超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第十七話 プラネテューヌ、監査編

遠くに見える紫の建造物群。ルウィーともラステイションともリーンボックスとも違う、どこか未来チックな建物の束が肉眼で朧げながらも確認出来る距離にまで到達した私は、ちょっとした感銘を覚える。

 

「長かった一人旅も、遂にここまで来た……」

 

皆との旅に比べれば短なものだし、苦難困難も例の出来事を除けば数える程しかなかったけど…それでも、決して楽な旅でもなかった。その旅が、出発点であるプラネテューヌに戻ってきたと思うとほんとに感慨深い。

けど、これは二つ程間違っている。プラネテューヌに戻って来たとはいえ、まだプラネテューヌの監査が終わった訳ではないし、そもそも……

 

「ぬらぬらー!」

「ふふっ、ごめんごめん。君も居たんだっけね」

 

微笑む私。ぴょこたんぴょこたんと私の横を跳ねるスライヌもこの旅(まだ同行者になりたてだけど)の一員であり、最初と違って今は一人旅ではなかった。

言葉の通じないスライヌだけど…いるといないとじゃ結構違う。同行者がいるというだけで安心感があるし、言葉が通じないとは言っても反応がない訳ではないし、何より可愛い。同行者となって日の浅い今は、一挙手一投足が愛くるしいと言っても過言じゃない位だった。

 

「もうすぐ着けるし、ここからはまったり進もうかなぁ……あ、お菓子食べる?」

「ぬらぬら〜」

「そっか、じゃあ…ほいっ」

「ぬらっ!」

 

荷物から取り出したチョコレート菓子の包装を剥いてスライヌの方に軽く放ると、スライヌはぴょこんと飛び上がってそれを口でキャッチする。そして着地後スライヌはほんわかとした表情を浮かべ、見ていた私はその様子に萌える。もう何というか、子犬を飼い始めた気分だった。実際スラ『イヌ』だし。

 

「よーしそれじゃもう一個……っと、ちょっとここ入ろっか」

「ぬら?」

「ごめんね、でも事情知らない人だとびっくりしちゃうからさ」

 

進路上に人影を見た私はその場にしゃがみ、大きめのバックを開いてスライヌに入る様指示する。別に説明出来ない事じゃないけど…普通の人はモンスターを見たら驚くし、場合によっては即戦闘態勢に入ってしまう。それにスライヌの方もまだ人皆にフレンドリーなのか私だけ特別なのかは分からないから今普通に会わせてしまうのは危な過ぎる。…あ、因みに国境管理局では「バックにちっちゃいペット入ってるんですけど…」と言ったらそれだけで通してくれた。私を信頼しての事なんだろうし、その方が好都合だったけど…国境管理局の人達はもう少し厳しい検査をした方がいいと思う。

 

「ちょっとしたらまた出してあげるからね」

 

バックの中に入ったスライヌの頭をぽんぽんと触って立ち上がる私。流石に全身は入りきらず、ちょっと頭がはみ出してる感じになっちゃってるけど…これだけならモンスターとは判断されないよね。

それから少しして、私は発見していた人影…二人組の人物とすれ違う。ここは郊外だし、クエストを受けたか陸路での旅を楽しんでる人達かなぁ…なんて思いながら過ぎ去ろうとしていると……

 

「…おや、貴女…ちょっといいですか?」

 

後ろから、声をかけられた。振り向いて確認をした訳じゃないけど、この状況下なら声をかけてきたのは今すれ違った二人の内のどちらかに違いない。スライヌがいるから早く行きたいところだったけど、無視するのも悪いし用事があるなら応えるべきだと思った私は振り向いて何でしょう、と言葉を返す。

すると、二人は何か慣れた様な口調で喋り出した。

 

「突然話しかけてしまって申し訳ありません。しかし、こんな所で女性一人とは…何かあったんですか?」

「いえ、単に旅をしてるだけですけど…」

「旅ですか、いいですよね旅って。変わり映えのない日々から離れるというのは刺激的なものなんですよね」

 

妙に親しげに言葉を口にする二人組。それだけなら社交的な人なのかもしれないけど…二人の雰囲気は、それとは違う。何というか…会話をこなしている(・・・・・・)感じだった。

 

「…あの、目的は何ですか?」

「目的?あぁ、これは失礼。前置きが煩わしかったですか?」

「察しの良い方なんですね。では……」

 

これもまた、変に芝居掛かった様子で二人は私の質問に応え、荷物の中からチラシらしき物を出して渡してくる。あら?もしかしてこれなんかの勧誘?うーん、となるとユニミテス教の事思い出すなぁ…って……

 

 

--------え?

