「は?タニンノソラニとライブ対決?正気かお前」
そこまで言う!?
「……無茶なのは分かってますよ。格上にも程がある」
MV部門、タニンノソラニがアップロードしている複数のビデオのうち、一番順位が低いものでさえ6ix waterとの差は歴然だ。なんで沙織先輩はそんな人達に喧嘩を売ったのか
「焼津くんはライバルとかいるんですか?」
「お前らとは成り立ちが違うからな…メンバー間でもライバルはいるが、BURN-AGEとして目の敵にしてるのは複数いるな」
「例えば?」
「ドントブリーズ。アイツらは曲やダンスの雰囲気が被ってるんだ」
「へぇ」
「まぁとりあえず、お前らの場合、先攻を取ったほうがいいかもな。気圧されて納得のいくパフォーマンス出来なかったら嫌だろ」
「あら、アイドル2人が内緒のお話?スキャンダルの匂いがするワ!」
「店長!」
「そんなんじゃないですよ、ちょっと相談です」
「必死に否定するとホントにそう見えるわよ?」
「だから違いますって!」
「ふふ、冗談よ。それより翔平ちゃん、接客頼むわ。レオンきゅんは今日は厨房ね」
『はい!』
うーん、もう少し話を聞きたかったな
――――――
『生徒の呼び出しをします。1年C組の夢奏エルさん、2年A組の安城羅メルさん。至急ドル研の部室に来てください』
昼休憩、突如として鳴り響く沙織先輩の校内アナウンス。あ、これ私も行かなくちゃいけないやつだ
「レナぴょんどこ行くの?」
「部室!安城羅さん一緒に行こう?」
「え、あ、うん」
安城羅さんを案内するため手を繋いで部室棟へ。お互いアイドル故か付き合ってるだの何だのとヤジが飛んでいるが、そんなことは無い。やましい気持ちなんて一切ない
……ホントだよ?
部室に着くと、私達以外全員いた
「よし、安城羅さんも来てくれたね。では、話を始めよう」
「単刀直入に言うよ。本日の放課後、ボクたち6ix waterとオリジナル曲でライブ対決をしてほしい」
「いいよ。断る理由ないし。ね、メル……ううん、ふわり?」
「うん」
「じゃあ決まりだね。対決方法はこうしよう。生徒に良かったと思ったグループの色のプレートを掲げてもらって、その総数で対決するのさ」
「プレートと設営はこっちでやるっス」
「了解です」
「質問ありますか、夢奏さん?」
「勝ったら何か欲しいとかある?」
「そうね……私達は経験不足も甚だしい。だから、私達が勝ったらタニンノソラニのライブに呼んでもらえないかしら?」
「おっけ、マネージャーに話しておくね。じゃあ代わりと言っては何だけど、私たちが勝ったら――」
――――――
「こんにちは!6ix waterの泉野玲奈です!放課後に集まってもらってごめんね!」
「今日は私達タニンノソラニとライブ対決をするんだよ。あ、きらりだよ、よろしく」
そういうキャラで行くのね、夢奏さん
「先攻は6ix waterです!楽しんでってね!」
ステージが暗転すると同時に夢奏さんが舞台袖に捌けて、代わりに6ix waterが入る。ゆっくりスポットライトが点いて、いよいよ私たちの時間だ
前は良くも悪くもただのお披露目だったから、肩の力は入らなかった。でも今日に限って緊張してる自分がいる
皆は経験あるかな?緊張すると情報が一気に入ってくるの。今の私がそう
観客一人ひとりが何をやってるのかわかる。あ、オタ芸してる子もいるし、合いの手を入れてくる子もいる。退屈そうにしてる子もいる
だめだ、集中できない。何より驚いたのは私と同じ状況のメンバーが6ix waterの半分くらいはいるということだ
それが意味するものはただ一つ。最低限のパフォーマンスしかできないまま、タニンノソラニの出番を迎えるということだ
「僕の心を君に届けたい♪」
焼津くんに心配されたのとは別の理由で、納得のいくパフォーマンスが出来なかった
だから今届けたい心は、こんな諦念じゃない
『ありがとうございました!』
「次はタニンノソラニのライブだよ!」
暗転。そそくさと舞台袖に捌けて、タニンノソラニが舞台へ
そうして始まったライブは、いつだったか同じように舞台袖で見たBURN-AGEのライブに引けを取らないほどの完成度だった
タニンノソラニは、まさに文字通り「他人の空似」で、一卵性双生児のようなルックスと息の合ったダンス、綺麗なハーモニーが特徴のSTAR☆BLUEから派生したユニットだ
――――――
「私達が勝ったら、この中の誰か…そう、なほちゃんか泉野先輩にSTAR☆BLUEの神ファイブの練習を、一週間体験してもらえるかな?」
『は!?』
「実はね、泉野さん。今度神ファイブのドキュメント番組で、素人の女の子はどれだけ神ファイブに近付けるかっていうテレビの企画があるの。そしてその素人の子が選出される条件は1度スカウトを断ったことがあるってことなの」
「STAR☆BLUE内のユニットにライブ対決を挑み敗北した問題児を神ファイブ風に仕立て上げる。なるほど素晴らしい物語だね」
「この条件が呑めないなら、ライブ対決はナシで」
「――引き受けよう。なほ、玲奈、どうしようか」
「私行きます」
「玲奈先輩、大丈夫なんですか?」
「うん。ゴールがどれだけ高い壁か確認したい。それにそのテレビ番組が本当に放映されるなら、6ix waterの名前が知れ渡るまたとない機会だから」
「じゃあ決まりだね。私達が勝ったら泉野玲奈はSTAR☆BLUEに体験入籍する」
――――――
『ありがとうございました!』
プレートを掲げてもらうまでもない
「くく、圧巻のステージだったね。さあ皆、良かったと思うグループのプレートを挙げてもらおうか」
「6ix waterなら青、タニンノソラニなら赤ッスよ」
やめて、虚しくなるだけだから
先生や生徒会役員が数をチェックする。無駄だよ。ほとんどの生徒が赤いプレートを掲げてるのだから
「825対170で、タニンノソラニの勝利ッス!!」
私のSTAR☆BLUE送りが決定した