超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

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第三十三話 協力と要求

黄金の第三勢力(ゴールドサァド)の権威は、絶大である。四ヶ国の支部長でもある四名が率いるギルドは長い歴史を持ち、政府からも民間からも信頼を置かれ、依頼主と受注者の仲介というシンプルながらも時代の変化に対応し易い業態を備え……何より設立当初の目的である、『女神が民意に離れた暴政を行った際、反抗する為の第三勢力』としての名残を表すが如くの戦力を有する(現代においてはあくまで、クエストを介した招集となるが)という、一企業と呼ぶには過剰過ぎるその組織の長が黄金の第三勢力(ゴールドサァド)なのだから、むしろ軽んじられる訳がなく、女神や教祖に次ぐ国の顔と称される事もゼロではない。

しかし、強い権威を持つ組織の長は厳格なる人物であるかと言えば…そうではない。信次元自体がそのような性質を持つのか、人々が望む『リーダー像』とは即ちそういうものなのか、はてまた別の理由があるのか……ともかく黄金の第三勢力(ゴールドサァド)となる人間は往々にして、個性的な人物ばかりであった。

 

 

 

 

「……気が滅入りますわ」

 

客人が来る際のルーチンとして、いつものように紅茶と茶菓子の準備をしているわたくし。わたくしにとってこれは清涼剤のような効果もあって、普段ならしている内に

心が落ち着いてくるのですけど…どうも今日は上手くいきませんわね…。

 

「…まぁ、理由は分かっているのですけど」

 

普段なら落ち着ける行為をしても落ち着けないのなら、それは普段の行為では解消出来ない程に気が滅入っているという事。けれど、それが分かったところでどうしようもない。だって追い返す訳にはいかないのだから。

 

「…とはいえ、あまりローテンションになるのも迎える者としてよくありませんわね。ましてやわたくしは女神、穏やかに優雅に待たなくては」

 

軽く頭を振り、気持ちを切り替えてわたくしは用意した席へ。経緯はどうあれ面会に応じたのはわたくし自身で、にも関わらず不平不満を抱くのは大人気ないというもの。気が滅入るというのなら、今日の面会で交友を深めればいいだけの話ですわ。

そういう思いで待つ事十数分。予定していた時刻の丁度五分前に、職員の案内を受けて来客が…彼女がやってきた。

 

「やぁ、グリーンハート様。お招き頂き光栄だよ」

 

入ってきたのは、銀色のショートカットに赤い瞳を持つ女性……リーンボックスの新たな黄金の第三勢力(ゴールドサァド)、エスーシャその人。……なの、ですけど…

 

「…………」

「…どうかしたかい?」

「……そのキャラ、何ですの?」

 

……何故かエスーシャは、妙に爽やかだった。…って、あら?もしかしてエスーシャの本来の性格を知らない方がおりまして?…ふぅむ、ならば…もう少しお待ち下さいまし。どうせすぐこの妙な爽やかさが無くなる筈ですわ。

 

「そのキャラも何も、わたしは元からこうじゃないか」

「いや、貴女前に会った時はもっと仏頂面だったじゃありませんの…そんな清涼飲料水のCMに出てきそうな笑顔をするキャラでは断じてなかった筈ですわ」

「はは、何の事やら」

「……まぁ、そう言うならそれでいいですけど…そのキャラ、続けられるんですの?」

「…それは…えー……」

「中途半端にやる位なら、仏頂面のままの方がまだ印象的なにはいいですわよ?」

「……ふぅ…なら止めさせてもらうよ。全く、わざわざ取り繕った甲斐がないね」

「勝手に取り繕っておいて酷い言い草ですわね…」

 

先程までの爽やかさはどこへやら。エスーシャの顔から笑顔がふっと消え、代わりに表れたのは興味無さげな表情だった。…えぇ、ご覧の通りですわ。これだけではイマイチ伝わり辛いかもしれませんけど…そこはまあ、活字故のご愛嬌という事で、一つ。

