輝きの縁:外伝 亜種特異点ー内浦聖杯戦争ー   作:伊崎ハヤテ

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 はい、二話目でございます。
ダイヤ「ちょっと、本編はどうするんですか?」
俺「愚問だな。同時進行に決まってるであろう」
ダイヤ「正気ですか? 出来っこないですわ!」
俺「正気じゃねえ狂気だ!」
櫂「バーサーカーか!」


2節:聖剣の王と魔眼の蛇―黒髭は二度死ぬ―

「いた、あそこだ!」

 

 海岸に出ると直ぐにあのみかん色の髪の毛の幼馴染が視界に入ってきた。何者かがおれの幼馴染である高海 千歌をじりじりと追い詰めている。彼女からは怯えの表情が見える。

 

「あ、あなただーれっ!? ち、千歌に近づかないでよぉ……」

「でゅふふ、その怯えに染まった幼さが残る顔、そして服に隠れたスケベなボディ。拙者は基本ボインボインには興味ないのですが、あなたのようなレディは大歓迎ですぞ!」

 

 黒い髭を生やした半裸の男は不気味に笑った。あのツラ、あの喋り方は忘れもしない。

 

「黒髭かよ、よりにもよって千歌にっ! ヘクトール! そこから宝具は撃てるかっ!?」

 

 おれの問いにヘクトールは目を細め獲物を見据えた。

 

「んー、ダメだな。あのみかん嬢ちゃんもおれの宝具で巻き込んじまうかもしれん。それでもいいなら撃つぜ?」

「そんな! そんなのダメだよ!」

「だとさ。マスターである嬢ちゃんがこういうなら撃てないな」

 

 もちろんそれでも撃てとはおれも言わない。まだおれ達の距離では千歌を助けられない。ヘクトールの宝具なら何とかなると思ったんだが。

 

「考えても仕方ない。マシュ、ヘクトール。全速力で――」

 

 おれが二人に指示を出そうとした瞬間だった。おれ達の後ろから一陣の風が通過した。風を纏うように一人の男が黒髭へと突進していく。フードをかぶり、身軽な軽鎧で、騎士のような出で立ちだ。何も持ってないはずの男の右手は、風を纏ったかのような何かを振り下ろした。すると黒髭は瞬時に吹き飛ばされた。

 

「ぐはぁー! 拙者の出番はこれまででござるかぁー!!」

 

 吹き飛ばされた黒髭は光となって立ち昇るようにして消えていった。男はふっと息を吐き出すと、千歌に向かってお辞儀をした。

 

「無事だったかい、マスター?」

「ふぇ? ますたーって、私が?」

「そう、君が僕のマスターだ」

 

 そう笑って男がかぶっていたフードをとった。金色の単発に、凛とした翡翠色の瞳には強さが感じられる。

 

「このアーサー・ペンドラゴン、君の剣となろう」

 

 アーサーと名乗ったサーヴァントに、千歌は驚きの声をあげるのであった。

 

 

「と、ゆーわけでチカのサーヴァントのあーちゃんですっ!」

 

 千歌の部屋に通されておれ達は腰を下ろしていた。千歌は何故か自慢げに自分のサーヴァントであるアーサーを自慢していた。

 

「っていうか千歌ちゃん特に驚きもしないんだね……」

「曜ちゃん、朝珍しく早く起きちゃったから海辺を散歩してたら、突然黒髭のおじさんに迫れるなんてこと経験してごらんよ? 嫌でも慣れちゃうって」

「あー……」

 

 曜はそう言ってヘクトールを見た。

 

「確かにそうかも……」

「おーい、嬢ちゃん? オジサンは確かに髭だけど悪い髭じゃないからねー?」

「それにしてもアーサー、どうしてお前は千歌の近くに現界しなかったんだ?」

「おっ、櫂ちゃん今のは『千歌』と『近く』をかけてたんだね!」

「千歌は黙ってて」

「はい……」

 

