セシリア・オルコットは悩んでいた。
オルコット再興のために彼女は自分が使える技術をさらに磨いた。
幸い代表候補生となった事でIS学園への通行費と学費は国が負担してくれることになった。
IS学園は寮暮らし、制服の購入の負担も国のおかげで無事に衣と住を確保することが出来た。
しかし、
(紅茶…紅茶が足りませんわ)
オルコット家は現在貧乏だ。
今の彼女には、昔飲んでいたような紅茶を買う余裕はない。
没落したあの日から残っていた紅茶は少しずつ飲んでいたがつい先日最後の紅茶を飲みきってしまったのだ。
(それにカロリーも、なんとか入学まで持たせてきましたが…)
IS学園入学の日まで凌いでいた彼女だったがこれまたつい先日最後の食料を食べ終えてしまった。
学食や購買はお買い得な値段だが今日の授業開始日まで開いていなかったのだ。
つまり彼女には衣食住のうち食が圧倒的に足りないのである。
先生の挨拶、クラスメイトの自己紹介を聞き流しながらセシリアは考える。
カロリーの確保方法を、紅茶の補給方法を。
考える後ろで他生徒の黄色い声が、唯一ISを動かせるという男子学生の声が聞こえる。
だが、今のセシリアは完全にスルーしていた。
気づいたら休み時間となっていた、だが彼女は動かない。悩みが、焦りが止まらないのだ。
(くっ、これなら自販機でいいから紅茶を買っておくべきでしたわね。
紅茶は冷静さを生み出してくれる、紅茶があれば冷静に考えられるでしょうに…)
悩む、悩む、悩む。
せめて食事だけでも、カロリーを安く摂取したい。
そんなときだ、
「では授業の前に再来週のクラス対抗戦に出てもらうクラス代表を決めようと思う。
クラス代表は対抗戦以外にも生徒会の開く会議や委員会にも出てもらう……まあわかりやすく言えばクラス長のようなものだな。
一度決まると一年間の変更は無いのでそのつもりで、自薦他薦は問わない」
担任である織斑千冬の発言を聞いた時、セシリアに電流走る。
(確かクラス対抗戦の優勝商品は学食のデザート半年間フリーパス!これですわ!)
クラス代表に選ばれれば代表候補生としての給与に色がつくかもしれない、
それに入学してすぐの今ならば専用機を持つ自分が優勝する可能性は非常に高い。
(これです、これですわ。優勝すればデザート食べ放題で食費は浮きますし、
成果を出せば給与が増え紅茶の購入する余裕が出来るかもしれません)
そうと考えれば行動は早いほうがいい、そんなパンジャンドラム精神を持ったセシリアは大きく発言しようとした。
「私が立こ「織斑君を推薦します!」うぇっ!」
「そうだねせっかくの男子なんだから男子が代表のほうが面白いよね!」
「私も織斑君を推薦しまーす!」
一人が推薦すると次から次にあがる推薦。
(こ、このままではいけませんわ。いくら珍しいとはいえ彼は完全な初心者。
これでは優勝の可能性が遠ざかってしまいますわ…
わ、私のデザートフリーパスが…!)
しかし、ここでデザートフリーパスが欲しいので何としてでも優勝したいので専用機を持ち実力が最もあると考える自分が代表になりたいですと言ってしまっていけない。
なぜならそれは貴族らしくないからだ。
(いえ、ここで立ち止まってはダメですわセシリア。
紅茶のためデザートフリーパスのため、まっすぐ進むのですわ)
だがここで立ち止まるセシリアではない。
目的のためにどこまでもまっすぐに突き進む、それがパンジャンドラムなのだから。
心にパンジャンドラムを持つ彼女は決して突き進むことをやめないのだ。