2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第118話 革命軍と海賊と

 ハローエブリワン!私リィンちゃん、ただ今上空にいるの。

 

 

 カラッと晴れた空には二つの影が猛スピードでアルバーナに向けて飛行していた。

 

「リー、もっと速くならないのか?」

「これ以上早くすると装備がまともじゃないルフィが怪我をするぞ、そしてペルさんを置いてく事にぞなる!」

 

 先行するのは箒に乗った私とルフィ。

 

「く…速いですね」

「風キツっ…!」

「参謀総長、間違えて火だるまにしたらごめんな」

「そんな不吉な事を言わないでくれ!」

 

 並列するようにスピードを上げるのはアラバスタ兵士のペルさん。それに乗るのはエースとサボだ。

 

 最速だかなんだか知らんが10年以上乗り続けた私の飛行技術がそうそう敗れるとでも思うなよ…!ただし乗客がいるとセーブする!ひゃっはー!風になるぜぇええ!

 

 

「おい!め…堕天使!本当にあのスモーカーって奴に任せていいのか!」

「頼りにすてる!堕天使言うなかれ!」

 

 サボが風の音に負けないように大声で聞く。

 スモさん部隊には幹部探しと反乱軍の足止めという任務を任せてる。やり方は知らん。でもやってくれると信じてる。

 

 女狐(うえ)堕天使(しんゆう)からの命令には逆らわないと思うし、同期だっている。

 使えって言ったの向こうだしねぇー、何が何でもクリアしてもらいますよ。

 

 ただ、反乱軍に対しては難しいかもな。自分が考えなくて良いから無理難題押し付けたけど…最悪武力行使だな。

 

「風が気持ちいいな〜!」

「んんッ、可愛い」

 

 歪みが無い兄(エースは変態サボはツンツン)の可愛さに思わず悶えながら一気に飛ばす。

 

 正直居場所はサボ任せだ。見聞色が使えるのがサボしかいない。エースもギリギリ使えることには使えるけどどちらも弱いんだよなぁ、幼少期から後天的に使えてたサボの勝利って事で。

 

「もうちょい南!」

「アイアイサー!」

 

 風に紛れて聞こえた声に返事をして方角を調節する。どうやらクロさん達の気配が見聞色の範囲内に引っかかってきたようだ。

 

「ルフィ、多分1番視力が良きはルフィぞ。肉眼で確認出来たなれば教えて」

「見えてるぞ」

「そう…見えて、…んん!?見えてる!?」

 

 箒の後ろから身を乗り出すようにして発した言葉を聞き返す。見えてるなら見えてるって言えやぁぁあ!

 

「どちら!」

「砂漠!」

「んんんん、どこの!」

「広い方!」

「どこも広きぞぉ!」

 

 南の!砂漠は!広いです!

 低く飛んでるんだから蜃気楼で見えにくいのよ!

 

「ッ、居たァ!」

 

 視力No.2が声を上げる。

 

「リー!ここから2時の方向!」

「距離にして約3km」

 

 エースが方角を、サボが距離を私に教えてくれる。

 ハハハー…この超人兄弟って奴は…。

 

 ゴーグルに当たる微量の砂を鬱陶しく思いながら進むと次第に姿が見えてきた。

 1、2、3、よ……んん?もしや主戦力フルコンボ!?待って、待って。Mr.2しか味方が居ない中に突入するの?待って。少し考えさせて、幹部共をバラバラにする為にはどうしたらいい。

 王様もいる。何故か拘束されているビビ様も。七武海は2人。幹部は揃ってる。

 

 隠れたりなどしてない私達に気付いたのか、クロさんが右手を構えて…。

 

「ッ、来る!」

 

 スパァンッ!

