2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第124話 雨音が響いてる

 

 

 雨が降り続くアラバスタ王国。

 エースはビブルカードをルフィと私宛に残してマルコさんと共に去っていった。

 

 私は王宮へ行くと麦わらの一味と革命軍の3人が泊まっている部屋へと案内され、応急手当だけ受けると兵士に国内放送の準備を頼んだ。多分、明日には設置されている筈だ。

 

「…堕天使、報酬だ」

「…………はい?」

 

 部屋に居たサボに麻袋を渡された。

 中にずっしりとした重みがあるので多分お金だと思うけど……。

 

「何故?」

「情報料やら協力料やら、だ」

「えぇ……?」

 

 室内でもマントを被っているサボの顔が少し見えた。眉を下げて少し笑っている。

 

「貰えぬ」

「……そう言うとは思った」

 

 そうだね、現金よりは伝とか居場所が欲しいかな。一応大将としての給金や月組が定期的に財布に追加してくれてた写真代の1部とか貯めてあるし。大将女狐の貯金額は9桁いってるからまだ余裕がある。

 質素な生活してれば一生暮らせるさ。

 

 それに、兄の為なら地位をも利用すると海軍に入る前にフェヒ爺に誓ったしね。

 

「それより国王に呼ばれてるんだがいつ行けばいいと思う…?」

「恐らく明日かと、私もまだ話ぞ存在する故に」

「一応…逃げ出す準備はしといた方がいいな」

「……そうぞね、スモさんが捕らえる気沢山故に」

 

 嗚呼、幻聴が…。周辺の軍艦集めてアラバスタ周辺を固める様に指示を出す幻聴が……。

 親友の本気が怖い。

 

「まぁ、とりあえずアラバスタ用の報酬は別の時期にお願いするぞ」

「ん、分かった」

 

 私のベットは麦わらの一味と革命軍の間のベットだった。やっぱりボンド役ですかな。

 

「お、リィンおかえり」

「傷の手当は明日でいいか?」

「内出血の血抜きは終了したです。後は内臓の傷と助骨の手当をしたいですが」

「内臓に傷!?」

「血、吐くした」

 

 痛みはまだあるけど耐えられないことも無い。

 それに助骨だと添え木とか出来ないからほぼ自然治癒に任せるしね。

 

 チョッパー君は疲れてる様でベットにぐったりだから今動かすのは酷だろう。

 

「時に……女狐」

「……はい?」

 

 ベットに座るとサボが私の耳元で名を呼ぶ。

 

「お前……大丈夫か?」

「………………………………否」

 

 私はお腹を押さえて蹲った。

 

 痛いよぉぉお、これからの報告を考えると胃がキリキリするよぉお。そんな、そんな哀れみを込めた目で見ないでくれ革命軍!

 

「仏は閻魔大王です」

「いや、それだけじゃなくてさ」

「はい?」

 

「今回のクロコダイルの暴挙、お前に責任の大半があるから事情聴取やらで気を付けとけ」

 

 比喩表現では無く血を吐くことになった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 軍艦の中はやけに静まり返っていた。

 

 コツコツと私の足音と降り続く雨の音が響く。

 

「………なんだ、来てたのか。女狐」

 

 白いマントを被り仮面で顔を隠す。

 月組が横を固めてスモさんの軍艦の牢屋の前に立っていた。なるほど、よく知る面子を横につけてくれたか。

 

「無様な姿を笑いにでも来たか?」

 

 牢屋の中で海楼石の錠をつけたクロさんが笑う。

 クロさんは『女狐』が大嫌いの様で敵視していた。まぁ、敵だけど。

 

「イル君落ち着きなって」

「雑用は黙ってろ」

「もう雑用じゃありませーん」

 

 クロさんの牢屋の牢番、(優位な立場限定で)煽るのが大好きなハッシュさんがクロさんをからかう。いい人選だな、誰の指示だろう。

 

「………………クロさん」

 

