2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第123話 雨、止みませんね

 

 

 葬祭殿を出て、少しでもコブラ様を早く王宮に届けようと箒に乗せて飛んだ。広場が見え、もう少しで王宮という所で彼女に出会った。

 

「リィンちゃん!…っパパ!」

「ビビ様!」

 

 大変なの!と言いながらビビ様が駆け寄る。

 

 

 話によるとMr.2が爆弾があることを聞いていたらしく、海軍や海賊やらに伝えて爆弾を探していたのだと。

 なんだと心友、お前ってやつは…!

 

 ビビ様は暫く探してみて思い浮かぶ所があったらしい。そこが時計台。ウソップさんが赤い煙で知らせて見ると続々集まった。BWも。しかしBWの雑魚はたしぎさん含め海軍が制圧してくれているらしい。

 おやおや、堅物代表どうした。

 

 丁度さっきマルコさんが時計台に向かって飛んでいった、という事だ。

 

 スゲェチームワーク(仮)

 これが私を中心に繋がってるのか……怖いな。

 

 

 私は残念ながら鈍感でもないからね、月組からは愛されてる自信あるし他の組織が私に協力してくれるメリットも持ち合わせている。

 自意識過剰と言うなかれ、全て客観的に見た結果だ。

 間違い無く事の発端は私が原因だ。

 

 そう、多分、色んな意味で。

 

 

 はぁぁぁ〜〜、お腹痛いよぉぉ〜。

 そもそもBWが居なければ私は総スルーで革命軍や白ひげ海賊団や海軍は協力しなかったのに!それぞれ別の組織として本来の立ち位置を守ってるはずなのにさぁ!

 敵の敵は協力者ってか!そしてその協力者を繋げるボンド役が私ってか!

 

 責任者ってことか!?辛っ、何それ辛っ。

 

 

──ドドンっ

 

「……親方、空から人間ぞ」

「Mr.7のペアだわ」

 

 ぽろっと零れた言葉は見事に無視された。

 

 言葉通り、2人の人間が空から降って地面にめり込んでる。これは絶対痛い。もはや痛いとかのレベルじゃないかもしれないけど。

 

「リィン!」

「チョッパー君!タイミング合致!コブラ様の怪我ぞ応急手当……あ、チョッパー君海賊。うむぅ…どう、す、れ…ぞ」

 

 チョッパー君が丁度現れたのでコブラ様の怪我を見てもらおうと思ったが王様を海賊に見せてもいいのか…?

 大将としてどの行動が正解か…。

 

「うわっ!その人血が止まってないだろ!リィン、手当するぞ手当!」

「お、お願いするです」

「た、頼む…」

 

 医者の剣幕に負けて箒から降ろすと若干引いたコブラ様の肩を支えた。

 血の匂い濃すぎて鼻が曲がる。

 お前らどれだけ怪我してるんだ……、私もだけどな!

 

「彼は…大丈夫、です。一般人に近い海賊ですが」

 

 チョッパー君はリュックから色々取り出して手当をし始める。コブラ様の横に座ってこっそり耳打ちした。もちろん苦笑いが返ってきましたがね。

 

「姫さん!」

「マルコさん…!爆弾は…!」

「時限式の爆弾だったよい…、あと5分位で爆発する」

 

 空から降りてきた不死鳥、マルコさんが伝える。

 

 あらら、狙撃手が死んでも爆発するバージョンだったか…。クロさんも残酷だね。

 

「リィンちゃんどうしよう…爆発しちゃう……」

「い…っ、大丈夫です」

 

 肩を掴まれて少し傷んだ。

 私の落ち着きぶりに冷静を取り戻したのかビビ様は首を傾げる。

 

「いい手が浮かんでるの…?」

()()出来る方法は三つ程」

 

 その言葉に希望を見出しビビ様は思わず笑顔になる。

 

 

 一つ目は大量の水を生み出して爆弾そのものを殺す方法。結局火薬は爆弾の中にある、爆弾の中身がどんなものか知らないかそれを湿らせてしまえば爆発はしないだろう。

 二つ目は爆弾を遠くへ運ぶ事。全神経を使って集中して箒みたいに砂漠まで浮かして運ぶ、しかし箒は空を浮かばせるイメージがしやすいから飛べるのであって爆弾が空を飛ぶイメージがうまく浮かばないから絶対疲れる。

 三つ目はアイテムボックスにしまう。私のアイテムボックスは時間が経過する亜空間収納、中に入れてしまえばきっと勝手に爆発するだろう。

 