 

「…………」

「どうです?中々洒落た名前だと思いませんか?」

「とはいえこれだけでは色々疑問を抱くでしょう。なので説明をば……」

「…ちょっと待って下さい」

 

チラシの中央上、一番目立つ所に書かれていたのは二人の勧める新興宗教の名前。一応女神である私に宗教勧誘ってどうなんだとかも思ったけど…新興宗教の名前に比べればどうでもよかった。だって、そこに書かれていた名前は……

 

「犯罪組織…マジェコンヌ……!?」

 

それは、私の…私達パーティーがよく知る名前。何度も戦った元宿敵であり…平和の為に先代の四女神に力を貸し、その結果負のシェアに汚染される事となってしまった元英雄の名前。それが、なんで……!?

 

「えぇそうですよ。あ、犯罪組織と言っても実際に法を犯してる訳ではありません。むしろこれは、既存の常識や当たり前に囚われない、という寛容さを表しているのです」

「そして、マジェコンヌといえば何者にも囚われず、正面から女神と女神の統治する世界に勝負を挑んだ女性。彼女は…まぁ、やり方は荒っぽかったですが…彼女がしたかったのは、きっと旧態依然となってしまっている今の世界を良くしていこうとしたのですよ。貴女も、私達と彼女の意思を継いでみませんか?」

 

徹頭徹尾、彼等の調子は変わらない。そこまできて、やっと私は理解した。この二人は、心からそう思ってやっている訳じゃない。ただ勧誘という仕事をする事になって、その為に用意された言葉を話を聞いてくれそうな人に片っ端から伝えているだけだと。

そこまで聞いて、そこまで理解して、私はチラシに目をやるのを止めた。チラシを持つ手は…不愉快さからくる怒りで、震えていた。

 

「…貴方達が、何を知っているというんですか…」

「何を、と言いますと?」

「マジェコンヌさんを…彼女の何を知っているのかと聞いているんです。旧態依然となってしまっている今の世界を良くしていこう?彼女のしてきた事、彼女のやろうとしてた事を知っているのなら、よくそんな事を言えますね。彼女の意思を継ぐ?どうしてマジェコンヌさんがあんな事をしたのか、あんな事になってしまったのか、本当は何をしたかったのか…それを知らないからこそ、そんな事を言えるんでしょうね」

「え、いや…あの……」

「どこまで知ってるのかは知りません。もしかしたら全く知らないのかもしれませんね。ですが、いずれにせよ……そんな間違った認識で、軽々しく彼女の名前を使うな…ッ!」

「……っ…!?」

 

その場でたじろぐ二人。それもその筈、その時の私は…敵を睨む様な、鋭い視線をしていたのだから。およそ普通の人にすべきではない目付きに、若干ながら語気の荒くなった言葉。おまけに私(というか女神は皆)はぱっと見普通の女の子な訳で、そんな相手が突然その様な態度を見せたら、それこそ普通の人は落ち着いていられる筈がない。

が、それでも仕事は仕事と思ったのか、彼等は私を説得しようとする。

 

「ま、まぁまぁ落ち着いて下さい。それも分かりますが、決めつけとはよくないものです」

「そ、その通りですよ。それよりもっと細かな説明…を……」

 

元々興味は無かった所に拍車がかかり、全くもって私の心に響かない勧誘を続ける二人。どうせこの二人はこの新興宗教の中核ではないだろうし、さっさと断ってしまおう…そう私が思ったところで、二人の内の片方が急に口をつぐむ。

 