 

「さて、時間が惜しいんだ。早速本題といこうじゃないか」

「せっかちですのね。紅茶はお嫌いですの?」

「興味ないね」

「それは残念。…けれどエスーシャ、貴女も多くの者の上に立つ身。社交辞令の一つも出来ぬようではこれから大変ですわよ?」

 

そう言って用意した席を手で指し示すわたくし。エスーシャは数秒の逡巡の末、首肯をし席に着く。社交辞令や形式ばったやり取りは古臭く、無駄な行為であると思う方もいますし、それも分からないでもないですけど…言うなればこれ等は、己の身を整え飾る衣。裸一貫で衣もまともに着られない者に、多数を従えるトップなど務まらないという話ですわ。

 

「…飲む上での作法は?」

「それについてはとやかく言いませんわ。味わって頂ければ十分ですもの」

「ならば、頂くとするよ」

 

紅茶を飲むのも振る舞うのもわたくしの趣味ですから、とまでは言わず、反応を待つ。カップを持ったエスーシャも、流石に振る舞われた紅茶を適当に呷るつもりはないのかゆっくりと一口含んで……

 

「……美味しい」

「ふふ、それは良かったですわ。お茶菓子も食べて下さいな」

「だから興味は…いや、頂くとしようか…」

 

紅茶に続け、お茶菓子にもエスーシャは手を出す。うふふ、これはきっとティータイムを楽しみたくなったという事ですわね。わたくしがつい笑みを零した瞬間「そういう表情されると断り辛い…」みたいな顔していましたけど、恐らくそれは無関係でしょう。

という事でわたくしもカップを持ち、エスーシャと二人で暫しのティータイム。けれどエスーシャは雑談に興じるつもりはないらしく、実際には二人でというより一人でのティータイム×2と言うべきものだった。…ふわふわ時間ならぬギスギス時間ですわね…別に仲が悪い訳ではありませんけど……。

 

「…貴女、もしやあまり人と接するのは好きではなくて?」

「そういう訳じゃない。単に興味がないだけさ」

「よく話してる相手の前でそれを言えますわね…」

「取り繕うな、と言ったのはそちらだろう」

「……やはり貴女、相当厄介な支部長ですわ…」

「ベール…君は人の事を言えないね。断じて」

 

黄金の第三勢力(ゴールドサァド)は四ヶ国同時期に代替わりするもので、他国の新支部長の話も聞き及んでいる。で、その話によるとプラネテューヌの新支部長はネプテューヌと波長が合い、ラステイションはノワールと非常に仲が良いらしく、ルウィーも中々常識を持った人物が黄金の第三勢力(ゴールドサァド)となったというのに……何故、何故リーンボックスだけ…。

 

「……って、またわたくしはマイナス思考を…これではいけませんわ」

「……?」

「なんでもありませんわ。…それではエスーシャ、そろそろ本題に入ろうじゃありませんの」

「それを止めていたのはそちらだがね…まぁ、そうするとしようか」

 

カップを置き、緩みのない表情で(これはさっきからですけど)わたくしを見据えるエスーシャ。……案外カップの中の紅茶が減っていた事は…触れないでおいてあげるとしましょう。

 

「では、お話をどうぞ」

「あぁ。単刀直入に言えば、わたしは君と…いや、教会と協力関係を築きたいと思っている」

「…それは、クエスト委託や有事の際の人員融通…所謂現状でも行なっている協力とは別なのでして?」

「察しがいいね。流石は女神様だ」

「協力を強めたい、ではなく築きたいという表現をした事から推測しただけですわ」

 

言葉というのは、発した者の意思を表すもの。予め文章を考えていたなら発言の『目的』に即した単語が選ばれる事があっても、その場で考えて話している場合は『思考』がそのまま出てきてもおかしくはない。…とはいえ、話し手の考えを読み取れるかどうかは聞き手の能力にも寄りますけれどね。

 