「お願いリィンちゃん!」

 

 ビビ様のお願い、には逆らえない。

 

 でもねビビ様、あなたは言葉が足りないから逃げ道があるんだよ。

 

()()()()()()出来ますよね、お願いします」

 

 傷一つ付いてないマルコさんに視線を向けると分かっていたのかニヤリと笑った。

 ビビ様の頭をぽんと撫でるとマルコさんは言う。

 

「俺にも出番をくれよい」

 

 そのまま彼は飛び立った。

 

 

 不死鳥は決して死なない復活の炎を纏う。

 マルコさんが1人で爆弾を抱えて心中しようが勝手に生き残る。

 

 空を見上げるとマルコさんが爆弾を掴んで高く舞い上がる姿が見えた。

 

「まさか…っ!」

 

 ビビ様は驚愕の表情に変わる。

 あれ、もしかしてこの人マルコさんが不死鳥だって言うの知らない…???

 

「止めてリィンちゃん!マルコさんが死んでしまうわ!」

「あの…流石に白ひげの懐刀がそう簡単にくたばるとは思わぬでして…。あの人怪我をしませぬし」

「ど、どういう…事?」

 

「個人的には死んでよろしくですが無念死にませぬ」

 

──ドォオオオンッ!

 

 まるで音の爆弾、空でカッと光って爆発した。

 

 み、耳が痛いぜ……。それと思ったより熱い。

 

 

「え…雨?」

 

 ビビ様が呟くとポツリポツリと雨が降ってきた。

 誰もが空を見上げる。

 

「なるほど、それでか」

 

 雨の気配があったってわけね。

 水系を操る時予想していたより結構楽に集めれたのは空気中の水分量が多かったからか。

 

 

「おかえりマルコさん…生きてますたか」

「帰還を喜べ」

「いや…海の屑は死ぬすべきという保護者の教育方針の賜物ですぞな。私、多少は手柄を上げるしなければチョンパですぞり」

「…お前が言うと洒落になんねぇからやめろ」

 

 マルコさんは私にチョップをした。

 痛いでござる。

 

 1ミリも死ぬと思ってなかったしマルコさんには一応エースのストッパーって言う役目があるから死んで欲しくない。

 

 立場と個人的感情の両板挟みだ。

 私の首が物理的に切れるってなったら卑怯な手を使ってでも殺しますけどね。

 

「丁度良かったマルコっっ!」

「げ、コック」

「お前のところのコックの名前って!」

「ん、サッチさんが如何した?」

「サッチ、そうか、サッチって言うのか……ってリィンちゃん!?生きてた!?」

 

 人間とは思えない速度でサンジ様がマルコさんに突撃する。話題はサッチさんらしいけどマルコさん大分引いてる。

 もちろん生きてらァ。そう簡単にくたばってしまったら私のこれまでの努力が無駄になる。

 

「あ、マルコ」

「エース」

 

 エースに担がれたルフィと添え木をしたサボ、兄たちが合流した。クロさんはやっぱり負けたか。

 雨に濡れながらエースはクシャミをした。

 

 はぁ〜〜、ひとまず一件落着か。

 クロさんは心配だけどドフィさんがこの場に居ないから多分生きてる。

 

 すると手当を受けていたコブラ様が立ち上がった。

 

「ある程度の状況は黒幕から聞いていた。海軍、海賊、革命軍。それぞれすまなかった。そしてありがとう」

 

 応急手当が終わったコブラ様が頭を下げる。

 

「コブラ様、王宮へ。事情説明と事態収束という役目ぞあります…。手当も」

「あぁ、リィン君も助かった。是非君の一味を王宮に招待したい」

「え…、わ、分かりますた」

 

 頭を下げる行為をやんわり辞めさせるとコブラ様は周りを見回してサボに目をやった。

 サボのフードの下からほんの少し動揺が見える。

 

「君が革命軍か…。少し話がある、すまないが残っていてほしい」

「あ、あぁ……」

 

 そう言って合流した兵士と共に去っていった。

 国民への事情説明は明日か、国内放送使えばいいだろう。

 

「月組〜!BWの残党を船に運ぶぞ〜!」

「たしぎさんは早く休んで下さい」

「クロコダイルは南の砂漠だ、そこに倒れてる」

 

 どこからか月組の狙撃手(物理)オレゴさんの声が聞こえて周囲の月組がバラける。サボが月組の1人に伝えると頷いた。

 

 スモさんと一緒に居たオレゴさんがここにいるって事はスモさんも移動してるって事か。

 

