2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第114話 チベットスナギツネ

 チベットスナギツネ、という動物をご存知だろうか。この世界もキツネに色々種類はある様で、その中の1種にとても死んだ目をしたキツネがいるそうだ。毛は金色、目は黒、ハハッ何処かの海賊に潜入している地位詐欺の海兵さんと同じカラーリングじゃないですかヤダー。

 

 とにかく、一部では死んだ目をした誰かの様子を『お前の顔チベスナ顔だな』等と表したりするそうなのです。

 

 

 現在のリィンちゃん。牢屋の中です。

 

「捕まった」

「巧妙な罠だったな」

 

 チベスナ顔でござる。

 

 

 

 

 ユバで1泊した後のお昼、細かな打ち合わせを終わらせるとマルコさんに乗ってビビ様とコアラさんがカトレアに向けて出発した。

 『それじゃあ行ってくるよい』

 (身分を考えなければ)平和そうな組み合わせだなーっと思いながら見送った。

 

 丸1日歩き(飛び)通し、朝の6時くらいだろうか。やっとレインベースに辿り着いた時は眠い!しか思わなかったけど。

 

 

 さて、今回牢屋に入れられるという普通有り得ない展開になった発端は勿論ルフィとエース。

 奴らはお腹が空いたと言って暴走してしまったのだ。その時のサボの目と言ったら人を殺しそうでしたよ、何故か私に向けてたけど。多分『なんで手綱握らねぇんだよ妹だろ』的な訴えだったと思う。

 

「カジノの中で呼んだって出てくるわけないって言うのにあんた達は騒いで…!」

「だって顔わからねぇもん」

「でも罠は考えれば避けられる罠だったでしょ!?たとえ柵で囲まれたとしても、廊下全体が落とし穴だったとしても!」

「無茶言うなよナミ…」

 

「はぁ…」

 

 アホなやり取りに思わずため息を吐いた。

 

 この牢屋にいるのは私、ルフィ、ウソップさん、ナミさん、エース、サボ、そしてスモさん。

 チョッパー君は合流したハックさんと待機して貰ってる。正面突破作戦が上手くいかなった場合は人間じゃないチョッパー君の存在を秘密兵器として置いておきたいからだ。

 サンジ様は勿論王族だから除外。そしてその護衛としてゾロさんも一応。

 

 まぁそんな事バカ正直に言える筈も無いから『外で雑魚の警戒』を頼んで『いざと言う時の足』を探していて欲しいと言ったんだけど。

 

「チッ…」

 

 スモさんが小さく舌打ちをする。

 その直後にスモさんと合流してしまうとは誰が想像したでしょうか。まさかスモさん部隊がレインベースにいるとは思わなかった!

 

「情ねぇな、この有体」

 

 エースの身体の影で電伝虫をかけるサボ。

 いつでもハックさんに指示が出せれるようにしてるのかもしれない。

 

「それよりおれ…さっきから力が抜けて…」

「腹減ってんのか?」

「海楼石、説明したぞ」

「あ、あの時の」

「あー…後で聞いたけどそれヤバイじゃねぇかよ!」

 

 牢屋の檻に触れていたルフィがヘナヘナと言う。私がヒントを出すと後々の航海中に話を聞いたウソップさんが察して驚いた。

 いや、そこはやばくない。

 

「むしろ逆。これは盾にぞなる、と」

 

 どかっと座り込んでるスモさんを見る。

 

「この中で1番細くなるが可能の煙でさえ出ようとはせぬ。それはつまり、同じ自然系(ロギア)の砂も同じ事」

「んえ?」

「この中にいる限り即死は無い、ということです。見る限るして上から繋がる簡易的な牢屋ですし拷問器具も無いですから比較的安心安全」

「インペルダウンを語るだけあるわぁこのガキ」

 

 つまり外から能力での攻撃は出来ないって事。クロさんが怒り散らしてドシュッといかないことが保障される訳だ。海楼石便利。

 ウソップさんが思わず遠い目をした時、スモさんが私を睨みつけた。あー、はいはい、クロコダイルの事やビビ様についての説明ね、うんうん、するする。生きて出れたらね。

 

 牢屋の中に何故かある椅子に座ってるスモさんの隣に座ると全員から驚きの顔をいただいた。

 

