超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude   作:シモツキ

52 / 54
第三十四話 もう一つの人格

わたくしの日課は数多く、多忙な日々がわたくしの常というもの。しかしそれは国の長であれば致し方ない事であり、忙しさは国の繁栄を表していると言っても過言ではないのですから、わたくしは忙しさを大変だと思う事はあっても嫌だと思った事は一度もありませんわ。だからこそわたくしは、今日もまたわたくしがすべき務めを果たし……

 

「お姉様、アタクシちょっとお買い物に行きたく…」

「まだレイドイベは終わっていませんわ!今のペースなら後一度行けるのですから、終わるまでは我慢しなさいな!」

 

……えぇ、今わたくしがしているのはネトゲですけど…何か?

 

「えぇー…でも今行かないと、それ以降の予定にも影響が……」

「大丈夫ですわ!えぇ大丈夫ですとも!」

「い、幾らお姉様の言葉でも、流石にここまで根拠ゼロの発言では…「イベントが終わったらその買い物にはわたくしが付き合いますわ!」前言撤回!さぁイベントを続けましょうお姉様!」

 

コントローラー片手に言葉を掛け合うわたくしとチカ。付き人となる前から行ってきた手解きのおかげでチカは話しながらでも全くコントローラー捌きが鈍る事はなく、わたくしの動きに着いてきてくれている。……そう、趣味の為なら如何なる無茶もやってのける、このわたくしに。

 

(…そういうところ、貴女は凄いですわ。チカ)

「……お姉様?」

「何でもありませんわ。…時間があっても失敗してしまえば無駄というもの。これも次も確実に取りますわよ!」

 

仕事仲間としても友人としても申し分なかった前教祖から任された、わたくしにとっては年の離れた妹のような存在であるチカ。そのチカが方向性はどうあれ才能を発揮している事は素直に喜ばしく、ついわたくしは微笑みを浮かべ……すぐにその表情を引き締めた。…だってそうでしょう?わたくしはチカにネトゲを付き合わせている身。ならばこそ、わたくしは手を抜く事など出来ませんもの。

そうしてイベント期間終了直前まで粘ったわたくしは、宣言通りその後チカと買い物へ。機嫌の良かったチカに苦笑しつつも買い物を済ませ、教会へと戻ったわたくしは考える。さて、この後はどうしようか…と。

 

「張り切って仕事はもう終わらせましたし、出歩くとしても微妙な時間。ゲームをするにしても先程全力を尽くしたからか、あまりやる気になれませんものね…」

 

ただ時間を潰したいだけならば、その手段は幾らでもある。けれどただ時間を浪費するというのはあまりにも惜しく、どうせ時間を経過させるなら何かしら益なり面白味があった方が良いに決まっている。…とはいえ、その内容が思い付かないからこそ考え込んでいる訳で……

 

「……あ、そうですわ」

 

ある事を思い付き、ぽん、と手を合わせるわたくし。面白いかどうかはさておき、今思い付いた事ならば行っておいて損はない。空いた時間で、というのは些かアレですけど……そこは多忙な女神故に仕方ないという事で、一つ。

 

 

 

 

「……で、ここにきたという訳か」

「そうですわ」

「ここはコンビニか…」

 

…と、いう訳で来たのはリーンボックスのギルド。ギルド職員に支部長室まで案内してもらい、部屋に入って説明をし…今に至るという訳ですわ。

 

「ふふ、流石の貴女もこれには突っ込みを禁じ得なかったようですわね」

「五月蝿い、仕事の邪魔だ」

「それならば手伝って差し上げますわよ?」

「要らん。だから帰れ、気が散る」

「あら、貴女でも気が散る事ってありますのね」

「…………」

 

素っ気ない反応が逆に面白くてついからかっていると、エスーシャは言葉を返してくれなくなってしまいました。…というかあれ以来時折エスーシャと会いますけど、会う度わたくしに対する態度が雑になっていってる気がしますわ……。

 

「それは君の態度のせいだ」

「まさか地の文を呼んでくるとは…やりますわね」

「ありがとう。こんなに評価されて嬉しくないのは初めてだ」

 

書類からは一切目を離さず、ドライな態度で文句を述べるエスーシャ。それはまぁ会話に興味が無さげな彼女ですけど…実際わたくしはアポ無しで押しかけた訳ですものね。多少無愛想でも致し方ありませんわ。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「……本当に居座るつもりなのか?」

