2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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ジャヤ編
第127話 人のふり見て我がふり直せ


 

 絵本【ワニの王様と人間の王女様】

 著者【あめ】

 

 

 

 

 人間の国に1匹のワニが住んでいました

 ワニは他の動物から人間を守っていました

 ワニは人間が大好きでした

 

 しかし他の動物は人間もワニも嫌いでした

 なぜなら自分と違うからです

 なぜなら人間の味方をするからです

 

 他の動物はワニをいじめます

 でもワニは負けませんでした

 

 ワニはとても強かったのです

 

 

 

 ワニはワニの国の王様でした

 ワニは人間の王女様に恋をしていました

 

 ワニは言います 

 

「どうしてボクは人間じゃないんだろう」

 

 ワニと人間は一緒に生きれない

 ワニは王女様と恋人になりたくて

 ずっと悩んでいました

 

 

 

 そんなある日

 ワニの住んでる人間の国に

 お友達の鳥が遊びに来ました

 

 お友達の鳥は別の人間の国の王様だったのです

 

 ワニは閃きました

 

「ボクが人間の国の王様になる!」

 

 

 

 ワニは人間の王様に言います

 

「食べられたくなかったら、ボクを王様にするんだ!」

 

 人間の王様はワニに言います

 

「それは出来ない、キミはワニだから」

 

 ワニは怒りました。悩みました

 どうして?何故ワニだと王様になれないんだ?

 

 

 

 人間の王様は知っていました

 ワニが人間の王様になる事がどれほどしんどく辛いことか

 

 鳥の王様は知っていました

 鳥の様に、人間の王様になることの難しさと苦しさを

 

 

 

 ある日、人間の王女様は知りました

 怒ったワニが人間を食べようとしているのを

 

 人間の王女様は悩みました

 人間を守るにはどうしたらいいのだろう

 

 人間の王女様は答えを求めるために海に出ました

 

 

 

 王女様は海で猿の王様に出会いました

 

 猿の王様は動物の王様を目指す元気な小猿でした

 

 猿は言います

 

「おれが王女様の手になって、ワニを止めてみせるよ」

 

 

 

 猿はワニを必死で止めました

 一生懸命お話をして説得しました

 

「ボクは、王女様が好きなだけなのに」

 

 ワニは涙を流しました

 人間になりたかった、王女様に好きと言いたかった

 堂々と人間として生きたかった

 

「気持ちは正しくても、行動は間違ってるよ」

 

 猿はハッキリ言いました

 それがワニの為になればいいと思って

 

 間違えたことを間違えてると言える勇気がワニの心を変えました

 

「ごめんなさい」

 

 ワニは人間の王様に謝ります

 決して許される事では無いかもしれないけど

 ワニは一生懸命謝りました

 

 

 

 ワニの王様と人間の王女様はお別れをします

 

「ごめんね王女様、幸せになって欲しい」

 

 ワニの体は雨に濡れてしました

 

「ありがとうワニさん」

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「──どっちみち酷いわ」

 

 一晩かけて考えた絵本の原稿を読み聞かせすると開口一発目でウソップさんにツッコまれた。

 

 むむ、力作だったと言うのに。

 

「リィンちゃん…一応聞くけど、これ何?」

「人種差別の悲しさを訴えるして王族の尊さを教えるし正直者の心を学ぶし謝ることを覚えるして人権ぞ育むための絵本です」

「堂々と嘘をつくなこの鬼畜堕天使!どう考えても放送に引き続き公開処刑用の材料だろ!」

「あ〜〜〜〜!!!き〜こ〜え〜ま〜せ〜ぬぅ〜!」

 

 耳を塞いでウソップさんの指摘を誤魔化す。

 これは史実を元にしたってだけの純粋な絵本なのに、子供たちに純粋な心と気持ちを持ってもらいたくて書いた絵本なのに!

 

「悪役もどうかと思っていたが美談の悲劇の主人公の方がずっとキツイ事が分かった」

 

 サンジ様が腕を組んで頷いている。

 

「取り敢えずもうやめてやれよ」

 

 ウソップさんの言葉を流しながら空を見上げる。

 空には黒い影。待ってました!