 リィン(いつも)の声で呼ぶとクロさんは目を見開いて口をポッカリ開けた。

 

「マジかよ」

「マジです」

 

 狐の面を外すとクロさんは苦々しい顔をして視線を逸らす。騙しててごめんなさい。

 

「ああ〜〜…くそ……無駄足になっただけか…」

「はぁ?無駄足?」

「テメェのクソ兄貴共に聞いてみ…──やっぱり聞くな。情けねェ…」

 

 クロさんは頭を抱えだした。

 

 この態度から見るにマジで私が原因になってるみたいだな…お腹痛くなってきた。

 

「出会った頃から女狐だったって訳か」

「うん、ごめんぞ」

「惨めになるから謝んな」

 

 クロさんは小さく息を吐くとちょいちょいと腕を動かした。近寄れって事かな。

 

「何事?」

 

 檻の傍に近寄るとクロさんは眉を顰める。

 

「遠い」

「これでも?」

「それでも、だ」

 

 月組の二人と顔を数秒見合わせる。

 

 もう1人の牢番、ゼクスさんが鍵を開けてくれた。

 殺される可能性は考えなかったんだろうか…まぁ海楼石付けてるから大丈夫だとは思うけど。

 

「来い」

「態度デカきぞ」

「知ってる」

 

 膝に座れる位まで近付くとクロさんは私の頭を撫で始めた。……情緒不安定??

 

「随分でかくなったな」

「親戚のオヤジか」

「……それでもいいかもな」

 

 頬をつついたりして私で遊ぶ。

 楽しいのか分からないがクロさんはずっと笑顔だ。

 

「クロさん」

「なんだ?」

 

 たぶん私の顔はブサイクになってるだろう。

 私の一言で、海兵と海賊の仲は終わる。

 

「王下七武海、海賊 サー・クロコダイル」

「ハイハイ」

「世界政府直下〝海軍本部〟の名の元に。敵船拿捕(てきせんだほ)許可状と、政府に置ける全ての称号と権利…───剥奪する、です」

「あぁ」

 

 スモさんは剥奪の任務を私に残していた。

 それは優しい心遣いであり厳しい罰だ。

 

 それでもクロさんは笑い続けている。

 

「指輪、やっただろ」

「くれますたな、嫌がらせが酷い」

「あれ、一個俺にくれるか?」

「……………………はい?」

 

 セットでくれた海楼石製の指輪。

 流動体の体をぶん殴る為に両手に使ってたけどアレ何から何まで海楼石で出来てるから知り合い(クザンさん以外)の前で使えなかった。

 なにげに不便。

 

「構いませぬが」

 

 あの指輪、MC(マリンコード)を掘ってるんだよね。

 正体バレた今となっては別に構わないけど。

 

「…ん」

 

 胸元に隠して持っていた指輪の片方─サイズが大きい方─を渡そうと手を伸ばすとその手を引き寄せられ、私はクロさんの腕の中にすっぽり収まった。

 

「父親でもいい。親戚のオヤジでもいい」

「はい?」

「敵でも、友人でも、なんでもいい」

「クロさん?」

 

 

 

「────リィンを愛してた」

 

 

 ………この世界の愛してるって言葉はどのくらいのレベルなんだろうか。前の世界と同じような意味なんだろうか。

 

「お前ならこの意味…分かるだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、何か言い訳は』

「…今回の件は子供の盛大な癇癪と独占欲と私に原因が存在するという事がよぉおおおおく分かりますた。ごめんなさい」

 

 電伝虫の前で華麗なる土下座を披露する。

 これぞまさに土下座外交!!絶対意味違うけど!

 

「お前…一体なにがあった」

「追いかけ追われる立場も大変ね、ヒナ同情」

「スモさん、ヒナさん…」

『甘やかすな』

「「だがな/ですが」」

『甘やかすな!!』

「うぇっ、今日も親友は大天使でござった」

 

『……情緒不安定過ぎるだろ』

 

 違いますうううーー!胃の痛みに悶えてるだけですーー!!!くそぅ!お腹痛い!

