2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第106話 押してダメなら更に押せ

 

「チョッパー仲間になってくれ!」

「……俺はトナカイだぞ!?」

「それがどうしたコノヤロウ!ウチの船にはカルーがいる。それにニセキングが乗ってるんだぞ!?」

「俺がオチか?俺がオチなのか?何でだ麦わら!」

 

 ルフィがドルトンさんの家でチョッパー君を勧誘しており、それにMr.9が巻き込まれる。

 ご愁傷様。

 

「その、ところで本当に新しい国の申請をしてもいいのか?私は国で無くても……」

「シッ…! ダメですよここが国じゃないと。黒ひげに1度滅ぼされた国は完璧に新たな国として生まれ変わるです。そうでなければ責任問題が生ずるですので従うして下さい」

「……ありがとう、ございます」

 

 ドルトンさんがこっそり頭を下げる。

 

 ワポルが島から逃げ出して海賊船に乗っている現状(どうやらルフィ達は殺しはしなかった様)で、その証拠に『下剋上した国』というのが必要になってくる。『ワポルの国民』は要らない。国民さえ居なければ国じゃない。

 『攻撃を仕掛けるなど言語道断!』なーんて言われる前にワポルを国王の分類から外しておきたい。

 

「こちらこそありがとうです。彼らを預かるしていただき」

 

 BW組の四人は海軍の船、迎えが来るまでドルトンさんの家に置いていける事となった。

 アンラッキーズは今飛ばしてるから居ないけどこの4人はBW戦や国関連に巻き込めれない。

 

 

 ……私が見た予知夢が正夢であれば。ボス(笑)とは戦場で会うことになる、かもしれない。

 

「あ、BW組ごめん配慮が足りぬですた。頑張って戦争前に実力付けるして、七武海に負けぬよう」

「タイショー?何か言った?」

「何事もー!」

 

 にーーっと笑って誤魔化そう作戦。訝しげな目を向けるでないわ!

 

 

「なぁチョッパー!仲間になってくれよぉ〜!」

「なんで俺にこだわるんだ!」

「だってチョッパーは医者だ!それに面白いからな!」

 

 にっしっし!と笑ってルフィが告げる。

 腕がグルングルンにチョッパー君に巻きついてる。不憫な……。

 

「ドクトリーヌぅぅぅ」

 

 助けてくれと懇願した目をDr.くれはに向けるが彼女は鬼だった。

 

「行っておいでよバカ息子」

「う、裏切ったな!」

「なぁに言ってんだ、テメェのケツくらいテメェで拭けるようになってから言いな!」

 

 豪快に笑う姿を見てどこかホッとする。

 よきかなよきかな、私の簡易盾ゲットだぜ。

 

「な、チョッパー!」

「う……わ、分かったよ」

「よっしゃぁあ!リー!宴だ!」

「嫌だぞ、ご飯なくなる」

「ケチ臭いこと言うなって!」

 

 でも船医が仲間になってくれて良かった。

 物理的な怪我だけじゃなくて海には変な病気とかいっぱいあるから管理栄養士(サンジ様)と協力して健康な体を保ってほしい。自分もだけど主に王族の。

 

「ところで…えっとドクトリーヌ」

「若さの秘訣かい?」

「聞いてないわ」

 

 締め付けられたらしい首元に包帯を巻き終わったナミさんがDr.くれはに声をかけた。

 

「あのワポルが住んでた城って──宝物庫、ある?」

「流石ナミさんがめつい目敏いそこに憧れぬ痺れぬ」

「リィン…そんなに私の事が好きなのね!」

「あ、ダメだ。この人最近まことにダメぞ」

 

 ナミさんの脳みそは多分都合のいい言葉しか入らない残念美人さんだ。

 嫌だわぁ、嫌いじゃないんだけど嫌だわぁ。

 

「確か武器庫くらいしか無かったよ」

「そんな……!」

 

 ブツブツと文句を言い始めた。

 

「鍵なら全部スったって言うのに…宝物庫がないなら意味が無いじゃない……!」

 