 しゅんとする千歌を微笑みながら見つめるアーサー。視線をおれ達に向けると首を傾げた。

 

「それは僕にもよく解らないんだ。ここに現界したときに彼女を探さないと思って動き回ってたし、黒髭に襲われてる彼女を見てたら『ああ彼女が僕のマスターだ』と感じてね。身体が真っ先に動いてしまったよ」

 

 彼の話を聞いてたマシュが顎に指を当てて思案顔になる。

 

「私やヘクトールさんのようにマスターの傍に現界するサーヴァントもいれば、全く関係ない場所に現界してマスターを探そうとするサーヴァントもいるということでしょうか」

「かもな。でもアーサーが千歌のサーヴァントになってくれて良かったよ。千歌はなんだか危なっかしいからな」

「櫂ちゃん、それどーゆーこと?!」

「任せてよ元マスター。彼女のことはこの命の限り守ってみせるから」

 

 それなら安心だ。あと出来れば『元』マスターは辞めて欲しい。

 

「あーちゃん、ありがとー!」

 

 千歌が嬉しそうにアーサーに抱きついた。ちょっと複雑な気持ちが過ぎったが、無視することにした。

 

「あはは、千歌ちゃん、あーちゃんって。アーサーさんにあだ名つけたの?」

「だってあーちゃんは千歌のサーヴァントなんでしょ? じゃあ千歌がなんて呼ぼうとも自由だもーん! ね、あーちゃん?」

「あぁ。君の望む名前で呼ぶといいさ。マスター」

「むぅ、マスターって呼び方堅苦しいよぉ。千歌で、いいよ」

「解ったよ、チカ」

「うん!」

 

 ちくり、とまた心臓がきゅっと痛みを覚えた。この痛みはなんだろう? でも今はそれに構っている暇はない。

 

「でも現界したサーヴァントがそのマスターの元に行くっていうなら、他のメンバーがもしもマスターになったとしても少しは安全かな」

「でもそう楽観視は出来ませんよセンパイ。先程の黒髭の件もありますから」

「黒髭、あれも千歌の目の前で現界したから千歌のサーヴァントってことなのかな?」

「んー、千歌はあのサーヴァントさんのマスターはちょっとやかな……」

 

 それは大いに同意だ。

 

「全くマスターを持たずに現界してしまうサーヴァントもいると思います。あの時の黒髭はどうみても千歌さんに危害を加えようという雰囲気でしたし」

「あれは黒髭の素の性格だと思うけどな……」

「ともかく、野良サーヴァントがセンパイの友人に危害を加える可能性もあるかもしれません。そこは注意しないと――」

「きゃあぁぁぁ!?」

 

 マシュの声を遮る突然の大声。外から聞こえたけど千歌の隣の家っていうと――

 

「梨子かっ! マシュっ!」

 おれは千歌の部屋の窓を開けるとマシュに指示を出して曜の時と同じように跳躍してもらった。梨子の前に現れたのは野良か、それとも正規のサーヴァントなのか?

 

「梨子っ!」

 

 急いで梨子の部屋の窓を開ける。すると薄い紫色の髪をしたスタイルのいい女性がおろおろとした表情で梨子を見つめていた。

 

「あっ、元マスター……」

 

 その女性ことメデューサはおれを認識するとそう呟いた。うん、この子もおれをそう呼ぶんだね。それはいいとして彼女は野良なのか?

