超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第二十八話 夏だ!海だ!ゲイムバカンスだ!(スイカ割り&衝撃発表編)

海での遊びは色々とある。泳ぐ事と砂浜を使う事(お城作ったりビーチバレーしたりね)が群を抜いて多いけど、何もその二種類だけじゃない。それ以外、となると大体は海じゃなくても出来る事だけど、海じゃなくても出来る事だからって海でやっちゃいけない理由にはならないし、海でやるからこそ味が出る…という事もあり得る。

雰囲気だとか、伝統だとか、テンションだとか……そういうのはあろうがなかろうがやる行為そのものには関係しない、でも何かしらの影響は及ぼすものが、夏の海という空間には溢れている。

そんなものを感じながら、私は刃を握り、後ろから聞こえる声を頼りに暗闇の中前へ進む。対象を両断する為に。赤く瑞々しい果肉へと辿り着く為に。…………スイカ割りって、楽しいよね。

 

 

 

 

「よーし皆!スイカ割りをしよーっ!」

 

私がネプテューヌとノワールを釈放してから一時間と少し。私がもう一度水泳練習をしたり、ネプギアとユニがそれぞれの姉に、塗りが甘かった日焼け止めを塗ってもらってたり(ネプテューヌはふざけるしノワールは変な雰囲気になるしで中々ピンクな二組でした)、守護女神四人がビーチバレーに白熱し過ぎた結果地形が変わりかけたり、時間を追う毎にはしゃぎ度が増す女神組をコンパとアイエフが大人の様な表情で見守ってたり、ロムちゃんラムちゃんが黙って林探検に行ってしまって全員が大慌てしたり…そんな濃ゆい時間を、きちんと描写すれば三話分位になりそうな出来事を数人ずつで並行して行った私達。流石にちょっと疲れが出始めて、何か食事でもしながら休憩したいね〜…なんて雰囲気になっていたところで、ネプテューヌがそんな事を言い出した。

 

「スイカ割り?」

「あれ?あ、知らなかったんだ。えーっとね、スイカ割りってのは言葉通りスイカを割る遊びで…」

「いやそれは知ってるよ!?…そうじゃなくて、何故突然スイカ割りを?って事」

「まぁネプテューヌの事ですから、単なる思い付きではなくて?」

「その通り。わたしがやりたいなーって思ったからだよ」

「あ、そう……」

 

やりたくなったから、やろうと提案した。至極単純で、疑問の出ようもない回答。なので会話はこれにて終了……とはならない。

 

「スイカ割りねぇ…私は構わないけど、ネプテューヌはスイカ持ってきたの?」

「ううん、スイカも目隠しも棒もないよ。あるのはこれだけかな」

『か、刀……』

 

すっ…と刀(普段戦闘で使っている物とは別な模様)を手元に呼び出したネプテューヌに、私達は唖然とする。…や、確かにスイカ割りで本物の刀使っちゃいけないなんてルールはないけど、常識的に考えて木の棒か木刀でしょそこは……。

 

「駄目かな?これならスイカが粉々にならなくて食べ易いと思うんだけど」

「配慮の仕方が斜め上過ぎるよお姉ちゃん…」

「それに、刀を使っても皆が皆綺麗に斬れるとは限らないです」

「あーそっかぁ…」

 

刀がメインウェポンで引き斬る事はお手の物なネプテューヌにとっては、対象をスパッと断ち斬る事は造作もないんだろうけど…本来引き斬るというのは技術のいるもの。同じ刀剣使いである私やノワールはまぁスイカ位なら出来るだろうし、刃が武器の装備を扱うベールとブラン、それにアイエフも可能性はある。けど妹組は殆どが刃を使わないし、ネプギアの得物はビーム刀剣だから使い勝手がかなり違い、コンパは…あれ針だもんね。拡大すれば刃とも言えなくないけど、それは無理があるもんね。

という事で刀は止めた方がいい…と思っていた私達だったけど、ネプテューヌの方は何か考えがあるのか刀をしまったりはしない。

 

