超次元ゲイムネプテューヌ Origins Interlude 作:シモツキ
イーシャから頼まれた、エスーシャの私用携帯との連絡手段確保。一番単純な確保方法は、本人に言う事ですけど……相手はあのエスーシャ。拒否される可能性は大いにありますし、下手に食い下がろうものならイーシャとのやり取りを勘付かれてしまうかもしれません。となれば唐突に頼むのではなく、自然に感じられるような流れにし、エスーシャからも乗り気になってもらえる状況を作るこそがベストというもの。それを作るのもまた容易ではないのでしょうけど…わたくしは多くの方と交流を深めてきた国の長。ですから状況作り位、朝飯前なのですわ。
──と、フラグなど立てていたのが暫く前のわたくし。そして今のわたくしは……
「あ、あの…エスーシャ…?」
「…………」
「わ、わざとではないんですのよ?本当にあれば偶然というか、不幸な事故というか…だから、その…」
「…………」
「……申し訳ありせんわ…」
……身体中に木の葉や木の枝を付着させたエスーシャに対し、謝罪を余儀なくされているのでした。
「…常人ならば、大怪我をしていただろうな」
「うっ……」
静かに、しかし間違いなく怒りの感情を募らせているエスーシャへ、わたくしは言葉を返せない。何せ、悪いのは100%わたくしですもの…。
わたくしとエスーシャがいるのは、リーンボックスのとある山奥。ここへはクエストの為、より詳しく言えばクエストを通して目的を達成する為訪れたのであり、エスーシャをクエストへ誘い、共に討伐対象であるモンスターを撃破するところまでは上手くいっていたものの……
(あんな所で冗談に走るべきではありませんでしたわ……)
現在わたくしは、エスーシャの容赦ない視線を浴びながら後悔している真っ最中なのでした…。
*
空を疾走する、巨大な鳥系モンスター。その後を追うは女神化したわたくし…それに、エスーシャ。
「次に奴が旋回した瞬間に距離を詰めますわ。エスーシャ、準備は良くて?」
「…もう好きにしてくれ…」
文面通り半ば諦めたようなエスーシャの言葉が聞こえてきたのは、わたくしのすぐ下。……そう、わたくしは今、エスーシャを
「好きに?では、女神のわたくしでも骨が音を立てて軋む程のオーバーマニューバで接近を…」
「前言撤回、わたしがすれ違いざまに剣を振り抜ける様な機動で頼む」
「畏まりました、わッ!」
モンスターが身体を傾け、左へと旋回を始めた瞬間わたくしは加速。予測したモンスターの未来位置へと直線機動で突進し、エスーシャはノワールの物より些か太く厚い片手剣を後ろに引いてモンスターを見据える。
数瞬後、予想通りの位置へと移動してきたモンスターとわたくし達は交錯。その直前でモンスターはわたくし達の動きに気付くものの既に回避が間に合う段階ではなく、後ろから前へと振り抜かれたエスーシャの片手剣が、モンスターの胴体を強かに斬り裂いた。
「次で仕留めますわよ!」
「…ふん、ならば速度を落とすなよ?」
「勿論ですわ!」
モンスターが甲高い叫びを上げる中、わたくしは弧を描くように急上昇。更にその頂点、半円が完成した瞬間に両脚を空側へと振り出す事で身体を一気に90度回転させ、悶えるモンスターへと急降下をかける。
女神と言えど慣性からは逃れる事など出来ず、高速故の強力な運動エネルギーが身体へと襲いかかる。そしてそれはわたくしに抱えられたエスーシャも同じ事で、女神程強靭な身体ではない彼女にとってはわたくし以上に辛い筈の、この瞬間。…けれど、エスーシャは口元に小さな笑みを浮かべていた。良いスリルだ、とでも言いそうな笑みを。
「さぁ、エスーシャ!」
一切速度を落とさず急降下へ入ったわたくしと、トドメを刺すべく刃を向けるエスーシャ。やられてなるものかと身を翻し、迎撃を図ったモンスターの鉤爪を沿うようなバレルロールで回避した先にあるのは、既にわたくしとエスーシャによって何度も傷を負わせたモンスターの胴体。そこへエスーシャによる、最後の一撃が放たれる。
「……散れ、モンスター」
静かに、しかし力強く突き出されたエスーシャの片手剣。その一撃で胴を貫かれたモンスターは痙攣し、風に吹かれて身体を回転させながら落下し……地面に激突すると同時に、消滅した。
「…お見事ですわ」