 

 私の声に慌ててペルさんも避ける。

 スレスレの所をクロさんの砂が巨大な刀のように変化して襲ってきた。

 

 え、砂漠が割れた。

 

 

 

 ………マジで殺す気ですね。

 

「来るとは思ってたぜ…テメェがあの程度でくたばる様なら苦労してねェ」

 

 上空で停止するとクロさんの殺気と睨みが飛んでくる。それなりに距離があるはずなのに声が聞こえる。ヤベェ激おこじゃないですか。

 

「エースはドフィさんをなるべく無力化ぞお願い!」

 

 糸の能力には炎の能力を。

 あくまでもドフィさんはあくまでも〝お手伝い〟に徹する筈だし、クロさんが味方とハッキリ言えない人間に頼る様なプライドは持ってないと思うから1人でも時間は稼げる。多分!

 

「……ッリィン、君!」

 

 私が誰だか気付いたコブラ様が思わず声を上げる。

 

「長年お待たせしますた!コブラ様!」

「キミが介入するのは…!」

「海賊〝堕天使〟リィン、この戦争を終わらすです!」

 

 そう、例えエースやサボやコブラ様やドフィさんが名ばかり大将と知っていようとあくまでもこの場で見届けるのは海賊の私。

 海軍が国家問題に首を突っ込むのはアウトでも無法者ならギリギリセーフだ!

 スモさん?知らんな!ハッキリと女狐からだと言ってないから後でどうとでもなる!

 

 どうせセンゴクさんに怒られるのは分かってんだよ!だって1ミリも相談してないもん!事後報告万歳!ハーッハッハッハ!!!!

 

「やぁクロさんドフィさん。癒し担当リィンちゃんですよー」

「お前はすぐ調子に乗るな…殺してやる」

「フフフ…ガチバトルか。期待してるぜぇ、リィンちゃん?」

 

 試しに煽ってみてもいつものふざけた感じがクロさんから感じられなかったので結構ガチ怒みたいです、何でだ。私は一体何をして何がクロさんの地雷を踏み抜いた。よく分からない。

 

「ぐあっ!」

 

 ペルさんの悲鳴が突然聞こえる。

 

「ふふっ、弱いとでも思ったのかしら…。私に速さは通用しないわ」

 

 ニコ・ロビンがペルさんに関節技をキメたようだ。

 うそだろマミー。世界が広いよ。

 

 でも人を運べる足が潰れたのは辛い。

 鳥が運べるのはせいぜい2人。マルコさんがゾロさんとサンジ様を運んでくれるらしいけど河を渡ってる麦わらの一味の戦力的に考えて三往復しないと全員運べないのに。

 

「貴女には手を出さないわ、安心して」

 

 目が合ったニコ・ロビンがニコリと笑って腕を組んでらっしゃるけど私には安心出来る要素がございませーーーん!!ニッコニッコニー!

 

「ボスの邪魔はさせん…!」

「ッ!」

 

 肉を切り裂くザクッと言う音と同時に聞こえたのはサボの唸る声。心配で振り向こうとした瞬間目の前にクロさんが現れた。

 

「よそ見とは余裕だな」

「〝キャンドルロック〟!」

 

 幹部の誰か、男の声がした途端足が地面に固定される。フックのカバーを外したクロさんが私に攻撃をしようとして慌てて上半身を横に捻るけど避けきれなくて右腕にかすった。

 痛い…。しかもこれ猛毒かよ、子供になんてことを。

 

「毒は効かぬ!」

 

「〝スタンプ〟ッ!」

 

 かすった瞬間ルフィが横からクロさんを踏みつける様に技を出すとクロさんが小さな舌打ちをして距離を離す。

 

「待つしてこの足何、この足の何。乱戦にも程が存在するぞ!卑怯!」

「勝てば官軍負ければ賊軍──〝三日月形砂丘(バルハン)〟」

「なんっっ、ですと!もう!」

 

 足元の石みたいな塊ごと箒で飛んで攻撃を避ける。ルフィはしゃがんで、サボは範囲外だったけど先程の攻撃で血を流してた。その代わりにエースがクロさんに向かって攻撃を受けながら走って右手の拳を炎にかえた。