「…というか、刀よりも大事なのはまずスイカじゃないかしら?」

「ですね。ねぷ子、スイカ無しでスイカ割りなんて食材無しで料理する様なものよ?スイカはどうする気?」

「ふっふーん、やっと聞いてくれたね?ねぇ皆、わたしはスイカないって言ったけど…準備してないとは言ってないんだよ?」

 

何やら不敵な笑みでそんな事を言い出すネプテューヌ。それと同時に、遠くの空から何かのエンジン音の様なものが聞こえてくる。

 

「これは…航空機の音?」

「あ、この音は多分プラネテューヌ製エンジンですね」

「あ、あんたエンジン音だけでどこの国のものか分かるのね…」

 

さらっとエンジン音から判別するという超絶技術を見せたネプギアにユニが反応し、周りの私達も驚きと呆れの混じった表情を浮かべる。でも当の本人であるネプギアは「うーん…このタイプのエンジンは軍用機じゃないよね。もう少し音がはっきりすれば…」とかなんとか言って自分の世界へと入っていた。…こ、この子将来浮いた存在になったりしないよね…?

 

 

「航空機ね…この流れだと、ネプテューヌが呼んだって事かしら?」

「そうだよノワール。わたしがスイカ食べたくなる頃に配達頼むねっていーすんにお願いしたんたー」

「物凄い無茶振りですぅ」

「でもその頃を見事に的中させてみせた…やりますわねイストワール…」

 

イストワールさんの推測能力は言うまでもなく凄いし、ネプテューヌの無茶振りも違う意味で凄かった。

段々と航空機(見える限りだと輸送機?)が近付いてくる中、会話を続ける私達。

 

「…うん?となるとネプテューヌはスイカを頼んだ訳だよね?……スイカ位自分で持ってきてもいいんじゃ…」

「それが出来るならしてるよ?」

「出来るなら…?それって……」

 

どういう事?そう言おうとした瞬間…私達の頭上まで到達した輸送機は、球体状の何かを投下した。

中々の重さがあるのか、かなりの勢いで落下してくる球体。私、ベール、コンパ、アイエフは反射的に跳び退き、妹組は全員突然の事に立ち尽くし、ノワールとブランは妹を守る様に前に出て、ネプテューヌは自信満々に腕を組んだ。そんなそれぞれのアクションを起こす中球体は砂浜に落ち、視界いっぱいの砂煙を引き起こした。

 

「けほけほ…」

「なんにも見えなーい!」

「な、なにこれ…空爆……?」

「こ、これお姉ちゃんが用意したんだよね…?」

 

砂煙でけむい中聞こえる妹組の声。対する私達姉組(ネプテューヌ除く)と人間組は…もうほんとに流れが空爆のそれだったせいで、完全に意識が戦闘モードのそれになってしまっていた。……戦いに慣れ過ぎるのも考えものだね…。

 

「あー皆ー!落ち着いてくれるかなー?今落ちてきたのスイカだからー!」

『スイカ!?』

 

ネプテューヌのカミングアウトに視界最悪ながらも私達は目を剥く。い、いやスイカって…そんな事ある!?明らかにスイカの叩き出せる威力じゃないよ!?

と、思ったのは当然私だけじゃなく、皆それぞれ心の中で突っ込みを入れていた(と思う)。…いや絶対入れてるね、ここで突っ込まない様じゃ女神パーティーメンバーの名は語れないよ。

それはともかく、私達は一体何が落ちてきたのかと考える。スイカ…というのは論外として、落ちてきた速度と砂煙の規模からそれなりの重さがある事が想像出来る。さしずめガラスボール以上鉄球以下。さて、落ちてきたのは一体何なのやら……

 

 

……あ、違ったスイカだった。

 

『…………』

 

……ん?

 

『…………』

「あ、スイカだ…」

「スイカー!」

『……スイカだった!?』

 

砂浜に出来ていたちょっとしたクレーター。その中央に位置していたのは、緑ベースに黒の歪んだ縦縞が引かれている球体。……うん、まぁ…スイカでしたね…。

 

「スイカだった!?って、皆信じてなかったの?酷いなぁ、わたしそんな信用ないの?」

「あ、あんな勢いで落っこちてきたらねぷ子の信用関係なしに信じないわよ!っていうか…大きくない!?」

 

色合いや模様はどう見てもスイカ。そこは疑いようのない事実だけど……なにか、サイズがおかしかった。もう少しはっきり言うと、異常に大きかった。…あ、あれ?スイカって確か大きくてもバスケットボール位だよね?