「表現、か…隠そうとしていた訳じゃないが、これは回りくどい事は言わない方がよさそうだな」

「別に尋問をしているのではないのですから、そう構えないで下さいな」

「構えてはいないさ。ではまずは質問…いや、確認をさせてもらおうか。……リーンボックスのモンスター研究は、どこまで進んでいる?」

「…モンスターの研究、ですの?」

 

さて何を訊かれるのか、と思考を巡らせていたものの…ケスーシャの問いは、わたくしの予想とは大きく離れたものだった。

 

「それを訊いてどうするんですの?もしやエスーシャ、貴女はその方面の研究者なのでして?」

「いいや、調べてはいるが研究者ではない。そして、わたしの問いはそういう意味でもない」

「ならば、どういう意味で?」

「……君達が秘密裏に進めている、モンスターとの共存について…さ」

 

目を細め、ほんの少し口元に笑みを浮かべ…エスーシャはそう言った。……ふむ…。

 

「モンスターとの共存?…え、何の話ですの?」

「はぐらかしても無駄だ。別にわたしは当てずっぽうで言ってる訳じゃない」

「は、はぁ…しかしそう言われましても、わたくしには心当たりがありませんわよ?」

「いいや嘘だね。…わたしがしたいのは脅迫ではなく取り引きなんだ。話を進めさせてくれないか?」

「いえですから…何の話でして…?」

「…………」

 

エスーシャの言葉を初めはぽかんとした表情で、途中からは怪訝な顔で訊き返していくわたくし。けれどエスーシャは諦めず、真剣な顔付きで言い続け、そして……

 

「……あくまで認められないというなら、仕方ない。…頼む、女神グリーンハート。わたしの目的に…協力、してくれ」

「……貴女…」

 

椅子から立ち、わたくしの真横まで来て、膝をカーペットへ付け……エスーシャは、わたくしへと頭を下げた。それも腰から上を曲げる普通のものではなく…下座の意味通りの体勢となる、土下座を。

わたくしとエスーシャがこうして会うのはまだ二度目。とても友人と呼べる程の関係では無い相手に、冗談ではない本気の土下座をするというのは…間違いなく、相当な精神力と必要になる。それを殆ど迷いなく、即行動へ移すなんて……貴女の目的に対する覚悟は、そこまでのものなんですのね…。

 

「……盗聴器の類がないか、検査させてもらいますわよ?」

「勿論」

 

それからわたくしは、エスーシャへ対して身体検査を行った。流石にわたくしに検査の知識や技術はないものの、これは調べるという行為そのものに意味がある。盗聴はさせない、許さないという行為そのものに。

 

「…取り敢えず、不審な物はなさそうですわね」

「当然だ。そんな事でまだ築けてもいない信頼は崩したくない」

「ふふ、ぱっと見『ぼくはぼくだけを信じる』的な事を言いそうですのに、中々親睦の深め甲斐がある事を言いますのね」

「…そんな見た目に見えるか?」

「え、見えますけど?」

 

検査を終え、再び席へと誘導しつつ冗談混じりにそんな事を言ってみると…エスーシャは目をぱちくりとさせていた。…これは……まさかエスーシャ、貴女少し天然の気がありまして…?

 

「…こほん。問いは生物としてのモンスター研究ではなく、共存の為の研究について…そうでしたわね?」

「そうだ」

「……えぇ、貴女の言う通り…リーンボックスではその研究が進められていますわ。と、言ってもまだ研究というより調査の域ですけどね」

 

一つ咳払いをし、前置きとしての確認も行い……そしてわたくしは、エスーシャの問いを肯定した。……彼女があそこまでの覚悟を見せたんですもの、わたくしもそれ相応の対応をしなくては女神の名折れですわ。

 

「調査の域、か…具体的に聞かせてもらう事は?」

「どうしても必要と言うなら話しますわ」

「そうか…いや、ならいい。だが大きく進歩した際には伝えてくれるとありがたい」

「伝えるかどうかはこの会話及び今後次第ですわ。わたくしは貴女が強い覚悟を持ってきたという事は分かりましたけど…まだ目的も、こちらへの要求も聞いていませんもの」

 