「本当に居座るつもりですわ」

 

少し黙って眺めていると、エスーシャは焦れたようにそう言った。その質問にそのままな反応を返すと、エスーシャは嘆息を漏らす。

 

「…時間を潰したいならクエストにでも行けばいいだろう。書類仕事の手伝いよりもそちらの方がずっと助かる」

「それではここに居られないではありませんの」

「なんだ、ここにいるのが目的か?」

「そうですわ。わたくしは普段の貴女を知りたいんですもの」

「なんだ急に…」

 

そういえば目的を言っていなかった、と気付き伝えると、エスーシャは手を止め怪訝な表情に。そのエスーシャに向けわたくしは続ける。

 

「わたくしが貴女と協力関係を結ぶか否かは、貴女が信用に足る人物かどうかにかかっている…それは分かりますわね?」

「当たり前の事だな」

「えぇ、そして貴女は信用を得る為支部長としての職務を全うしている」

「それが分かっているなら邪魔をしないでほしいが、な」

「それは失礼。……けれど、信用というのは実績だけが作り上げる訳ではありませんわ。その実績を上げるまでの過程や人となりもまた、信用を生み出す要因となる…と、ここまで言えば分かるのではなくて?」

「……なら、わたしは仕事を続ける。人となりを見たいのなら、尚更…」

「邪魔をするな、でしょう?…分かりましたわ」

 

わたくしの言葉を受け、エスーシャは仕事を再開。わたくしもまた、口を閉じてエスーシャの様子を見つめる。…実を言えば、わたくしの言葉が邪魔となっている事は分かっていた。それでも尚話しかける事を続けたのは、そうする事でエスーシャの人となりを引き出す為。引き出して、それを観察する為。…とはいえ邪魔は邪魔なのですから、後日お詫びに菓子折りでも送っておくとしましょう。

そうして居座る事数十分。初めはやはり気になるようだったエスーシャも次第に慣れ始め、今はもうわたくしの事など気にも留めていない様子。

 

(これまで見てきた限りでは、信用のおけそうな人物ですわね。…しかし、問題は……)

 

性格こそ独特なものの支部長職はきちんとこなし、興味ない興味ないと言いつつわたくしの誘いに応えてくれるエスーシャは既に、一定の信用が置ける人物であるとわたくしは考えている。けれど、同時に初めからわたくしはエスーシャに対する不信感…とまでは言わずとも、信じる上で引っかかる事が一つあり、それはまだ解消されていない。この先わたくしはその引っかかりが気にならなくなる程の信用をエスーシャに持つのか、引っかかりが無事解消されるのか、それとも協力関係は成立しないのか……

 

「戻ったわよん、エスーシャ」

「今日はまずまずの結果…おや?」

「お邪魔していますわ」

 

わたくしが思考に耽る中、扉が開かれフルフェイスヘルメットコンビが軽快に支部長室へと入ってくる。素肌を微塵も見せないその姿は、バイク無しでは職質を受けかねない程奇抜なものの…一度見た事がある上、声で誰か分かったわたくしは然程驚きはしない。

 

「やぁ、今日はギルドへの依頼かい?」

「いえ、エスーシャの様子を見に来たのですわ」

「そうなのね。よっと……」

 

教会へと来た時と同じように、ヘルメットを外しジャケットも脱いでいく二人。その二人の格好を見て、ふとわたくしは疑問を口にする。

 

「…もしや、出歩く時はいつもその格好していますの?」

「そうよ、だって普通の姿じゃ退治されちゃうかもしれないもの」

「まぁそれはそうですわね…」

「気にしなくても大丈夫さ。今は隠す必要があっても、オイラ達が怪しい人物じゃないと周知してもらえればその内こんな格好をしなくても済むようになる。そうだろう?女神様」

「え、えぇ…ある程度周知してもらえれば、そういうコスプレだと思ってもらえる可能性はありますわ…(その格好自体が怪しいのは…言わぬが花かもしれませんわね…)」

 

爽やかな顔でそう言われてしまえば、中々正直には言えないもの。…というか、筋骨隆々な水色ボディーと見た目だけなら愛らしいスライヌヘッドという独創を超えて暴走をしているこの方に、一体誰が水を差せると言うんですの…?

