超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude 作:シモツキ
「お邪魔しまーす!」
「こんにちはー」
よく晴れた某日。…って言うとなんか各話の始まりっぽいよね。実際始まりだしさ。○日、って具体的な表現をするんじゃなくて、某日とかある日とかってぼかしてるのが逆に良いのかな?
まぁとにかく、ある日わたしとネプギアはリーンボックスに遊びにきたのでした。ちゃんちゃん。
「いやお姉ちゃん、それだと終わっちゃうから…」
「偶には速攻終わるのも一興だと思うんだよね、うん」
「…まだ千字いってないよ?」
「あ、それもそっかー」
なんて話しながらベールの部屋に向かうわたし達。およそ普通の姉妹っぽくない会話だけど、わたし達は普通の姉妹じゃないから問題なーし!というか碌にボケずに終わるつもりもなーし!
「あ、お姉ちゃん。ベールさんに会う前にちょっと訊きたい事があるんだけど…」
「なになに?ベールの弱点?」
「い、いやわたしベールさん倒す気ないから…そうじゃなくて、どうしてわたしを連れてきたの?」
背丈の関係で、ちょっと下を見る感じで質問をするネプギア(これがわたしのちょっとした悩みだったり…)。ネプギアと同じ女神候補生のいるラステイションやルウィーならともかく、リーンボックスとなればそういう質問してくるだろうなぁって予測していたわたしは、質問に対し予め用意していた答えを返す。
「んー、帰りにネプギアを一人で置いて帰って、ネプギアがちゃんと一人でプラネテューヌまで帰ってこれるか実験する為?」
「帰れるよ!?わたしそこまで子供じゃないもん!後最悪飛べはプラネテューヌまで直線で帰れるからね!?」
「まぁそれは冗談として、ほんとは突っ込み役が必要だったからだよ。わたしとベールの二人きりだと暴走して収集がつかなくなる事は目に見えてるし」
「その自負があるなら気を付ければ良いんじゃ…」
「それで気を付けられるならわたしとベールは世話のかかる女神扱いなんてされないよ!」
「それは堂々と言い放つ事じゃないんじゃないかな!?」
まだ部屋に着いてもいないのにわたしとネプギアは大騒ぎ。偶々通りがかった職員さんにびっくりされちゃったよ。
「こほん…でもそれならわたしじゃなくてもいいんじゃない?」
「ううん。イリゼはちょっと理由があって呼べないし、あいちゃんはベールが絡むと突っ込み役こなせなくなるし、こんぱはそもそも突っ込みタイプじゃないからすぐに呼べる中だとネプギアが適任なんだよ」
「わたしが適任……そういう事なら納得、かな」
適任、って言葉を聞いた瞬間ネプギアはぴくっと反応して、その後こくんと頷いた。
ネプギアは最近、適任とか認めたとかって言葉によく反応する様になった。いーすん曰く、こういうのって承認欲求が関係してるらしいね。ネプギアが順調に成長しているみたいでお姉ちゃん安心だよ。
「という訳でベールの部屋に着きましたー。さてネプギア、どうやって入ったらいいと思う?」
「え、普通に入っちゃ駄目なの…?」
「ちっちっちー、女神はこういうちょっとしたところでボケに走れるかどうかで評価が決まるんだよ?」
「そ、そうなの?」
「そうだよ?だってほら、ちょっとイリゼの各国監査パート見てみなよ」
「う、うん……あ!ま、毎回部屋入る前に無駄に凝ったボケをしてる!?」
「でしょ?ほらほらネプギア、ネプギアならどんなネタを思いつく?」
「えーと…うーん……あ、バズーカで吹っ飛ばすとか?」
「それは過激過ぎるよ…多分早朝バズーカの潜入シーンから連想したんだろうけど、そんな事したらプラネテューヌとリーンボックスで戦争になりかねないよ…」
適当な事言ってネプギアを言い包めたら、とんでもない発想を返されてしまった。確かにわたしは常日頃ド派手さを求めてるし、ネプギアにもそれを教えてたりはするけど…これはちょっと反省が必要かも…。
「じゃあ……窓から入ってみる?」
「お、それはいいね。でも窓側に回るのは面倒だなぁ」
「じゃあじゃあ、ちょっと前のハプニングみたいに隠し通路から…」
「それはわたしの執務室じゃないと無理でしょ…ベールなら作ってる可能性もあるけど…」
「うぅん…ごめんねお姉ちゃん、今のわたしに思い付くのはこれ位かも…」
「そっかぁ…でも楽しめたからOKだよ!さぁ入ろうかネプギア」
「え……ちょっとしたところでのボケは…?」
「やってたじゃん、今」
「これ!?ボケの為の会話じゃなくてこの会話自体がボケだったの!?」
「ざっつらーいと!」
「そ、そんな高等テク的ボケを仕掛けないでよ…」
既にちょっと疲れてるネプギアを連れ立って入るわたし。わたしと波長の近いベールと遊ぶ為のウォーミングアップとしては十分だよね、よーし今日は遊ぶぞーっ!