「君がこんな非効率な策を取らなければ、もっと早く倒せていただろうさ」
「あら、そういう割には貴女、満足そうな顔してましてよ?」
「…五月蝿い」
消滅を確認し、わたくし達は軽く安堵。確かにエスーシャはあの時笑みを浮かべていたものの…それを認めるつもりはないようだった。
何故わたくしがエスーシャを抱えて飛んでいたのかと言えば、それは体験した事のない筈の空中戦でエスーシャの琴線を刺激しようと思ったが故。初めは何を考えているんだ、と呆れられましたけど…これならばやった甲斐はありそうですわね。
「空を飛び回るのは中々良いものでしょう?」
「わたしは空を連れ回されただけだがな…まあいい、早く降ろしてくれ」
「はいはい。では」
素っ気ないエスーシャの反応も、慣れてくればそれはそれで味があるというもの。無感情な訳ではなく、単にあまり表情豊かではないだけだと分かっていれば、逆に表情を引き出す事が楽しみになるというもの。そういう訳でわたくしは、女神化による気分の高揚もあり……大木の先端付近の枝へとエスーシャを降ろす。
「……何のつもりだ」
「いえ、降ろせと言われましたので…」
「誰がこんな不自由な場所に降ろせと言った…」
「ふふ、女神式のジョークとでも思って下さいな」
「……ベール」
「何ですの?」
「普段の君ならともかく、その姿でジョークと言われてもまるでそうは思えない」
「そ、そう言われるとわたくしも返しようがありませんわ…」
女神の姿となったわたくしは、見た目に加えて普段より基準のテンションが下がるからかクールな印象を持たれる…というのは、わたくし自身も理解している事。それは別に嫌な事ではなく、落ち着き払った様が魅力だと思って下さる方々もいるのですから、この自分を変えたいとは思いませんけど……ジョークをジョークとして受け取ってもらえないのは少し残念ですわね。…まぁ、それ抜きにもジョークと言うには過激過ぎる事をした気はしますが…。
「…で、君は自力で降りろと言うのか?」
「ま、まさか。きちんとわたくしが降ろして差し上げますわ」
「ならばいい。わたしはこの後も予定があるんだ、早くしてくれ」
「えぇ、では動かないで下さいま──」
──ビシッ!
『え?』
わたくしがエスーシャを抱えようとする刹那、どこからか聞こえた嫌な音。そして次の瞬間……エスーシャが、消えた。
……というか、落ちていった。
「…………」
「ベール、貴様あぁぁぁぁ……」
…………。
(……や、やってしまいましたわ…)
*
そうして時間軸は現在。
「冗談というのは笑って済ます事が出来る程度のものを指す言葉だ」
「え、えぇ…わたくしもそう思いますわ…」
「ならば、君が今し方わたしに行った仕打ちは何と呼ぶのだろうな」
「…いき過ぎた冗談、ではないかと……」
かなりの高さから落下し、身体の至る所にその跡である破片を残しながらもエスーシャの調子は今まで通り。……が、この普段通りな様子が今は逆に怖い。えぇそう、怒りの果ての笑みと同じ系統の恐ろしさですわ…。
「…反省は?」
「し、してますわ。それはもう、猛省中の猛省を…」
「だったら、この件はもういい。反省している相手を尚責めたところで何の益にもなりはしないからな」
「え…あ、それは……」
「……だが、この借りは高くつくぞ」
「う…はい……」
淡々と、冷静沈着なペースのまま言われるというのは、声を荒げられるよりある意味辛い。怒るならストレートに、感情的に怒ってくれた方が…というのも変な話ですけど、皆さんもそうではないのかしら。…しかし、ひょんな事からネプテューヌの弱みを握ったわたくしが、今度はエスーシャに大きな借りを作る事となるとは…世の中どこで何があるか分かったものじゃありませんわね…。
…と、思考を脱線させていたのはほんの数秒。にも関わらず、気付けばエスーシャはもう踵を返していた。
「あ……もう帰るつもりですの?」
「クエストは完了したんだ、もうここに用は無い」
「で、ですが折角来たのですし、ここは一つ森林浴でも…」
「興味ないね」
「…早速言いましたわね、それ……」
どこまで意識的に言っているかは分からないものの、エスーシャの口癖は『興味ないね』である様子。それはエスーシャの人となりをよく表してる言葉ですけど…今は興味を持ってもらわなくては困りますわ…!
