2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第120話 BWと連合軍その2

 

 ──北ブロックメディ議事堂裏通り──

 

 

「相性悪いなぁ」

「ごめんなさいねお嬢さん」

 

 コアラがミス・ダブルフィンガーと対峙していた。

 

「うわっと、と」

 

 トゲトゲの実の能力に、素手の魚人空手は相性が悪い。弱い武装色しか使えないコアラには思ったように踏み込めないでいたのだ。

 

 とはいえども見聞色も多少は使える。攻撃は未だに当たって無い。

 

「(あたしよりゾロ君の方が心配だけどなぁ…)」

 

 自称雑魚のリィンの事に関しては心配してない。例え倒れていようとも。

 彼女なら『結果を出す(意訳)』をしてくれるだろうから。その持ち前の頭を使って。

 色々あった結果、縄張り意識の高い自分達革命軍と繋がれたのだから大丈夫だろう。

 

「サボ君の『人を貶める事に何の躊躇いも無い化け狐』って悪口が最近良くわかってきた気がするよ」

「何のお話?」

「んー…私達の参謀達、かな」

 

 ここまでくる下準備、そしてまだ何か企んでいる。

 偵察任務が得意なコアラにとって参謀型のサボやリィンの考えは読めないが思考は読める。

 『完膚無きまで叩き潰す』『生かさず殺さず地獄行き』『己の不利になる情報は例え味方だろうと渡さない』『他者をとことん利用する』

 恐らくこんな所だろう。

 

 似てない似てないと言うがどっから見ても似通っている。思考もだが見た目も多少。

 

「それは随分恐ろしい狐を飼ってるのね」

「飼い主の狐だけどね」

 

 思わず遠い目をするコアラにダブルフィンガーは首を捻った。それと同時に腕を棘だらけにする事も。

 

「その飼い主にMr.5達は懐いちゃったってわけ?」

「さぁ、どうだろう。詳細知らないからなんとも言えないなぁ…」

 

 ダブルフィンガーが棘でコアラを突き刺そうとするが余裕を持って避けきった。

 

「お、誰か来た。多分──」

「見つけた!コアラ!リィンとビビがどうなってるか知って…きゃぁあ!BW!?」

「ナミちゃんだ」

 

 コアラは予想通りの人物が来たことに笑顔になる。ナミの発言自体はスルーして。

 ナミは修羅場に突入してしまった事に青くなった。

 

「ヤッホーナミちゃん。ナミちゃんって武器持ってたよね?攻撃は任せた」

「え!私が!?無理無理無理!絶対む──」

「この戦い、愛しのリィンちゃんが全力を尽くして解決しようとしてるんだけど」

「──〝熱気泡(ヒートボール)〟〝冷気泡(クールボール)〟」

 

 単純の一言。その変わりように敵であるダブルフィンガーでさえ心配しだした。

 

「この子、頭大丈夫?」

「その…残念、な子って言ったらいいのかな…?頭は悪くないんだよ?決して、多分、恐らく」

 

 後半になるにつれ不安要素が勝っていくがとりあえずカバーをしておく。

 

「それにしてもお嬢さんの武器なぁに」

「この島に着く前に作ってもらってたの。試作品って言ってたけどかなり使えるわ。これでアンタを倒してリィンに褒めてもらうの!」

「欲望に忠実なのね」

「人間は欲深い生き物でしょ?〝電気泡(サンダーボール)〟」

 

 バリッ、と嫌な音がしてダブルフィンガーが振り返るとそこには雷雲が生まれていた。細かな静電気が発生している。

 

「〝サンダーボルト=テンポ〟!」

「あぁあぁあぁああぁあぁああぁ!」

「容赦ないなぁ……」

「リィンとビビを哀しませる原因に情け容赦は無用よ!」

 

──ザッ

 

 ダブルフィンガーは雷を受けてもなお踏ん張って立ち上がっていた。

 

「負けてあげられないのよ…!」

「ナミちゃんっ!──っあ!」

 

 コアラが狙われたナミを突き飛ばす。

 ナミは無事だったが丁度コアラの肩、そして横腹にダブルフィンガーの棘が突き刺さってしまった。服に血を滲ませながら、コアラは棘を掴み踏ん張る。

 

「ナミちゃん…!」

「海で怖いものをご存知かしら」

 

 痛みを耐えて、もう一人の名を呼ぶ。ナミはT字型に武器を組み替えてダブルフィンガーを狙っていた。

 コアラの手によって引くことも押すことも出来なくなったダブルフィンガーはナミの構えた天候棒(クリマ・タクト)を見るしか出来ない。

 

「トルネードにご注意ください」

「ッ、近付くとこのお嬢さんが串刺しになるわよ」

「〝トルネード=テンポ〟」

「っ!」

 

 ナミの技の発動と同時にコアラが痛みを無視して棘を抜く。ダブルフィンガーは体に自由が戻った事に気付くがすぐさまナミの技の鳩が体に絡み付いて再び自由を失ったのだ。

 ぐるぐると鳩が2匹、回転し絡みつく。

 

「な、なに……」

「うわぁあっ!」

 

 砲弾の様な空気圧が爆風と共に遠くへ吹き飛ばされた。

 支えきれずにナミも尻餅をつくがどうやら無事の様だった。

 

「お疲れナミちゃん」

「……鳩が出た時正直これ終わったって思ったわ」

「何その武器」

「ウソップが作ったの」

「……彼は発明家?」

「一応狙撃手、のはず」

 

 何だかんだと怪我をしてるコアラの傷の止血をしながら武器を作った長っ鼻の事を話す。

 最後の一手以外1通り試して居たがここまで威力が高いとは思ってもみなかった様だ。

 

