輝きの縁:外伝 亜種特異点ー内浦聖杯戦争ー   作:伊崎ハヤテ

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はい、作者の気まぐれで始まった内浦聖杯戦争。今後この作品がどんな方向に行くか、僕自身わかりません。FGOの面白さを自分なりに表現していきたいと思ってます。


1節:トロイのヨーソロ

「モーさん、かっこよすぎるだろ……」

 

 おれ、紫堂 櫂はスマホを片手に空を仰ぎ見た。その隣にはそんなおれを呆れながら見る幼馴染が一人。

 

「もう、櫂ったらそんなにスマホゲーに夢中になって。歩きスマホはよくないんだぞ?」

 

 幼馴染、渡辺 曜が言うのも最もだ。それでもやりたいと思えるこのゲームにも原因があるのだ。(良い子は真似しないように)

 

「曜、さてはおめーFGOの魅力に気づいてないな?」

「うーん、私はスマホやってるよりも筋トレや衣装作るのが楽しいからなぁ……」

「それはそれでもったいないと思うぞ。とっても魅力的なキャラに素晴らしいストーリー、こんなにおれがのめり込んだゲームがあるか?」

 

 隣の家に住んでいる曜は、おれが今まで何にハマってきたか理解している。その問いに曜は苦笑いした。

 

「そうかもねぇ。櫂、そのゲームに結構な課金してたよね? 幾ら課金したの?」

 その問いにおれは視線を逸した。その様をため息をつく曜。

 

「全く、課金もほどほどにしときなよ?」

「大丈夫、課金は家賃までって決まってるんでな」

「実家住まいの櫂じゃ家賃なんてないじゃないの!」

 

 ちっ、バレたか。

 

 

「おっ、鞠莉さんからLINEだ」

 曜も所属しているスクールアイドルグループAqours。縁あってマネージャーっぽいポジションにいるおれはそのメンバーのLINEに参加させてもらっている。その鞠莉さんからメッセージが届いた。

 

『カイ! アナタもFGOをやってると聞いたわよ! ワタシとFriedsになってくれるかしら!』

「お、鞠莉さんもやってるんだ。『いいですよ。どれ位キャラ集まってます』っと……」

 

 おれの問いに鞠莉さんはスクリーンショットを貼り付けてきた。高レアリティである☆5のサーヴァントが十体近くいる。その光景はこのFGOを理解してない他のメンバーにも異質に見えたようで、次々とLINEに浮上してきた。

果南『うわっ、鞠莉ってばこれ幾らかけたの?!』

鞠莉『んー、十万から先は覚えてないかな?』

ルビィ『ピギぃ! じゅ、十万!?』

花丸『ゲームにそこまでお金をつぎ込むなんて、未来過ぎて凄すぎるずら……』

ダイヤ『不健全ですわよ!』

曜『櫂もだけど、鞠莉さんも程々にね?』

梨子『っていうか鞠莉さんはもう程々のレベル超えちゃってる気がするけど……』

千歌『ねーねー、何のはなしー?』

善子『FGOね? この堕天使のサーヴァントを見るがいいわ!』

 

 と、善子の方からもスクリーンショットが送られてきた。が、☆5は見当たらず、☆4のサーヴァントも少なめだった。

 

櫂『善子……、まぁ涙拭けよ』

善子『ヨハネよ! べ、別に悔しくなんてないし! 礼装なら☆5いっぱいあるんだから!』

鞠莉『もしかして礼装に☆4確定とか吸われすぎて☆5鯖出てない感じなのね?』

花丸『ゲームのほうでも不運……、流石善子ちゃんずら……』

善子『う、うるさーい!』

 

 なんて盛り上がっていると夜もふけていって、ぽつりぽつりと離脱していくメンバーが増えてきた。おれもおやすみの挨拶をすると横になった。

 

「ちょっとFGOで盛り上がりすぎたかな……」

 

 先程の会話を思い出す。やってない連中からしたら迷惑だっただろうか。今のおれにとって彼女達は大切な存在だ。嫌われたくない。でも大切だからこそ、一緒に同じものを好きになって語り合いたい。これは、我儘かな?

 

「皆に、このゲームの楽しさが伝わればいいんだけどな……」

 

 そう考えながらも意識は突然やってきた眠気に奪われていく。そしておれの瞼が閉じられた瞬間に意識は眠りへと落ちていった。

 

 

「――ンイ、センパイ……」

 

 誰かの声で意識がうっすらと戻る。この凛とした声は誰だろう?