 

「おっきい…おだいばのボール位ある…?」

「きょだいネンドールが入ってたボール位あるかもね!」

「いやそんなに大きくはないから…ロムラム、読者の誤解を招く様な事には気を付けなさい」

((え…指導するとこそこ(なんですか)…?))

「あ…そっか…」

「ごめんなさーい…」

((しかも伝わってる!?))

 

ロムちゃんラムちゃんが既にメタ視点を有していた事は衝撃だった。…けどそれはさておき…えぇと、なんの説明するんだっけ…?……あ、そうだ…!…落ちてきたスイカは、大玉ころがしで使う位の大きさだった。……うわ、例え出すと余計目の前にある物質の異常さが実感出来るよ…。

 

「確かにこの大きさならこの重量も納得だけど…」

「一体どうやってこんな大きさのスイカを調達したんですの…?」

 

私達の思考を代弁する様に口を開くノワールとベール。それを受けたネプテューヌは当然訊かれるだろうもの、と捉えていたのか腕を組んだまま声を上げる。

 

「ふふん、説明しよう!このスイカはうちの国のとある農家さんで出来たスイカなのだ!」

「ね、ネプテューヌさん…どこで取れたかも気にはなりましたけど、アタシ…お姉ちゃん達が訊きたかったのはそれより先の事では…?」

「まぁまぁユニちゃん、順を追って説明するから安心してよ。えとね、これは品種改良の成果…ってやつなんだ。ロムちゃんラムちゃんは品種改良分かる?」

「分かんない」

「知らない…(ふるふる)」

「それはわたしが説明するわ」

 

案の定分からなかった二人にはブランが説明し、その間にネプテューヌはどういう経緯で品種改良がなされていったのかを教えてくれる。なんでもがっつりスイカを食べたい人へ向けての改良だったらしいけど……

 

「皮ばっかり大きく厚くなっちゃったみたいなんだ。一応果肉の方も増えてはいるみたいだけどね」

「商品としては完全に失敗してるね…でも大きく出来たなら改良を続ければ可能性あるのかな?」

「ですね。それでねぷねぷ、それは食べても大丈夫なんですか?」

「それについては農家さんからお墨付き貰ってるからOK!自力じゃ切れなくて機械の力を使ったらしいけどね」

「機械って……あー、だから木刀じゃなくて刀なのね」

 

合点がいった、という様子のアイエフ。普通のスイカに対して刀を使うのは過剰でしかないけど、そのスイカがあり得ないサイズなら話は別。ネプテューヌの話が本当なら、木刀で叩いたところで表面がぼこぼこになるだけの可能性が高いもんね。

 

「よし、それじゃあスイカ割りしよっか!」

 

スイカに貼り付けられていた目隠しとビニールシートを手にするネプテューヌ。なんでこの子はこのスイカをここまで受け入れられてるんだ…と皆思っていたけど、そこを指摘したってなんの意味もない。それに…こんなスイカを割る機会なんて滅多にないだろうから、という好奇心も湧き始めて、段々とこのスイカでスイカ割りをするという雰囲気になってきた。

 

「まずはビニールシート敷かないとね。皆手伝ってー」

「はいはい…でも、ここでやるの?ずっと日に当たってるのは暑いし、わたしはショッピングモールでやるのも一興だと思うわ」

「そんなしょんない感じのスイカはしないよ…第一スイカ入らないもん」

「とは言え暑いのは事実ですわね。これ動かしたらビーチパラソルを移動させておきますわ」

 

ビニールシートを砂浜に敷き、そこへスイカを押して移動させる。…こうしてるとほんとに大玉ころがしみたいだなぁ…。

 

「ねぷ子、そう言えばあんた刀の鞘はあるの?」

「え、あるけど…まさかあいちゃん鞘で斬りたいの?」

「違うわよ…最初に刀を軸に回る時、抜刀状態だと危ないでしょ?特に妹組は」

「あそっか…じゃあ皆、刀はきちんと納刀してからぐるぐるしようね」

 

