された組織の一つである国境管理局を通らなければならない事となっている。……やろうと思えば密航も出来るけど…やらないよ?…え、やると思う?
「…空いてるなぁ」
管理局へ入った私は一直線に手続きへと向かう。局員以外誰もいない…なんて事は無いけど、それでも手続きで待たされる様な事は無いだろうと断定出来る位には人が少なかった。
「お次の方、どうぞー」
「はい、仕事での渡航なんですが…」
「では、まず身分証明書の提示を……」
慣れた様子で私の相手を始める受付窓口の局員さん。指示を受けた私はプラネテューヌの教会職員としての証明書を見せる為、懐をごそごそとする。勿論特務監査官としての身分証明書もあるけど、一応仕事が仕事だからという事で必要に迫られない限りは出さない様にしようと私は決めていた。
数秒後、証明書を手にしてそれを渡そうとする私。……そこでちょっとしたハプニングに見舞われる。
「……って、え…?」
「…な、何でしょう…?」
「あ、あの…もしかして、貴女はイリゼ様であらせられますか…?」
「えーと…はい、こちらに書いてある通りイリゼです
…」
私は四人の守護女神と共に世界を救った英雄の一人であり、国を持たぬもう一人の女神。大衆にはそう見られてるしだからこそこういう事は道中で何度かあるだろうなぁ…とは思っていたけど、最初の一回目は予想外に早かった。
私の相手をしている人は勿論、このやり取りを耳にした他の局員さんまで色めき立ち始める管理局。…さて、これはどうしたものかな……。
「ま、まさかこんな国の端っこで英雄の一人に会えるとは…」
「閑職かと思いきや、意外なボーナスタイムだぜ!」
「英雄一行のレベルは高いって噂あったけど…あの噂は本当だった…!」
「馬鹿お前、イリゼ様といえば女神様なんだぜ?美人じゃない訳ねぇだろ」
「だよなぁ……うん?ところで俺等なんか忘れてね?」
「そうか?」
「ふむ、目の前にいるのはイリゼ様…」
「…………」
「…………」
「……あ、イリゼ様ここ通りたいんじゃないっけ?」
『あ……す、すいませんでしたぁぁぁぁぁぁっ!』
えー…はい、プラネテューヌの国境管理局は、大変愉快なご様子です。何人か私の容姿褒めてるっぽいしそれは嫌な気もしないけど…これまさか他の国もそうなの……?
「い、いえいえ…それでこちらが身分証明書なんですが…」
「あぁいえ、証明書なんて結構です!」
「えぇ!?いいんすか先輩!?規則違反ですよ!?」
「良いに決まってんだろ、それとも何か?イリゼ様が不正を働くとでも思ってんのか?」
「そ、そんな事は無いですけど…」
何やら先輩格っぽい人が最初に私の対応をしていた人に指示を出す。私としてはノーチェックでOK出してもらう方が楽ではあるけど…これは、うぅん……。
「いつも言ってんだろ、規則は守るものであって縛られるものじゃないって。マニュアル通りやるだけなら、わざわざ試験なんてする必要ねぇよ」
「さ、流石先輩…以後気を付けます!」
「おう、じゃあそういう事でイリゼ様、どうぞ!」
「……えぇ、と…先輩さんの言葉は私も納得ですけど、この検査は外交にも関係する以上下手に自己判断するのは不味いのでは?」
「では、お手数ですが身分証明書を……」
『先輩(さん)変わり身早っ!』
びっくりする程一瞬で意見がひっくり返った先輩さんに、つい私と後輩さんで同時突っ込みをしてしまう。ボケ突っ込み大合戦だったパーティー内では突っ込みがハモる事もちょいちょいあったけど…初対面の人とは初めてだった。だからなんだという話だけど。
そんなこんなで手続きを進める私。そんな中私は『よくよく考えたら、ここも監査対象と呼べるんじゃ…?』と思い、軽く話をかけてみる。
「…やっぱり、ここ来る人は少ないですか?」
「あ…えぇ、陸路での旅行をしたい人や低予算で物資の輸出入をしたい会社なんかが時々来ますが…大多数は空路で行ってると思いますよ」
