2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第121話 痛いの痛いの嫌いな奴に!

 

「むり…痛い……」

「そこは頑張れよ!」

「むり、むり。絶対骨いくしてる……いたい…」

「頑張れリー」

「かえる…おうちかえる……」

「古巣に帰った瞬間テメェは革命軍の敵とするからな、逃げんなよ、ある意味元凶」

「鬼ぞ存在する…。鬼、鬼畜が……」

 

 私の兄は鬼畜でした。

 

「あー…やった本人が言うのもなんだがリィンを無茶させるなよ。お前ら」

「まことにクロさんに言うされたく無きぞ…」

「口調ボロボロだとおつるさんに怒られるぜ〜?」

「宜しい、アホ鳥、殺す」

 

 心配してくれるのが敵のクロさんだけってあまりにも酷いと思うんだ。ドフィさんは反省しろ。

 

「頼むよリー。どびゅーんってやってくれ」

 

 クロさんを殴りたいけど殴れないルフィが何とかして欲しいと私に無茶を言ってくる。

 そう、これ、これを無茶だというんだ。

 

 痛みがあると集中出来ないから不思議色なんて使えないし。気絶しそう。

 なんだかんだと大怪我した事の無い私、実は痛み耐性がクッッソ弱いです。

 

「痛み止めくれです」

「そんな便利なもんあれば使ってる」

「ですよね!!!」

 

 ドフィさんと殴り合いしてるサボの冷たい声が聞こえる。いてて…叫んだら傷が痛む。

 

 起き上がって服をベロンとまくり上げればお腹は内出血でどす黒く変色していた。

 ………………見るんじゃなかった。

 

「枯れろ」

「あ…っ、あ…!」

 

 クロさんに捕まってしまったルフィが枯れる。段々ミイラになっていく。

 

「「「ルフィ!」」」

 

 慌てて空気中の水分から水を集めるイメージをして、ルフィにかけた。

 どんな体の構造をしてるのか分からないけどちゃんと元に戻ったみたいで一安心…。

 

「くそ…テメェの能力は風じゃなかったのかよ」

「ふ、ふん……。進化すた」

「そんな事があってたまるか…!」

 

 クロさんが飛ぶようにこちらへ向かって来る。

 復活したばかりのルフィも、ドフィさんと戦ってるエースやサボも反応し切れない。

 

 殺される。

 

 一気に怖くなった。

 親しい人間から殺意を抱かれる恐怖に。

 

「待ってくれ!」

「…!」

「……歴史の本文(ポーネグリフ)の元へ、案内しよう」

 

 コブラ様の一声で全員の動きが止まる。もちろんクロさんも。

 その言葉を聞いてニヤリと口角を上げた。

 

「なるほどなぁ…。娘だけじゃなくコイツも人質になるのか……、面白い事を知った」

「ぅ、あ!」

「離せ砂ワニ!」

「覇気を使えないテメェが自然系(ロギア)に敵うと思ってるのか」

 

 クロさんは私の首を掴む。思わず苦しくて嗚咽と生理的な涙が零れた。

 ルフィは阻止しようと蹴るが効かない。

 

 まぁ、ミイラになってないだけマシだよな。

 

「チッ…火拳、そっち任せ──」

「〝寄生糸(パラサイト)〟……フフフ、行かせねぇぞ、覇気使い」

 

 サボは能力者でも無いから寄生糸に捕まりやすい。体が上手く操れないみたいだ。

 

「ニコ・ロビン、先に解読してろ」

「……えぇ、分かってるわ」

「待て!」

 

「ああ!そうだ、俺とした事が忘れていた!」

 

 ギリッと私を掴む手に力を込めながら態とらしい演技をして、衝撃的な言葉を口にした。

 

「反乱がアルバーナで始まった時用に……広場に爆弾を仕掛けていたなぁ」

「…なん、だと……!」

「今アルバーナは、反乱が有らずとも。避難所に逃げた国民や家で震えている国民が居たなぁ?」

「この…外道…!」

「は、な…す……!グッ、ゲホッ」

 

 絞められた喉で必死に訴える。

 いい人でも所詮は海賊か。

 

「さぁ、案内してもらうわ」

「グッ…!」

 

 ニコ・ロビンがコブラ様を立たせ案内させる。

 私はアイテムボックスからこっそり海水鉄砲を取り出した。爆弾もあるけどこっちが先!