スイカを移動させ終わったところで指摘を受け、ネプテューヌは用意しておいた刀を鞘に収める。そしてビーチパラソル&ビーチベットをスタート位置に置き、ルールの再確認を行なって……遂に、スイカ割りの準備は整った。

 

「さ、後は順番決めね。ネプテューヌ、貴女が主導したんだし今回は一番を譲ってあげてもいいわよ?」

「ううんいいよ。というかわたしは、皆が諦めてからでもいいかなー」

「諦めてから…?」

「だってあれ結構斬り辛いらしいもん。ま、刀使いねぷ子さんには斬れちゃうけどね」

 

ビーチベットに脚を組んで寝転がり、いつの間にかかけてたグラサンをくいっと持ち上げたネプテューヌは…調子ノリノリだった。確かに刀の扱いはネプテューヌが一番得意だろうし、あのスイカを容易に斬るのも無理だろうけど……そう言われたら「やってやろうじゃない」って気持ちになるよね。

 

「…いいわネプテューヌ。だったら皆、さっさと両断しちゃってネプテューヌからスイカ割りの機会を奪ってあげようじゃない」

「賛成だよノワール。私やノワールはだって引き斬りの技術があるんだって事、教えてあげなきゃね」

「えと…わ、わたしはどっちの味方すればいいんだろう…」

「ギアちゃんは普通にスイカ割りを楽しめばいいと思うですよ」

 

イマイチメンバーの心は一つじゃなかったけど、それでもスイカ割りは始まる。……まぁそもそも、スイカ割りは団体戦でもなければ戦闘でもないしね。

 

 

 

 

『右右ー!』

「ふぇ…右……?」

「あ、ロムちゃん行きすぎー!」

「ふぇぇ…じゃあ左…?」

「ロム、方向転換するだけじゃなく進まなきゃ駄目よ」

「ふぇぇぇ……」

 

順番待ちの指示を受け、おっかなびっくりにスイカへ向かうロムちゃん。ふぇぇ…と言いながらちょこちょこ進む様子は非常に和むんだけど…割れそう感は欠片もなかった。

 

「そこそこー!ロムちゃんふぁいとー!」

「う、うん…えいっ…!」

 

やっとの思いでスイカの前まで辿り着いたロムちゃんは、恐る恐る刀を振り下ろす。……が、刀はスイカの表面を浅く斬って刺さるだけ。成功か失敗で言えば…残念ながら失敗だった。

 

「あぅ、きれなかった…」

「だいじょーぶよロムちゃん、わたしよりはまん中に当たってたもん」

 

ロムちゃんより前、一番手だったラムちゃんは振る勢いこそロムちゃんより上だったけど…当たったのはスイカの端っこだった。……というのもラムちゃんがあんまり私達の指示聞かなかったからなんだけど…。

 

「じゃ、次はユニね。目隠しは私がしてあげるわ」

「…お姉ちゃん、アタシ得物が遠隔武装だし、アタシだけ対物ライフル使うのは駄目かな…?」

「いや駄目よ、目が回った上目隠しした人にライフル持たせるとか女神でも怖いって…」

「…刀も十分怖くない…?」

「それは確かに……だ、だとしても駄目よ。対物ライフルじゃスイカ粉々になる可能性あるし…何より、一人だけ違う物を使うってのは良くないわ」

「そっか……うん、そうだよね」

 

何か二人で会話した後、目隠しをして十回回ってスタートするユニ。双子よりはしっかりした足取りで進んだ彼女は、先程ロムちゃんが当てた場所の近くで刀を振るう。

ずばり、と峰の部分まで刺さる刀。その瞬間をいつ用意したのか謎のカメラを持ってノワールが撮影してたけど…やっぱり果肉が見える事はなかった。

 

「これ、引き抜くのもちょっと大変ね…よいしょ、っと」

「次はわたし…斬れるのかな……」

 