「これからどうしよう」

「宮殿に行こう、王女様とグレン君はそっちに向かってる。海兵君達の合流場所はそこだから」

「グレン?」

「スパイを見つけ出すのに役立つ海兵君だよ」

 

 コアラは痛みに眉を顰めながら立ち上がった。

 

 

 ──勝者 ナミ&コアラ──

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ──西ゲート前──

 

 

「ふむ、これはなんとも厄介」

「言ってる場合か!」

「また来るぞ!」

 

 Mr.4ペアを相手にウソップとチョッパー、そしてハックが戦っていた。

 

「走れ!」

 

 ──否、逃げ回っていた。

 

「四番バッタークソめんどくせぇ!」

「スピンは卑怯…──うがっ!」

「ウソップ!」

 

 打たれる時限式爆弾を逃げて逃げて、当たって狙われて逃げて。時々ハックやチョッパーが投げ返そうとするが人間以上の腕力を持つ彼らでもどうする事も出来なかった。

 

 BWと連合軍の相性が悪すぎ、予想以上の時間と体力が奪われていく。

 

「埒が明かないな」

「あのペンギンの穴がめんどくさい…」

「モグラだってんだ!このバッ!バッ!」

 

 

 ミス・メリークリスマスがひょっこり地面から顔を出して文句を垂れるその瞬間、ウソップが傷の痛みを無視してパチンコをひいた。

 

「火薬星!」

「ノロマだね!」

 

 しかしすぐに潜り避けてしまう。

 

「〝唐草瓦正拳〟!」

 

 ハックの放つ空気を殴るような衝撃波がBWの2人を襲った。

 多少のタイムラグの後、動きが思わず止まってしまう。

 

「〝ランブル〟」

 

 その隙に、とチョッパーが黄色い飴玉の様な玉をガリッと噛み飲み込んだ。

 

「〝腕力強化(アームポイント)〟!」

「なん、だそれ!」

 

 雪国で未披露だったチョッパーの劇薬。ランブルボール。

 ウソップは初めて見る盛り上がった腕の筋肉に思わず驚愕の言葉を漏らした。

 

「〝刻蹄(こくてい) (ロゼオ)〟」

 

 蹄が桜の様な跡を残し、Mr.4の皮膚を抉る。

 一番厄介なMr.4をこれで封じ込めることが出来た。

 

「す、すっげー…」

「ほ、褒められても嬉しくなんかねーぞコノヤローっっ!」

 

 キラキラと目を輝かせて見るウソップにチョッパーは照れくさそうに笑う。

 ハックはその光景にこっそり癒されながら構えをとった。

 

「後は…一人」

「っ!」

 

 危機感を覚え、ミス・メリークリスマスは地面に潜る。

 

「くそっ」

 

「ふははは!私がこの程度で負けるすると思うなぞー!」

「……ウソップ何してるんだ?」

 

 唐突にウソップがおかしな言葉で独り言を言い出した。チョッパーが訝しげに視線を向けると素に戻ったウソップは言う。

 

「いや、この状況で我が一味の残念美少女がどんな手を使うか想像してて……」

 

 どこかで『誰が残念ぞ!』と叫んでる様な気がするが気のせいったら気のせいだろう。そこであっと声が上がった。

 

「あいつなら追い討ちかけるよな。敵に同情は全く要らないって。そうなるとー……もぐら穴になにか劇物でも放り投げるか?」

 

 

 逃げろ、ミス・メリークリスマス逃げろ。

 

「そう言えばリィンに頼まれて一緒に作ってた薬あったな」

「おお!ナイスだチョッパー!」

「救世、……リィン殿は一体何を頼んだのだ?」

「玉ねぎの成分を嫡出したヤツ。リィンが調合の配分失敗してすっごいキツイけど」

「一体何に使うつもりだったんだか……」

 

 思わず遠い目をしたウソップ。

 チョッパーはいそいそとバックからペットボトルサイズの液体を取り出してウソップに渡した。

 

 ウソップは見るからに嫌そうな顔をして受け取る。そして自前の粉末スプレーにそれをセットした。

 

 

「ハック!どこにいるか分かるか?」

「ふむ……近付いてるな。相手は恐らくこちらを狙っているだろう」

「なら少し待つか」

 ウソップは近くの穴の側で待機する。

 

「今だ!」

「〝タマネギメテオ〟!」

 

 ハックのその掛け声と共にウソップは思いっきりスプレーを穴に向かって放射した。

 

「ぎ、ぎゃぁぁあああ!目が、目がぁあ!」

「「うぐ!染みる!」」

 

 割と近くで浴びたミス・メリークリスマスも、布で防いでいたが放射したウソップも、人より鼻が良いチョッパーも。それぞれが思ったよりも濃い成分に痛みを訴える。

 

「うええっ、やっぱり失敗だ!」

「まじでアイツはこれを何に使おうとしてたんだよ!チョッパー!これ絶対封印な!」

「お、おうっ!」

 

 微量だが目に染みたせいで涙を流した。

 恐怖などでは無い。絶対に違うと言い切りたい。

 

「か、海賊……恐ろしい奴らだ!このバッ!」

「馬鹿!こんなの俺達が普通に考えるか!世界の非常識代表を舐めるなよ!」

「あんたの所の船長か!」

「アレは人類の例外だァ!」

 

 痛みに悶えるミス・メリークリスマスをハックが狙う。

 

「〝五百枚瓦正拳〟」

 

 ろくに目を開けれなかったミス・メリークリスマスは真正面からその攻撃を受けてしまい悲鳴と共に吹き飛んだ。

 

「これは…きついな」

 

 ハックは穴の周辺に漂うタマネギエキスを微かに嗅ぎとってしまい、ポツリと呟いた。

 

 この世は無常なり。

 

 

 ──勝者 ウソップ&チョッパー&ハック──


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