「説明ですよ説明、まず魅力と言えば…っておい、なにぼさっとしてるんだよ?」

「いや……おい、この人ってもしやイリゼ…様じゃないのか?」

「イリゼ様…って、あの……?」

「俺の心当たるのは一人しかいないしお前が言うイリゼ様ってのがどのイリゼ様かは知らないけど…多分そのイリゼ様だ」

「…じゃあ、俺達は勧誘成功率0%どころか論外レベルの相手に勧誘してしまったと?」

「そうなるな……」

「…………」

「…………」

『……あ、バイトの時間だ』

「え…ちょ、ちょっと……!?」

 

ありもしない腕時計を確認する仕草の後、あっという間に走り去るという、何故か江頭さんスタイルで逃走する二人。その変わり身の速さには流石に今の私も驚き、つい立ち尽くしてしまう。…というか、旅に出てからこういう経験が多過ぎる気がする。私はもう少し女神っぽく見られない練習が必要かもしれない。

……それはともかく、これは由々しき事態だった。十中八九彼等はよく知らずに加入しマジェコンヌさんの名を語ってるんだろうけど、知らなければ何をしてもいい訳なんてないし、中核レベルの人達までよく知らないのであればトンチンカン宗教で終わるけど…もし、マジェコンヌさんの事をよく知った上で名を語っているなら、そこには見過ごしてはならない思惑があるとしか思えない。

 

「…教会に着いたらネプテューヌとイストワールさんに伝えた方がいいね、これは…」

 

そう心に決めながら私は、プラネテューヌの街へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

「…あれ?なにか忘れてる気が……」

「…ぬ…ぬらぁ……」

「ああっ!忘れてた!い、入れっぱなしにしちゃってごめんね!」

 

 

 

 

「ひゃっほー!久しぶりの登場だー!」

 

執務室の回転椅子(これ座り心地超良いんだよね。流石女神の座る椅子!)ではしゃぎながらくるくる回るわたし。側から見たら「女神様がご乱心!?」的な反応される可能性高いけど…そんな事は関係無ーし!それよりわたし主人公だよ!?W主人公の一角が暫くまるで登場しないってどういう事さ!コラボの時は流石にわたしも自粛した方がいいと思うけど、それ以外ではちょくちょく出たっていいじゃん!イリゼがこんなに主人公として登場してるんだから…ってあれ?よく見たら本作はW主人公制じゃないんだ…むぅ、どうせ次作じゃ主人公としても一キャラとしても暫く出られないんだろうし、今の内に大活躍したいのにー…。

 

「ネプテューヌ、入っていいかな?」

「その声…もしやイリゼ!?帰ってきてたの!?」

 

扉の向こうから聞こえた声に、わたしは目を輝かせる。間違いなく、その声はイリゼのものだった。

憂鬱な仕事の時間も、友達が来てくれるとなれば一気に気分の良いひと時に変わる。しかもそれが今までは毎日の様に顔を合わせていたのに仕事で暫く不在となっていたイリゼなら、その気分の良さもひとしおになる。そう思ってわたしは即答でOKを出したけど…イリゼは入ってこない。

 

「あれれ?イリゼー?入ってもいいんだよー?」

 

なにか間違って伝わったのかと思って、もう一度言ってみるもやっぱりイリゼは入ってこない。おっかしいなぁ、わたし扉に結界的なもの張ったりしたっけ?してないよね?

いつまでも開かず、代わりに何かの擦れる様な音らしきものが聞こえるだけの状態に焦れたわたしは、ならこっちから開けてあげようかなと椅子から立つ。

その時だった。扉が開かれ、廊下にいた人物が姿を現したのは。

 

 

 

 

「残念だ、ネプテューヌ王。だけど、あんたの時代はもう終わる。他でもない、イリドレッドによって終わる。思うところはあるのかもしれないけど…もういい。私が、納得したのだから」

 

ガチャリ、と白と赤で彩られた鎧を身に纏い、それと同じ意匠の施された兜…不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)を被った姿で私は現れる。各国恒例の正体隠しネタも、遂には実戦運用可能なレベルにまで至ったのだった。実戦運用って言っても見た目程の強度は無いし、兜は防具でもなんでもない模造品だけど…これならばもう、バレる理由が見当たらない。