*
お姉ちゃんとベールさんの部屋に入って数十分後。ベールさんの用意しておいてくれたお茶とお菓子を頂いて、それを食べた後お姉ちゃんとベールさんは早速ゲームを始めて、まずは手慣らしって事で軽くやってる二人にわたしも参加させてもらって…そこまでは良かったんです。
でも、手慣らしの終わった二人は、段々とヒートアップし始めて……
「ふふっ、流石ベール。ゲーマーの名は伊達じゃないわね」
「その言葉、そっくりそのまま返させて頂きますわ」
(なんで…なんで……なんで二人共女神化してゲームしてるのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?)
凄まじい勢いでコマンドを入力されるコントローラー。人知を超えたプレイヤーが動かしてるせいか、こっちまであり得ない動きをしてるキャラクター。…はい、読者の皆様なら分かる通り、とんでもない戦いとなっています。
「ネプテューヌ、貴女の技量は相当なもの…しかし、オンラインが基本のネトゲで鍛えたPvP能力はわたくしの方が上ッ!」
「確かにそうかもしれないわね、でも…忘れたのかしら?わたしはネプテューヌ…そんじょそこらの人とは、発想力が違うのよッ!」
「な……ッ!?」
定石から外れた(らしい)お姉ちゃんの動きは、裏をかこうとしていたベールさんの攻撃を空振りさせ、逆に背後を取る。
そのまま仕掛けにいったお姉ちゃん。わたしは「入った…!」って思ったけど……ベールさんは、それを防御してみせた。
「こ、これは…ピンポイント防御!?」
「今のはヒヤリとさせられましたけど…そう簡単に直撃は喰らいませんわ」
「わたしのコマンドを…完全予測したって言うの…!?」
「言ったでしょう?PvP能力はわたくしの方が上と。確かに拮抗した状態で貴女の発想力に喰らいつくのは困難ですわ。ですが…さしものネプテューヌも、絶好のチャンスで奇行に走ったりはしないという事ですわね」
「……っ…チャンス故にわたしは普通の行動をしてしまったという訳ね…だけど、なら最後までわたしは発想力を活用すればいいだけの事!」
「でしたら、わたくしはその発想を超えてみせますわ!」
一進一退の攻防を続ける二人。ゲームの仕様上、通常防御時には僅かにダメージが入っちゃうからお互い少しはHPバーが減ってるけど……ベールさんの言う通り、お姉ちゃんもベールさんも直撃は一度もされていなかった。……って言うか…
(シュールな光景だなぁ……)
二人共女神化をしているから、当然見た目は凛々しく美しい女神のもの。それに服装もプロセッサユニットだから、外見の上では完全に戦闘の時のそれ。でも、ここは高貴さとインドアさの混じったベールさんの私室で、二人が握ってるのは大太刀や大槍じゃなくてゲームのコントローラーで、二人がしているのは正座から足を外側に開いた所謂『女の子座り』。それでいて顔は真剣そのものなんだから……シュールにも程があるよ…。
「負けはしないわ…喰らいなさいっ!高橋名人直伝(の異名が欲しい)、擬似16連射!」
「まさか16連射とは…しかし正確性ならこちらが上手!毛利名人直伝(を名乗りたい)、擬似14連射!」
「嘘でしょ!?っていうか女神の力でそんな事したらコントローラー潰れちゃうよ!?」
「安心なさいなネプギアちゃん、このコントローラーはこういう時の事を想定した特注性ですわ」
「どんな想定してるんですか!?」