妹組ラスト、ネプギアが準備をしてスタート。三人とは違いビームながら刀剣使いであるネプギアは、持ち方からして慣れてるって感じだったけど…足取りはユニ同様しっかりはしているもののどこかおっかなそうだった。

指示にちゃんと従いスイカの前まで到達したネプギア。振りもやはりそれなりに技術が見受けられるものだったけど……

 

「……あれっ?」

 

目隠しを取り、刀を見てきょとんとしてるネプギア。

 

「ネプギア、どうかしたの?」

「あ、はい。意外と斬りが浅くて…わたしはまだまだって事かな……」

「え、えーっと…それは偶々……」

 

確かに見てみると刀の入り具合はユニに若干負けている。曲がりなりにも刀剣使いなのにガンナー以下…というのがショックだったらしく、私は困り顔でフォローしようとしたけど…そこでアイエフが気付く。

 

「…ネプギアは実体剣の扱いに慣れてないからじゃない?」

「あ…そうだよそれだよネプギア。ビーム剣は重量を利用した斬り方はしないし、それ以外にも差異があるから、経験が逆に足を引っ張っちゃっただけなんじゃないかな?」

「あ、そっか…良かったぁ……」

 

アイエフと私の言葉に納得した様子で、ネプギアはコンパに抜いた刀を渡す。

これにて妹組は終了。妹組に先を譲ったのは年上の遠慮…というのが一番大きいけど、先を譲って情報を集めるという意図もあったりする。現にそのおかげで『刀でもやはり斬るのは困難』という事と『大きい分正確に動かなくても割と当たる』という事が証明された。……前者は分かりきった事でもあるんだけどね。

 

「それじゃ、次はわたしの番ですね」

「その次は私ね。上手くやれればいいんだけど…」

 

コンパ、アイエフと後に続く。経験も作戦(スイカ割りだけど)も妹組とは一味違う二人は、結果もやっぱり一味違ったけど…それでも果肉露出には至らなかった。……コンパが刀を深々と食い込ませたのを見て「あぁ…もう非力な少女だったコンパはもういないんだ…」と皆で複雑な気持ちになったり、アイエフに目隠しをする担当をベールが立候補した結果、何やらSMを連想させるワンシーンが出来上がったりしてたけど…。

 

「既に半分以上が失敗…でも、ここからが真骨頂ね」

「えぇ、でもノワール…それにイリゼもまだ待ちなさいな」

「こういうものは可能性の高い者程最後まで待つものよ」

 

すっ…と前に出るベールとブラン。妹組は遊びとして捉えていたし、コンパアイエフもそれに違い気持ちだったんだろうけど…私含む姉組は完全に「ネプテューヌに一泡吹かせる』が目的になっていた。…お、大人気なくないもん!

 

「大事なのはパワーとスピード。今更技術なんてどうにもならないんだから、あるものに全力を尽くすまでよ」

 

刀を両手で構えたブランは、水着&目隠しというスイカ割りスタイルだったけど…どこか武士然としていた。……え、同じセットならロムちゃんの方が武士っぽくなる?…オンラインユーザーだね、そんな事言うのは。

 

「……はぁぁっ!」

 

皆の指示を的確に遂行しスイカの真ん前まで行ったブラン。ブランはゆっくりと刀を振り上げ、一気に振り下ろした。

風を切る音と共に突き刺さる刀。そしてその刃を引き抜いた時……そこには、僅かながら赤い液体が付着していた。

 

「……!遂に果肉に到達したです…!」

「お、やるねブラン。でもそれでスイカ割り成功って言うのは…」

「無理がある、って言いたいんでしょう?…分かってるわ」

「パワー系女神と偶に呼ばれるブランでも無理ですのね…」

「誰がパワー系だ…まぁ皆より殴打で仕掛ける機会が多いのは事実だけど…」

 

ブランは遂にそれまで露出していなかった果肉を見せるに至った。それは勿論凄い事だけど…ネプテューヌの言う通り、これはスイカの果肉見せゲームではなくスイカ割り。もっとぱっかり開かなくては成功と呼べる筈がない。

 

「それではわたくしの番。正直前座感のある番ですけど…やれる様にやるだけですわ」

 