胸を乗せる形で腕を組み、会話の流れに待ったをかけるわたくし。エスーシャの方もそれは分かっていたのか、わたくしの待ったに特に驚いた様子はなく、代わりにゆっくりと頷いた。

 

「わたしの目的は、幾つかある。だが、最も重要なものを挙げるとすれば、それは……魂の移動だ」

「……魂の、移動…?」

 

予想だにしなかった答えに、わたくしの頭の中には疑問符が。…何かの比喩…では、なさそうですけど…。

 

「人という器の中にある魂を、別の器へ移し替える…荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、わたしは妄想を語っている訳ではない」

「あ、いえ、別に信じられない訳ではありませんわ。ただもっと物質的な目的かと思っていまして…」

「そういう事か…ならば話を進めても?」

「構いませんわ。……あ、もしやモンスター研究の事を初めに訊いたのは…」

 

わたくしの言葉にエスーシャは再び頷いた。となればエスーシャからの要求は、器となるのに最適なモンスターを用意してほしい、或いはモンスターを手懐ける技術を伝授してほしい…と言ったところかしら。…どちらだったにせよ、そうであれば要求に応えるのには時間がかかりそうですわね…。

 

「…貴女の目的は分かりましたわ。しかし、一つ腑に落ちない点がありますの」

「…と、言うと?」

「器としてモンスターを選んだ理由ですわ。何故よりにもよって大半が危険であるモンスターなんですの?モンスターを選ぶよりは身近な動物、それでなくとも本に移したり、その後ドールに移して貰ったりを選択肢とするのが普通ではなくて?」

「それが普通かどうかはさておき、モンスターを選んだ事には確固たる理由がある」

「何か都合がいい、とかで?」

「それに関しては実際に見てもらう方が早い。……ヌマン、レディ、出番だ」

「……?」

 

席から離れ、部屋の扉を開くと同時に誰か二人を呼び寄せたエスーシャ。聞き覚えのない名前と、来ていたのがエスーシャ一人ではなかったのかという事実にわたくしがきょとんとする中、呼ばれて入ってきたのは……ライダージャケットにフルフェイスヘルメットという出で立ちの男女…それも、かなり体格の良い(女性の方はスタイルが良いと言うべきですわね)二人組だった。

 

「…え、ツーリング仲間か何かでして?」

「二人はわたしの仲間だ。…ベール、少し離れてもらえるかな?」

「え、ここでバイクを出すんですの?」

「万が一に備えてだ。十中八九驚くだろうが、どうか攻撃はしないでほしい」

「は、はぁ…(むぅ、今のは冗談半分でしたのに…エスーシャはあまり突っ込んでくれないんですのね)」

 

意図はよく分からないものの、一先ずわたくしは席から立って後退。するとエスーシャは二人の前へ、まるで立ち塞がる様にして立つ。

 

「……本当に、どういう事ですの?」

「ヘルメットを外せば一目瞭然だ。…二人共、ヘルメットを」

「やっとヌラか…このヘルメットは窮屈過ぎたぞ、エスーシャ」

「そうね、もう少し大きめのヘルメットを用意してほしかったわ」

「…………」

「ふぅ…やはり視界が開けるのは気分がいい!」

「肌、蒸れてないかしら…」

「…………」

「……と、いう事だ」

「…………」

「……ベール?」

 

二人が頭部を露わにしてから数秒後。隠れていた顔を目にしたわたくしは、声が出ない。これで分かっただろう?的な発言をエスーシャにされるも、言葉を返せない。不審に思われ名前を呼ばれても、まだ返答出来ない。…えぇ、と…読んで下さってる方々には伝わっていないでしょうから、今目にした事をそのまま表しますわね。…二人がヘルメットを取った後に出てきたのは、二体のスライヌですわ。…そう、皆さんご存知あのスライヌですわ。そのスライヌが、首の上に乗っかるように出てきたんですの。

