2度目の人生はワンピースで   作:恋音

113 / 278
第103話 雪やコンコン狐と狸

 

 

 あーーー、寒い。

 ザクザクと雪を踏みしめながら歩く。

 

 動かないと外では凍え死ぬな。

 

 ドルトンさんの家があるビックホーンから徒歩30分。隣町のココアウィードに辿り着いた。

 レンガ造りでとんがりボウシのビックホーンの町並みと変わってここはクリーム色の壁が立ち並び随分落ち着きのあるオシャレな町だ。

 

 よし、どこか店入ろう。

 ただ町をブラブラして時間を潰すのはあまりにも寒すぎる。

 

 

 聞いた話では次の国王決めは2日後の投票制。友好国の無いドラム王国には選挙王政が一番妥当だろう。

 ……昔いた日本みたいだな。

 世界会議(レヴェリー)に参加出来るかどうか分からないけどドルトンさんが国王になるのなら媚び売っとこう。

 

 しかし、マジで選挙王政は周辺国とのコンタクトが大変だぞ。血統にこだわるのが王族だがこれにはきちんと理由がある、いい例として『教育』だ。幼い頃から王族になる事を前提として勉強するのと一般就職目指して勉強するのとは全然違う(なお()()就職の仕方は不明の模様) そしてやはり『友好国との交流』だろう。家系が変わるだけでその国の在り方というのが随分変わってくる。たったそれだけでその国と同盟を破棄する可能性があるのだから。

 

 ……………本当になんでドフィさん国王になれたんだろう。そりゃ独自の交易手段もツテもたんまり持ってるかもしれないし元天竜人だから権力強いだろうし…でもなぁ。

 ん、待てよ?元天竜人?

 天竜人って民間人からしたら嫌われる対象だよね?元、になれば完璧権力からも政府からも捨てられるよね?どうして権力持ってるの?やっぱり弱点を何かしら握ってるのかしら……あー…ホント嫌い。七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴ様大嫌い。

 

──ドッ!

 

「わ…!」

「ぐぎゃ…!」

 

 考え事をしながら歩いていたのがいけなかったのだろう。建物の死角から飛び出た何かにぶつかってしまった。

 ちなみに『ぐぎゃ』とかいう色気も女子力も無い悲鳴が私の方だ。

 

「い、てて……」

 

 パッ、と目が合ったのは獣だった。

 

「……青い鼻、の………………………タヌキ?」

「誰がタヌキだ!俺はトナカイだ!……ハッ!」

「え……」

 

 獣が喋った事に驚いてフリーズする。獣もフリーズする。なんだ、なんだこのコミュ障同士のお見合いみたいな雰囲気……!

 

 ………気まずい!

 

「あー…えっと? 私、リィンです。好きな食べ物は甘き物、嫌いは食べれぬ物……です」

「え!?あ、お、俺はトニー・トニー・チョッパー、デス…?」

 

 話題の選択肢間違えたかもしれない。

 

「……………………………………」

「……………………………………」

 

 再び重い沈黙が流れる。

 あー、これ確実に間違えてますね。

 

 チョッパー君はビクビクと怯えながら正座した。え、これ座らないとダメ?

 空気を読んで大人しく座る。

 

 うーん、この子なんだろう。しゃべる動物?トナカイだって言ってたよね…。確か後半の海に喋る動物居たような…、まぁ喋る魚がいるんだから居るだろうと思うけど。流石にしゃべる動物は初・邂・逅☆

 …………………これ本当にどうしよう。

 

「お、お前、俺が怖くない、の、か?」

「はい?」

 

「だって…俺トナカイなのに青っ鼻だし喋ってるし……普通は殺されかけてもおかしくないだろ……。でも、お前、えっと、リィンは普通に喋って…」

 

 はァ、とため息を吐く。

 怖い、怖いねェ…。

 動物がしゃべるくらいで怖がってたら私何百回もショック死する自信があるや。

 怖いって言うくらいなら黒い十字架みたいな剣をブンブン振り回す戦闘狂に追いかけ回されたり、空をバサバサ飛びながらストーカー行為をしてくる鳥だったり、予期せぬ突撃四皇の一角だったり……。どっかの王族に喧嘩売ろうとしてるバカワニだったり………。

 じわっと涙が出てきだした。

 

「え、泣いてんのか!?どっか痛いか!?」

 