独特の構え方で進むベール。一体どんな策があるんだろうと思いつつ指示をしていた私達は、ベールがスイカの直前まで来たところで黙る。するとベールはそこで一瞬止まり……本来の得物ばりに刺突をした。

 

『な……ッ!?』

 

スイカ割りは棒(刀)を振るもの。それが常識だし、皆そう思っていた。…けど、ベールはそれに準じなかった。刀を振るう事なく、槍使いの本領である刺突でもってスイカ割りに挑んだのだった。

ふぅ、と息を吐きながら刀を引き抜いたベール。ブラン同様、ベールの一撃もまた果肉に到達し、その刀身に液体を滴らせていた。

 

「むぅ…流石に刺突で割るのは無理でしたのね…」

 

ベールは残念そうに戻ってくる。ベールの一撃は私達の度肝を抜いたし、果肉到達の時点で凄くはあるけど…割る事は叶わず、果肉到達もブランが先を越していたせいで結果は振るわない形になってしまったからだと思う。……って、

 

「私の番か…斬れるかなぁ…?」

「頑張りなさい、やれるわよきっと」

 

私に目隠しをしてくれるノワールの声を聞きながら、私は考える。

普通にやっても恐らくスイカは斬れない。ベールやブランでも果肉到達が精一杯だった以上、そこに多少技量が乗っても結果は高が知れている。……だとしたら、ベールじゃないけど…普通じゃない策を講じるしかないよね。

 

「…………」

 

少しずつ前進する私。これまでの流れから嘘の指示を出す人はいないと分かっている。だから今私はスイカと正対している筈。だったら……

 

「ねぇ皆、今私とスイカの距離はどれ位?」

「えっと…だいたい3m位です」

「3m…それ位ならいいかな。よし…」

 

およそ3m、と分かった私はそこで足を止める。当然ここからじゃ刀が届かないしそもそも届く距離になったら皆それを今まで伝えてたんだから、私は何を考えているのかと首を傾げている(と思う。目隠しで確認出来ないし)。そんな中、私はその場で足を踏み締め……前方へと飛び込む。

 

「ふ……ッ!」

 

一跳びで距離を詰め、全力をもって刀を振るう。次の瞬間、刀を通じて感じる強い衝撃。

ドキドキしながら目隠しを外し、刀を引き抜く私。刀には……べったりとスイカの果汁が付着していた。

 

「わ、すっごい…」

「これ…せいこー…?」

「み、皆…これどう?成功かな?」

「うーん…微妙なラインね」

「えぇ、一般的なスイカ割りなら成功でしょうけど…今回は一般的ではありませんし」

 

…審議の結果、私のそれはギリギリ失敗という事になってしまった。……悔しい。

 

「なら、順番通り最後の私ね。…勝負よ、スイカ」

 

私から刀を受け取り、目隠しをするノワール。ネプテューヌへの対抗心もあってか、ノワールのやる気は人一倍だった。

そして始まるノワールの番。ノワールは、早々に皆とは違う点を見せる。

 

「え…お姉ちゃん、片手でいいの…?」

「いいの。確かに力だけなら両手の方が入るけど…普段からしてる片手持ちの方が上手くいく気がするもの」

 

普段通りの構えで、ノワールは進んでいった。皆が期待を込めて指示する中、ノワールもある程度進んだところで距離を聞き、少し距離を開いた状態で止まる。

 

「まさか…ノワールも私と同じ…?」

「いいえ違うわ。私は横の跳躍だけじゃない…縦の跳躍も組み合わせるわッ!」

 

その声と共に跳び上がるノワール。勢いよく跳び上がったノワールは空中で振り上げ、日の光と共に刀をスイカへ叩きつける。

自身の力、そして勢いだけでなく、重力すらも組み込んだノワールの一撃。強い強いノワールの一撃。……それでも、スイカの両断には至らなかった。

 

「くっ…後少しなのに…!」

「果肉のあるギリギリの所なら斬れてたかもしれないわね…」

 

悔しげに戻ってくるノワール。こうして、一人を除いて全員がやり終わった。…だからこそ、最後の一人に視線が集まる。

 

「……わたしの、番だね」

 