「リィンさ…堕天使!」

 

 たしぎさんが前に出て私の名を呼んだ。

 やめて、二つ名だけはやめて。

 

「私は今満身創痍の麦わらの一味を捕らえることが出来ません!そうすることしか出来ない!」

「は、はぁ」

「私は弱い!女だからとはもう言いません…!」

 

 どこか体を痛めてるのか口から出る血を拭ってたしぎさんは誓うように言う。

 

「私は!必ず、必ず貴女より心も体も強くなって!麦わらの一味を捕ら──」

「───リ゛ィ゛ン゛い゛ぎ で る゛の゛ね゛い゛!」

「おゴフっ!」

 

 ……言いきる前に私が吹き飛ばされた。

 

「リィンあちしの心の友よ…!怪我はしてるわよねい!?無事、無事と言って死なないでぇええええ!」

「心友に殺すされそうです、痛い」

 

 ギリギリとバカ力で締め付けてくるMr.2。

 視界の端に見えるたしぎさんはペースを崩された事に驚きを通り越して真顔になっている。あ、リックさんがたしぎさんの肩を叩いて励ましてるみたいだけどグレンさんがブチ叩いて阻止した。きっと失礼な呼び方をしたんだな(確信)

 

「じゃ、じゃあリィン、俺たちお先に王宮に行ってるからな」

「逃げるなぞウソップさぁぁん!?」

 

 いつの間にかルフィを受け取ったサンジ様を連れて無情にもウソップさんが背を向けた。

 

「リィン死なないでよううう」

「いででででで!ベンサム、ベンサム私が死ぬ!」

「嫌ぃぁあああ!」

「嫌じゃ無きぞベンサムううう!とりあえず離すして!愛が物理的に重きぞ!」

 

「ハック、コアラ、俺たちも王宮行くか」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!革命軍っ!ヘルプぅ!」

「じゃあまた後でな、堕天使さん」

 

 目から流れるのは涙じゃありません。雨です。

 

 ……雨がしょっぱい。

 

「リーをかえ……せっ!」

 

 ベリっ、とエースがメソメソ涙で顔を濡らしたMr.2を私から剥ぎ取ってくれた。

 持つべきものは実力者!だね!

 

「あ、そうだ心友…。ミス・ゴールデンウィークがあちしの事裏切り者だと勘づいてたのよう」

「あらま鋭い」

「敢えて口を閉じててくれたわ…でも多分面倒くささが勝ったんだと思うけどねい」

 

 なるほど、それは助かった。

 クロさんに国王成り代わりの次手を打たせなかったのはかなり良い。

 

「心友!あなたぞ見込んで話と頼み!」 

「任せて!」

「内容聞くしてから頷くすて!麦わらの一味の船ぞエルマルの海岸線に停泊。サンドラ河上流の岩陰に移動要請」

「わかったわよう!あ、これあちしの電伝虫ねい」

「今晩電話かけるぞ。ミス・ゴールデンウィークと共に行動依頼です」

 

 『ゴールデンウィークと一緒に麦わらの一味の船を移動させておいてね!』と頼むとMr.2は頷いて駆けて行った。多分部下も一緒に。

 

 彼らも女狐隊に入れるかなー…、便利だし。

 

「ま、明日も働いてもらうですがね」

 

 まだやることがある。

 報告も事態収束も私の仕事だ。

 

 今晩は怪我を直してる暇無いかもしれないなぁ…。怪しまれない様に一味が寝静まったタイミングでスモさん所行くか。

 

 正直ここからが本番な気がする。

 

「リー、俺たちはここで別れるよ」

「え…まことに?」

「ティーチ追わないといけねぇしな」

 

 エースが濡れた頭をかきながらため息を吐く。

 うーん、引き止めちゃったなぁ。マルコさんは運搬に、エースはドフィさん対策に助かったけど。

 

「……マルコ、俺やっぱり弟妹の傍にいちゃダメか」

「ダメに決まってるだろい」

「………だよなぁ」

 

 マルコさんは真顔で提案するエースに容赦なく否定の言葉を口にする。

 

「なぁ、リー…」

 

 困ったように笑いながらエースが私の耳元に口を寄せ、どこか確信した声で疑問を口に出した。

 

 

 

「───────…」

 

 

 エースの顔は、雨に濡れていた。




ひとまず、一段落!
ルフィは戦闘中毒にかかったけど今はかかってません。大丈夫、設定を忘れたわけではござらん!

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