 おい。我が身ピンチの状態で貴様何しとんじゃい。

 

「本当かい?」

「何、疑う?本当よ。私、一番ワポルに近かったから。スったの」

 

 懐から取り出した鍵を見てつけるとドヤ顔した。私にもついでにチラチラ目を向けてくるのでガン無視する。

 

「レモンちゃん今日もいい天気ぞねー!」

「あの、タイショー?ナミがずっと見てるけど」

「いい天気ぞねー!」

「…………そうね」

 

 諦めた様だ。

 つーか大体鍵をスらなくても開ける限定で出来るんだけどな。私が。

 

「チョッパー、あんたは荷物取りに行きな。それとドルトン、野郎共適当に借りていくよ」

「一体何を?」

「ヒッヒッヒ…ロープウェイ直しと色々さね」

 

 怪しげに微笑むと出て行こうとするドクター。

 あんまり接点なかったしこれといって情は無いけど足であるチョッパー君を私たちに引き渡す事になった原因は私だよなぁー…。

 

「あ、良ければ海軍が来るまで男手ウチから使うしてください。多分役に立つです──オカンが特に」

「男じゃない、オカンは男手って、言わない」

「はっ!貴様ら如きが偉大なるオカンに敵うとでも思うしてか!?笑止!!」

「ぐぅ、正論……!じゃねぇだろ!力はあったとしてもオカンは女だ!」

 

 すかさずツッコミを入れたのはBW組のツッコミMr.9、ニセキングでもツッコミの腕はそれなりにあるってのか…!

 でもウソップさんには敵わないだろう。

 

 そうだ今度からウソップさんの事Mr.ツッコミ魂と呼ぼう!

 

「助かるねぇ、アンタの手足かい?」

「ん?違うですよ?計画的な作戦に敵側の生存者がいるなれば情報リークが怖いではありませぬか。要は監視させるぞー!という事です」

「随分怖い嬢ちゃんだね」

「ハハハー…自己保身能力が高いと言うしてください」

 

 Dr.くれはの視線が痛いでござる。

 流石に年の甲や経験には及ばないってことだな。

 

 そういうことにしておいてあげるよ、と言われて焦ったけどDr.くれはとチョッパー君は外へ出て行った。

 

「なんだ、俺たちはあんたの手足じゃムグッ!」

「お前ばかだろ」

「ムー!ムー!」

 

 やや不貞腐れた顔をしてMr.9が言おうとした言葉をMr.5が急いで塞ぐ。

 ふーむ…やはりMr.5は頭が良い。それに反して柔軟な発想は出来ないみたいだけど。

 

 建前として私がBW組を海軍に入れるのは『邪魔者を監視下に入れる』ということ。だから海軍の裏切り者である私が今後海軍に引き渡される4人と接点があると思われては私が海軍のスパイだとバレる。

 あくまで私=大将女狐だと知ってるのはBW組とドルトンさん。て言ってもBW組はドルトンさんが知ってるのは知らないと思うから4人の中だけの認識になってる、筈。

 

「つーかBW組の4人は海兵になるんだったな」

「おう、忘れてたな!海賊かと思ってた!」

 

 ウソップさんに続きルフィが疑問を投げると苦笑いをしながらBW組が答える。

 

「まぁ、一応約束だしな」

「仕方ないわよ、これでも犯罪組織の幹部よ?」

「敵同士になっちまうのか……うーん…」

 

「海賊だろうと賞金稼ぎだろうと海兵だろうと大将の隙あらばサボる癖と麦わらの一味の今後は心配するけどね」

「「「わかる」」」

 

 オカン…………。私泣くよ?

 

「私よりサボる癖ぞ多き人いるのですが、向こう」

「いいかい大将。あんたのは表立ってサボらない。さり気なくサボる真面目系クズの思考回路だよ」

「ぐ……的を射ているぞ」

 

 確かに凄くサボりたい。本来なら私は努力は大嫌いなんだ…でも、でも生き延びるためには逃げることに全力を出さないと……!