 

「センパイ、起きて下さい、センパイ……」

 

 おれを先輩と呼ぶのは、ルビィちゃんか花丸ちゃんだけのハズ。でも二人の声とは違う。この声は――

 

「起きて下さいマスター!」

「っ!?」

 

 突然の大きな声に上体を起こして声の主を見た。見慣れない制服。桃色に近い髪をショートカットにして、メガネをかけた紫色の瞳がおれを見つめている。

 おれはこの子を知っているぞ。忘れるハズがない。おれの人理修正の旅にいつも傍に居てくれた――

 

「マシュ、なのか……?」

 

 おれの問いにマシュと呼ばれた少女はにっこりと笑って応えてくれる。

 

「ハイ、あなたのデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライト、51レベです」

「いや、別に現在のレベルまで言わんでも。っていうかどうして君がここにいるんだ? だって君は――」

 

 ゲームの登場人物だろう、というおれの言葉は外からの女の子の悲鳴にかき消された。この声の主は――

 

「曜!」

 

 思わず窓を開けて隣の家のベランダを覗いた。ここからじゃ何が起きてるのかわからない。けど一度降りてから彼女の家に行くには遅すぎる! どうすれば――

 

「センパイ」

 

 焦るおれにマシュが優しく語りかけてくる。彼女の身体が光に包まれ、デミ・サーヴァントとしての彼女の姿になった。

 

「センパイ、指示を。私のマスターはセンパイですから。幾らでも命令をして下さい」

 

 そもそもどうしてここにマシュがいるのかおれにはまだわからない。でもおれの力になってくれる、そう彼女は言ってくれてるんだ。その力を使わせてもらおう。

 

「じゃあマシュ、おれを抱えて隣の家のベランダまで飛んでくれるか!」

「はい、マスター!」

 

 命令通りにマシュはおれを抱えると、おれの窓から跳躍した。難なく着地し、曜の部屋のベランダにたどり着いた。

 

「ありがとうマシュ」

 

 おれが礼を言うとにっこりと笑うマシュ。が、すぐにその表情を引き締めた。

 

「気をつけて下さいセンパイ。この部屋の中に、サーヴァントがいます」

「マシュだけでなくて他のサーヴァントもいるのか? というかなんでマシュ達がここに?」

「質問は後回しです。今はセンパイの友人を助けないと!」

「そうだな。いざって時はマシュ、君に頼ることになるけど、いいか?」

「はい、マスターの盾となり、剣となります!」

 

 力強い返事におれは意を決して窓を開けて曜の部屋に入った。

 

「来ないでー!」

「っ、いやだからねお嬢ちゃん。オジサンの話を聞いて欲しいんだけど……」

「起きたら突然私の部屋にいたおじさんの話を聞けるわけないでしょー!」

 

 部屋には部屋の隅で警戒する曜と、どうしようかと頭を抱えているおっさんがいた。

 矛先が金色の十文字槍を持ったボサボサ髪の男。顎髭を弄り、思案顔をしているこのサーヴァントは――

「ヘクトールか!」

 

 声でおれを認識したのか槍を持った男はこっちを向いた。そして懐かしい顔を見たかのような表情に変わった。

 

「おぉ! 元マスターじゃないか! ちょっと助けてくれよ~」

 

 ヘクトールは渡りに船と言わんばかりの表情でおれに近づいてきた。っていうかおれのこと『元マスター』って言わなかったか?

 

「か、櫂……? そのおじさんのこと知ってるの?」

 

 曜が少し涙を貯めた目でおれを見つめている。まずは曜のヤツを落ちつかせないと。おれは彼女を軽く抱きとめた。

 

「曜、大丈夫だ。こいつは見た目はオッサンだが悪いオッサンじゃない。いいオッサンなんだ」

「おーい、元マスター? 全然フォローになってないぞ? オジサン泣いちゃうけど?」

「ホントに?」

「ホントだ。嘘だったらオッサンをぶん殴ってくれて構わない」

「いやオジサンは全然構わなくないんだけど?!」

「解った……櫂のこと、オッサンのこと信じる……」

「お嬢ちゃん!? そろそろオジサン泣くよ?」

「所でヘクトール、さっきからおれのことを『元マスター』って言ってるな。ということはお前も――」

 

 スマホを取り出してヘクトールに見せた。ヘクトールは何と言えばいいのかよくわからない顔をしている。

 

「そこからは私が説明しますセンパイ」

 

 代わりに今まで黙っていたマシュが口を開いた。

 

 

「この内浦が特異点になった!?」

 