あぁ、勝った…三連敗の私だったけど、三度も失敗を重ねたおかげでやっとここまで到達する事が出来た。さぁ、旅の終わりを記念してじっくりとネプテューヌの驚愕した顔を拝ませてもら……

 

「ならば、わたしは戦おう。愛すべき国を、国民を護る為戦おう。例えそれが自分の子供…じゃなかった、友達を討つ事だとしても…わたしはもう、迷わないッ!」

「ちょおっ!?ま、待ったネプテューヌ抜刀はいけな…マジで斬りかかってきた!?」

「さぁ剣を抜けイリゼ!」

「私と分かってるのにやってんの!?後もう抜いてますが!?抜いて防御してますが!?」

 

どういう訳かネプテューヌは愛刀を構え、一直線に斬りかかってきた。咄嗟にバスタードソードを掲げで防御したけど…洒落にならな過ぎる!ネプテューヌのマジ攻撃受けたらばっさりいくよ!?見た目程の強度はこの鎧ないんだもん!

 

「おー地の文でのテンパり凄い…で、ここから一勝負する下りじゃないの?」

「私が変装して守護女神がそれをすぐ看破して私が悔しがるだけの下りだよ!?他の三ヶ国での監査編見てないの!?」

「なんか凄く突っ込みどころのある返答来た…じゃ、いいや。汗かきそうだしそれ抜いだら?イリゼ」

「そうだね…うん、そうします……」

 

太刀をしまってくれた事で一安心した私は、がっくしと肩を落としながら兜と鎧を脱ぐ。暑いといえば暑いけど、汗に関しては暑さによるものよりも冷や汗の方が多くかきそうな展開だった。なんというか…このネタ最後の国で一番ピンチになった気がする…。

 

「イリゼらしくないボケするからこうなるんだよ……久し振り、イリゼ」

「私だってボケたい時はあるもん……久し振りだね、ネプテューヌ」

 

兜と鎧を傍にやった私は、ネプテューヌと顔を見合わせる。時々電話やメールでやり取りしてたから、旅の間全く接点がなかった訳じゃないけど…こうして顔を見合わせると、やっぱり『久し振り』って気持ちになる。

 

「監査の旅、どうだった?」

「順調だったよ。女神の皆は勿論、別次元組の皆にも会えたしね」

「あ、そうなの?いいなぁ…わたしも小旅行しようかな…」

「小旅行出来る程仕事は片付いているのかな?」

「さ、さて…何の事でしょう…」

「しらばっくれたってしょうがないでしょ…それと、完成したんだね、ここ」

 

ちょんちょん、と私が下を指差すと、ネプテューヌはあぁ…と言って首肯する。ここ、と言っても執務室の事ではない。ユニミテスの攻撃によって半壊したプラネテューヌ教会はそれから修繕ではなく改築を行い…それからずっと、プラネテューヌの新たな象徴の一つとするべく工事を続けていたここは、私が旅に出ている間に遂に完成した様だった。

 

「うん!これぞプラネテューヌの中心、プラネテューヌの技術の粋を結集させた塔、その名もプラネタワーだよ!」

「おー……!」

 

両手を広げて紹介するネプテューヌに、つい私は拍手をしてしまった。プラネタワー…安直だけど中々悪くない響きだね。それに……

 

「やっと、工事の音を聞かなくて済むんだね」

「あはは、実はわたしもそれ嬉しかったりするんだ」

 

四六時中ではないものの、ちょくちょく工事の音が聞こえるのは大変だった。それが何とかなったというのは、本当にありがたい。

 

「……さて、積もる話もあるけど…それは後にしよっか」

「えー、今じゃ駄目なの?ゲームでもしながら話そうよー」

「だーめ。旅は終わったけど、まだ仕事は残ってるんだよ。特務監査官としての、仕事がね」

「ちぇっ、仕方ないなぁ…」

 

ちょっと頬を膨らませながらも、それ以上は駄々をこねずに私の言う事を聞いてくれるネプテューヌ。然しものネプテューヌも監査には素直に従うんだなぁとよく分かる瞬間だった。……っと、そうだ。

 