「即海楼石を使用可能の私が自然系(ロギア)の海兵の傍にいるのはおかしき?ナミさん代わる?」

「遠慮するわね!!」

 

 建前上は『海兵に警戒してる仲間』を演じさせて下さいよ。私はスモさんがいるということに軽く恐怖を覚えてるんですから、これ絶対麦わらの一味討伐対象じゃん。やだよこんな修羅場。

 

「───共に死にゆく者同士、仲がいいじゃないか」

 

 この場に響く一つの声。

 

 豪華な1人がけソファに座ってクロさんがニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………いたのか。

 

「クロコダイル…!」

 

 スモさんが煙をふかしながら睨みつけるとクロさんは肩を竦めてみせた。

 

「オーオー、噂通りの野犬くんだったんだな、お前。いっつも不憫ないじられキャラで忘れかけてたさ子犬(パピー)君」

「あぁ???」

「パ、パピー……ぐ、ふっ…!」

 

 白猟のスモーカーと恐れられる男が子犬!

 笑っちまうぜ!

 

「俺をハナから疑ってくる海兵はテメェらしか居ねぇからなぁ。だがまぁ、正解だったな」

 

 わざとらしく拍手をしながらクロさんが嘲笑う。

 スモさんはこのまま牢屋の中で死んで海軍には『良くやった』と報告するとか、事故死予定らしい。

 

「うるせぇ、マヌケ野郎。その口閉じとけ」

「カチーン……テメェは俺を怒らせた」

「クロコダイル様は随分ケツの穴の小せぇ野郎だな」

「ケツは掘られてないんでね」

「……ミホさんは掘られてるかもしれない、と」

「「黙れ!!」」

 

 こっそり呟いた言葉はきちんと拾われていた様だ。おめーらが言い始めたくせに若干リアルな話だと拒否反応起こすのか。処女かよ。むしろ処女じゃ無かったら距離を取るけどなホモ野郎!

 

「おいお前!」

「麦わらのルフィに堕天使リィン、よくぞここまで辿り着いたな。だが…お前らの旅はここで終いだ」

「断る!」

「麦わらの一味は死んだ、と聞いたがどういう事か説明してもらおうか?」

 

 視線は確実に私に向いてる。

 マントを外して檻の前に立つとクロさんも近付いてきて睨み合う形になった。

 

「ビビ様が死んだ、Mr.5らのせいで!」

「ほぉ……?」

「仇討ちぞ、Mr.5を脅し偽情報を使うし、ここまで来た。アラバスタを乗っ取りなどさせるか」

「……………ク、ハハッ!威勢がいいなぁ?嘘を堂々と言い切るその態度は嫌いじゃねぇな」

 

 元々好感度はお互い低いだろうが。

 

「お前の考えてる事が分からねぇ程俺はうつけだと思ってたのか?」

 

 フックを撫でながらニヤニヤと笑うクロさん。

 

 考えてる事が…分かってたのか?

 

「大方、手下を自分の所に引き込んで偽情報を流した。もちろんMr.5達は死んじゃ居ねぇ……」

「………お見事」

「で?その上王女様だけ別行動させて反乱軍に対処に行かせる。お前自身がカモフラージュになるってわけか……」

 

 ぜ、全部読まれてるでござる。

 それ、BW完璧対応に回ってるよね……?

 

「お前が選んだ選択だ。充分にご自慢の仲間達と最後の時を楽しむがいいさ──」

「ッ」

「──なぁ、リィン?」

 

 ぶわりと殺気が飛んでくる。

 私は今までなんだかんだと浴びた事の無い勢いの殺気に思わず2,3歩下がるとその背をサボが支えてくれた。

 

「随分な態度だな、クロコダイル」

「リーに何するお前!」

 

 そして私の前に立つのはエースとルフィ。

 

「まるでお姫様じゃねぇか、羨ましい事だ」

「ハ、私の自慢の兄達ぞ。羨ましいだろ」

「………兄ィ?」

 

 クロさんは不機嫌そうにルフィを見た。

 

「まぁいいさ。俺は食事を楽しむとしよう」

「うわ、ぶん殴るしてぇ……」

 

