超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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本章は、橘雪華さんの作品『超次元ゲイム グリモワールofネプテューヌ』とのコラボストーリーです。もしコラボ先の作品を未読の方がいるのであれば、先にそちらを読んで見る事をお勧めします。


創滅の迷宮・蒼の魔導書編
第一話 誘われし者達


--------始まりは、偶然だった。たまたま出向いて、何となく気になって、何の気なしに選んだ。ただ、偶然が重なっただけの出来事。

でも、偶然も三度重なれば必然という言葉もある。全てを知った時、この偶然が無くとも早かれ遅かれ別の偶然によってこの出来事に合間見えていたのだろうと私は思う。

だからこれは、偶然ではなく必然な、運命的で宿命的な出来事だった。

 

 

 

 

教会内の施設の一つに、書庫というものがある。書庫というのは名前だけで、実際には始末に困る物用の物置きに……なんて事は無く、どの書庫も多くの書物を保管している。内訳としては教会運営の為の資料や歴史書、本媒体に収めた各種データや情報などがメインだけど、どの国も多かれ少なかれ女神や教会職員の私物(本)が置いてあったりする。そっちは基本的に娯楽関係で、そうなると当然その系統の本が一番多い書庫は……

 

「流石ブランが守護女神の国だねぇ……」

 

ルウィーの書庫に入るなりそんな声をあげる私。ネプテューヌ達と違って私は書庫にお邪魔する機会が無かったから、せっかくルウィーに来たという事で入ってみたのだけど…所狭しと本が棚に並べられているこの書庫には、驚きを隠せないでいた。

 

「…雑に扱わないなら好きに読んで良いって言われたけど、これだけ多いと逆に読む本に迷うかも……」

 

私以外誰もいない書庫でちょっとした問題を口ずさむ。こういう時、普通は知ってる本や作者をまず探してみるんだろうけど…残念ながらまだ私は知ってる本も作者も少ない。ネプテューヌ達の影響でサブカルにも手を出しつつあるけど、まだまだ皆には及ばない。……これ関連で皆に及ぶのもそれはそれで問題な気はするけど。

と、そこで私に魔がさす。

 

「……そうだ、『超次元ゲイムネプテューヌ Re;Berth1 Origins Alternative』あるかな〜…なんちゃって」

 

 

「…………」

 

…………。

 

 

「……ごめんなさい、今のは無かった事にして下さい……」

 

その場で手足を床に付ける私。この瞬間私は、突っ込み役どころか誰もいない状態で、あざと過ぎて逆に寒いメタ発言をする事の恐ろしさを思い知った。

 

「…普通に本を探そう、うん…」

 

精神的ダメージを負いつつ本を見ていく私。途中数少ない知っている本や作者を見つけ、その度に手に取ってぱらぱらとページを捲ってみるも…長くは続かない。本を読むのが苦手、という訳ではないけど、知っているだけでそこまで興味がある訳ではない本に集中するというのは中々難しい。仕方ないから少しでも教養…特によく知らない歴史について何とかしようと歴史書の方へ向かおうとする私。

--------その時だった。あれを…あの本を見つけたのは。

 

「……う、ん…?」

 

ふと、視界に入った一冊の本。何故本に溢れたこの部屋でその一冊が目に止まったのかと言えば…その本が、雪の様に真っ白であったから。

 

「……本、だよね…?」

 

手に取り、表表紙と裏表紙、背表紙に目をやる。何の装飾もない、ただただ白い本。だからだろうか、これがただの本というよりも、本の形をした全く別の何かの様な気がしていた。

興味…というか引き寄せられるかの様に私は本を開き、ページを捲り始める。するとそこには……

 

「…え、いや…はい?」

 

なにも無かった。文字も、絵も、写真もパラパラ漫画すらない完全な白紙。……え、何これまさかの自由帳?キャラメル拾たら箱だけ的な?…あ、これは違うか。

 

「これはとんだ拍子抜けだよ…まぁ、話のネタに位はなる…かな……」

 

興味を失って本を閉じようとしかけた私は声を失う。普通、本が淡い光を帯びると同時に何語なのか分からない文字が浮かび上がるなんて出来事があるだろうか?否、そんな事はあり得ない。某魔本を別として。

でも、今明らかに私の手元にある本はその現象を引き起こしている。という事はつまり、これが普通の出来事ではないという事に違いない。

 

「……っ…やっぱりこれ、ただの本じゃ--------」

 