わたしは堪らず遂に突っ込みを口にする。うぅ、お姉ちゃんがちょっと…あ、アレなのは女神化する前だけだと思ってたのに…他の国の女神さんは少し変わってるだけでお姉ちゃんよりはずっと普通の人だと思ってたのに……イリゼさんも時々変になるし、もしかしたらノワールさんやブランさんもそうなのかな…。
「どんな想定…想定と言えば、ここまで埒が明かない戦いになるとは思っておりませんでしたわ」
「ワンサイドゲームよりはずっと楽しいじゃない。でもそれもそうね…じゃ、クイズでもしましょうか」
『クイズ?』
お姉ちゃんの提案に、わたしとベールさんは頭に疑問符を浮かべる。…勿論二人は激戦を繰り広げながら。
「そうクイズ。わたしとベールがお互いに一問ずつクイズを出して、それを出題してない方とネプギアが答える。どうかしら?」
「どう…って、どうしてそんな事を?」
「クイズを考えたり答えを探したりすれば、集中力に陰りが出て、拮抗した状態が崩れるかもしれないでしょ?」
「あぁ、そういう…わたしはいいよ」
「わたくしも構いませんわ。尤も、その程度で途切れる集中力は持ち合わせておりませんけど」
「わたしだって、この姿での集中力は相当なものだと自負しているわ」
「なら決定ね。わたしが持ちかけた事だし、出題と回答のどっちを先にしたいかはベールが好きな方を選んでくれて構わないわ」
「でしたら、出題をさせてもらいますわ」
一切動きの精細さを欠く事なく、クイズに関するやり取りを行う二人。この時点でもうクイズなんてやったって意味ないんじゃないかと思うけど…何だかお姉ちゃんもベールさんも自信ありげだった。…まぁ、取り敢えずわたしはクイズに参加すればいいだけだし、気楽にやろうかな……
「では第一問、ネプテューヌが夜な夜な行っている秘め事とは!?」
「はい!?ひ、秘め…はいぃ!?」
「そんなの簡単、隠れてプリン食べる事よ!あの悪い事してる感と見つかるかもというドキドキが堪らないわ!」
「あ……よ、よかった変な事じゃなくて…ってそんな事してたの!?そしてそれ言っちゃっていいの!?」
…前言撤回。全然気楽にやれそうになかった。一問目からとんでもない出題だった。しかもそれにお姉ちゃんは平然と答えていた。……へ?変な事ってどんな事か、ですか?…そ、そんなの知りませんっ!
「一問で仕留めるつもりでしたのに…やりますわね」
「お互い考えてる事は同じだっただけよ。じゃ、二問目……」
「ちょ、ちょっと待って!今の問題の答え、ベールさんは知ってたんですか…?」
「いえ、ネプテューヌの事だから何かしら悪さしてるかもとは思っていましたけど、具体的な事は知りませんでしたわ」
「え……?お姉ちゃん、それっていいの…?」
「えぇ。だってわたしは出題時のルールも回答時のルールも別に言ってないもの」
「そ、それって……」
お姉ちゃんの言葉を聞いて、わたしはさっきの二人の自信げな顔の理由を理解する。
わたしは最初、ゲームはゲーム、クイズはクイズと無意識に分けて考えていた。でも、お姉ちゃんは提案時、ゲームの集中力を崩す目的でクイズをやるって言っていた。という事はつまり、クイズはあくまでゲームの為のものであって、クイズ自体は正解しようが間違えようが、クイズがまともであろうが異常であろうが関係ないという事。どんな問題にするか、何が正答なのか…それを考える事が集中力低下に繋がるんだと思ってた(実際これは間違いではないんだよね?)けど、二人が狙っていたのはそこじゃなくて、出題、回答の内容による揺さぶりだったのだった。
この高度な駆け引きに、わたしは心の中で叫ぶ。
(お姉ちゃん、ベールさん……それはこんな日常の一コマで発揮する事じゃないと思うよ!?)