「こほん。森林浴に興味がないのなら、他のクエストもこなすのはどうでして?支部長の貴女であれば、電話一本で受注という事にも出来ますでしょう?」
「木から転落したわたしにまだクエストをやらせたいのか…」
「あ…で、でしたら帰路に着く前に手当てをするのは如何でしょう?最低限の知識はありますわ!」
「要らん、帰ってから自分でやる」
「むぅぅ…それならば、端末片手にこの周辺にしか存在しないポケモンや妖怪をゲット……」
「…………」
「……わたくしとエスーシャでやっても微妙な雰囲気になるだけですわよね…今のは聞かなかった事にして下さいまし…」
枝葉を払いながら帰ろうとするエスーシャを引き止めようと、わたくしは色々言ってみるものの…やはり慌てて考えたような事で興味を引くのは難しい。しかしじっくり考える時間はなく、実際今もエスーシャは歩き続けている。
もしこのまま帰られてしまっては、今日のわたくしの策は全て水の泡。不機嫌にさせてしまった時点で今日は諦めるというのも選択肢だったものの、同時に日を置くと今回の事が尾を引いて話を進め辛くなるかもしれない…などと迷ってしまった結果が、今現在のこれ。…ならば…ならばもう、手段は選んでいられませんわ!
「エスーシャ、帰るのはもうちょっと待って下さいな!」
「断る」
「そう言うのであれば、わたくしは……」
置いていかれる形となっていたわたくしは、意を決して前進。早足でエスーシャの真後ろまで近付き……後ろから抱え込む!
「てこでも動きませんわッ!」
「は……はぁ…?」
流石にここまでは予想していなかったのか、珍しく素っ頓狂な声を上げるエスーシャ。わたくし自身冷静に考えれば『はぁ…?』ですけれど、今はとにかく今日の事を無駄にしたくはないのですわ!引くに引けなくなった感がありますがそれは気にしないで下さいまし!
「さぁどうしますのエスーシャ、このままでは無駄な時間が過ぎていくだけですわよ?」
「何がしたいんだ君は……」
「それは……あー…えっと…」
「…………」
「…べ、別に何も考えていなかった訳ではありませんのよ!?ただなんと言うか、その……」
「……ベール、わたしは初め君をかなりの切れ者だと思っていたが…君は会う度評価を落としていくな…」
「がーん!?…うぅ、本気のトーンでそんな事言わないで下さいまし……」
自業自得、趣味に走ったりおふざけが過ぎたりした結果の発言なのだから、評価を落とされても仕方ない事ではあるものの…冗談の気配が微塵も感じられない声音で言われるのは、結構辛い。…けれど、ほんの少しですがわたくしの行為に興味を持ってくれましたわね…。
「…結局なんなんだ。言いたい事があるならはっきり言え」
「そんな急かさなくても…」
「急かさなければきちんと言うと?」
「…エスーシャは色々容赦がなさ過ぎですわ…」
「てこでも動かんと言われたのだから当然だ」
「む、むぅ……」
またも身から出た錆で自分の首を絞める事になってしまった。しかも言い返せなくなったのも今日初めてではない。更に言えば今日は洒落にならないミスもしている訳で……も、もしかして今日のわたくし、とんでもないぽんこつなのでは…?