開いていたページを埋め尽くした瞬間、それまでとは比べ物にならない程の光を放つ本と文字。その光に耐えきれず私は目を瞑る。そして……

 

 

--------私が覚えていたのは、そこまでだった。

 

 

 

 

--------元々、我等は本物の存在。あるべき姿の世界に、あるべき存在として、在り続けていた。

 

--------だが、完成されていた筈の世界に、本来あるべきではない存在が入り込んだ。そして、段々とあるべき姿から変わっていった世界の中で、我等は失われた存在となった。

 

--------ならば、我等にはあるべきではない存在を討つ権利がある。あるべきではない存在を討ち、我等の帰還と共に世界をあるべき姿へと再変革させる。

 

--------そう。大義は……我等にこそある。

 

 

 

 

「……っ…」

 

今までにも何度か味わった事のある感覚が身体に走る。寝起きの時のそれと近いけど…違う。これは、意識を失った後に目を覚ました時の感覚だ。

 

「え…と、私は…書庫で本を探してて、変わった本を見つけて…それで……」

 

片手で頭を押さえ、もう片方の手を床につきながら上体を起こす私。私の記憶の最後にあるのは本の輝きを目にした事。ならば、考えられる理由としては本に幻惑やら何やらの魔法が付加されていたという可能性。

そう思い、ブランかミナさんにこの事を伝えようと立ち上がった私は…絶句する。

 

「……は…?」

 

見た事の無い床、見た事の無い壁、見た事の無い天井、見た事の無い通路。そこには本も本棚もなく、見渡す限りそこは知らない場所だった。

 

「ど、どういう事…?」

 

振り向くもやはり知らない場所、少し歩いた先にある十字路の先も知らない場所。じっとりと、背中に嫌な汗が流れるのを感じる。

 

「…っ……落ち着け、落ち着こう私…焦る前にもう一度考えるんだ、何もなしにこんな展開になる訳がない……」

 

胸を軽く叩き、もう一度記憶を辿る。例え因果が逆転していようが、過程と結果が別々の存在になる筈がない。だから、焦りそうになる心を落ち着ける為にも考えるしかない。

……けど、どれだけ記憶を辿ろうと、ここに至る経緯は思い付かない。だが、代わりにある可能性が頭に浮かぶ。

 

「……もしや、夢の中…?」

 

私の予想通り、或いは別の理由でとにかく眠ってしまっているのなら、ここは夢の中の世界だという可能性は十分にある。明晰夢、なんて現象がある位だし。

 

「だとすれば…ええっと、何だっけ…頬を引っ張ってみるんだっけ…?」

 

普段は「痛みを感じる夢もあると思うけどなぁ…」なんて思っている私だけど、いざそういう状況になってしまったらそんな事を考えている場合ではない。そう思って私は右の頬を摘んで引っ張ってみる。

ぎゅー。

 

「……痛い…という事はつまり、これは夢じゃないんだ!わーい!……って違う!逆逆!夢であってほしかったの!」

 

実験の結果、何だか情緒不安定な奴みたいになってしまった。それと同時に、既に自分が焦り始めている事に気付く。

 

「不味い…不味い不味い…改めて落ち着かないと、じゃないと状況は悪くなるばかり…って、あれは……」

 

今度は胸を押さえて、自分自身に落ち着くよう促す私。…と、そこで私はある物を発見する。

 

「これ…さっきの本?」

 

私が倒れていた場所のすぐ近くに落ちていたのは白の本。何の装飾もない表紙に自由帳と間違えかねない、前書きも本文もあとがきもない本。そして恐らく、今の事態を引き起こす引き金となった存在。

 

「…そうだ、さっきみたいにまた捲ってみれば……」

 

気を失っていたのがどれ位の時間なのかは謎だけど、とにかく本を一ページ一ページ、極力書庫で行った事を再現する様に捲っていく。もしかしたら、という期待を込めて。

……だが、

 

「……何も、起きないじゃん…」

 

輝く事も、文字が浮かび上がる事も無い本。あれは一回きりの効果だったのか、それとも何か条件を満たしていないだけなのか…どちらにせよ、本はいつまでも真っ白なままだった。

 

「携帯は圏外だし、イジェクトボタンも無いし、相談出来る人もいないし…どうしろって言うの……」

 