 私がお腹空いてるのわかって言いやがる。

 

 クロさんが椅子に座ったのを確認して私も檻から離れる。サボがなるべく近くにいるのは私が知り合いだと知っているからの対応か。

 

 突如()()()()の笑い声が響いた。

 

「─────フフフフフフ…」

 

 なんだろう、殺気じゃないのに毛穴が全部開く。

 あ、どうしよう。胃が、胃がキリキリする。

 

「いい眺めだなぁ……、海兵が牢屋に入ってるのは」

 

「………終わった、アラバスタ終わった。さよなら私の平穏、こんにちは絶望の日々」

「ッッッ、テメェ!()()()()()()!」

「おはようスモーカー君」

 

 スモさんが睨みつけるとドフィさんは口角を釣り上げて笑った。ちらりと私にも視線がいく。

 

 

 

「…──突然始まる麦わらの一味主催モノマネ大会!」

 

 こういう時は現実逃避が一番だ。

 

「1番手はルフィ!」

「いやいやいやいや!突然過ぎるだろ!」

「私は現実逃避がしたい気分ぞ、心の底から」

「サンジの真似『肉食ったのお前かー!』」

「乗るのかよ!やだなこの兄妹!」

「2番手ポートガスいっきまーす!マルコの真似『パイナップルじゃねぇよい』」

「本気で嫌だなこの兄妹!」

 

「──少しは話を聞けよオイ」

「おかえりください!!!!!!!」

 

 真顔になったドフィさんに叫ぶとウソップさんが首をかしげて私に聞いてきた。

 

「つーかあいつ誰だ?」

「七武海、ドンクホーデ・ドフィラムンゴ。賞金は元3億越え…ですたはずです」

「ドンキホーテ・ドフラミンゴ、だ」

「それ」

 

 流石にこの人のフルネームは辛かった。

 ひぇ、この人は私の立場知ってる上にいつ口を漏らすか分からないから怖いよぉ。ま。教えたのは私からだし自業自得だけどなぁ………あの頃はまだまだ若かった。今なら急所を狙って隙を無理やり作る。そして関わらない。

 

 ドフィさん本人が直したのを指さすとふとある仮定が浮かんだ。そして思わず頭を抱えた。察してしまう自分の頭が憎い。

 

「参謀総長……………こいつだ」

 

 革命軍に手を出したのはクロさんじゃない。

 ドフィさんだ。

 

「……………オイ、ドフラミンゴ。革命軍に気付いて手を打ってやがったのはテメェだな?」

「オイ鳥野郎どういう事だ」

「そのまんまの意味だ。部下の把握はしとこうね、10やると9で終わっちゃう甘い男クロちゃん」

 

 クロさんは私が反乱軍や白ひげ海賊の2人と手を結んでいた事は予想できてなかったらしい。逆に私はクロさんがドフィさんと手を組む、と言うか手を貸した事も。クロさんの読めなかった部分をドフィさんがカバーしたのか……。何この七武海協力タッグ、怖い。

 

「殺されたいのか」

「そんな事言いながら酒を注ぐクロちゃん愛してる」

「クッハッハッ、知ってる」

 

 本日2度目のチベスナ顔。

 

「え…ホモなのか?ホモなのか?」

「はい、ちょっと牢屋側集合」

「あんたも来てくれスモーカー」

「唯一知り合いっぽいからなぁ……」

「ホモなの?」

「ホモとしか思えないんだが」

 

 コソコソと話す海賊+革命軍。

 

 私とスモさんはこれが通常運転だって分かってるから特に思う所は無いけど普通はそう思うよね。

 

「ンンンッ、いや、アレがアイツらにとって普通だ」

「「「「ホモかよ」」」」

「どっちかというとロリコンだな」

「「誰がロリコンだ!」」

 

 スモさんが海軍本部内での常識を言うと七武海から否定の言葉が飛んできた。

 

「あぁん、文句がありますぅ?最後の晩餐は楽しいですたかコノヤロウ!」

「あ、こいつ思ったより怒ってる。まてまてまて、相手は七武海!しーちーぶーかーいー!」

「黙るがいいぞ鼻!」

 

