2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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訳:リィンさんもうそろそろ疲れました


第113話 狐、その尾を濡らす

 

 

「うそ…だろ……」

 

 ユバに行けば反乱軍に会える。

 そう一番信じてたのは反乱軍にスパイを送っていた革命軍のサボだった。

 

「人が居ない……」

 

 想像と違う枯れ果てたオアシスの様子に、ビビ様も声を震わせた。

 

 

 

 

 夜中にやっとユバに着いた時、ユバは砂嵐に襲われていた。慌てて町を確認しても元から人が住んでいる様子は全く見られず、思わず皆呆然とした。

 

「どうしてだ…確かに、連絡は」

 

 信じられないとサボが首を振る。

 一度、確認していたのだ。反乱軍はユバに居ると。だからこそここまで歩いてここまでやって来たというのにこの有様。

 

「くっそ…計画が漏れた……一体どこからだ」

「ひとまず現状確認と休息場所確保優先!……参謀総長君もしっかりして、ほら動くよ」

 

 コアラさんが指示を出して皆で町を調べる事になった。

 正しい判断なので特に反論が出る事は無い。

 

「旅の人かね?」

 

 少しだけ歩くと誰かの声が聞こえた。

 

「この町は少々枯れている、だが宿は沢山あるのでな。ゆっくり休んでいくといい」

 

 話によれば三年前から砂嵐が頻繁に訪れる様になって物資の流通は途絶え、持久戦もままならなくなって反乱軍は場所を移したらしい。

 

「カトレア!?」

「カトレア…確かナノハナの隣だったな」

「あぁ〜〜っ!くそ、何の為にここまで歩いて」

 

 悔しそうな声が所々から聞こえる。

 

「あああああ!くやしい!クロコダイルに出し抜かれるは最っっっ高に悔しいぞ!」

 

 思わず頭を抱えると砂掘りをしていたおじさんは私の顔をじっと見始めた。

 

「ビビちゃんの幼馴染みの…海兵さんか?」

「ふぉうい!?」

「え…!?」

「あーいや、すまん。そうじゃ、知らんだろうな。私は世界会議に行く王族を見送ってたただの通行人だからな」

「……雑用さーん…その話聞いてねぇんだが?おい、こっちを向け駄狐どういう事だ世界会議(レヴェリー)って」

「………………人の事を言えぬのでは」

 

 つーか雑用参加で良かった。思ったより顔知られてんのか私。マジか、マジか。

 

「……もしかしてトトおじさん…!?」

 

 バサッとマントを脱いでビビ様が詰め寄る。

 

「なんと…!ビビちゃん、生きていたか!良かった、本当によかった!」

「こんなに痩せてしまって…」

「私はね、ビビちゃん。国王様を信じてるよ…!あの馬鹿共を止めてくれ!キミしか居ないんだ…!」

 

 泣き叫ぶトトさん。

 思わず黙る周囲。

 

 そんな中空気を読まなかった者…それはイッツミー!リィンチャン!なんだか中国人みたいな名前だな!『リィン・チャン』って。

 

「はい、ということで休憩!」

「空気を読めよ!」

「空気を読んで時間が早まるとでも?その間にBWの作戦は進む。こちらの、多分革命軍の存在ばバレるしてる以上対策は打たれるぞ」

「なんだよそれ」

 

 ウソップさんの狼狽える声に仕方ない、と説明をする。

 

 反乱軍に革命軍のスパイを入れた。そしてそのスパイの情報を頼りに革命軍はここまで来た。

 その情報が嘘だと言うならば、情報をリーク。そして改ざんされた。

 

「──よって、奴さんには革命軍が存在すてるのがバレてるですな、確実に」

 

 言語解読レベルが高いウソップさんなら私の言葉など簡単に読み取れるはず。

 

「や、ヤバイじゃねぇか…」

 

 だから作戦練り直すっつってんの。正直突っ立ってるだけじゃ時間も体力も削られるからな。

 私は疲れた。歩いちゃないが疲れてんだ。

 

「トトおじさん安心して…私には頼りになる仲間が付いてる。絶対止めるから!」

 

 ビビ様は安心されせる様にニコリと笑う。

 

 3年間も頻繁に訪れる砂嵐…絶対人為的に決まってる。どうしてもここからオアシスを消し去りたかったのかクロコダイル。それとも反乱軍をアルバーナに近づけたかったのか?