 

「あ、紫堂くん――っ!?」

 

 おれに気づいた梨子は顔を一気に紅くした。まだ朝の時間、寝間着から着替えようとしていたのだろう。彼女は下着した着けていなくて胸元をタオルケットで隠してはいるが、肌の露出が多かった。

 

「み、見ないでぇーっ!」

 

 梨子の右手の令呪が輝いた途端、メデューサの蹴りがおれに炸裂した。

 

「ベルレフォーンっ!!」

 

 このバスターな一撃。間違いない、梨子のサーヴァントはメデューサだ。

 

「今のは櫂が悪いと思う」

 

 おれと同じ方法で梨子の部屋へとたどり着いた曜と千歌がおれを睨む。因みに一度おれを部屋に追い出したので梨子はもう部屋着に着替えている。

 

「いやだってよ……、梨子の悲鳴聞いたら居ても立ってもいられなくってよ……」

「櫂ちゃん? 言い訳しないっ! 女の子の裸を見るのはどんな理由があっても重罪なんだからねっ!」

「はい、すいません……」

 

 おれが項垂れていると、ぽんとおれの肩にメデューサが手を置いて気遣ってくれた。

 

「すいません元マスター。今の私のマスターはさく、梨子になってますので……」

「いや、令呪使っての命令だし、仕方ないよ」

 

 おれの言葉に安心したのか表情を緩めてくれるメデューサ。よし、彼女の方は平気だ。もう一方は――

 

「うっ……紫堂くんに見られた……」

 

 大分重症だな。これは誠心誠意謝らないと。

 

「梨子、本当にゴメンな。事態が事態だったから居てもたってもいられなくて……」

「し、紫堂くんは悪くないよ……。なんていうかちょっと珍しく朝寝坊しちゃって、寝ぼけたままゆっくり着替えてたら突然メデューサさんが現れてびっくりして叫び声だしたら紫堂くんが現れただけだし……」

 

 言っている内に梨子の顔が更に紅くなっていく。堪らなくなったのか立ち上がった。

 

「わ、わたし、ちょっと外行って落ち着いてくるね!」

 

 そのまま走る勢いで部屋から出ていってしまった。まずい、今外に出るのは危険だ。黒髭ならまだいいが、バーサーカーなどのクラスのサーヴァントに襲われたらと思っただけでぞっとした。

 

「待ってくれ梨子!」

 

 おれは堪らず梨子のあとを追いかけた。

 

 

「あ、あの困りますっ。あっち、いって……っ!」

「ムフフーー、その困り眉、その表情っ! 良いですぞーっ!」

 

 梨子は電柱に身を隠しながら黒髭に詰め寄られていた。

 

「ってまた黒髭かよ!」

 

 同じサーヴァントが出ちゃいけないなんてルールもないだろうけどまたエンカウントするとはこっちも予想外だ。

 おれの内心のツッコミを余所に黒髭がじりじりと梨子に近づいていく。

 

「さっきにはフードのイケメンに邪魔されたが、今度こそこの美少女をお持ち帰りしますぞ。でゅふふ、さっきの子で目覚めたのかこの黒髭、守備範囲が広くなった気がしますぞっ」

「ひっ……」

 

 怯える梨子を見て、おれは考えも無しに突っ込んでいき黒髭に不意打ちの飛び蹴りを食らわせた。

 

「どふぁっ!」

 

 奇襲は成功し、黒髭は地面に転がった。直ぐ様おれは梨子を自分の背中で庇うように立つ。

 

「おれのバスターカードは痛いだろう黒髭!」

「つつ、やってくれますな元マスター!」

「そう呼ぶお前はやはりおれのカルデアのサーヴァントか!」

 

 おれの問いに黒髭はにやりといやらしく笑った。

 

「まぁそうなりますなぁ。だが、今回の拙者は誰にも従わない自由な海賊! 好きにやらせてもらいますぞ!」

 

 再び詰め寄ってくる黒髭。さっきのは不意打ちだから当てられたんだ。二度目は通用しない。けど、梨子を逃がす隙くらいならおれにだって――

 

「紫堂くん……」

 

 きゅっとおれの肩をで縮こまる梨子。彼女を不安がらせてはいけないと、おれは怯える心を追い払って笑ってみせる。大丈夫、梨子はおれが守るから。

 おれが意を決して黒髭に飛びかかろうとした時だった。

 