「……引き際を見誤りましたわ…」
「あからさまに落ち込んだな…はぁ、興味ないが致し方ない……何かしたいなら言え。多少ならば付き合う」
「…ほんとですの?」
「こうして時間を無駄に浪費するよりはマシだ」
「……ならば、わたくしとメル友になって下さいまし…」
「……うん?」
身体から手を離し、すっと携帯を見せるわたくし。エスーシャは「え、何?何言ってんの?」みたいな顔をしてますけど…折角の好機、見逃す手はありませんわ…!
「メル友と言ってもしょっちゅうやり取りをしたいという訳ではありませんわ。ただその…」
「…………」
「折角それなりに会っているのですから、もう少し仲良くなっても良いではありませんの…」
「……そういう事か…」
「…無理強いはしませんわ。ですがもし、嫌でないのであれば…」
「…全く、君は思った以上に面倒な相手なのかもしれないな」
「エスーシャ……」
呆れ顔で、やれやれと言いそうな顔で……それでもエスーシャは自身の携帯を取り出し、わたくしの頼みに応じてくれた。つまり、わたくしの目的はこの瞬間に達成された。…わたくし自身が思っていたのとは、些か違う流れで。
「…これで満足か?」
「も、目的ですわ!これさえあればもう一人でさっさと帰ってしまってもいい位に!」
「そうしようものなら流石にわたしも武器を抜くぞ」
「じょ、冗談ですわよ…何か色々申し訳ありませんでしたわ」
「そう言うのであれば、今後に活かしてくれる事を期待しよう」
改めてさっさと歩いていくエスーシャを追い、わたくしも共に下山。ギルドまでは同行し、クエストの完了報告を行ったところで解散する。
結果として泣き落としの様な形で手に入れる事となったわたくし。ある意味それは目的の為に都合のいい話をしたようなものですけど…別に後ろめたさはありませんわ。だって……エスーシャとの友好を深めたいと思っているのは、事実なんですもの。
*
「ふぁ、ぁ…明日は出掛ける予定もありますし、そろそろ寝ようかしら…」
エスーシャと共にクエストを行ってから数日後の夜。愛読書の一つ(今回読んでいたのは普通の小説ですわ。別に良い子は読んではいけない類いとかではありませんの)を本棚に戻し、時計を見て寝る支度を……と思っていた最中、わたくしの私用携帯が着信音を鳴らす。
「こんな時間に着信とは、珍しいですわね…」
ネプテューヌ辺りが面白画像でも送ってきたのか、それともあいちゃんのラブメール(実際に受けた事があるかといえば…そ、その内きっとくれますわ!)か…なんて思いつつ液晶画面を見てみると、そこに写っていた送信者の名前は『エスーシャ』。
「何故エスーシャから……いえ、まさか…」
数秒程首を傾げた後、もしやと思い当たり内容を開くわたくし。すると書いてあったのは……予想通り、エスーシャらしからぬ文章だった。
《ベール様、お待たせ致しました》
「…イーシャから、ですわね……」
即座に返信を送り、次の送信を待つ為わたくしはベットに座って待機。そもそも当初の目的は携帯を介したイーシャとのやり取りの為ですし、考えてみれば夜分遅くにくるのはむしろ自然な展開ですわよね…。
《今回はうたた寝ではないので、時間の余裕はあると思います。ただ朝まで起きないとも限らないので、今回も手早く話を進めさせて頂いても宜しいでしょうか?》
《構いませんわ。しかし、このやり取りも記録に残ってしまいますわよね?それはどうする気ですの?》
《きちんと消しておくので大丈夫です。他に手がかりを残すようなヘマさえしなければ、わざわざ知りもしない消したデータ探しなんてしないと思うので》
言われてみれば確かに…とわたくしは一人納得。データは消しても大概削除データをまとめておく場所があるものの、基本その領域は自身で消したデータを見たい時位にしか見ないもの。後はパートナーに浮気の可能性を感じた時位でしょうけど…そんなドロドロした展開は見たくありませんわね…。