 将又両方か。

 

「はぁ……大変だ」

 

 こっそり愚痴をこぼした。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「はい、じゃあ寝る前に作戦会議ー」

 

 おー!と握り拳を上げるコアラさん。つられてビビ様も小さく上げた。

 

「まず現状から確認出来る事を整理するです」

 

 私が作戦会議の幹事、らしい。

 まぁここにある縁は全て私を介して繋がっているようなものだし適材適所って所か。

 

 とりあえず会議内容を箇条書きにまとめる。

 ・スパイの偽情報

 ・今後の行動

 ・反乱軍をどうするか

 ・クロコダイルをどうするか

 ・海兵をどうするか

 ・BWの狙い

 

「まず革命軍の存在がバレたな」

 

 サボが最初に言う。

 

「そんなに不味いことなの?そりゃ無駄足を踏んじゃったけど……私にはちょっと理解出来ないわ」

「そうだなぁ、わかりやすく言うと……。元々BWにとって敵は国王軍くらいだった筈。なのに革命軍が味方に付いた、もしくは探ってると思われちゃうと警戒が強くなるの」

「なるほど…」

「──想い人のライバルは1人だけと思ってたのに何処の馬の骨とも分からない人が狙っていたらそばに居るとか警戒心を高めるでしょ?」

「あ、とってもわかりやすい」

 

 ナミさんが首を傾げるとコアラさんが嫌な顔せずに答えてくれた。わかりやすい例題付きで。

 頭良い人強い。

 

「しかしバレたなればバレた。麦わらの一味死亡説はほぼ無しと思うしても仕方なしです」

「じゃあミス・オールサンデーに口止めしたのって」

「無駄ですね」

 

 ここにきて交渉が無駄になった。まぁあの時戦闘になればどうなったか分からないしどっちもどっちだなぁ。

 

「オールサンデーにあったのか」

「うんニコ・ロビンですたよ」

 

 私がそう言えばサボは頭を押さえた。頭痛い?大丈夫?まだ辛いなら寝てる?

 

「お前…本当に何か引き寄せてんのか?革命の灯火じゃねぇかよ…」

 

 革命の灯火???

 コアラさんにヘルプを頼むと苦笑いで答えてくれた。

 

「ニコ・ロビンの生い立ちは革命軍にとって灯火なの。だから革命の灯火」

「あー…アレか」

「そう、アレ」

 

 当時中将のサカズキさんとクザンさんがバスターコールしたって奴ね。聞きましたよ、本人から。

 

「話が逸れてる。戻すぞ」

「うっす」

「とりあえず死亡説?ってのが使えない以上多少目立っても仕方ない。でも麦わらの一味だとバレてな…あー…絶対バレてるな」

「そうなのか?」

「えーっと、聞いた話によれば幹部脅して偽情報渡したんだろ。そのタイミングなら疑われるな」

 

 そして王女の幼馴染みのリィンがいる海賊、か。

 確実に疑われますわな!!

 

「でも違和感」

「ん?」

「革命軍は本当にクロコダイルにバレるした?」

「………どういう事だ?」

 

 おかしいんだ。詰めが甘いクロさんが第三勢力に気付くか?

 例えばMr.2や3辺りに化けて『麦わらの一味殺しましたよ』って言ったら信じそうなマヌケさんがだよ?

 私とドフィさん合作のホワイトデードッキリに気付かなくてスルーした鈍感な人だよ?

 たった1人の海兵に油断して小さくなっちゃったスキだらけの鰐さんだよ?

 

 気付くかなぁ…。作戦の大1番って時に作戦以外の事に頭が回るかなぁ。

 

「まぁクロコダイルでなくともニコ・ロビン辺りならば気付く可能性大。あれは同じ匂い、狐の匂い」

「同族嫌悪か」

「敵だと嫌ですなってくらいの嫌悪」

「かなりだろ、それ」

 

 本気の敵に回りたくない人だ。たった数分の会話だけで気力を全て持ってかれたからな。

 

 

「ま、こいつはただの確認事項として。本題はこっからだ」

「まず反乱軍の説得をどうするか」

 

 私が反乱軍の情報について分かってることを発表する。構成人数は大体100万、だけど革命軍側の情報であって信憑性は薄いからもっとあるだろう。率いるのはコーザ、そして幹部にファラフラ エリック ケビ おかめ ナットーって所か。

 

「砂砂団…」

「リーダーのコーザとは砂砂団のリーダー。ビビ様や私の幼馴染みですね、ですが私はほとんど関わりなし。知り合いレベルと予想」

 

 やはりここはビビ様の説得が必要不可欠という話になった。そして1刻1秒を争う。

 

「幸い、姫さんは国民に好かれてる」

「………私が、説得してみせるわ」

 

 ビビ様は強く意気込んだ。

 

「足が必要なら俺が運ぶよい?」

 

 ニヤリと笑ってマルコさんが申し出る。

 有難い、とても。

 

「あ、なら私も連れてって」

 

 便乗、とコアラさんが手を上げる。

 

「サボ…う総長君はハックと合流しないといけないしスパイの革命軍とコンタクトを取れる私が行った方が早く済む」

 

 海賊だけに任せるのはプライドも関わるし、と軽い調子で笑って見せた。

 

「麦わらの一味も誰か1人くらいついて行って欲しいが、こちらも革命軍としてコアラは譲れないから明日から姫さんと別行動して欲しい」

 

 ビビ様が若干不安そうだけどコアラさんのフレンドリーさがあれば多分大丈夫だろう。お互い信用しきるのは危険だけど程よい協力関係を結べる筈。

 