私は床に腰をつけ、膝を抱え込む。あまりの急展開に頭も精神も追いついていない、という事もあったけど…それ以上に、『何も分からない場所に一人』というこの状況が何よりも私には辛かった。きっとこういう状況になったら誰しもそんな感情を抱くだろうとは思うけど、皆よりも持っているものが少ない私にとって、その少ないものすら離れてしまうというのが本当に辛く…怖かった。情けないけど、これが私の本心だった。

 

「……やっぱり、私…一人じゃ何も出来ないよ…」

 

頭を膝に付け、私は泣いている子供の様な格好になる。

そうだ、こうしていれば誰かが助けに来てくれるかもしれない。力の殆どが使えなくなって、経歴が特殊なだけの人間になった私が出来る事なんて、それこそ普通の人の域を超えたりなんてする訳無いんだから、こうして小さく縮こまっていれば、すぐに誰かが私を……

 

「わひゃあっ!?」

 

突如鳴り出す甲高い電子音。飛び上がる私。少々テンパりながら音の正体を捜したところ…それは携帯のアラームだった。

 

「お、驚かせないでよもう……」

 

携帯を取り出しアラームを切る。驚かせないでよも何も、何かの機会にセットしておいたアラームを切り忘れていた私の自業自得な訳だけど…。

ため息を吐きながら再度携帯をしまおうとする私。するとたまたま指が画面に触れ、写真フォルダが開いてしまう。油断してると偶にこういう事あるんだよね…と思いながら写真フォルダも切ろうとした所で…私の指は止まる。

画面に表示されていたのは、打ち上げパーティーの最後に全員で撮った写真。私の大切な人達が一堂に会しているからこそ、わざわざ実物の写真だけでなくデータまで送ってもらった写真。それを見て、私は…思い出す。

 

「…一人じゃ何も出来ない…訳、無いじゃん……」

 

そうだ、今までにも一人で何とかしようとした事はあった。一人で囮になったり、一人で足止めをしたり、一人で救おうとしたり…全部、結局は助けてもらっていたり、仲間ありきだったりはしたけど…それでも、一人じゃ何も出来ないなんて事はなかった。そしてその原動力となった思いは…今も、決して消えていたりはしない。

 

「……よしっ!」

 

携帯をしまい、両頬を両手で叩く。熱とジーンとした痛みを感じる頬。私は精神論信者ではないけれど、これで少しは活が入った気がする。

 

「ほっといても解決するのかもしれないけど…動かなきゃ解決しないのかもしれない。だったら…動くしかないよね」

 

床に置いておいた本を拾い上げる。さっきも考えた通り、何か条件を満たせば無事戻れるのかもしれないし、そうでなくてもこれはこの状況における唯一の手がかりなのだから、持って行って損は無い。……それに、これが重要な本だった場合帰った後ブランに怒られ兼ねないし。

そうして私は歩き出す。地図も無ければ土地勘も無く、ヒントもない完全な情報無し状態だったけど、それでも勘を頼りに通路を進む。ここを脱出して、無事に帰る為に。

 

 

 

 

あれから、幾つかの事が分かった。まず第一に、ここは迷路の様になっているという事。というのも、探索中私は何度か行き止まりを発見した。街中…特に栄えている街ならば周囲の建物の関係で行き止まりが生まれてしまう事はあるけれど、そうでなければ行き止まりというものはそうそう作られない。少なくとも、狙って行き止まりを作るのは迷路位しかない。

第二に、ただの迷路でもないという事も分かった。私が歩いた多くの場所は通路だったけど、時折開けた広間の様な場所や部屋の様な場所にも辿り着いた。何故この様な場所があるのかは、分からない。

第三に、ここはとんでもない広さらしい。闇雲に動くよりはある程度目的を持った方が良いと思った私は数十分程直進し続けるという事をしたが、いつまで経っても行き止まりや突き当たりにぶつかる事はなかった。ただ、行き止まりについては別のタイミングで発見してはいるので、無限の広さを持つ訳ではない、という可能性も残っている。

そして、これ等の事が分かった私は……

 

「歩き続けるのも楽じゃないよね…」

 

壁を背にして休憩をしていた。長時間歩く経験は今までにも結構あったけど、どこへ行けばいいのか分からなければ景色も殆ど変わらないという条件は精神的な負担が大きく、先の不安も相まって身体的疲労にまでなっていた。まだまだ歩けないレベルではないけれど、後どれだけ歩けばいいかも分からないのでちょくちょく休憩を入れているのであった。

 

「こんな事になるなら脱出ゲームでもやっておけば良かったかなぁ…っていやいや、クリアさせる事を前提とした奴の経験がどれだけ役に立つのさ、これはゲームでも遊びでもないのに」

