練習後、善子と梨子のちょっとだけイケナイことをする関係になるお話しです。

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ちょっとイケナイ放課後

「じゃあ、今日の練習はこの辺で終わりにしましょ!」

「そうですね、他のメンバーへの連絡は私がやりますね。」

「ふっ……この程度で終わりかしら?下界の人間達は軟弱なのね。

そんなことじゃリトルデーモン失格よ。」

「じゃ、よっちゃんだけ残ろっか。お疲れさまー。」

「喜子、グッバーイ!」

「……まって!私も帰るー!」

 

今日はユニットに別れての練習日。

私たちGuilty Kissも、3人で次の新曲のダンス合わせをしていた。

ユニット練習の日は、決められた時間を過ぎた後はユニット毎の自由解散になっている。

既に、CYaRon!とAZALEAからは解散の連絡がグループLINEに入っている。

 

部室に戻った私たちは、各々で帰り支度を始める。

「じゃ、私はちょっと学長室に用事があるから!二人ともバーイッ!」

「「さようなら。」」

 

鞠莉さんが早々に部室を出ていった。

学長という身分はやっぱり忙しいのか、これも見慣れた光景。

窓からは夕陽が射していて、そろそろ終バスが心配になってくる時間だ。

荷物をまとめ、さあ帰ろうと顔を上げると……

 

「……」

「……リリー?」

リリーが私をじっと見つめている。いつもの、優しそうな表情を浮かべている。

でもなんだか、いつもと雰囲気が違う……?

 

「どうしたの?堕天使である私の魔の魅力に憑りつかれてしまったかしら?」

「……」

――リリーが無言で私に向かって歩きだした。

 

「リ、リリー?どうかしたの?」

 

私の前まで来て、リリーが口を開く。

 

「……ねえ、私たちのユニット名ってGuilty Kissだよね?」

「…そうよ!罪にまみれて下界に堕ちた私にふさわしい堕天的な名前よね!

もちろん、リトルデーモンであるあなたたちにもね。」

「……だったら、さ。」

「ちゃんと、悪いことしなきゃだよね?よっちゃん…」

「え?」

 

――リリーが更に近づいて…

「リリー?」

 

つま先がくっつくくらいの距離。

私よりちょっと背の高いリリーを見上げる形になる。

同じユニットとはいえ、これ程近くでまじまじと顔を見たことはなかった。

うっすらピンク色に染まった頬、細い眉毛。

つり目気味の黄色い瞳は、吸い込まれそうな程綺麗で……。

そんなことをぼーっと考えていたら、リリーが尚も近づいて……?

 

「ちょ、ちょっとリリーちかっ」

 

――ちゅっ

 

「……んっ!」

「……んん」

 

リリーと私の唇が重なった。私は目を見開き、何が起こったかわからない。

目の前にリリーの顔。唇に柔らかな感覚。

 

「……はぁ」

 

リリーは離れた。

途端に、頭が状況を理解し、みるみる顔が紅潮していく。

 

「……な、なにするのよ!リトルデーモンの分際で、私と、き、き、き……」

「キス、しちゃったね。」

 

「ね、もう一回、しよ?」

「い、いやよ!わたしは!」

 

そうは言っても、身体は魔法がかかったように動かない。

また、リリーの唇が近づいて――

 

「……んんんんっ!」

 

 

――その日のことは、それ以上はよく覚えていない。気づいたら、家にいたように思う。

帰宅後の記憶も曖昧で、ずっとぼーっとしていた気がする。

 

 

次の日の朝、リリーは何事もなかったかのように練習にやってきた。

いつも通り千歌さんと一緒にちょっと遅れて来て、挨拶して。

「みんなー!おはよー!」

「おはようございます。遅れてすみません。」

「おはよーそろー!」

「おはよう、二人とも。」

「グッモーニーン!」

「おはようございますずら。」

「おはようございます。」

「おはようございます。遅いですわよ。また千歌さんが寝坊したのでしょう?」

みんないつも通り返事をして、いつも通りダイヤさんが小言を言って。

ただ、私だけがいつもと違う。

「……おはようございます。」

 

リリーを見て、思わず出遅れてしまった。

「おや、善子ちゃんは寝不足かな?バスの中でも上の空って感じだったけど。」

「確かに、今日の善子ちゃんなんだか気が抜けてるずら。」

「だ、大丈夫よ。あとヨハネよっ!」

目ざとい曜さんとずら丸に見つかってしまったが、おかげで少しいつもの調子に戻れそうだ。

 

――練習中も、リリーはいつも通りだった。

 

「よっちゃん、さっきのパートちょっとズレてるよ。」

「わ、わかってるわよっ!直そうと思ってたとこなのっ!」

 

――まるで、昨日の出来事が夢だったかのように。

 

その日の放課後も、何事もなく終わった。

ただ私だけがリリーを意識してしまっている以外、みんな同じ。

だから……なんだか昨日のことを言い出せなくて。

 

 

――そうして数日が過ぎた。

忘れられないけど、何もなかったような、不思議な感覚を覚えつつあった。

しかし、今日は……

またユニット毎の練習の日。

あの日と同じGuilty Kissだけで集まる日。あの日のことが、どうしても思い出される。

 

「ソーリー。ちょっとお花摘みに行ってくるわね。」

「「わかりました。」」

休憩を取り、マリーがちょっと練習場を抜け出した時だった。

 

「……」

 

並んで座っているリリーの雰囲気が、わずかに変わる。

――あの時と、同じ。

私は何かを期待して、勝手に心臓の鼓動が早くなっていく。

 

「……ねえ、よっちゃん……」

「な、なに?リリー……」

 

――リリーの顔が、耳元に。

「今日練習終わったあと、ちょっと……残ろ?」

「……っ!わ、わかったわ……」

「……いいこだね。」

 

そう言って、リリーは微笑んだ。

練習が終わるまで、私はずっとそわそわしていた。

 

 

練習後、また私たちは部室で、二人きり。

お互い黙って帰り支度をする。

 

「……よっちゃん。」

私を呼びながら、リリーがゆっくりと近づいてきた。

待っていたかのように心臓が高鳴る。

私は硬直したように、動けない。

「……また、しよ?」

「……っ」

もう、拒否の言葉は出てこない。頭が真っ白でどきどきして、何も考えられなくなる。

でも、私の視線はリリーの淡い桃色の唇に釘付けで――

 

「……んっ」

「んんっ」

 

リリーが背中にゆっくりと手を回してくるのが分かった。

 

「んんっ……はぁ……んっ」

「はぁ……はむ……んんっ」

 

夕暮れの部室で、二人の影はいつまでも重なっていた。

 

――その日を境に、私たちはユニット練習日は自然と残るようになった。

時には他のグループも見送って。

どちらが言い出すでもなく、部室に私とリリーだけ。

 

――今はただ、この火遊びみたいな雰囲気を味わいたいから。


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