《ベール様。これからお伝えするわたしとエスーシャ、それにヌマンとレディの事情は、ベール様には一切関係のない事。それ故に、ベール様が協力しなければいけない道理はありません。ですから、読んだ上で協力する気になれないと思ったのであれば、断ってくれて構いません。前回は協力してほしいと書きましたが、それはわたしの都合ですから》
「…………」
口頭では殆ど話さないのに、デジタルな手段(と筆談)ではここまで饒舌になるなんて、一体どこの
《分かりましたわ。けれど、あまりわたくしを見くびらないで下さいまし。助けを必要としている人に助けを求められる…それだけで、女神は協力したいと思うものなのですから》
《……ありがとうございます》
《いえいえ、それより本題に入って下さいな》
最初エスーシャに協力を求められた時、すぐに応じなかったのはエスーシャの真意が分からなかったから。現在まだ協力するか否かの決断を下していないのは、決断する上でイーシャの話が重要になると思ったから。ですからこれは、欠かせない話。これからのわたくしとエスーシャの関係に大きく影響する、大切な話。
《…わたしとエスーシャ、ヌマンとレディは全員が普通の頃から友達でした。…因みにヌマン、レディと言うのは二人が今はそう呼んでほしいと言っているだけの通称なんです》
《そうでしたの…見た目そのままな名前だとは思っていましたけど、本名ではありませんのね》
《はい。わたし達は、四人で自主制作映画を作るのが趣味でした。たった四人のアマチュアチームだったので、作った映画はどれもお粗末なものでしたが、それでもわたし達は日々映画製作を楽しんでいました》
《そういうものは、仲間と協力して作る事自体が楽しいんですものね。分かりますわ》
結果ではなく、過程を楽しむ。それはその行為を生業としていない、所謂趣味の世界ではよくある事で、結果に固執していない分健全とも言える楽しみ方。勿論過程を楽しんだ上で良い結果も目指すというのが一番ですけど…趣味は基本的に満足したもの勝ちですものね。
《演技練習、セットの作成、それにロケと、わたし達はそれなりに凝った事もしていたんです。時には苦労もしましたが、苦労してこその映画製作だと思い、少しずつ難しい事にも挑戦していました》
《…ここまでは、なんら問題ありませんわね》
《はい。わたし達の人生が狂ったのは、ある時……刑事物のラストシーンの為、崖で撮影を行っていた瞬間です》
刑事物で崖と言えば、刑事が犯人を追い詰める上で定番の場所。けれど……相手の様子が一切分からない携帯越しでのやり取りでも、この流れで崖となれば嫌な予感しかしてこない。そして……
《わたしがカメラを回す中、三人は崖で演技を行っていました。場所が場所だけに臨場感があり、撮影もいつもより上手く進み、もしかしたら過去最高のシーンが取れるかもしれない……そう思っていた瞬間でした》
《崖が崩れて、三人が崖の下へと落ちていったのは》
わたくしの返信を待たずに…というより、わたくしがなんと返せばいいか迷っている内に、イーシャはその事実を語った。普通の人間が、崖から落ちたとすれば……その結果は、考えるまでもない。
《幸いにも三人は沖へと流される事はなく、即死もしていませんでした。ですが、瀕死の状態且つ、街からも離れていて助けも望めない絶望的な状況。…恐らくあの時点で、三人の命を救う手段はなかったんだと思います》
《そんな……いやでも、待って下さいまし。確かエスーシャが言っていたのは、魂の移動…では、もしや貴女は……》
《お察しの通りです。わたしはルウィーの出身であり、わたしの家系にはある秘術が伝わっていました。……魂を別の存在へと移し変える、独自の魔法が》
これまで分からなかった、魂の移動の手段。それがこのタイミングで明かされるというのは驚きで…しかし魔法だというのなら、納得出来る理由だった。シェアに次ぐレベルで奇跡に近付ける技術、それが魔法なんですもの。