 

「…あ、ところでベールさん。ちょっといいかしら?」

「何でして?」

「……ふぅ、ん…」

「え、いやだから何でして…?」

 

わたくしがヌマンさんに何とも言えない気持ちを抱く中、隣にいたレディさんはわたくしの前へ。彼女は何の御用かしら…と考えていると、レディさんはわたくしをまじまじと見つめ始める。そんな事をされれば当然わたくしは困惑する訳で、同じ問いを再び口にすると……

 

「あぁ、ごめんなさい。こうして近くで見ると、ベールさんって本当に良いスタイルよねぇ…って思って、つい」

「あ、そういう事ですのね…ふふ、そう言う貴女も中々のものだと思いますわよ?…スライヌカラーですけど」

「私よりもスタイル良いベールさんに言われても嬉しくないわ…という事で、美容に関して何に気を付けているか聞かせてもらえないかしら?」

「…まぁ、それは吝かではありませんけど……」

 

別に美容知識は隠すようなものではないですし、レディさんへ話す事自体には抵抗はないのですけど……えと、レディさんも身体はスライヌですわよね…?

 

「…スライヌの身体って、美容に対応してるんですの…?」

「少なくとも、保湿は抜群よ?」

「それはまぁ見た目からしてそうでしょうけど…そもそもの話、一体どういう事をしたら人の身体が出来た…というか生えたんですの?」

「どうだったかしらね…まぁ、私の場合は美しくいたいって思っていたからかもしれないわ」

「スライヌとなっても人の心は忘れず、人であろうとし続けた事が関係している気がするヌラ!」

「そんな成せば大抵何とかなる的感覚で言われても……けれど、人の魂がスライヌに乗り移っている時点で何が起きてもおかしくはありませんわね…」

 

常識外の事を理解する上で大切なのは、常識の内側に押し込めようとする事ではなく事実を事実として受け止める事。少なくともこのスライヌの身体に関してはわたくしよりお二人の方が分かっている筈なのですから、まずはそういうものなのかと考えるべきですわね。…にしても、身体がスライヌになってしまっているにも関わらず、向上心を持って生活しているお二人は大したものですわ…。

 

「…レディさん、ヌマンさん。何か身体に不調があったらわたくしを頼って下さいな。どこまで出来るかは分かりませんけど、力となって差し上げますわ」

「それって、エスーシャちゃんに協力してくれるって事?」

「それとはまた別ですわ。勿論、エスーシャとの協力も前向きに検討していますけど」

「…なら、オイラ達よりエスーシャとの協力を念頭においてほしい。エスーシャはオイラ達の事も考えているんだヌラ」

「……そうなんですの?」

「…おっと、これは秘密の事だったヌラ。さーて、大腿直筋と恥骨筋のトレーニングの時間だ!」

「私も用事があるから失礼するわ。ベールさん、また今度美容の話をしましょ」

「あ……行ってしまいましたわね…」

 

手早くジャケットを纏い、ヘルメットを被りながら出ていくお二人と見送るわたくし。急に行ってしまったのは…恐らく口を滑らせた事が関係しているのでしょうね…。

 

「エスーシャ、今ヌマンさんが言ったのは……あら?」

 

口を滑らせた当人はおらずとも、滑らせた内容に関する人物はここにいる。…と、言う事で振り向きながら質問を投げかけたわたくしが見たのは……書類を出したまま机で居眠りをするエスーシャの姿だった。

 

「…まさかそこそこ賑やかだった場で寝るとは…これは意外な一面を発見してしまったかもしれませんわ…」

 

クール系のエスーシャは居眠りとはイメージがかけ離れており、ギャップによる驚きと悪戯心を刺激されるわたくし。しかし間の悪い事にわたくしが真横へ立った瞬間、エスーシャはカクンと前に滑って目を覚ます。

 

「あ……」

「…………」

「むぅ、起きてしまわれましたのね…」

「……はい」

「いざこれからというところでしたのに…こほん。エスーシャ、仕事疲れですの?」

「…いいえ」

「……?ならば単なる寝不足で?」

「いいえ」

 

寝起きだからかエスーシャはぼーっと気味。そんなエスーシャへ眠くなった理由を訊いてみると、返ってきたのは淡白な反応ばかり。初めそれをわたくしは「エスーシャは起きてから頭が回転するまでが長いのかしら…」なんて思っていましたのだけど……

