2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第105話 共闘大作戦

 

 

「かハッ…!」

 

 真っ白な雪に鮮血が飛ぶ。

 

「ルフィ!サンジ君!」

 

 ナミの悲痛な叫びが聞こえる。

 

「ワポル!ナミを離せ!」

 

 ウソップがパチンコを構えようとする。

 

 

「マーッハッハッハ!」

 

 勝利を確信した笑い声が、人々の恐怖を煽った。

 

 

 

 

 

「……おい、お前大丈夫か」

「おう…これくらいなんともねーよチョッパー」

「………巻き込んでごめん」

「バカ言うな。これはうちの船長が勝手に首突っ込んだ事だ。巻き込まれたのはこの国の奴らの方だよ」

 

 サンジは吹き飛ばされた隙にチョッパーと少しの会話をする。

 下手に動けない、動けられない状態。

 

 周りも、本人も。

 

「くそ……リィンちゃんが居てくれたら…」

 

 居ない少女を思い浮かべる。

 あの少女が居たのなら遠距離攻撃も目潰しも視線を逸らす事も様々な方法が思い浮かぶかもしれない。

 無い物ねだりだ。普段判断や作戦を頼りきってしまったが故に、自ら考える事を放棄してしまったが故に打開策が浮かばないのだろう。

 

「チッ……!」

 

 サンジは考える。必死に考える。

 このままでは愛しのナミさんが怪我をしてしまう、と。

 

「っ、協力してくれよ!」

 

 幼い男児の様な声で唐突に投げかけられた言葉にサンジは目を見開き、提案された作戦を聞いて不敵に笑った。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 ドルトンの家にて、BW組は話し合いをしていた。

 

 今後のこと?……ある意味では。

 海軍のこと?……それも同様。

 

 

「なんで緊急時にほのぼのしてるんだよ大将ぅぅぅうう!?」

 

 あまりにもマイペース過ぎるリィン大将についてだった。

 思わず叫んだMr.9。リィンはうるさいなぁと一睨みしただけで暖炉に向き直った。その様子に思わず首を項垂れる。

 

「ダメだ、この大将を数日見てきて悟った。絶対自由にしたらダメなタイプだ」

「なんでこんなのなのに海軍って言う組織でやっていけたの??」

 

 ミス・バレンタインが首を捻るが誰も答えは出さなかった。ついでに大将であると言う情報を一応伏せてはいるが4人の1番の疑問だっただろう。

 

「なぁ大将、なんでアンタそんなに微睡んでるんだ?この国のどこかでドシリアスが起こってる中?」

「あったけぇ……」

「聞けよ、物理的に爆発させるぞ」

「………………ほら、箸休め的な?皆がシリアスするのなれば私は癒し担当で」

「さっさとシリアスモードに突入してくれよ大将」

 

 ブツブツ文句を言うMr.5を恨めしく思いながらリィンは説明する。

 

「いいです?今私達に出来る事は少なきです」

「は、それがなんの関係に」

「ここはあくまで他国。自ら関わる町や地域では無きです。そして私は元海軍兵、海軍は元々国家に対するして不用意に踏み入るしてはならないのです」

「……」

 

 辞めたのなら関わってもいいじゃないか。

 そう言おうとしたがMr.5は口を噤む。

 

 彼女は今も大将だと伝えられた、それは敵である自分たちに対してだ。

 その信頼に応えるには麦わらの一味や王女、その他諸々に悟られてはいけない、と察するにはこの航海の間、充分過ぎる程時間があった。

 

 Mr.5。BW組の中で1番頭が回る男の様。

 

「キミ達は海軍に入るする身。同じ事が言う可能です」

「う……ま、それは」

「そしてアラバスタの王女が関わるも不味いです。それはもはや国家問題。内乱で揉めるしてるアラバスタにとってこれ以上に無き痛手とやらです」

「……大将、悪かった。アンタも色々考えてたんだな」

 

 納得できる理由を上げられて素直に頭を下げる。微睡んでるのはあくまでもビビや自分たちの責任感を忘れさせる為か、とも()()()して

 

「まぁ!私は海軍辞めるしてますし?キミらもまだ入る前ですし?ビビ様は亡命中ですし?別に関わるしてもよろしきですし?さらに言うなればワポルは海賊の旗を掲げるした時点で住民票から名前が削除されるが故、国王でも何でも無いから意味の無きですぞね!!!」

「おい」

 

 真剣そうな顔から一変、いつものドヤ顔で告げられ一瞬でも尊敬した自分をぶん殴りたいと心から思った。

 それと同時に目の前のドヤ顔も。

 

 耐えろ、仮にも上司となる人間。そして何より年下だ。と暗示のようにブツブツ呟く。

 

「寒き故に出たくないぞ〜〜」

「殴るぞ」

 