 

「要は!私が原因で無く、政府が気付かぬも仕方無く、女狐のみ気付き、内密に、BW阻止をすた。そして、全てクロさんが悪き様に仕上げればよろしきですね!?」

『……まぁ、ハッキリ言えばそうだが。出来るのか?』

「やってみせますぞ!社畜舐めるなぞーー!!」

 

 激闘の後すぐに後処理に回る私って社畜の鏡だと思うんだ!おかしい…異世界怖い……。

 

『いいか、国王もまとめて丸め込め』

「王女の許可ならば頂くたです!口約束でもきちんとした約束ぞ、この件の決着方法は私に任せるする、と」

『……いつ取った』

「アラバスタ到着前」

『そんな前からか…』

 

 は〜…もう胃が痛すぎて。吐きそう。

 

『とりあえず帰ったら覚えておけ』

「ヒェッ…」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「リィン…朝だぞ、起きろ」

「ちょっぴゃーぬん…まだねむぅ…」

 

 まだ眠いよ…寝させてくれ……。麦わらの一味討伐の打ち合わせをスモさんとヒナさんとしていたんだから眠いんだよ。

 しかもその後Mr.2やミス・ゴールデンウィークに今後の指示を与えて来たって言うのにさぁぁ。社畜、頑張ったんだよ。今回さ、本当に頑張ったんだよ。偉大なる航路(グランドライン)に入ってから私は働きすぎじゃない?

 

「起きろ!怪我の治療始めるぞ!もう他のみんなは終わってるぞ!」

「うぇっ…朝日が痛……くない。まだ雨ですか」

「ほら怪我したところ見せろ!」

「ばい…」

 

 寝惚け眼の状態で上を脱ぐ。

 

「バッ、俺達が退出してないのに脱ぐバカがどこにいる!」

「こちら…に……ぐぅ」

「あぁもう!起きろ!」

 

 サボが私の頭を叩く。

 いや、別に私の裸に欲情はせんでしょう…。だってお腹は血を抜いたと言えど未だに黒いぞ。

 アザだって切り傷だって沢山あるし背中には大きな古傷だってある。

 

「サンジ、ウソップ、参謀総長は特に早く出る!」

「ぬー…ゾロさんとハックさんは?」

「筋トレだって!」

「馬鹿ですたか」

「リィンに言われたくはないだろうなぁ」

 

 チョッパー先生は今日も強いなぁ。

 

 世間話みたいな事をしながら傷を見てもらう。コアラさんとナミさんは残ってるけど。

 

「なぁ、骨も折れてて傷も出来てるみたいだけど体内で何か治療出来るのか?」

「そんな器用な事は出来な……ああ!!!」

 

 ドフラミンゴあの野郎糸で応急処置しやがったなありがとうございますでも治してくれる位なら怪我させんなやテメェ!!

 

「……………七武海嫌い」

 

 吐いた言葉はノックの音でかき消された。

 

「コアラ、堕天使。王の私室に呼ばれてる」

「「王の私室……」」

 

 思わずコアラさんと目を見合わせた。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「失礼します」

 

 私が治療を終えて王の私室へ向かうと革命軍の3人は既に部屋に入室していた。王の傍を固めるのはチャカさんとペルさん。

 ………安定してんな。

 

 促されるままの場所、王の前にて膝をつく。

 

 私が女狐と知らないのはチャカさんとペルさんだけだった筈。ならば問題なし。

 

「シルバーズ・リィン、ただ今参上仕るました」

「そうか、リィン君の父親は冥王か」

「はい」

「顔を上げよ」

 

 指示通り顔を上げるとコブラ様以外は驚いた顔をしていた。なんだ、私が敬う事はそんなに驚く事か。

 

「この場に立場は不要だ」

「……お心遣い、痛み入るです」

 

 それは助かる。

 素直に感謝するとペルさんが口を開いた。

 