 うう…やはり七武海嫌いでござる。ついでに私に仕事を回してくるジジとクザンさんも嫌いでござる。

 後全体的に熱血漢のサカズキさんも苦手でござる。私の癒しはリノ様とおつる様だけよ。

 

 あ?センゴクさんはなんか別物。文句言うとかのレベルじゃない…無茶をたくさん申してすまぬ…すまぬ…。昔七武海を見習ってジジィと仲良くしてとか思ってすまぬ…。あれは無理だわ。もうセンゴクさんまじ仏。仏の名に相応しい…。こうやって自由に潜入してるのもセンゴクさんの計らいあってだもんな……。

 

 だがしかし!海賊大お掃除大会だけはいただけなかった…!もっと違う方法が嬉しかったな!

 

「チョッパーは戦えるのか?」

「知らぬ、本人に聞くが良き」

「まぁどっちでもいいさ!俺はあいつが気に入ったんだ!」

「一体どこを……?」

「怒りながら怪我治す所!ビクビクーってしてたのに怒るんだぞ?にっしっし!イイヤツだよな!」

 

 ルフィは本当に時々本質を見抜く。

 カッコイイのやらカッコ悪いのやら。

 

 新しい仲間という事で話に花が咲いた。サンジ様曰く戦える術は持ってるかもしれない、とか ゾロさん曰く治療中は見た目と違って思ったより怖い、とか。

 

「船医も手に入れたし後はビビの国だな〜!」

「えぇ…そうね。でも指針が無いからアラバスタまでどう行こうかしら…」

 

 ビビ様が不安げに呟く。

 

「その心配はもう少しで解決するです」

 

 私は窓の外を眺めながら笑いかけた。

 

「え、アンラッキーズ?」

 

 丁度いいタイミングでお使いに行っていたアンラッキーズが戻ってきた。ビブルカードを持たせていたから迷わずこの国まで来れたみたい。

 ドルトンさんに許可を得て窓を開け中に入れるとアンラッキーズはビクビクしながら首に下げている袋を差し出そうとした。

 

「ん、上出来」

「「…!」」

 

 言葉が喋れないからと言って意思疎通が出来ないわけじゃない。アンラッキーズは敬礼ポーズをした後すぐにMr.5の所に逃げた。全く、失礼じゃないか。

 

「それは…?」

 

 暗い緑の袋を開けようとすると横からビビ様、正面からルフィが覗き込む。

 

「──アラバスタへの永久指針(エターナルポース)

 

 見せつける様にコンパスを握るとポカンとした全員が顔になった。

 

「なんというか……便利ね」

「便利だな」

「すごく便利だ」

「言いたい気持ちは分かるけどもうちょっと言葉を選ぶべきだと思うわ。その……───ごめんなさい便利だわ」

 

 ビビ様がフォローに入ろうとしたけど無理そうで頭を皆に下げた。私はドラえもんかよ。

 

「皆さんはこれから一体何をするつもりなんですか…」

 

 今この場で唯一状況が分からないドルトンさんが思案顔をする。

 

「一人の男を、落とすです」

「はぁ…、そう、ですか」

「大将、その言い方に誤解が生まれるね」

「言語学習のみは勘弁、勘弁を…!」

 

 おつるさんのお勉強会(恐怖)はもうしたくない。

 

 

「も、戻ったぞ!」

 

 幼い男の子のような声が聞こえて視線を向けるとチョッパー君が居た。

 速いな、随分と。荷物が少なくて準備がすぐに終わったのかそれとも走る速度が速いのか。はたまた両方か。

 まぁ、どちらでも良いけど。

 

「ドクトリーヌは降りてこないって言ってた」

「そうですか……」

「んん!よし!なら出航だな」

 

 ルフィがそう判断を下すと全員が荷物をまとめ立ち上がる。ドルトンさんやBW組だけが不満そうな顔をした。

 

「今は夜中です。危険なのでは?」

「追手を撒くは充分です、そして結構時間がキチキチ故に。──クロコダイルは舐めるしてかかるとこちらが痛手を見る」

 