……あ、賞賛すると思いました?いや、これは流石にやってる事と状況が違い過ぎて、素直に賞賛する気になれませんって……。
「こほん、第二問!最近あったベールの恥ずかしい事は!?」
「イリゼにお姉様って呼ばされた事ですわ!」
「えぇ!?イリゼさん何してるんですか!?ベールさんも何やってるんですか!?」
「そちらも一問では沈まない、という訳ね…」
「冷静っ!普段のお姉ちゃんなら物凄く食い付く筈なのに今日は冷静!女神化って凄い!」
「でしたら第三問!ノワールがツインテールを始めた理由は!?」
「わたしがその方が可愛いと言ったから!」
「完全に答え分からない質も…お姉ちゃん!?それは嘘だよね!?そんな口説きまがいの事なんてしてないよね!?」
「第四問!今話題のハッピーグルメ弁当は!?」
「どんどん…?」
「ベールさんいったー!って、何これ!?ある意味先の三問以上に意味不明だよ!?ねぇ!」
「第五問!この「わたしの突っ込みオール無視!?か、カオス過ぎる!」…いい突っ込みセンスしてますわね、ネプギアちゃん」
「ありがとうございます!でもこんな形で褒められても嬉しくありませんよ!」
コマンドの応酬に加えてトンデモクイズの応酬まで始まってしまった。もう、本当に訳が分からない。そしてお姉ちゃんとベールさんの二人きりだと暴走して収集がつかないというのも本当だった。…わ、わたし明日声枯れたりしないかな……。
「第八問!今何問目!?」
「十問目ですわ!」
「嘘でしょう!?こんな下手にも程があるクイズを間違えるってあり得ませんよベールさん!?」
「第九問目!女神化前のネプテューヌは意外と妹要素多めな気がしますわ!貴女自身はどうでして!?」
「我ながらわたしもそう思うわ!何ならベールに狙われるんじゃって思った事もあったもの!」
「もうこれクイズじゃなくてただの問いかけ合戦じゃないですかぁぁぁぁぁぁぁああっ!」
ぜぇぜぇはぁはぁと肩で息をするわたし。二人はずっとクールな顔で、まるでミスせずゲームをしてるというのにわたしはもう疲労困憊だった。これが、守護女神と女神候補生の差なのでしょうか…そうだとしたら、わたしはこの差を…‥埋める様な真似はしたくないと思います。
「第十問目!…といきたいところだけど、流石に即興で考えるのはキツくなってきたわね…貴女もそうでしょ?」
「そうですわね。では、クイズの代わりに…賭けは如何でしょう?」
「賭け?何を賭けるつもりなの?」
「それは勿論…ネプギアちゃんの姉としての地位ですわ!」
「あ、貴女女神化しててもそんな事言うのね…」
ここで初めて、お姉ちゃんの声音が少し変化した。と言っても指の動きは変わらず、僅かに呆れただけみたいだけど。
「ま、女神化していても根っこは同じ人間なんですもの。…で、どうですの?」
「それはそうね……ふっ、舐めないで頂戴。ネプギアを出す事でわたしを揺さぶろうとしたんでしょうけど…その位想定内よ!えぇ、受けて立つわ!」
「その心意気は天晴れですわね。ですが……」
そこで言葉を一旦切ったベールさん。それについてわたしもお姉ちゃんも特に何にも感じなかったけど…この時ベールさんは、勝負を決めにかかっていた。
「--------ネプギアちゃんが、悲しそうな顔をしていますわよ?自分の姉という立場は、そんな簡単に賭けに出せるものだったのかと、凄く悲しそうな顔を…」
「……っ!?」
その時、お姉ちゃんは振り向いた。わたしの方を、振り向いた。動揺した顔で、コマンドを打つ手を止めて、わたしの事を気にしてしまった。
そして、お姉ちゃんは気付く。これがベールさんの策略だという事を。わたしは……『なんかもういいや、二人には好きにやっていてもらおう…』みたいな顔をしていた事を。
「ネプテューヌ……貴女は、妹想いの良いお姉さんなんですわね」
「くっ……ベール!貴女はッ!」
「残念ながら…勝負は勝負ですわ!」
お姉ちゃんの動きの止まった一瞬。そこに叩き込まれるベールさんのコマンドの嵐。すぐにお姉ちゃんも画面に向き直ってコマンドを打つけど、攻撃を受けた事によるキャラクターの怯みもあってお姉ちゃんは上手く反撃出来ず、差を詰められないままゲームセット。ベールさんの、勝ちだった。
「ふぅ…ここまで熱い戦いは久し振りでしたわ」
「ず、ズルいわよベール…あんな手段を取るなんて…」
「あら、仕掛け合いのクイズをしてる時点でどちらも相手にズルいなんて言えないのでは?」