「な、何者……ですか」

「……可愛い可愛いリィンちゃんです」

「黙ってろ」

 

 サボが頭を叩いて止めた。

 一応国の兵士よりは立場上なんだけどなぁ。

 

「君たちを呼んだのは今回の件とは別のところにある」

「はぁ…王族が革命軍に、なぁ」

「サボさん、無礼ぞ」

「やかましい」

 

 王族相手でも態度を変えないサボが恐ろしい。

 

「アラバスタの友好国にヴィズネ王国という国があるのを知っているか?」

「あぁ…。国王エルネスト・リオだったか。今国内が不安定で貿易も一部としか取り扱って無かったな」

「実はな、その国の貴族がどうも臭い」

「…………闇取引でもしてるのか」

「……麻薬だ」

「チッ」

 

 面倒くさそうな単語にサボが舌打ちをする。やめてー!!王様の前でそんな態度を取らないでくださいーー!

 

 もう私の心のHPはゼロでござる。

 

「そこで君たちに頼みたい事が」

「革命軍は引き受けよう」

「早っ!え、サボ君早いよね」

「最高権力の王族が悪では無い上に国民が困っている事なら革命軍の仕事内だ」

「そうか、それは助かる」

 

 コブラ様はサボの返答に笑った。

 麦わらの一味がこの場に居ないから平気で名前を呼んでる。

 

 ……私も強制参加ですかね、これ。一応潜入中なんですけどーーー。

 

「お前はどうだ?抜け出せるか?」

「抜け出すこと自体は…まぁ可能ですが」

 

 ………………うん?

 ちょっとした違和感に気付く。

 

 後で問い詰めようか。

 

「お言葉ですがコブラ様、頼み事の細かい内容ぞ教えて頂きたく思うです」

「リオ殿の言う事には国と関わらない者を潜入させ、何とか親元を見つけ出してボロを出させたいと言っておったな」

「……恐れ入るです、まことに失礼ながら私の言葉使いでは向きませぬ、です」

 

 よっしゃ言語不自由設定の勝利!!!

 そんな面倒くさ…重大な事に関わらないですむー!!

 

 するとコブラ様は笑った。

 

「……標準語程度話せるだろう?」

「ヒェッ」

 

 ………コブラ様の目が笑って無い。

 

「…………大変申し訳ございません、細かい事情により結果的に騙すような形になってしまいました。話せます」

 

 そう、実は慣れてないだけできちんと話せる。でなければおつるさんのオーケーが出るわけない。

 バレてたか…くそう。

 

 王族怖いよぉ。

 

「気にはしてない。苦労に苦労を重ねるようだが受けてくれるか?その代わり報酬にプラスして何か個人的な事にのみ許可を与えよう」

 

 あ、待って、これは美味しい。

 この報酬は美味しいぞ。個人的な報復に超役立つ。

 

「引き受けさせて頂きます。では、アラバスタ国民へ此度の事情説明をさせて欲しいと……──お願いします!許可ください!」

「良かろう」

 

 国の次は国ですか。

 まぁ、最終目標が達成出来るから良しとするかぁ…。

 

「細かな話はこちらの書類にある。頼めるか」

 

 サボと私に紙が渡される。そしてヴェズネ王国への永久指針(エターナルポース)

 

 …………これは、また随分面倒臭い。

 はぁぁぁ…王族の任務は断れない。

 

 

 

「クロコダイルの野望を阻止してくれた君たちになら」

 

──パサッ、コトン

 

「……おい、二つ共落とし──」

 

 サボは私の顔を見て怪訝な顔をした。

 

「──何があった」

「はい?」

「鏡見てみろ。真っ赤だぞ」

 

 

 

 消え失せろ!邪念!!!!

 

 




さぁさぁ皆さんご一緒に!ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙クロコ…ロリコダイルウウウウウ!!!!
ホントは0時投稿の筈だったけど!早めに見て欲しかった!の!です!!!!!

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