何気ない話をしながら、私は管理局内や局員に目を走らせる。私の見る限り、局内も業務に戻った局員(私が気になる様でたまにこっち見てくるけど)も特に妙な様子はない。言うまでもなく、不正をしてるなら分かり易い証拠なんか残さないだろうけど…少なくとも、主観では全うな仕事をしている様だった。
「……空路、使える様になってよかったと思います?」
「それは勿論。国家間の移動が迅速かつ楽になるのは、我々一般人には凄くありがたいですからね」
局員さんの言葉を聞き、私はつい笑みを溢してしまう。空路、つまり飛行艇による移動は
「……はい、手続きは以上です。お疲れ様でした」
「はい。皆さんもお仕事頑張って下さいね」
ぺこり、と頭を下げると慌てた様子で局員さん達も深々と頭を下げる。……あまりメディアに露出しないコンパやアイエフと違って、私は式典やらその後のTVやらに出てるから、今後もこういう役人のいる場所ではこんな反応されるんだろうなぁ…。
「……あ、崩れ易くなってる部分もあるので、整備されていない場所は通らないで下さーい!」
管理局を後にした私の背に、そんな声が届く。それを耳にしながら私は大陸の端まで向かい、新たに建設された道路を通って……
「…これが四色の大陸じゃなくて五色の世界なら、
そんな、あまり笑えない冗談を口にしながら私は橋を渡る。
マジェコンヌとの戦いはゲイムギョウ界に様々なものをもたらしたけど、ある意味で一番大きいものはこの『四大陸の結合』だと思う。彼女は負のシェアの力でもって接触と遠離を繰り返していた四大陸を衝突させようとして、それを止める為に私達は天界へ向かった。そして戦いの末に私達が勝った事で四大陸が激突し崩壊する…という事態は避けられたけど……私達は少しだけ間に合わなかったのか、負のシェアの影響から四大陸が解放されても慣性で大陸は動き続けてしまい、衝突そのものは防げなかった。幸い死者や怪我人はなく、大陸も衝突時には慣性の殆どを失っていたからか接触面以外への影響は軽微だったけど……それでも、四大陸がくっ付いたまま離れなくなった事はここに住む人達にとって大きな衝撃だった。このおかげで接触を待つ必要は無くなったし、空路も常時最短距離でいける様になった。…ただ、それでも今までの普通が普通じゃなくなるというのは私達女神を含む多くの人にとって、あぁそうなのかで済ませられる話では無かった。
「……あー駄目だ、一人だとつい難しい事考えちゃう…」
今までは初見の大陸だった故に興味をそそられたり、賑やか過ぎて難しい思考なんて出来なかったり、突っ込みで忙しかったり、誰かを弄って楽しんでたりしたから基本道中で長考をする事は無かったけど、この調子だとしょっちゅうこんな事考えてしまう気がする。確かに馬鹿な事考えてるよりは有益だろうけど…なんていうか、味気ないよね。
「これなら、採取系のクエスト受けておいてそれこなしつつ進めば良かったかも…」
そうは思っても後の祭り。仕方ないやと思って今後のプランを確認しようと……したところで、携帯のバイブを肌で感じる。
「…うっ、この表現考え方によっては卑猥かも……へ、変な所にしまってたりとかしないからね!?」
一体誰に言い訳してるんだろう…とか思いつつ、ポケットから携帯を取り出す私。着信は…ネプテューヌからだった。
「早っ……もしもしー?」
「おかけになった電話番号は、現在使われていないか、電波の届かない状態となっている為、出る事が出来ません」
「そっかぁ、じゃあ切ろっかなぁ」
「切ったらねぷちゃん泣いちゃうよ?」
「だったら開口一番しょうもない事をするんじゃありません!」
電話越しにお叱りの言葉を叩き付ける私。暇になりそうな所だったから電話をかけてきてくれたのはむしろ好都合…というのは勿論内緒。
「っていうか、こういうネタするなら声も合成音声っぽくしようよ…」
「それじゃきょとーんとされちゃうじゃん。わたしは面白い反応か面白い突っ込みをしてもらいたかったのさ!」
「はいはい…で、どうしたの?私が恋しくなった?」