「ここにいましたか、梨子」

 

 空から長髪の女性の影が落ちてきた。薄い紫の長髪を揺らして黒髭に舞うようにして打撃を打ち込んでいく。

 

「ぐほぉー! 成熟しきったBBAの連撃が拙者を苦しめるーっ!」

「五月蝿いですよレベル1」

 

 トドメと言わんばかりに身体に稲妻を纏い突進する。ハデに吹き飛ばされて黒髭は再び光へと還る。

 

「まだだ、まだ終わりませんぞ! 黒髭は不死身! 何度でも蘇るですぞ!」

「蘇られても困りますが、その時はまたお相手するだけです……」

 

 ふっと、息を吐くとメデューサはおれ達の方へと向いた。

 

「無事ですか、さく、梨子」

「う、うん……」

 

 梨子が恐る恐る返事をすると、安心したような表情を見せた。

 

「良かった……。紫堂もありがとうございます。あなたがいたお陰で私も安心して戦うことが出来ました」

「い、いやあれ位当然だって」

「ふふ……」

 

 長身の女性に微笑まれてドキリとしてしまった。それを見ていたのか、梨子がじっとこっちを見てくる。

 

「梨子、な、なに?」

「紫堂くん、もしかしていまデレデレしてなかった?」

「なっ、そんなわけないだろっ!」

「ホント? 気のせいかメデューサさんとは直接目を合わせてない気がするけど……?」

「気のせいだって!」

 

 あれ、梨子ってこんなに風に言ってくる子だったっけ? いや、内浦が特異点になってる影響だろう。そう思おう。

 

「櫂ちゃーんっ!」

「マスター!」

 

 千歌とマシュの声が近づいてくる。そう言えば居てもたってもいられなくてがむしゃらに走って来たんだっけ。

 

「センパイ、もう少し慎重になって下さい。センパイだって狙われる可能性があるんですよ?」

「もう、櫂ってば一人で突っ走りすぎ! 梨子ちゃんがそんなに大事なの?」

「よ、曜ちゃん!」

「お、嬢ちゃんの友達の顔真っ赤だ。中々賑やかでいいな、セイバーさんよ?」

「アーサーで構わないよヘクトール。そうだね、こんな雰囲気も、悪くないね」

 

 徐々に他の面々も集まってきた。よし、これで幼馴染二人と梨子の安全は確認出来た。次は、果南姉ちゃんと鞠莉さんのいる淡島に行こう。

 

 おれは視線を海へと向けたのだった。




 二話目ご愛読ありがとうございます。定番にしていきたい鯖紹介です。

アーサー・ペンドラゴン:千歌ちゃんのサーヴァントを決めるのが一番苦労しました。どうもピンとくる鯖が来ない、なら捻り出そうと諭吉を投入したらあらまびっくり、アーサーが来てくれました。作品内ではフードをとって素顔を見せてくれてますが、僕のとこではまだ再臨してません。ピース集まるまで待ってくれ……。今でも千歌にフィットしてるかどうかは解らない。今後盛り上げられるといいな。

メデューサ:梨子は簡単に決まりました。名字が桜入ってるし。その名残でメデューサさんも呼び間違えたりしたりしてます。実のところ、メデューサは僕がFGO始めるキッカケのキャラでもあります。こんなキャラいない? と聞いた所教えてもらったのが彼女。おしとやかで美人、おまけにナイスボデーだもの。ああ、メデューサさんに搾り取られたい……。ライダー枠は☆4のマリーが来ても彼女がエースです。

黒髭:やられ役。第三章でのキャラクターが良かったので変質者役をやってもらってます。彼の性格は使いやすいので今後も出るかも?

 ほぼノリでやってるこの外伝、皆様にはどのように写っているのでしょうか。楽しんで頂けると幸いです。

 ご意見ご感想、お待ちしてます。

 
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