 

「リィン、テメェは人質だ。良かったな、殺されな──」

 

──ブシュウッ!

 

 力の入らない腕でなんとか引き金を引く。するとクロさんの顔からほぼ全身に海水がかかった。

 

「ル、フィ…!」

「〝バズーカ!〟」

 

 か細い声だが呼べば応えてくれる。

 ゴムの反動でクロさんが吹き飛ばされた。

 

「ゲホッ、ゲホッ」

「リー、平気か?」

「無理、私逃げる。遠くへ」

「諦めろ下さい」

「んぬぅ」

 

「く、そ……!」

「情ねぇな鰐ちゃん」

「黙ってろ鳥野郎!」

 

 口から零れた血を拭き取りながらクロさんは立ち上がった。コブラ様やニコ・ロビンはもう去ったみたい。

 

 するとベキっとした音と共にサボの低い声が聞こえた。

 

「安心しろよドフラミンゴ…。お前らとの決着は今度ちゃんとつけてやるから…な!」

「お前、何して…!」

「覇気使えない奴はそこの糸相手してろ」

「……こいつ頭狂ってんのかよ」

 

 サボのダランとした腕に目が行く。

 ドフィさんでさえ驚愕の表情を隠せないでいる。

 

「骨ごと寄生糸(パラサイト)を折るか…?」

 

 あ…それ痛い。

 

 どうやらサボは少しだけ自由になった腕の力で、無理やり、見聞色の覇気を使って、骨ごと、折った、らしいです。あの厄介な能力にそんな力技の対処法があるとは…。

 リィン、とっても怖い。

 

「避けてろルフィ」

「う、うん!」

「〝竜の──っ鉤爪〟」

 

 クロさんに早くダメージを与えようとサボがふらつきながらも覇気で一撃加える。

 

「ぐっ…あ!」

「もう、そろそろ………倒れろよ…!」

 

 サボがやばい。

 

 私は痛む体を引きずりながらサボの元へ行き、無理やり引っ張る。

 

「チェンジ」

「は?」

「血、流す過多」

 

 覇気使いだが能力者じゃないサボには怪我の頻度がやっぱり多くなる。最初Mr.1にも斬撃らしきものを喰らってたみたいだし。

 あとさ、おたく知ってる?一昨日熱中症にかかってからろくな休憩取れてないの知ってる?

 

「バカ、怪我してる雑魚は下がってろ」

「お互い様ぞ、バカ」

 

 息を大きくはいて痛みをごまかす。

 

 思い込み、思い込み。私は強い、強い。

 

 私は何のために海に出た。

 元は兄をフォローする為に出たんでしょうが!

 なら今がその時!いくら、長年、仲良くしようとも、私が倒す!

 

「私は所詮自分本意ぞ、だからお願い」

 

 下がってろ。

 

 私が絶対に守り抜きたいくらい大事だと思う物は極一部しかない。そこに麦わらの一味は残念ながら存在しない。

 でも、そこにはサボだってエースだってルフィだって入ってるんだ。盃を交わした時から初めての家族になったんだから。

 

 それを守るためなら私は頭を回す。力を出し切っても。

 それに関して心を痛めたり申し訳なく思わないで欲しいし時間がもったいない。

 

 …全部、私の為なんだからさ。

 

「水分…水分集まるして……」

 

 思い出すのは初めての殺し合い。

 首と胴体がちょん切れるって言う海兵殺しの犯人との殺し合い。濃い茶髪が思い出される。それと同時にあの時の刀であった鬼徹を睨む赤い血のような目も。

 

「〝水素爆弾(ハイドロボム)〟」

 

 水が爆発する、体が数メートル吹き飛ばされるのは経験済みだ!

 

「能力者に水は、効くだろぉー。推定?」

 

 この程度で死ぬことは無い、私だって生きてた。

 クロさんはふらつく足取りで起き上がった。

 

「……悪魔の片腕。懐かしいなぁリィン、お前が殺したんだったか」

「な、に…?」

 

 私の後ろで頭痛がするのかサボが頭を押さえながら声を漏らす。そうだよなー、確か海難事故だっけ。

 

「ッ、砂埃ぞ、とてもうざい!」

 

 クロさんが砂に紛れた。姿が見えなくなる。

 

「そう言えばこの国で会った事も会ったな」

「しまっ」

「〝砂嵐(サーブルス)〟」

「うぎゃう!」

 

 後ろに回ったクロさんに弾き飛ばされる。

 