 

 

…………。

 

「…………はい?」

「あー…エスーシャちゃん、やっぱり混乱してるみたいよ?どうする気?」

「彼女は頭の回転が速い。ジャケットの方も脱げば理解してくれる筈だ」

「当たって砕けろの精神、か…オイラ、エスーシャのそういうところ嫌いじゃないヌラ!」

「私もよ。じゃ、脱ぐとしようかしらね」

「……へっ?ぬ、脱ぐ?」

「そうだ、しっかりと二人を見てくれ」

「しかも見るんですの!?いや、ちょっ…お待ちなさいな!ほ、本気ですの!?」

 

予想外も予想外、1㎜足りとも想像していなかった展開にわたくしが茫然とする中勝手に話が進み…気付けば二人はジャケットのジッパーに手をかけていた。それを慌ててわたくしが止めるものの、声を上げている間にもジッパーは下がっていき、次第に素肌が露わになっていく。

 

(い、いけませんわ!こんな今日会ったばかりの方、しかも片方は男性の素肌を見るなんて!何故ジャケットの下が下着のみなのか激しく謎ですけど…今はそんなの瑣末事ですわ!瑣末事、ですわッ!)

 

思考がよく分からない方向へ加速するわたくし。当然女性の方も気になるものの、乙女ゲーユーザーであり、BL愛好家であり、なんだかんだ言っても女の子であるわたくしにとって、殿方の素肌と言うのは刺激が強過ぎる。あぁっ、こんな突然逞しい殿方の身体を見る事になるなんて思っていませんでしたわ!わたくし、もうどうしていいか分からない……

 

 

…………って、あら…?

 

「…………」

『…………』

「……水、色…?」

 

ジャケットの前面が開かれた事で、見えてきたのは……水色の有色透明な身体。言うならばそれは、スライヌが人と同じ身体を持っているかのような…そんな肉体。

 

「……えー…少し、待って下さる…?」

「構わん」

「助かりますわ……」

 

興奮(?)していた頭が一気にクールダウンし、同時にその異常な光景にわたくしは思考が停止しそうになるものの、テーブル前に戻って額を押さえつつ、冷めた紅茶を一口。余計な思考を全て廃し、入ってきた情報を取り纏めていく。

そうして推測を立てる事数十秒。わたくしは一応の結論に辿り着き、額から手を離す。

 

「…お二人は知性を持ったモンスターだとか、エスーシャの能力で作った存在とかではなく、貴女の言う魂の移動でモンスターに精神を乗り移らせた人間……それで合ってまして?」

「その通りだ。…驚かせてすまないね」

「謝る位なら先に説明してから見せて下さいまし…」

 

推測が正確に当たったものの、全く嬉しくはなくむしろげんなりとするわたくし。…確かに百聞は一見にしかずと言いますけど…予備知識無しでこんなものを見せられても、あぁそうかとはなりませんわよ……。

 

「ともかく、これで分かっただろう。…モンスターを選んだのは、二人という成功例があるからだ」

「そうだったんですのね…ですがそれならば、わざわざわたくしや教会を頼る必要はないのではなくて?」

「いいや、二人の魂移動を行ったのはわたしではなく、その実行者も今は連絡が取れないという状況にある。…正確な手順や条件が分からない以上、準備は出来る限り入念にやっておきたいんだ」

「その割には会話が色々雑な気が…まぁいいですわ。取り敢えず目的と理由は分かりましたし」

 

追加で新たに来た二人分の紅茶を淹れ(本人達が飲めないとは言ってませんし、大丈夫ですわよね。イリゼのライヌちゃんも人の食べ物を口にしてるらしいですし)、これまでのやり取りを頭の中で振り返りながらわたくしは二、三の質問をエスーシャへ。それにエスーシャが淡々と答える事で、エスーシャからの情報発信は終了となった。