「それは……分かったわよ、わたしの負けよ…」
お姉ちゃんはコントローラーを置く。その声は悔しそうだったけど…よく見たら勝ったベールさんは勿論、お姉ちゃんも満足そうな顔をしていた。やっぱり全力出しての戦いの後は、勝敗関わらず気分が良いんだね…と色々アレな点があったものの、そう思うわたし。
……でも、そこでわたしは思い出す。あれ、これってもしかして…
「…お、お姉ちゃん……」
「……?何かしら、ネプギア」
「お姉ちゃんって賭けに乗ってたよね?」
「えぇ、乗ったわね」
「それでお姉ちゃん、今負けたよね…?」
「えぇ、負けたわね…………あ」
「まぁ…こういう事に、なりますわね」
すっ…とわたしの隣にやってくるベールさん。外見と顔に浮かべた薄い笑み、そしてこの状況というのが組み合わさって……ベールさんは、まるで戦勝国の女王様の様だった。
「……えと、その…あれはその場のノリよね?」
「ノリですわね。でもネプテューヌは受けて立つと言いましたわよね?」
「で、でもあれはゲームの為の会話っていうか…」
「言った事は変わりませんわよね?」
「あ、え、えと…姉の立場なんて、取り引き出来るものじゃ……」
「言い訳は、聞きませんわよ?」
「…………」
「…………」
「……ネプギア、ちょっと席外してもらえない…?」
「え?…あ、わたしリーンボックスで買いたい物あるから、じゃあそれで少し席外すよ…」
「そうして頂戴…」
わたしは部屋を出て、外へと向かう。なんだかヤバそうな展開だった事もあり、早足で外に出る。それで数十分後、わたしが戻った時には二人共女神化を解除して、仲良くお喋りをしていたから安心してお姉ちゃんの隣に行ったけど……わたしが出ている間、何があったかは聞けませんでした…。
*
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「脱ぐわ、土下座もするしお金だって幾らでも出すわ、もうなんでも言う事聞くわ、だから……姉の立場は許して下さい、ベール様…」
「そうですわねぇ…」
「…………」
「…ま、あれは冗談ですけどね」
「え……?…な、何よベール、そうならそうと早く言って--------」
「でも、さっきの言葉は録音させてもらいましたわ。うふふ」
「……………………」
*
「えーと、さ…ベール、ちょっと聞いてほしい事があるんだけど…」
「あら、何かしらネプテューヌ」
ネプギアが買い物に行ってからおよそ五分後。わたしはネプギアがいない事もあり、今回遊びにきたもう一つの理由の為にベールに話しかけた。……因みにベールは録音させた携帯端末を手で弄っていた。…わたしもうベールに一生逆らえないのかも…。
「その…うーん、なんて切り出したら良いんだろう…」
「珍しくズバズバ言わないんですわね…真剣な事なんですの?」
「うん、真剣な事。だから真面目に聞いてくれる…?」
「…別に茶化したりはしませんわ、話して下さいまし」
ベールは携帯端末をテーブルに置き、わたしに向き合う。…ちゃんと聞くって態度を見せてくれるのは嬉しいけど、こう向かい合うと余計切り出し辛くなるね…き、切り出すけどさ。
「んと……ベールはさ、あいちゃん…とチカもかな?…を、好きなんだよね?」
「訊かれるまでもなく大好きですわ」
「だ、だよね…じゃあさ、その好きってのは…その……」
「あぁ…そういう事ですのね」
「こ、こういう時に察し良くなるのは嫌いだよ!」
「そうやって慌てるのは、わたくしの察しをそうだと認める様なものですわよ?」
「うぐっ……わ、分かってるなら質問に答えてよ…」
顔が赤くなってるのが自分でも分かってしまって、それと察せられた事とで恥ずかしくなってわたしは少し俯く。うぅ、こうなる事は分かってたよ…でもベールが適任なんだから仕方ないじゃん……。
「こういうところはネプテューヌも女の子ですわね、ほんと。…こほん、では真面目に答えるとして……そうですわ。貴女の思う通り、わたくしの大好きという気持ちは、特別な関係になりたいという意味での大好きですわ」
「……それってさ、ベールの中でどう割り切ってるの?他の好きととか、性別とか…」
「……割り切る必要なんて、ないのではなくて?」
「……え?」
ベールが一体どんな答えを口にするのか。そう思ってちょっと緊張していたわたしだけど…ベールの言葉はわたしが考えていたのとは真逆のものだった。それについわたしはきょとんとしてしまう。