「次はクロコダイル」

「俺はぶっ飛ばすぞ?」

「分かるしてる、問題はその方法」

 

 ルフィがシャドーボクシングをしながら首を傾げる。思わず呆れるよ。その為の話し合いだってのに。

 

「大元叩かにゃ解決はしねぇな」

 

 ゾロさんは布団に寝転がりながら告げる。

 

「クロコダイルは現在レインベースのカジノの中、との情報。作戦決行によって場所は変わると思う故に確定は無きですが」

 

 この情報はビビ様や革命軍だけじゃない。市民による情報もあるから経営してるのは本当だろう。

 

「時間も無いんだろ?」

「ま、まぁ。そりゃ」

「ならよ、正面突破作戦でいこーぜ」

 

 エースの突拍子も無い言葉に流石に度肝を抜いた。

 正面突破か。狙うなら奇襲だろう、と思っていた所だし相手もそう思うかもしれないから案外いい案かも。

 

「クロコダイルの所に行くのは麦わらの一味と俺と参謀総長だろ?戦力的に正面からやり合っても大丈夫だと思うんだが」

 

「ごめんエース……もっとアホだと思うしてた」

「あん???」

「二番隊隊長は白ひげさんの思いつきでは無きですね…驚き。ビックリ」

「お前兄ちゃんの事どんだけアホだと思ってるんだ」

「私の本名忘れるくらいには」

「その件については大変申し訳ないと思っておりま──二回目だぞこのやり取り」

「そこは反省して」

「ゴメンなさい」

 

 すっ…と土下座をしかけて止まったが土下座しなおした。その件については何度でもネチネチ言うよ。

 

「白ひげの幹部を土下座…土下座………」

「権力怖いが身内はセーフの思考回路」

 

「幹事。ちゃんと仕事しろ」

「はい…じゃあ総戦力で殴り込み、決定」

 

 段々雑になっていくなぁ。

 

「次が海兵、ですか」

 

 マルコさんやサボから冷たい目が飛んでくる。

 

「ふ…ふふ……コレは大丈夫ぞ!」

「え、どうして?」

 

 マリオで言うとクッパ(クロコダイル)までの道のりを邪魔してくるキノコだけど今回に限り亀の甲羅になってくれる!はず!

 

「実は一等兵辺りが私の雑用時代の同期同室なのですよ、イッツフレンドリー」

 

 第一雑用部屋は仲良しです。と告げると苦い顔をされた。大丈夫なのか?って視線が飛ぶ。

 

「まぁ任せるしろ、口で丸め込むしてみせる」

「……本当に大丈夫?」

「大丈夫!あることないこと捏造してでも協力体制又は見逃すを目指すです!」

 

 私がこの国にいる海兵を率いてるスモさんと知り合いと知ってるのはビビ様だけだもんね。心配するのは分かる。でも味方宣言してくれたからー!最低でも私の命は保証されるんだー!やった!ぼっちじゃなくて本当によかった!

 

「大した障害にもならないだろうしまぁいいか」

「最後!BWの狙い」

 

 と、言っても絶対分からない議題。

 

「お前魚人海賊団相手の時言ったよな『理由が違ってもする行動は一緒』って」

 

 あー。『お腹空いた』のと『仲間のために戦う』理由の結果が『アーロン殴る』ってなったんだよな。よく覚えてるな。

 

「それってつまり結果から理由を探すのは大変って事だろ?議題にする必要あるのか?」

「まぁBWぶっ潰すすればオールオッケーですがね、多少は形だけでも考えるしなければ」

「そういうもんか」

「どんな危機的状況でも、頭を止めなければ抜け道は見つかるのです」

「確かに」

「99%無理の状態。考えを止めるすれば確実に100%になる。私は今までその1%を探しながら生き延びるしてきますた」

 

 へぇー、と声がいくつか漏れる。

 

「例えば、鷹の目に目をつけるされて無理やり訓練所に連れ込むされた時」

「例え話が物騒だな」

「砂利で目潰しを思い浮かび逃げますた」

「おい」

 

「例えば、災害のせいで白ひげ海賊団に飛ばすされた時」

「お、あの時か」

「え、待って俺知らないんだけどマルコぉ??」

「私は所属をバレぬ様にマルコさんを上手く味方にすべくか弱い子を演じ」

「思わぬ所で暴露するねい!?」

「褒める事によってもう1人の監視役サッチさんの警戒を緩くさせますた」

「…………監視役、バレてたのかよい」

 

 悔しそうにマルコさんが呟く。

 いや、自分の船で自由気ままにさせる程優しくないでしょうよ、海賊って。

 

「と、いうわけで考えるですよ」

 

 

 

 

 結局、国を乗っ取って交易する事くらいしか出てこなかった。

 

 アラバスタに縁がある私への当てつけ……とかは流石に無いですよねー……?

 もうやだ超疲れる。




ホワイトデーまでおやすみ。次回、番外編!

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