元ドラム王国の雪がシンシンと降り積もるある港、つい数刻前元国王ワポルが倒されて国中が浮かれる中。心躍るイベントがあった────。
「ドキッ♡海賊だらけのバレンタイン〜気になるあの子のチョコはどれ〜を開催するぞ!」
バッ!と黒いマントをはためかせて高笑いするのは麦わらの一味の賞金首〝堕天使〟リィン。どこかで見た光景だ。
「いきなり集めたと思ったらなんだよ」
「それ、面白いのか?」
首を傾げる狙撃手ウソップと新しく仲間に入ったチョッパーが疑問を投げかける。
「スッゲェ逃げ出してえ」
「え?嫌です?バレンタインですぞ?」
「節分で豆を的確かつ急所にぶち当ててくるお前の企画程嫌なものはない!」
───バレンタイン。
それは好きな人に女の人からはチョコ、男の人からはバラが贈られてくるリア充のイベント。
「興味ねぇ」
チッ、と不機嫌そうな顔をするのは剣士のゾロ。そして隣でそれに同意する様に頷くのはBW組と呼ばれるMr.5だった。
「大将…あんた今度は何考えてるんだ?」
呆れた目を向けるのは同じくBW組のMr.9。
ゲームにノリノリだった七武海とは大違いだと内心思いながらリィンはルールを続けだした。
「私達女の人達でバレンタインのチョコを作成したです。どうぞ食べて下さいです」
「へぇ〜!麗しいレディ達の!」
その説明に目を輝かせるのはキッチンから追い出されていたコック、サンジ。
筆頭であるリィンに続き、オレンジの髪を纏うナイスバディのナミ。そして清楚ナンバーワンの王女ビビ。BW組からはミス・バレンタインとミス・マンデーが腕を振るっていた。
「ただき!」
「ただし、ね」
「ただし!当たり外れがござります!」
ミス・バレンタインの訂正をさり気なく交わしながら爆弾発言を落とした。
「なんだ?ナミ、料理苦手なのか?」
「失礼よルフィ」
船長〝麦わら〟のルフィの言葉に反論したのはナミだ。
腰に手を当ててプリプリ怒っている。
「ちなみにハズレは?」
「私の料理」
「えっ」
ウソップの言葉にいち早く答えたのはリィン。
グッ、とサムズアップするとウソップは引きつった笑いを浮かべた。
「何入れた」
「至って普通を作るしていたですが……。自覚ある料理オンチです夜露死苦」
「ぐぇええ……」
「『見た目は普通なのに味が異様だった』ってカルーが言ってるぞ」
動物は嘘をつかない。というフレーズが頭に浮かんだ。認めたくないが味が酷いらしい。
「幼き頃はもっとまともですた」
しみじみと呟く。
あの時は吹き出す程度だった、と小さく聞こえてしまったMr.5が青ざめる。
……なら今はどのレベルなんだ、と。
「オカン!例の物を」
「大将あんたクロコダイル戦前だからってテンション狂わせてんのかい?」
ミス・マンデーがガラガラとカートを引きながら現れた。そのカートの上には艶やかなチョコが数々用意されている。
見た目は普通。むしろ逆に良いと思う物ばかりだった。その分不安が大き過ぎるが。
「んっまそぉぉ〜!これ、食っていいのか?」
「えぇ、いいわルフィさん」
「ただし一つずつよ」
ルフィは大きめのフォンダンショコラを選んでいく。この男、質や味より量を選ぶ男だった。
「んめぇえええ!」
「なんだと!?」
「くそ…これでハズレを引く確率が…!」
残るチョコは七つ。六つが当たりで一つがハズレだろう。
「なんだよ、ハズレって言っても所詮チョコだろ」
ヒョイっとゾロがトリュフを口に放り込む。
──バタン
すると突然眠る様に倒れたのだった。
「「「「!?」」」」
一同はギョッとする。
あのゾロが?
筋肉バカがチョコを食べて倒れただと!?
「あ、大ハズレ〜〜!」
カランカランっ!と鐘を鳴らすリィン。
「お前何入れた!!!!」
「至って普通と申し給うたですぞ!」
「お前は魔法みたいなのを生み出せる代わりに劇物を生み出せる様になっちまったのか!?」
「きっとそうに違いなきですぞ!」
「作り方は…!おかしくないのに……ッ!」
ミス・バレンタインが膝から崩れ落ちる様に座り込んだ。おかしい、何かがおかしい。こんなのがバレンタインと認めていいものか?いや、認めていいわけがない。
「ま、ロロノアが食ってくれたお陰で他は安全だろ。お、レモンチョコ。これはミス・バレンタインで───」
レモンピールにチョコが掛かってあるのを手に取ったMr.5。シンプルだし特徴もあるので目敏く見つけ出したのだった。
ホイッ、と口に入れると「ごブッ…」……何故か変な音を発生させて倒れ込んだ。口からは泡が出てる。嵌められた、だと……!?
「リ、リィンさぁぁ〜……ん」
恐る恐るMr.9が女子勢を見ると祈るリィンと目を背ける4人がいる。
「大将、何を祈ってる」
「ん?どうかサンジさんに私のチョコが当たりませぬように、と」
「まだあるのか!?アレか!?四つ当たりで三つハズレだったのか!?」
流石BW組のMr.ツッコミ。
現実逃避をやめて叫ぶようにツッコミを入れた。
「お゛で…じぬ゛の゛がな゛!?」
「やめてやれよ堕天使ィィ! 悪魔ァァア! 新加入のチョッパーが可哀想だろォォ!?」
「……………私、可愛いとか、知らぬので」
「冷血女ぁぁあ!」
「私が恐れるは権力と武力とナミさんのみぞ!」
「最後で台無しだよ!」
ウソップが泣き出すチョッパーを抱きしめる。
なんとも演技がかった様に見える為、リィンが冷めた目をしていた。最も、チョッパーは本気で泣いていた様だが。
「…………俺が行こう」
「ッ、サンジ!?おま、お前死ぬ気か!?」
「レディの作った食べ物……全部食べるのが紳士であり、コックの役目、だ……!例え、例えこの身は滅ぼうとも───」
「お前……漢だぜ……輝いてるよ」
「───俺はレディを愛してる!いただきます!」
摘んだチョコを見てリィンが『あっ』と口だけ動かした。
───バターンッ!
「「「………………」」」
「ニセキング」
「なんだウソップ」
「……残り物には福があるんだな」
「今生きてる幸せに、乾杯」
バレンタイン。それは悪夢を見る日。
この日、3人の男がチョコに襲われる夢を見た。
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「ところでお前はなんでこんな事し始めた?」
「あぁ、私の家(と言うかガープ中将の部屋)にバラが大量に届くしたと連絡をいただきますて」
「え?お前はモテんの?」
「恐らく勧誘、毎年恒例。そしてですな、部屋が埋め尽くされるした様子ですたので今度チョコを贈ろうかと」
「分かった!要は大嫌いで迷惑で俺達は実験体だったんだな!?」
「ビビ様と
ふ…誰がラブラブな番外編を書くとでも!?
yes非リアnoリア充!
身近な人間がバレンタインを期に付き合い始めたとか全然気にしてないもんね!!!