 しかし限界だったらしい。思わず口からぽろりと本音がこぼれ出た。

 

「カリカリするなぞ、お菓子食べる?」

「どこから出してきたんだ、おい。お前はどこでも貯蔵庫か」

「惜しい、ドアでは無きか!」

「意味が分からん!」

「まぁまぁMr.5…リィンちゃんって昔から突拍子も無い人だから言っても今更よ?」

「っくぅ!こいつは、大将は突拍子も無いことをしてていい立場じゃ……!(大将って立場なら突拍子も無い事はしてられないだろ!)」

 

 言いたいけど言えないジレンマがMr.5を苦しめる。その気持ち、ここにいる王女は察せれない。

 代わりにBW組は察しているので後で存分に慰めて貰え。

 

「優しきねぇ〜…」

「は?」

「Mr.5が味方になるしてくれて嬉しきぞ。ありがとう」

「…………お前は本当に突拍子も無いな」

 

「BW組」

 

 リィンはにこりと微笑んだ。

 

「いずれ本当に大将と認めてくれたのなら、その時に君達の本当の名を、教えて」

「「「「…………。」」」」

 

 BW組はお互いに顔を見合わせる。

 確かに無理やり部下になると言われて混乱したまま了承はした。そして呼び合う名はコードネームや渾名だ。

 

 きっと、その名を教える時が本当に部下になる時だろう。真っ直ぐに見つめる目は、元犯罪者としてむず痒くもあり、その信頼が小っ恥ずかしかった。

 

「は…!これぞまさに『君の名は。』ぞ!」

「ほんっっっとにいい加減にしてくれ!!!!」

 

 照れを怒りで誤魔化して、Mr.9が代表して叫ぶ。

 

 頑張れBW組、君達が1番の苦労人かもしれない。

 

「ところでアンタ達はなんで大将なんて面白い呼び方してんだい」

「「「「「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛」」」」」

 

 Dr.くれはの指摘に思わず態とらしい咳払いをした。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 外で冷たい風を浴びながらシリアス真っ最中の彼らは作戦に移った。

 

 作戦は至ってシンプル。

 いかに視線を自分達に向けさせ、チョッパーを雪に紛れ込ませるか、だ。

 そしてその隙にチョッパーがランブルボールという物を使ってワポルに攻撃を仕掛けるらしい。そのランブルボールが何なのか分からないままだが時間が無いのも危機的状況なのも変わらないので従う事にした。

 

「〝ギア3(サード)〟」

 

 ルフィは出惜しみ無く、全力で目立った。

 

 しかし彼が作戦を理解など出来るはずが無い。そこはウソップの策があってこそだ。

 言葉はたった一言『威嚇してみろ』

 

 どこの野生動物だ、と叫びたくなったが結果は上々。

 周囲の人間は全てルフィの巨体に釘付けになった。

 

「っ!?」

 

 ……作戦の要であるチョッパーまでも。

 

「うおおおおおおおっっっ!!」

 ルフィは大声で叫ぶ。

 ピリピリと肌が震えた。

 

 ウソップは動けないでいるチョッパーの正気を戻す為に、敢えてルフィに向かって鉛玉を飛ばしたのだった。

 

「くそ……暴走シチマッタノカ…っ!」

「ぼ、暴走!?アイツ暴走するのか!?」

「あ、これもダメだ失敗した」

 

 暴走した、と言ってチョッパーの意識を逸らそうとしたのに更に引きつける事となって頭を抱えるウソップ。

 

 上手くいかない、世の中考えた通りにはなかなかいかないものだと悟る。

 

「ルフィ!そのままぶっ飛ばしちゃって!」

 

 次の作戦はどうしようか、と頭を捻らせるその時。高い女の声が耳に入ってきた。

 

「よし!分かった!〝ゴムゴムの……〟」

「うええええ!?なんでナミが人質に取られてねぇの!?!?」

「そんなのさっきの間に逃げ出したわよ!」

「俺たちの苦労は!?」

 

「〝巨人銃(ギガントピストル)〟!」

 

 あーだこーだと文句を言っている内にルフィは雪を抉るように攻撃を放った。

 あれれー、もしかして役立たずでした?

 

 サンジも、ウソップも、そしてチョッパーも。この規格外を前にして何も言えなくなった。

 

「うし!終わり!なんだ、予想以上に弱かったな!」

 

 ビタンっとゴム特有の縮む音がして、小さくなってしまった船長がどさどさと舞い落ちた雪の中から現れる。

 完璧に絶句。

 

 

 

 

 こうなった原因は?と、誰かに問われれば。麦わらの一味は口を揃えて言うだろう。

 

 『悪知恵仕込んだリィンのせい!』と。




ドシリアス君どこですか。

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