「割り切るなんて、そんなのやろうと思って出来る事ではありませんわ。だって『好き』というのはそんな単純なものではありませんもの。例えば…わたくしはネプテューヌを好きですわ、貴女はどうでして?」
「わ、わたし?…そりゃ、好き嫌いで言えばわたしも好きだけど…」
「でしょう?わたくしとネプテューヌの間にあるのも好き、わたくしとあいちゃん、チカの間にあるのもまた好きなのですわ」
「そ、そういう事じゃないよ…わたしが言いたいのは…」
「そういう事なのですわ。大事な人で、一緒にいると楽しくて、また会いたくなる。それは友達だろうと恋人だろうと変わらないもの。ただ求めるものが少し違うだけで、その違う事を便宜的に友情だの愛情だの区別してるだけで、本質は変わらない。ただまぁ敢えて言うなら、好きの度合いが違うと言うのではないかしら?実際わたくしは貴女も好きですけど、それ以上にあいちゃんとチカが好きなんですもの。…だからと言ってどれ位違うのかは分かりませんし、貴女が然程大事ではないという事は一切ありませんけどね」
「…そっか…うぅん、分かった様な分からない様な……」
「それでいいんですのよ。想いを無理矢理定義付けようとしたところで、そこには歪で説得力のない紛い物しか現れませんもの」
ベールの言う事は、ちょっと難しくてすぐには飲み込めない。でも…そうなのかな、って思える言葉な気がした。だから、わたしは続ける。
「……じゃあ、さ…友達のままで居たいっていうのは、もう少し気付かないフリしてるっていうのは、いい事かな…?」
「貴女がそうしたいなら、それで良いと思いますわ。友達でも恋人でも、求めるばかりでなく相手を受け入れる事が大切ですもの。ネプテューヌは今求められている。それにネプテューヌはいつかはキチンと答えを返すと考えている。でしたら代わりに気付かないフリを…もう暫く友達のままでいる事を受け入れてもらうだけの資格がありますわ」
「……全部、お見通しなんだね」
「全部かどうかは分かりませんけど…それなりにそっち方面の機微には聡いつもりですわ」
「そっか…じゃあ、わたしはそうするよ。だって、わたしは今の関係も好きだもん。答えを出すなら、しっかり考えてしっかり悩んだ末に出したいもん。…二人には、真摯でいたいもん」
「そうするといいですわ。その二人もきっと今の関係も好きでしょうし、貴女自身の思いを大切にしなければそっちの方が失礼ですもの。…頑張りなさいな、何かあればいつでもわたくしが相談に乗ってあげますわ」
「うん、頑張るよ。…やっぱベールは頼りになるね」
穏やかな笑みを浮かべてくれたベールに、わたしは安心した様な顔を見せる。本当にベールには感謝してもしきれない。だから、わたしは言った通りにしようと思う。それが、ベールの好意も、二人の想いも、わたしの気持ちも全部無下にしない為の方法だから。
「いやー、すっきりしたよ。ありがとね、ベール」
「わたくしも友達と恋バナが出来て嬉しかったですわ」
「あはは、わたし達普通の会話なんて滅多にしないもんねー」
「偶にはこういうのもいいですわよね」
「だねだね。あ、このついでにさっきの録音消してくれないかな?」
「いやそれはしませんけど?」
「……ですよね…」
ある日の、ある出来事。日常の一ページ。それは普通の人の日常の一ページとは大きく離れたものかもしれないけど…それでもやっぱり日常の一つ。これが、わたし達の楽しい日々なんだよね。
……この日、わたし達が帰るまで…いや帰ってからもベールからの要求はなかった。…ぎゃ、逆に怖い!わたしはいつどんな要求をされるの!?
今回のパロディ解説
・高橋名人、16連射
ファミコン全盛期に有名人となった、高橋利幸さんの事及び彼の得意技。現代のゲームで16連射したらどうなるんでしょうね?まぁボタンやられそうなのは事実ですが。
・毛利名人、14連射
ファミコン全盛期に有名人となった、毛利公信さんの事及び彼の得意技。ゲイムギョウ界な訳ですし、どこかの時代に彼(と高橋名人)の様な方がいてもおかしくないですね。
・「今話題のハッピーグルメ弁当は?」「…どんどん?「ベールさんいったー!〜〜」
弁当チェーン店、どんどんのCMのパロディ。実はどんどんってとある県にしかない…というのを今回パロディに出して初めて知りました。…つ、伝わるのかなこのパロ…。