 

「では、単に急な眠気に襲われただけと?」

「はい」

「はぁ…まぁいいですわ。それよりもエスーシャ、貴女ヌマンさんに何か秘密にするよう言ってますわね?それはなんですの?」

「…………」

「…話せませんの?」

「はい。……あ…」

「あ?え、今のあってなんですの?何かに気付いたようでしたけど…」

「…………」

「……えぇと…エスーシャ…?」

 

言葉のキャッチボールをする毎に薄まるどころかむしろ膨れていく違和感に、わたくしは困惑を隠せなくなる。反応が異様に淡白ですし、ちょいちょい返答してくれませんし…こ、これ寝起きとかそういうレベルじゃありませんわよね…?わたくし気付かぬ間にエスーシャの機嫌を悪くさせてしまったのかしら…でも、その割にはエスーシャの方もどこか困ったような表情してますし……って、あら…?

 

(……瞳が、緑…?)

 

反応がおかしくなった理由を探そうと思い、まじまじとエスーシャを見たわたくしは…彼女の瞳の色が、普段とは違う事に気付いた。……急に変わった態度、変化した瞳の色…ま、まさか……

 

「…貴女、思考と反射の融合が持ち味の方だったんですの……?」

「いいえ」

「ですわよねぇ…あの方はオッドアイなだけですし……では、何なんですの?理由は分かりませんけど、今の貴女は明らかに変ですわ」

「……ぁ…そ、の…」

「……エスーシャ…?」

「……っ!」

 

このままでは埒があかないと、少し語気を強めて問いかけたわたくし。するとエスーシャは一層困ったような表情を深め、そして……手放していたペンを掴んで、何らかの文章を必死に書き始めた。それをわたくしが目を瞬かせながら見ていると、すぐにエスーシャは書き終え、文章の書かれたメモ帳を見てみると……

 

《わたしはイーシャ。エスーシャではなく、イーシャです》

 

…という一文が、書かれていた。……エスーシャではなく、イーシャ…?

 

「…別人、って事ですの……?」

「はい」

「するとつまり、貴女は多重人格者なのでして?」

「いいえ」

「では、何なんですの?」

「…………」

「エス…イーシャ?」

《すみません。エスーシャの中に眠る、もう一つの人格。今はそう思って下さい》

 

数度のやり取りの後、再びイーシャはメモ帳に書いた文章で返答。…な、何故口頭とメモでの複合返答を…というか銀髪の筆談キャラって、どこのセブンスアビスさんでして……。

 

「色々腑に落ちませんけど…一先ずは分かりましたわ。それで、エスーシャの中に眠っているというのなら、何故貴女は今ここに?エスーシャの方はどうなってますの?」

《エスーシャが寝ている間、わたしは表に出られるのです。ですが、寝ている間は常にわたしの人格となっている訳ではありません。そしてエスー》

「エスー?……あぁ、書き切れなかったんですのね…」

 

それからもイーシャは筆談を続行。けれどメモ帳はあまり大きくなく、二つ目の質問は二枚目へ。…見るからに急いで書いてますわね…慌てる位なら、口頭で返してくれればいいものを…。

 

《シャは今寝ています。エスーシャが起きる時、わたしは再び内側へと戻ります。なので、エスーシャの眠りが浅い今は時間がありません》

「…でしたら、わたくしは聞き手…いえ、読み手に徹しますわ。その方が宜しいのでしょう?」

「はい」

 

そう答えながらイーシャは頷き、作文を進める。時間がないにも関わらず、手間のかかる手段を取るのは、何か理由があるのか、それとも……。

 

《わたしとエスーシャは、ある事情を抱えています。その解決の為に、エスーシャは頑張ってくれています》

「事情…えぇ、詳しくではありませんが、エスーシャからもそれは聞きましたわ」

《ですが、エスーシャは暴走してしまうかもしれません。でも、わたしにはエスーシャを止める手段がありません。わたしは任意に表に出られる訳ではありませんから》

「…だから、わたくしに止めてほしいと?」

《その協力をしてほしいと、思っています。そして……エスーシャにも、協力してほしいのです》

 