《幸か不幸か近くにスライヌがおり、それを見つけたわたしはまず二人の魂をスライヌへと移し変えました。ですがそれ以上の生物は見つけられず、エスーシャはいつ力尽きてしまってもおかしくない状況。それに焦ったわたしは、それでも何とか助けたいと考え……気付きました》
《自分自身に移せばいい…という事ですわね》
《その通りです。ですが本来、魂移動の魔法は入念な準備を行い、時間をかけて行うもの。ヌマンとレディが今の姿となり、わたしも普段は眠りにつく形となってしまったのは…そのどちらも満たさず強引に行った事が原因なのかもしれません》
そうして、イーシャからの事情説明は終わった。一体何があり、どうして四人は今の状態になっているのは、よく分かった。だから今なら理解出来る。エスーシャの覚悟も、決意の固さも。
《…お三方は、それを知っていますの?》
《いえ。ですがわたしが魔法を使える事は知っていましたので、状況からわたしが何かしらしたとは思っている筈です》
《そう、ですのね…今教えて下さった事を、伝える気は…?》
《…ヌマンとレディはともかく、エスーシャには言えません。崖で撮ろうと言ったのはエスーシャで、エスーシャは撮影において中心となってくれていましたから。ですから、もし全てを知ったらどうなってしまうか分かりません。…今でもエスーシャは、日々自責の念に駆られているんです》
《では、貴女の生存も…》
《伝えていません。現在エスーシャは『どこかにあるイーシャの魂を、この身体へと戻す必要がある』と思っていますが、真実を知ればきっと……自身の魂、精神を崩壊させる事でわたしを復活させようとするでしょうから》
無愛想で、ケイに負けず劣らず感情の起伏が分かり辛いエスーシャ。そんなエスーシャが無愛想な表情の裏で過去を後悔し、自分のせいでイーシャが消失したも同然だと思っているとしたら……
「…………」
エスーシャとの協力関係を結ぶ事は、モンスターとの共存研究の内容を伝える事であり、国家級の極秘情報を他人に漏らす事に他ならない。もしエスーシャの心に悪意が混じれば、そうでなくとも何かの拍子にこの情報が、モンスター研究を極秘裏に行なっていると部外者知られてしまえば、わたくしの信用もリーンボックス教会の信用も暴落してしまう事は間違いなく、だからこそ出来るならばこの事は他言したくはない。…けれど…ですけれど、そんな事……エスーシャ達の事を思えば、不安など障害にはなりませんわ。
《…教えて下さり感謝致しますわ、イーシャ。……これからも何か気になる事があればお聞きしたいので、時折連絡を送って下さいまし》
《それは……》
《えぇ、安心して下さいな。わたくしはもう決心しましたわ》
《貴女達の為に、友の為に、出来うる限りの協力を行うと》
国の長の決定は、国の動向にも関わる事。国の長が感情に流されて判断を下すのは、あってはならない事。けれど、わたくしは常に合理的な、理論的で感情の通わない選択など、微塵もするつもりはありませんし、したくもありませんわ。何故ならわたくしは女神。誰よりも理想を追い求め──その理想の為に全力を尽くす事こそが、わたくしの思う女神の在り方なんですもの。
今回のパロディ解説
・この周辺にしか存在しないポケモン〜〜
ポケットモンスターシリーズの一つ、ポケモンGOの事。山奥なので面子云々以前に楽しめるかどうか微妙ですね。ゲイムギョウ界のソシャゲ事情にもよるでしょうが。
・この周辺にしか存在しない〜〜妖怪〜〜
妖怪ウォッチシリーズの一つ、妖怪ウォッチワールドの事。こちらはGOよりは山奥でも楽しめると思いますが、二人が山奥でやってたら物凄くシュールでしょう。
・
STEINS;GATEの登場キャラの一人、桐生萌郁の事。流石にあそこまで素早くは打っていませんし、あそこまで砕けた口調にはなっていません。そうだったらビックリです。