 おれの言葉にデミ・サーヴァントである少女は頷いた。マシュの説明はこうだ。内浦・沼津は空気中に魔力が分散していて、サーヴァントがいつ出現してもおかしくない状態にある。

 

「まるでロンドンだな。そしてマシュはこの特異点の解明の為に現れたと」

「はい。何故私がセンパイとの記憶を持っているのか、そしてそこのヘクトールさんがセンパイを『元マスター』と認識しているのか、それもよく解っていません」

「元、って言ってるってことはおれがマスターだったことは覚えてるけど今はおれをマスターとして認識してないってことだよな」

 

 おれとマシュの視線はヘクトールへと向かう。ヘクトールは苦笑いして頭を掻いた。

 

「すまねえな、あんたがマスターだったってことは解るし、悪いヤツじゃないってもの覚えてる。でもおれはあんたの指示なしで動けるみたいなんだよ」

「つまりセンパイ以外にマスターがいるってことですね。それって――」

「あの、難しい話の途中申し訳ないんだけど、いい?」

 

 おれの背中でヘクトールを警戒していた曜が顔を出した。

 

「どうした曜?」

「あのね、朝起きたらこのヘクトール、さんだっけ? がいて、私の手のひらにこんなのが……」

 

 曜の右の手のひらには赤い紋様が浮かんでいた。これは、間違いない。サーヴァントを使役するために使う令呪だ。

 

「曜、お前もしかして――」

 

 彼女を指差そうとして手が止まった。おれの右手にも曜と同じ令呪が。

 

「そうだ元マスター。おれのマスターはこの嬢ちゃんなんだよ」

「そしてセンパイは私のマスターとなってます」

「ってことは――」

 

 この内浦で聖杯戦争が始まるっていうのか? そう考えた瞬間に千歌や果南姉ちゃん、Aqoursの皆の顔が脳裏に過ぎった。

 

「こうしちゃいられない。おれ、千歌の家に行ってくる!」

「私も!」

「嬢ちゃんが行くってんならオジサンも行くしかないな」

「私達がセンパイ達をおぶって走りますから、ナビゲートをお願いできますか?」

 

 おれ達は曜の家を出て、千歌の家へと向かうことにした。ヘクトールは屈伸して身体を慣らすと曜に向けて背を向けた。

 

「ほれ、おぶされ嬢ちゃん。これでも足は速いんだぜ?」

「う、うん……」

 

 曜がヘクトールへと近づく。その様を見て、胸がきゅっと締め付けられる感覚がした。

 

「センパイ?」

「マシュ、すまないけど曜をおぶってくれるかな。ヘクトールはおれを。いいかな?」

「マスターがそう言うなら」

 

 マシュはにっこり笑って曜に近づいた。

 

「曜さん、さ、どうぞ」

「あ、ありがとねマシュちゃん」

「マシュちゃん……」

「あっ、もしかして嫌だった?」

「いえ、いい響きです。これからよろしくお願いしますね」

「うんっ」

 

 二人の女子の会話を余所におれはヘクトールへと近づいた。トロイアの英雄はおれをニヤニヤと笑っていた。

 

「何だよ?」

「別にぃ? 嬢ちゃんは元マスターのこれ、かい?」

 

 笑いながら右手の小指を立てるヘクトール。おれは少々荒っぽくこいつの背中に乗った。

 

「別にそんなんじゃねーよ。タダの、幼馴染だよ……」

「青春だねぇ。嬢ちゃんとくっつく未来とかあるんじゃないのかい?」

「うっせ」

 

 ヘクトールの背中におぶさるというあんまり様にならない格好だがまあいい。おれは皆に指示を出した。

 

「よし、いくぞ! 目指すは千歌の家だ!」

「おぉー!」

「はい!」

「へいへい!」

 

 こうしておれ達四人は千歌の家へと走り出した。

 

 ここから始まる。おれ達の、聖杯戦争が。




あとがきでは出たサーヴァントを紹介していきたいと思ってます。
マシュ:育てておいたほうがいいと言われてるので作中のレベルまでいってます。コスト0なので理想の王聖のキャリアになってもらってます。

ヘクトール:ランサー枠ではウチは槍ニキとディルムッドを使ってるので補欠。曜ちゃんは誰のマスターにさせようかと迷っていたので彼を当てました。今後曜ちゃんが彼に打ち解ける話を作るのもありかもね。

とこんな感じで始まりました内浦聖杯戦争。マスターとしても、創作者としても半人前かもしれませんが、どうかご愛顧の程、よろしくお願いします。
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