「うん、恋しいの」
「んな……っ!?」
声を詰まらせ、携帯を落っことしそうになる私。ちょっとこっちからも攻撃しかけてやれ、と思って「恋しくなった?」なんて言ったら、恋しいと即答されてしまった。……え、え?何これ?普通これは突っ込みが帰ってくるか芝居掛かった感じで乗ってくるかの二択だよね?恋しいなんて即答しないよね?即答するとしたら、それは恋人関係……
「あ、あぅぅ……」
「…い、イリゼ?なんか頭から湯気出してるみたいな音聞こえてきたんだけど大丈夫?イリゼー?」
「……っ…な、何急に言いだすの!馬鹿!変態!淫乱ピンク!」
「淫乱ピンク!?ひ、酷くない!?確かにわたしの髪は紫っていうかピンクに近いけどわたしに淫乱要素は無いよ!?……無いよね!?」
「……ごめんネプテューヌ、今の流れだと淫乱ピンクなのは私の方だったよ…」
「う、うん…わたしもなんかごめんね…」
何だか気まずくなってしまう私とネプテューヌ。うん…どう考えても私が、というかそもそもこんなネタ振ってる時点で淫乱ピンクなのは私で確定じゃん…。
「……ずーん…」
「うわ、擬音を口にしちゃう位落ち込んでる…えーっと…あ、そうだわたしが独断で進めようとしてるラジオ番組の事教えてあげよっか?その名も、『ネプテューヌのオールナイト全次元』!」
「思いっきりパクりじゃんそれ……」
突然何を言いだすんだとか、独断で進めちゃ駄目でしょとか色々言いたい事はあったけど、その企画の真偽はともかく私を元気付けようとしょうもない事言ってくれているんだ…というのはすぐに伝わってきたので、私はこれ以上ネプテューヌに心労をかけないよう、突っ込みは一つだけにして心を持ち直す事に努める。……うん、これはよくある事。ネプテューヌだって変態チックな事口走ったりするし、失言してアレな子扱いされるのは女神の中じゃよくある事なんだから!
「……どうしようネプテューヌ、私今女神って碌でもない女の子の集まりに思えてきたよ…」
「今度は何があったのイリゼ…そしてそれを否定出来ないわたしも一体何なの…」
「…ふふっ」
「…あはは」
つい、また私は笑みを溢す。ネプテューヌも同じ様に笑ってしまっている。こんなんでも一国の長で、こんなんが中心となったパーティーが世界を救ったんだから、一周回って逆に笑っちゃうよね。
「…で、結局なんの用事だったの?」
「……ちょっと心配だったんだ、イリゼってちょっと危ういっていうか…皆といる時は何の心配もないけど、一人でいる時は不安を感じるっていうか…でも、流石にこれは杞憂だったね」
「心配してくれるのは有難いけど…私そこまで弱くはないよ?」
「だよね、じゃあ改めて…お仕事頑張ってね」
「うん。ネプテューヌこそ仕事サボっちゃ駄目だよ?」
結局、ネプテューヌはいつもの通り私を心配していただけだった。最初からその方向でいけば怒られたり自分がテンパる展開になったりしないのに……ま、それも含めてネプテューヌかもね。
そう思いながら私はプラネテューヌから離れ、最初の監査対象国へと入る。さぁ、これから頑張るよ!
「…………」
「……?ネプテューヌ?」
「…答えない…それには答えないよ……」
「いや答えなかったらサボってもいい事にはならないからね!?」
……私が離れている間、女神の仕事は捗るのか…或いはネプギアやイストワールさんの胃に穴が開かないか、それが気になってしょうがない私だった…。
今回のパロディ解説
・
アンジュ・ヴィエルジュのアニメ版における回避すべき現象の事。割とネプテューヌシリーズとアンジュは親和性高いと思うんですよ、コラボもしてますしね。
・ネプテューヌのオールナイト全次元
生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録シリーズにおける作中内ラジオ(校内放送)のパロディ。ラジオネタ面白そうですよねぇ…余裕があれば書きたいです。……余裕があれば。