「世界会議だったか?懐かしい、本当にな」

「ゲホッ」

 

 初めてビビ様と世界会議に行った時の帰りか。クロさんとスモさんの自然系が改めてチートだと思った日だった。

 その後ジェルマに行く予定だったから死ぬかもしれない事にヒヤヒヤしてたけど。

 

「〝水素爆弾(ハイドロボム)〟!〝水素爆弾(ハイドロボム)〟!」

「う、っぐ!」

 

 クロさんは攻撃を受けて血を吐いた。

 

「懐かしき、思い出ぞ。夏祭りも、お誕生日会も、なんだかんだと楽しむした」

「ク、ハハ……〝毒針〟──懐かしいな」

 

 笑いながら遠慮なく毒針を突きつけて来る。

 肩に、足に、腕に。体の内部に効く毒自体は効かないけれど、皮膚とかは流石に普通。溶けるような痛みが襲う。

 

「毒は、不味い故に嫌いですがね!」

「効かねぇのを忘れていた…、人体実験されてたんだったか?クハハハハ!やはりこの世など糞ばかりだ!」

 

 クロさんは笑う。

 なんか壊れた人形みたい…どうしよう熱中症?

 クロさん壊れた?休む?

 

「お前今すっげえイラッとする事考えただろ」

 

 エスパー???

 

「〝掌〟」

「うぎゃぁああ!」

 

 ミイラにされかけて慌てて避ける。

 ごめんって…。心の中でからかってごめんってイル君。キミが負けた暁にはイル君と女装の写真を報酬として白ひげ海賊団に渡すから許して?

 

 現実逃避じみた事を考えてる時。

 チリチリと焼けるような熱が吹いた。

 

「〝火拳〟!」

「はいい!?」

 

 アイエエエ!?エース!?なんでエース!?

 ドフィさんとバチバチやってたんじゃないの!?

 

「このッ、鳥野郎!テメェ飽きやがったな!?」

「いや…ほら……二日酔いだろ?」

「テメェだけだクソが!」

 

 思わぬ展開に力が抜ける。

 なんだよ……仲良しかよ……。

 

「俺は七武海の認識を改めた」

「俺も」

「なんかごめんぞ」

 

 エースが呟きサボが同意する。

 こうなってしまったの私のせいらしいです。

 

 よく考えたら連絡取り合い始めたのって私の観察日記(意訳)らしいからね!ちくしょう!こんな関係性を生むくらいの逆ハーレムならせめて敵対関係として取り合えよ!お互い潰れろよ!そこを狙うからさ!!なんで仲良くしちゃうかなこのバ海賊共は!

 

「……リー!」

「っわ、ビックリすた…いててて……」

「ちょっと…俺を斬ってくれねーか?」

「はい?」

 

 ルフィの提案に首を傾げる。

 斬る?斬るってザシュッとやるやつ?

 

 自殺願望…では無さそうだな。

 

「ナイフでも宜しい?」

「ちょっとそれ借りる」

 

 果物ナイフくらいの大きさのナイフを渡す。

 手入れとか難しいから切れ味鈍いけど。

 

──ブシュッ

 

 私からナイフを受け取るとルフィは躊躇なく手の甲に刃を当て切り裂いた。

 

「け、血管ンンンーー!」

「平気だって」

 

 両手をご丁寧に傷付けてルフィはドフィさんと口喧嘩してるクロさんに向かっていった。

 

 え………嘘だと言ってよ兄ちゃん。

 

「ワニーーーっっ!〝ゴムゴムのっ銃乱打(ガトリング)〟!」

「ぐ、っああ!」

 

 ルフィが、ルフィが水なしでクロさんを殴った!

 ルフィがやった!!!

 

 武装色を使ってもないのにどうし───

 

「血ぃいいい!?ゲホッ、いたい、傷とてもいたい…」

「無理するなツッコミ気質の社畜娘」

「頭痛い人は眠るして〜???無駄に喧嘩を売るする暇あるなれば寝るして???死に損ない黙るして???」

 

 2回も3回も死にかけて心配させてさぁぁあ!あぁもう生きてくれてありがとう!!??

 

 

 

 これ本格的に意識がやばいと思い始めた午後3時頃。

 そう言えば糖分取ってないなと思いました。




リィンの初めての技名が他人のパクリ。

忘れてませんか…リィンが入ったばかりの頃の七武海の一人 悪魔の片腕グラッジですよ(小声)

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