立ち上がり、刀を受け取るネプテューヌ。目隠しをしたネプテューヌは…そこで、サンダルを脱ぎ捨てる。

 

「…お姉ちゃん?」

「気にしないで。それより、向き合ってる?」

 

一歩も出ないまま、ネプテューヌは軸合わせを行う。あまりにもそれは早過ぎないか…と思いながらも私達が指示をすると、ネプテューヌはそれを受けて真っ直ぐ歩き出す。……刀を、鞘に収めたまま。

 

「…………」

 

そのあまりの意外さに、私達は目をぱちくりさせる。右手で持ち手を、左手で鞘を掴んでいるから気付いていない訳がない。そう私達が思っていると、途中でネプテューヌは立ち止まった。立ち止まり、その場で深呼吸。そして……

 

「……やあぁぁぁぁぁぁッ!」

 

思い切り素足で砂浜を踏み締めたネプテューヌ。…気付いた時には、ネプテューヌはスイカの後ろにいて、もう刀は抜かれていた。

言葉を失う私達。ネプテューヌは何をしたのか、と私達は唖然とし、失敗なのではとネプテューヌに声をかけようとするが……その瞬間、スイカの一部から果汁が垂れ、次の瞬間には上半分が斜めにずれて落ちる。

--------そう、ネプテューヌが行ったのは…居合斬りだった。

 

 

 

 

「んー!スイカ美味し〜!」

 

楽しそうにスイカを頬張るネプテューヌ。その周りで食べる私達も同じくスイカの美味しさに心を躍らせていたけど…今は、それ以上にネプテューヌの技に心を熱くしていた。

 

「ほんと凄いよお姉ちゃん!わたしドキドキした!」

「今回だけは文句なしに凄かったわ。居合斬りなんてやるじゃない」

「こんな隠し技があるなんて、ネプテューヌも隅に置けないね」

「でしょでしょ?ふふーん、わたしを見直したまえー!」

 

普段以上に調子に乗るネプテューヌだけど、ほんと今回だけは文句の付けようがない。今、ネプテューヌは紛れもなくヒーローだった。…女の子だけど。

そんなこんなでスイカを食べてる私達。ほんと、いいバカンスになったなぁ…。

 

「でも、皆揃ってバカンス取れるなんて幸運だよね。日頃の行いのおかげかな?」

「あー、それはねぇ…」

 

何か知ってる様子のネプテューヌ。私はそれを話半分に聞く。ふふっ、やっぱり夏と言えばスイカだよね…

 

「…平和な時間はこれまでで、次回からまたわたし達は世界と未来の為に戦う日々を過ごさなきゃいけないからなんだって。しかもわたし達守護女神組は心身共に極限状態になるんだってさー」

「へぇー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええッ!!?』

 

ネプテューヌの超衝撃的発言に絶叫を上げる全員。もう、今はスイカとかバカンスとか言ってられない。ただだだ「えぇぇぇぇッ!?」だった。…こんな事なら、このバカンス完全返上でいいからもう暫く平和な日々を過ごしたかったよ…と思う私達(勿論ネプテューヌ含む)だった。

 

 

 

 

……まぁそれはそれとして、私達は疲れきるまでバカンスを楽しんだんだけどね。




今回のパロディ解説

・おだいばのボール
フジテレビジョンが管理する、FCGビルにある展望台の事。あんなにデカいスイカだったら、刀どころかエクスブレイドを使っても斬れるかどうか怪しいですね。

・きょだいネンドールが入ってたボール
ポケットモンスター アドバンスジェネレーション編に登場したネンドール及び石のボールの事。そんなデカいスイカの場合、どう頑張っても完食前に腐りますね。

・ショッピングモールでやる、しょんない感じの
テレビ番組、ピエール瀧のしょんないTVにおける企画の一つの事。少し前のどんどんパロディと同じく、これも分かる人は少ない気がします。放送範囲的に。

・ロムちゃんの方が〜〜オンラインユーザー
原作シリーズの一つ、四女神オンライン(実在する方)中のロムの装備及び職の事。神次元のブランとルウィーといい、ルウィー=和風というイメージが強くなってますよね。
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