 少なくとも泣いてるの見て心配するチョッパー君を怖がるわけ無いさ。

 

「怪我か!?大丈夫か!?い、医者〜〜〜ッ!──あ、俺だ」

「お前かよ!」

 

 思わずツッコミを入れる。

 

「とにかく、チョッパー君は怖くないですごめんなさい?」

「俺に謝られても…」

「所でチョッパー君は医者さんです?」

「お、おう!」

「今、医者を探すているのです。暇ですか?」

 

 医者は1人しか居ないと聞いていたがきっと彼だろう。患者…と言うか怪我人がいる事を伝えれば意気込んだ顔になった。

 しかしふと何かを思い浮かべたのかチョッパー君は帽子をギュッと握り深くかぶった。

 

「でも……おれ化け物だから」

 

 彼の上がったテンションが一気に下がった。

 

 そう言えば化け物にこだわるよな、この子。うん?ちょっとおかしくないか?

 

 『彼女は気まぐれに山を降りる。その際患者を探し処置を施せば法外な値段と欲しいものをありったけ奪っていくんだ』

 

 ドルトンさんは確実に彼女と言った。そして患者を探し出して治療する、と言う事が確認されている。それはつまりチョッパー君が『魔女』では無いということ。だって何度も治してる医者なら自分が化け物だとかで縮こまったりしない。

「………ひょっとして、もう1人医者が存在するです?」

「うん…ドクトリーヌがいるよ」

「お仲間?」

「俺の先生……」

「それが『魔女』?」

 

 私が聞けばコクリと頷く。

 

「ではそれを踏まえ依頼するです。チョッパー君、怪我人を治すしてくれませぬか?」

「……え?」

 

 予想外の反応だったのかチョッパー君はバッと顔を上げた。

 うんうん、明らか人間じゃない化け物か魔女と評判の高い医者だったら普通は後者を選びますよね。驚くのも無理は無い。

 

「な、なんで……」

 

 心底驚いた様子。

 何か企んでるんだって疑うくらいには睨まれてるんじゃないだろうか。

 

 

 ……だって、嫌じゃない?

 海賊みたいに欲しい物奪ってく医者とか。

 

「チョッパー君がいいです」

 

 むしろ怪しいボッタクリ医者より優しい子の方がずつといいに決まってる。

 つーか、これ位で驚かないでしょ。特にルフィは。

 

 

 なによりキミを連れて帰らなきゃ私がフライアウェイしなきゃならないんだよ!!!!!!!やだよあんな高い所飛ぶの!!

 

「お願いしますチョッパー先生」

「……お、おれ、ドクトリーヌに許可貰ってくる!」

 

 そう言ってチョッパー君はトナカイの姿に変わってどこかへ駆けて行った。

 あ、あれ悪魔の実だったのか。そういう種族かと思ってた。こんな島にも悪魔の実って生えてくるんだなぁ。

 

 …………………。

 

 

 ……もしかして私この寒い中放置?

 

「ッ、カムバックチョッパー君!!!!!」

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「本当にごめんなさい!」

「気にしてな、気に、気にしてないで、す!」

 

 ガクンガクンと上下に揺られながら下にいるチョッパー君の謝罪を受け取る。

 謝ってくれるのは分かった、分かったからもっと安全運転して!

 

「ヒッヒッヒッ…! 変わりモンだねアンタ」

「ワタ、私は、至って、一般人!で、デス!」

「とりあえず一般人に謝った方がいいと思う!」

「チョッ、パー君!酷、い!」

 

 後ろにはマジモンの魔女Dr.くれは。

 下にはヒトヒトの実の能力者チョッパー君。

 

 私はチョッパー君の上に跨ってドナドナされてます。

 

「俺、初めての患者なんだ!嬉しいぞ!」

「そっか!そーか、だがね、ちょっと、スピ、スピード、ゆるゆる、ゆるぅううう!」

「早く行くからな!」

 

 とんでもないスピードに、酔い止め飲んでても酔いそうです。

 

「うっ、む、むり…」

 

 箒に乗れば良かった…………。




あけましたおめでとうございます。クリスマス予定だったチョッパーのお話があけました。
そして祝、携帯復活。
随分と長いことかかりましたね。
エースの誕生日…終わってしまった……うっ、とりあえずドラム島編が終われば番外編正月バージョン挟みます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。