 あぁ、そうさ。いくらフレンドリーでもロリコンでも海賊サー・クロコダイルは海のヒエラルキーの頂点付近に立っている。海の強者だ。

 雑魚とかのレベルじゃない。どう考えてもルフィより強い。

 

 覇気が使えなくても、片手が無くても、アラバスタはあちらのホーム。敵地。

 

 

 胃が、痛くなってきた。

 

「裏の裏をかくせねば…恐らく負ける」

「キミ達は七武海を相手に…っ!」

「幼馴染みであり王族であり友人でもあるお方のお願いです故、全力ですよ」

 

 皮肉を込めて言う。

 私1人ならアラバスタくらい見捨てた。傍観しながら『わー、アラバスタ大変だなー』とか『ひゃー!クロさん王族になったのか!ドフィさんとお揃いだな!』とか思ってた。

 

 どっちみち胃を痛めるけど。

 

「リィンちゃん……私、貴女に会えて本当に良かった!手伝ってくれてありがとう!」

「………いえ、どう致すまして」

 

 忘れてたな、王族って天然が多いんだった。

 

「流石私のリィンね!」

「あ、私の所有者は私のみですのでお断りです」

「そんな…こんなに愛してるのに!?」

「愛でお腹が満杯になるとでも?」

「うぅ…でもそこが可愛いから許すわ!」

「アハハーアリガトウゴザイマスー」

 

 ナミさんってもうそろそろ寿命が無くてもおかしくないと思うんですけど神様どうにかなりませんかね。

 

「うっし、家、貸してくれてありがとな!」

「まことにありがとうござりました」

 

 ルフィが手を振りながらお礼を言い、私は頭を下げる。

 

「あ、そうだ!なぁお前!この国のウサギは食べ物を分けると色んな事手伝ってくれるぞ!」

 

 チョッパー君が何かの助言をして家を出る。

 

 村人の人達がわぁわぁと騒ぐ中船へ向かっているとチョッパー君はポツリと呟いた。

 

「俺の尊敬する人、海賊の旗には不可能を可能にするって言ってたんだ」

「あのドクロに、です?」

「うん。ドクターが死ぬ前に30年間の研究も完成させた。凄い人なんだ」

「へぇ〜…」

「でも、ちょっと思うんだ。本当はそう言わないまま死んだら俺が悲しむから嘘を言ったんじゃ…って」

 

 30年間の研究ねぇ。長いような短い様な。

 何を成し遂げる為に研究をしてたのか私の様な部外者には分からないけど努力家だったんだろうな。

 

 

 そんな時だった。

 

 

───ドゥンッ! ドォンッ!ドンッ!ドドゥン!

 

 聞きなれた、大砲の音。

 城があると言っていた直立の山からだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が灯るとそれは幻想的な1本の桜。

 

 ドクターの研究は完成していたんだ!

 大きな声で泣くチョッパー君を抱えながら私は前世からの記憶にも薄らと残っているその桜を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 みんなが綺麗だと泣く中、場違いにも環境問題とか考えながら。

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──数日前、ロベールの街

 

 

「なぁそこの兄ちゃん」

「ん?どうした…?」

「黒ひげがどこにいるか知んねぇか?」

「いや…海に出てからの行方は全く分かんねぇな……すまねぇ力になれなくて」

「あぁ、いや、いいんだ。どうせ本命はこっちだし」

「ん?手配書?」

「ここにこの2人が来たら伝言伝えてくんねぇか?おれはアラバスタで1ヶ月間待つって」

「長ェよい」

「いいじゃねぇか。会えるだけ会っとかないと──じゃ、よろしく頼むぜ」

「お、おい!あんたら名前は!」

「っと、そりゃそうだ!──俺の名は〝エース〟 2人にそう言ってくれたらわかるだろうよ」

「さっさと行くよい」

「おう、分かってるってマルコ」

 

 

 

 

 

「もう弟妹に会えたら黒ひげとかどうでもいい」

「ぶん殴られたいかエース」

 




ついにアラバスタへ向けて。

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