 

「他に質問は?」

「ありませんわ。…現時点では、ですけど」

「そうか。…なら、聞かせてもらおう。わたしの頼みに、答えてくれるか否かを」

「……もし、無理だと言ったら?」

「どうもしないさ。女神相手に実力行使をしたところで、返り討ちに遭うのは目に見えている」

「冷静ですわね。……なら、回答は暫く待って下さるかしら。この件は、即決出来るようなものではありませんわ」

 

流石にもう落ち着きを取り戻していたわたくしは、遠慮せずにはっきりと自身の考えを口にする。…個人的に言えば、エスーシャの要望に応えるのも嫌ではありませんけど…モンスター研究は、秘密裏且つ国として行っているもの。決定権はわたくしにあるとしても、即決はわたくしの為にも国の為にもならないというものですわ。

 

「ならば、致し方ない。それまでは支部長職で信頼を得るとしよう」

「そうして下さいな。こちらも善処すると約束しますわ」

「あぁ。…それで、君からの要求はどうする?もしこちらの要求が通るというのなら、わたしは何でもしよう」

「あら、そんな簡単に何でもと言っていいんですの?」

「当然だ」

「……その覚悟、大したものですわ。…では、要求も考えておくので待って下さいな。というか協力するかどうかも決めてないのですから、今こちらから要求開示しても意味ないでしょう?…何でもと言うのなら、尚更に」

 

要求開示は基本的に取り引きにおいて必要なものの、それは開示された側が取り引きを行うか否かを考える際必要なのであって、如何なる要求も飲むつもりならば開示する必要も、聞いておく必要もない。…しかし、こんなの互いの間に余程の信頼が無ければ普通は言えないというのに…エスーシャは本当に、この協力へ全力をかけているのですわね…。

 

「それでは、わたしは朗報を待つとしよう」

「…もう帰るんですの?」

「話が済んだ以上、ここにいる必要はない。…それに、支部長の職務も覚えなくてはいけないのでね」

「素っ気ないですわねぇ…」

「エスーシャはこういう奴なんだ、分かってやってくれないか?」

「性格が悪いんじゃなくて、気が回らないとかの類いなのよ。理解してあげて頂戴」

「…ヌマン、レディ、余計な事を言うな」

「はいはい、それじゃあ私達もいくわね。紅茶美味しかったわ」

「オイラの内腹斜筋も良い茶だと言っていたヌラ。…それでは女神様、さらばヌラ」

 

結局徹頭徹尾クールなままだったエスーシャに、色々突っ込みどころを残したままなお二人。それを見送るわたくしは……なんというか、ただ話しただけとは思えない程の疲労感に襲われていた。

元々はエスーシャから提案され、これを機に友好的となれれば良いと考えて行った、今日の面会。エスーシャの人間性をある程度知る事が出来、この面会に意味があったかどうかと言われれば間違いなくあったものの……終着点としては、何とも言えない感じだった。

 

 

 

 

 

 

「……あ、ちょっと待って下さいな」

「…まだ何か話す事が?」

「いえ、これはあくまで趣味の話。エスーシャ、それにレディさんは……ネトゲや男同士の友情に、興味はありまして?」

「興味ない…………は?」




今回のパロディ解説

・ふわふわ時間
けいおん!における劇中歌及びそのシングルの一つの事。ベールとエスーシャによるふわふわなティータイムというのも全く想像がつきませんね、特にエスーシャサイドは。

・ぼくはぼくだけを信じる
流星のロックマン2において、ブライトライブへとなった際の台詞の事。2も3も絆をテーマする作品なのにブライ系変身が強いというのはなんとも言えませんね。

・〜〜本に移したり、その後ドールに移してもらったり〜〜
アトリエシリーズの一つ、不思議シリーズの登場キャラであるプラフタの事。ドールというかアンドロイド、それの素材を作れる錬金術士ってやっぱり凄いですね。
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