 ストレスマッハでSAN値マイナスに振り切れてるから、もはや痛覚遮断してる気がする。

 人間って…よく出来てるなぁ。

 

「お前もう寝てろよ」

 

 事情を知ってるサボが提案し思わずスモさんも目を閉じながら頷いた。これがぬくもりてぃ。

 

 

 

「それでリィンはともかくスモーカー。お前なんでアラバスタに居るんだよ」

「……麦わらの一味を追っていた、悪いか」

「悪い事しかねぇだろ。お前わかってる?今から事故死、オーケー?」

「ノー!ここから出せヘタレ鰐野郎」

「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょっとまって!」

 

 スモさんとクロさんの言い合いに余裕でストップをかけれるナミさんは結構大物だと思う。

 

「クロコダイル、今『()()()()()()()()』って言ったわよね?まるで知り合いみたいに!」

「ひょえ!?」

 

 あれ!?ナミさんが鋭い!

 鋭い指摘をしてくるメンバーはここには居ないと思ってたのに!

 

 海賊側は私がクロさんと面識あるの教えてなかったよね、知っててせいぜいミホさん位。

 唯一色々と観察力のあるサンジ様はここにいないから安心してたのだが…!

 

 あ、もしかして私に関することにだけ鋭くなるとか?嬉しくねぇ!心から!

 

「威勢のいいお嬢ちゃんだな。質問に応えよう「わー!わー!わー!」──黙ってろ。10年来の付き合いだが?」

「10年!?」

 

 わぁ、海賊全員からのどういう事だ的な視線が私に突き刺さるーー…まるでガトリングガンやー…。

 

「私、あんな将来禿げる予定の人知らぬ」

「………………諦めろ、な?」

 

 スモさんが肩をぽんっと叩いてくれた。

 その優しさが辛いです。

 

「ま、まぁ……それなりに」

「なんで、言ってくれなかったの…?」

 

 ナミさんが責めるような声で言う。

 

 まぁ、勿論ここで言い訳が思い浮かばないようなら私はもう死んでるでしょうな!

 

「ビビ様の敵。唯一の幼馴染みが敵と馴れ合うして………どう思うですか?」

「……きっと、リィンを頼らなかったでしょうね。優しい子だから遠慮したわ」

 

 ナミさんは悲しそうにまゆを下げる。

 言わなかったのは自己保身と面倒臭い事を避けることとか言えないな。墓まで持っていこう。

 

「簡単に、どのくらいの仲かと言うますとー……─一緒に寝た仲?」

 

 ピシリ、と空気が固まった。

 発言前と雲泥の差だな!

 

「鰐野郎、まさか手を出してないよな…?」

「………流石にこいつが今海賊でもそれは認められねぇぞ七武海」

 

「リィン出てこいテメェを今すぐ殺してやる…」

 

 蔑んだ視線をその身に受けながらクロさんは最高に殺気立った。

 後悔はしてない!ごめんね!事実じゃん!

 

「否定はしないのか…クロコダイル」

「………俺は無実だ」

 

 ハッキリと否定の言葉を口にしないクロさん、素直でいい子。だが手遅れだね。

 

「そんなキミに朗報」

「あ?」

「あの時の私の同期、現在アラバスタ」

「………………………………は?」

 

 睨まれた。

 うんうん、実はこっそり寝顔取っててくれた優秀な理解者はスモさん部隊にいるんだよなぁ!!

 

「───ご馳走してくれるのでは無かったのですか?」

「普通俺が絶望してるこの流れでぶっ込んでくるか?」

 

 ずっと疑問に思ってた事を口に出したら今度はクロさんがチベスナ顔になった。

 

「お前はその口を閉じて死ね」

「結構酷いぞハニー」

「誰がハニーだ枯らすぞ」

「己の仕掛けた檻を越えるして触れる事可能ならな!」

 

 無駄に煽るな、とサボから拳骨が飛んできた。

 よく分かったな……痛いでござる。




全体的な構成のバランスを整えながら作ってるので更新が遅くなってしまうでござる。

絶望現る!お互いに読めなかった部分がお互いを貶め合う騙し合い合戦!
女狐の狐はチベットスナギツネだった。決して可愛い狐じゃなかった。

ちなみに今月の20日は連載1周年です…(コソッ

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