「ネプテューヌ、ちょっと驚く事してもいい?」

「驚く事?」

「うん、ほら出ておいで〜」

「ぬら?ぬらぬら〜」

「あ、スライヌだ。……え、スライヌ!?」

 

バックを床に降ろすと、そこからひょこりとスライヌは出てくる。街に入って以降ずっとバックに入れっぱなしだった事もあり、スライヌは身体をほぐす様な動きをしていた。…スライム状の身体なのに。

 

「うんスライヌ、可愛いでしょ?」

「え、いや…まぁ可愛いけど…何故スライヌ…?」

「あ、えーっとね…」

 

スライヌとの経緯を話す私。ネプテューヌは最初こそ訝しげな表情をしていたけど…その表情はすぐに楽しそうなそれへと変わっていった。ネプテューヌなら否定的な事は言わない筈…とは思っていたけど、まさかここまですぐ受け入れた様な様子になるとは…ネプテューヌの懐の深さは予想以上かも。

 

「…って訳なんだ。後でイストワールさんにも言うけど…教会…じゃなくてプラネタワーで飼ってもいいかな?」

「んー…いいんじゃないかな?この子が悪さしない様にちゃんとイリゼがお世話するならさ」

「それは勿論だよ。ねースライヌ」

「…えとさ、イリゼ。その子に名前付けてあげないの?」

「え、名前?」

「そう名前。だってその子をスライヌって呼ぶのは、こんぱやあいちゃんを人って呼んだりネプギアやノワールを女神って呼ぶ様なものでしょ?」

 

それはそうだ…とネプテューヌに言われて初めて気付く。極論名前は他者との区別の為のものだけど…種族名で呼ぶのはよそよそしいし、私の勝手ではあるけど、私やネプテューヌ達に名前があるのにこの子に無いというのは可哀想に思える。

 

「名前、かぁ…うーんと…」

 

思案を始める私。スライヌだから…スラちゃん、ライちゃん、イヌちゃん…スーラン、スイちゃん……あ。

 

「…ライヌちゃん、なんてどうかな?分かり易いし可愛らしくない?」

「ちょっと安直な気もするけど…イリゼが良いならいいんじゃない?それとその名前を付けられる本人…じゃなくて本スライヌが良いなら、ね」

「ね、スライヌ…ライヌ、ってどうかな?」

「ぬー……ぬらっ!ぬら〜♪」

「ふふっ、気に入ったみたいだね、イリゼ」

 

ぴょんぴょんとその場で跳ねるスライヌ…ライヌちゃんは、ご機嫌な様子だった。それを見てこっちまで機嫌の良くなった私は、さー頑張るぞー!みたいな機嫌で監査を始める。

 

 

……最初の数十秒位までは。

 

「……ネプテューヌ、あのさぁ…」

「…なんでしょう?」

「ここってさ、執務室だよね?」

「そ、そうなんじゃないカナ-?」

「じゃ、どうしてこのデスクには書類やファイルよりもお菓子や漫画、ゲームが多いんですかね?」

「……よ、よーうーかーいーの、せい--------」

「じゃないっ!」

「……はい、すいません…」

 

私がぴしゃりと一喝すると、流石のネプテューヌも返す言葉もありません…って感じの反応を返す。ネプテューヌの執務デスクが酷い有様なのは知ってたけど…改めて見るとほんとに酷かった。テンション上がってた分、気分の下落もほんとに酷かった。もうこれ、監査以前の問題だよ…。

 

「まさかこれは何かを隠す為の隠蔽工作とかじゃないでしょうね…?」

「ま、まっさかぁ…わたしがそんな頭使う様な事すると思う?」

「それもそっか、じゃあほんとに単にごちゃごちゃなだけなんだね」

「納得するんだ…それはそれでちょっとショックだよ…」

 

自分で言っておいてダメージを受けるネプテューヌを他所に、私は監査…という名のお片付けを進める。これが平時ならネプテューヌにやらせるところだけど…今は監査の真っ最中。信用信頼の有無に関わらず、監査対象に触らせる訳にはいかない。なんかちょっと癪だけど、これは仕方ない。

 