 

「〝火け──〟」

「一匹もらうぜェ鰐ちゃん」

 

 クロさんの前に飛び出たドフィさんが足に武装色を纏いエースを蹴飛ばす。

 避けきれずにエースは砂埃を上げながら威力を殺すと立ち上がって睨みつけた。

 

「Mr.3。リィンを固めとけ」

「分かったガネ」

「さ、せるか!」

 

 白い塊が再び襲うがそれを阻止したのはサボだ。

 手に覇気を纏って塊を割る。ついでに私の足に付いてる塊も砕いてくれた。

 

「こいつは蝋だ!これくらい自分で解決しろ!」

「突然の罵倒!ごめんね!?」

 

 サボの口が悪い。

 蝋って事はドルドルの実の能力者か!

 

「やりなよMr.4!」

「う〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜」

 

 サボが私の足枷を壊したのと同時に随分と長い返事でMr.4がルフィに殴りかかった。

 

「効かないね、ゴムだから」

 

 平気な顔をしてルフィが腕を伸ばす。

 しかし視界の端に悪魔の実を食べたであろう銃がクシャミをして野球ボールを発射させた。

 

「あ、っぶないぞ!」

「うわっ…!」

 

 アレはやばい。

 そう思った瞬間箒の上からルフィを空へ引き上げると足元ですぐさま爆発が起こる。

 

「時限爆弾か…」

「悪魔の実を無機物に食べさせる技術さ」

「政府開発の…ぞ!」

 

 噂だけ聞いてたけど実際に実用化されてんのか!

 

 ここまできて動いてないのはビビ様を捕らえてるMr.2とちっさい女の子とセクシーお姉さんの3人。

 

「先に潰すか…」

 

「リー!」

 

 微かな声が聞こえてハッとすると砂に変化して移動したクロさんが目の前に再び現れた。

 大きな体格差に視界が狭くなる。

 

「寝てろ」

「〝超過鞭糸(オーバーヒート)〟」

 

 何も攻撃のモーションが無いと思った瞬間クロさんの体を突き抜けて鞭の様な糸の塊が体を吹き飛ばした。

 

「ゲホッ、ガッ、ゴホッ!」

「流石にタフだな」

「手加減しない方が良かったか?」

 

 肺が一気に圧迫されて骨が軋む。

 苦しいとか痛いとかのレベルじゃない、いっそ殺してくれと言いたくなるような痛みが襲ってきた。

 

 せこい、ずるい、何その合体技的なやつ!

 自然系(ロギア)のクロさんの体を視界の壁にして後ろからドフィさんがクロさんごと私を攻撃したのか…!ご丁寧に覇気は纏わずに仲がよろしくて私涙が出そう!

 自然系(ロギア)のチート本当に許さない。

 

「ガハ…ッ!」

 

 胃の中から喉を焼くような液体が溢れて思わず砂に吐き出すと砂は赤く染まる。

 …………内臓やられてる…。もうマジでなんなの…私悪いことした?

 

「ヤバ…!」

「参謀総長!」

 

 霞む視界の中でサボを庇うエースが見えた。

 ルフィは無茶苦茶にクロさんを殴ろうとしてるけど覇気を使えない身ではダメージを与えられてないみたいだ。

 

 ヒュー…っと喘息みたいな私の呼吸音。ここまで怪我したのは初めてかも。

 しかもこれで手加減…?そりゃ死んでないだけ普通より頑丈かもしれないけどあんまりにも高すぎて不安になってくる。数も戦力も状況も圧倒的に不利。

 

 

 

「……!」

 

 丁度南の方角に砂埃が見えた。

 まさか反乱軍…でも少ない。

 

「ざっと20…。反乱軍と、ありゃ海兵か?」

 

 グ、グレンさん!抑えてくれたのか!

 

「一体何をしたリィン」

 

 私は何もしてないからそんなに睨まないでください。どうしてこっちに向かってるのかよく分からないけど反乱じゃない事は確かだ!