 

ここにくる途中、私は息抜きがてらボケを時々口にしていた。けど突っ込みも笑いもないボケはただただ虚しく、なんとなく気落ちしてしまうのでその内自分のボケに自分で突っ込む、一人ボケ突っ込みを行う様になっていた。…端から見ると頭おかしい人だし、これはこれで虚しいけど…気にしない。気にしない様にしてるから、読んでる皆様も指摘しないで下さい。……って、あ…

 

「画面の向こうには閲覧者さんがいるじゃん!そっか、私は一人じゃなかった…皆がいてくれるなら、私はもう大丈夫だよっ!」

 

にぱっ、と笑みを浮かべてピースサインを掲げる私。

……お気付きだろうか、私は天井の適当な方向を向いてこれをしている事に。…こ、これはテンションを維持する為にやってるだけなんだからねっ!ネプテューヌが登場しない可能性が高いから、ネプテューヌの分までボケようとか思ってる訳じゃないんだからねっ!

 

「……いや、やっぱこれ止めよ…」

 

休憩中なのに何故かやけに疲れてしまった。そしてかなり恥もかいてしまった。…結局、普通のテンションでいるのが一番無難なのかもしれない。

 

「今の所これ以外の情報が無いのも、情報を得られる場所に出られてないのも問題なんだよね…」

 

片手で持っている本の表紙を指でなぞる。相変わらず本に変化は無く、重くないとはいえ役に立たないお荷物であるこの本を私はどうしたものかと考えていた。もしここが迷路状になっていなければ、一先ず置いて探索に出ていたかもしれない。

 

「……ま、いっか」

 

残念ながらここは迷路状になっているのだから、迷路状になっていなかった場合の事を考えても仕方ない。

 

「しかし、よく出来た場所だなぁ…」

 

休憩を終了して再び歩き出す私。本を片手に歩きながら、私は周りを見渡す。石かレンガか鉄かコンクリかよく分からないものの、ちゃんと作られている壁と天井と床があり、天井には照明らしき物(中に電球や蛍光灯が入っているのかは不明)が埋め込んである。最先端、という感じはしないものの、適当に造られたものでも、ましてや自然に出来たものでもないという事は明白だった。……勿論、普通の建造物であるならだけど。

と、そこで通路は突き当たりとなった。今まで私が歩いてきた通路の先に位置する場所に扉がある。これもここに至るまでに数度遭遇したけど…変化の乏しいここにおける数少ない変化である為、私は少なからず緊張する。

でも、同時に扉が何か手がかりがこの先にあるんじゃないかと思わせてくれているのも事実で、今の私は何よりもその手がかりを欲していたからこそ、それまでと同じ様に意を決して扉を開く。

 

「……大広、間…?」

 

そこは、大概の室内スポーツなら不便なく出来そうな位には広い部屋だった。よく見ると今私のいる場所と真逆辺りに位置する場所にも扉がある。--------いや、違う。扉である事には間違いないけれど、扉は扉でも…開かれた扉(・・・・・)だった。

 

「……ーーッ!」

 

勢いよく両手を突き出し、扉を限界まで開ける私。その瞬間、バンッ、という扉の音に反応したかの様な視線を私は感じる。それを感じ取り、そちらへと視線を向けた私の先に居たのは--------薄茶色の髪を持つ、とても見覚えのある様な気のする小さな少女だった。

 

 

そして、これが…二つの次元に存在する、二人のあるべきではない存在が邂逅した瞬間だった。




今回のパロディ解説

・キャラメル拾たら箱だけ
シンガーソングライター、嘉門達夫さんの持つ替え歌の一つのパロディ。空のキャラメルと白紙の本、一体どっちの方がショックが大きいんでしょうね。

・某魔本
金色のガッシュ!!に登場する、術の発動時に使われる本の事。前作のルウィー書庫ネタでもそうでしたが、残念ながら基本ルウィー書庫にそんな物は置いてありません。

・リジェクトボタン
原作、超次元ゲイムネプテューヌシリーズに登場する、ダンジョンから即帰還できるアイテムの事。これがあれば戻れたのかというと…ネタバレになるので言いません。

・「〜〜ゲームでも遊びでもないのに」
ソードアート・オンラインシリーズにおけるキャッチフレーズ・名言のパロディ。脱出ゲームは実際に何かあった時の訓練になるかと言えば…まぁ、微妙ですよね。
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