「…終わったら私の荷物の片付け、手伝ってもらうからね」

「あ、うん。その位なら手伝うよ」

「それとこれ賞味期限近いから早めに食べて…っと、これは…やっと先行量産機がロールアウトしたんだ」

「そーだよ。やー、うちの技術者開発者は国民性なのか発想や着眼点はいいんだけど、コストとか実用性とかをあんまり考えてくれないのがネックなんだよねぇ」

 

デスクから出てきた一枚の書類を見せると、ネプテューヌは苦笑いを漏らす。そこに記してあったのはとあるMGのロールアウト報告書。重厚感のあるラステイション製のものよりシャープで軽量そうな見た目を持つプラネテューヌ製MGは、基本性能は勿論ラステイションではなし得なかった機能を有しているけど…試作機や技術の積み重ね関係もあり、ラステイションより配備が遅れてしまっていた。どんなに強くても、必要な時に間に合わなければ本末転倒なんだよね…必要な時が来ないのが一番だけど。

そんなこんなで監査を続ける私。相変わらずごちゃごちゃなデスク&棚だけど…なんとか監査は最後までやる事が出来た。間違いなくプラネテューヌの執務室監査は四ヶ国の中でトップの難度だった。

 

「はぁ、やっと終わった…きちんとやりきった自分を褒めてあげたい…」

「監査パートはうちが一番短い気がするけどね」

「謝るのと『黙れよ駄女神』って言われるのとどっちがいい?」

「あ、前者でお願いします。ごめんなさい」

「全く…いいんだよ、もう監査パートやるのも四回目で読者さんも飽きちゃってるだろうし」

「それを作中で言うのはどうなの…よーし、それじゃ今度こそゲームしながら積もる話しようよ!ね!」

 

にぱっ、と笑顔で私の手を握ってくるネプテューヌ。私とノワールキラーのその笑顔に一瞬私はくらっときそうになるけど、そこはぐっと我慢して首を振るう。

 

「ごめんね、私もそうしたいのは山々だけどまだやる事あるから…」

「ライヌちゃんの餌やり?」

「いやそれもあるけど…そうじゃなくて、まだ監査があるの。この監査だけは手を抜く訳にはいかないからね」

「そっか…分かった。何か協力出来る事ある?」

「女神に協力してもらうのはちょっと…気持ちだけ受け取っておくよ」

「うむむ…わたしは早くイリゼと遊びたいのにー…」

「うーん…じゃあさ、さっき言った私の荷物の片付けしてくれる?そしたら私もちょっとは早く遊べるからさ」

「はーい!ちょっとでも早く遊べるなら、ねぷ子さん頑張っちゃうよー!」

 

自分のデスクの片付けは全くやってなかったネプテューヌが、私と遊べるならと言って元気よく駆け出していく様子を、私は微笑みながら見送る。

ネプテューヌはほんとにただ遊びたいだけなんだと思う。そこに私の抱く気持ちとの若干のすれ違いは感じるけど…だとしても私とネプテューヌが友達だという事は変わらないし、私はネプテューヌに友達としての感情も、友達として大好きだって感情もある。だから、それもそれでいいんだよね。ネプテューヌがネプテューヌらしくある事、そこに文句なんて一切ないんだから。

そんな思いを胸にしながら執務室の監査を終える私だった。

 

 

 

 

 

 

「ふふーん!片付けのお手伝いの名の下、イリゼの部屋を漁っちゃうよー!」

「って、それが目的かぁぁぁぁぁぁっ!」




今回のパロディ解説

・江頭さん
お笑い芸人、江頭2:50こと江頭秀晴さんの事。別に言う事でもありませんが、勧誘の二人組はあの独特な江頭さんの格好をしていた訳ではありません。

・イリドレッド、不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)
Fateシリーズに登場するキャラの一人、モードレッド及び彼女の有する宝具のパロディ。何故か恒例となった正体隠しネタも遂にここまで来ました!…何してんのイリゼ…。

・「〜〜よーうーかーいーの、せい〜〜」
アニメ版妖怪ウォッチのEDの一つ、ようかい体操第一内のフレーズの一つのパロディ。片付けが出来ないのは妖怪のせいではなくネプテューヌの性格のせいです、はい。
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