文章には音がなく、表情や仕草もない。あるのは書き手の癖と、上手い下手の差だけ。…けれど、イーシャの書く文面からは、思いが伝わってきた。イーシャの、必死な思いが。

 

「…もう少し、詳しく訊く事は出来ませんの?貴女の意思は伝わってきましたけど…まだ貴女の事もよく分からない現状では、協力のしようがありませんわ」

《分かっています。だからまずは、エスーシャと私用携帯てなやり取り出来るようにして頂けないでしょうか。そうして下されば、こちらからまた連絡します》

「私用携帯?……あー…仕事用では手元にない場合もあり得る、って事ですわね…分かりましたわ。けれど、それはエスーシャが応じてくれなければ無理ですわよ?」

《大丈夫です。エスーシャは無愛想かもしれませんが、優しいですから》

 

エスーシャ同様、あまり表情の変化がないイーシャ。ただ、そんなイーシャもエスーシャを優しいと書いたメモを出した時は…ほんの少し、口元に微笑みを浮かべていた。けれど、次の瞬間イーシャは椅子の上でふらつきを見せる。

 

「い、イーシャ?どうしたんですの?」

《ごめんなさい。もう時間のよです。今のやりはエスーシャに話いでください。それと、このメモ見ららないようにしてく》

「あ、ちょっ……」

「……っ、ぅ…」

「……!」

 

まるで睡魔に襲われているかのように、イーシャの書く文面は乱雑となっていく。そしてメモを見られないようにしてほしい、という旨の文を完成させる間際でイーシャは力尽き、文章未完のまま机に突っ伏してしまった。……が、内容はきちんとわたくしに伝わっており、エスーシャが起きる素振りを見せた瞬間急いでメモの束を回収する事によって、何とかわたくしは隠す事に成功した。

 

「…わたし、は……」

「…よ、よく眠っていましたわね、エスーシャ」

「眠っていた?…あぁ、そうか…一応とはいえ客人の前で居眠りするのは、とてもいい行為とは言えないな。すまない」

「構いませんわ。それよりエスーシャ、睡眠はきちんと取るべきですわよ?…まぁ、わたくしも早寝早起きが出来ている訳ではありませんけど…」

「善処しよう。…しかし、妙に膝に疲れが…」

「そ、それは途中まで肘を突いて寝ていたからでは?」

「ふむ、そうなのか」

 

眉間を軽く叩き、身体を動かすエスーシャの瞳は赤い。こうしているとイーシャが幻だったようにも思え、実際今のエスーシャからイーシャ要素は欠片も感じませんけど……隠したメモ用紙は、確かにありますものね…。

 

「……エスーシャ、寝ている間の事を、何か覚えていました?」

「…夢の話でもしたいのか?」

「いえ、ならばいいですわ。さて、時間も時間ですしわたくしはそろそろお暇させて頂きますわね」

「そうか。また来てくれ…いや、来るなら連絡をきちんとしてくれ。そして暇潰しにはもう来ないでくれ」

「連れませんわねぇ。まぁ、頭の隅には置いておきますわ」

 

それとなく探りを入れたわたくしは、そのままの流れで軽く冗談を混ぜつつ退室。去り際にエスーシャの顔色を伺ったものの、彼女は普段のわたくしだと思っているようだった。

そうして教会へと帰るわたくし。空き時間の有効利用という目的は果たせ、今回はここは来て正解だったと思うものの……

 

(エスーシャの目的に、お二人の存在に、イーシャ……これは予想以上に複雑なようですわね…)

 

……協力関係とそれに纏わる一連の問題は、中々以上に骨が折れそうですわ…と、心の中で溜め息を吐くわたくしでした。




今回のパロディ解説

・成せば大抵何とかなる
結城勇奈は勇者であるの作中部活、勇者部の五箇条の一つの事。思いがあればスライヌの身体でも人の意思を持ち続けられるのか。…信次元なら、あり得ると言えます。

・思考と反射の融合が持ち味の方
機動戦士ガンダム00の登場キャラ、アレルヤ(ハレルヤ)・ハプティズムの事。女神は二つの人格を持ってる(的な)キャラですし、他にもこのネタは使ってみたいですね。

・セブンスアビス
これはゾンビですか?に登場する名称及びその一人、ユークリウッド・ヘルサイズの事。筆談って実際にやったらかなり疲れそうですよね、書き続ける必要がありますし。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。