 

「ゲ、ホ……」

 

 あ〜、やばい、意識飛びそう。夜通し飛んでただでさえ寝不足だったのにこの仕打ち……甚だ遺憾でござる。

 

 絶対アラバスタから報酬強請ってやるし!!

 

「─────……ビィイ!」

「クソ、コーザか。どうしてだ…ナノハナにはMr.2が既に化けて失望させたってのに!」

 

 遠くで叫ぶ声と拘束から逃げ出そうと奮闘する()()のビビ様。わざわざご丁寧にMr.2は片手で口を抑えて力が入りやすい形で両手を掴んでいる。

 

「火拳!避けろ!」

「…は!?」

 

 拳を構えたサボがエースに殴り掛かる。

 火になるとサボが怪我をするが実体化するとエースが怪我をする。エースは実体化を選んで殴られた。

 

「チッ…覇気使いをさっさと潰せりゃいいが」

 

 寄生糸(パラサイト)。ドフィさんの十八番(おはこ)だ。

 

 エースを操ってくれれば糸ごと燃やすのにめんどくさいチョイスだな…。

 

「くそ…」

 

 体が勝手に動く不快さにサボが眉を寄せる。

 パラサイトって結構やられると気持ち悪い感じがするよね、わかる、わかる。私の体、動けないから困る。

 

 海水鉄砲をアイテムボックスから取り出して中の水だけ動かそうとする。

 ふよふよと不安定な状態で空中をさ迷う水の塊、それに気付いたサボがエースに指示を飛ばした。

 

「火拳、俺をあの塊にぶん投げろ」

「っ、分かった……よっ!」

 

 殴る腕が伸ばされた瞬間を狙ってエースが身を翻す。そして襟首を掴んで思いっきりぶん投げた。

 集中、大事。水はそのままの位置で固定…痛い。

 

 痛みに耐えながら集中するとぶん投げられたサボが水を被って体に自由が戻った。そしてサボはそのまま直線上にいるMr.4を殴る。ストライク!バッターアウト!チェンジ!

 

 まぁデットボールだけど。

 

「ほん……と……能力卑怯…」

「「「「お前の能力が一番卑怯だろ!」」」」

 

 私をよく知る方々に怒られた。解せぬ。

 

 隣の芝生は青い、ならばいっそ燃えちまえ。ずっと疑問だったけど特別な転生を行った場合無双チートが定石じゃないの…?

 

「ビビッ!そのまま振り切ってこっちに来い!国王軍にいるスパイを取り押さえる!」

「っうん!」

 

 戦闘に巻き込まれないように少し距離を置いていたビビ様がMr.2の拘束を解いてリーダーの元へ駆け寄る。そのまま掴まりラクダの後ろに乗って宮殿の方に向かった。

 

「お前ら反乱軍を追え!絶対に逃がすな!」

 

 クロさんの指示で幹部全員が動く。

 ラクダの速度とそう変わらない速さで走るって何それバケモノかよ。

 

「サボ君!大丈夫!?」

 

「…え」

 

 ラクダに乗っていた内の1人はコアラさんだった。高い声が聞こえるとサボは声を上げた。

 

「Mr.1は斬撃を使う!生身で戦うな!姫さんを頼んだ!」

「任せて!」

 

 能力の特定がくそ早いな革命軍。

 

「「「イル君じゃーなーーー!!」」」

「そこにいる海兵は残らず殺せ!絶対だ!」

 

 聞き覚えのある声がいくつか揃って聞こえる。クロさんが怒り狂って指示を出すけど明らか動揺してるよな。

 

「ぐ…ははっ、……気付いて……ひっ、いたたたた…傷が痛む……フハハっ、最高」

 

 クロさんを動揺させた事は流石だが笑いを堪えられなくて倒れたまま痛みに悶えることになった。

 




戦闘シーンを一人称視点で書くんじゃなかったと思っています。

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