 

「…ん?あれって、アンラッキーズ?」

「そうです」

 

 ビビ様の言葉に同意する。

 バサバサと羽を広げて船に飛んできたのは私の運搬雑用係のアンラッキーズ。いやぁ、アラバスタで宮殿に戻ってから電伝虫で呼び寄せてたんだよね。私のビブルカードを辿ってもらってさ。

 

「アンラッキーズ、こちらの原稿を『シャボンディ諸島69番GR(グローブ) 出版社【毒の花】のノーラン』に持ちていくする。レッツゴー!」

 

 指示を出せば敬礼して再び飛び立って行った。

 

「あ、ナチュラルに流したけど出版会社に持ってくつもりかよ!カムバックアンラッキーズ!お前らの元ボスが死ぬぞ!」

「死ぬなればそれで良し」

「闇が深いぃい!」

 

 ウソップさんは癇癪を起こしたように地団駄を踏む。

 海賊も七武海も大っ嫌いだ!

 

「所で堕天使ちゃん。素朴な疑問なんだけれど貴女どうしてそこまでクロコダイルを嫌っているの?」

「七武海は全面的に嫌っ…げふん、それは勿論ビビ様の国を狙うからですよ!当たり前では無きですか!」

「あら…『素直』ね」

 

 全く、失礼な!幼馴染みのビビ様に害をなす人物など嫌うに決まっているじゃないか!決して、そう、決して!積年の恨みとかそんなんじゃないんだからね!例えば出会い頭に奇襲を掛けられた事なんて覚えても恨んでも怒っても無いし!

 

 軍艦の中で一泡吹かされた事なんて気にしてもないし!

 

「…え?」

「あ?」

「…!?」

「は?」

 

「こんにちは、無事出航出来たみたいで良かったわね」

 

 ニコリと笑顔の仮面を付けたニコ・ロビンが居た。

 

「「「「「あぁぁあっっ!!??」」」」」

 

 いつの間に居たの!?

 え、さっきまでどこにいた!?

 

「あぁ、この服あなたのでしょ?」

 

 借りてるわ、とナミさんに言いながらニコ・ロビンが椅子を取り出して座る。

 全員警戒して武器を手に取るが手出しはしない。

 

「あ、なんだお前か」

 

 ルフィが軽い調子で挨拶したからだ。

 

「船長さん、あれから調子はどう?」

「おう!なんとも無い!助かった!」

 

「…どういう事だ?」

 

 ゾロさんがフレンドリーな二人の態度に首を傾げるとルフィは歯を見せて笑みを浮かべる。

 

「命の恩人だ!」

 

 ……………何が起こったんだ。

 

 

 最近、私が一生懸命社畜よろしく働いてる最中にキミらコロコロ物事起こりすぎだと思うの。

 

 しかもそれを報告してくれないから!お前らってやつは!私には!報告任務が!あるのに!

 

「ワニのな、毒を治してくれたんだ」

「丁度薬を持っていたから…お兄さんの方も知っている筈よ?」

「エースにおんぶされてたからな〜」

「まこと?それはそれはありがとうござりますた」

 

 だからといって信用はしませんけど。

 

「それでミス・オールサンデー。貴女どうしてここに…」

「そんなに怖がらないでお姫様」

 

 2人を見守る周囲は騒がしい。1回も会ったこと無かったチョッパー君は首を傾げ、ウソップさんは海軍を呼ぶと忠告している。

 

 海兵、ここにいますよ。

 

「私を……仲間に入れて」

 

「なんだ、いいぞ」

「「「ルフィ!」」」

 

 すぐさま答えを出したルフィにナミさんとウソップさんと私が揃えて非難の声を上げた。それは、それだけは勘弁してください船長。私はもう胃痛の種を欲していないんだ…!

 ビビ様だけでも倒れそうなのにっ!その敵であり、世界政府の中で1番将来起こりうる最悪の事態に絡む人間NO.1と名高い(※推定)ニコ・ロビンが船に乗るって…同じ屋根の下って…私はどうしたらいいんですか。

 どうやってセンゴクさんを宥めろと!!

 

 オマイラが海賊やれてるのは私が裏でちょくちょくフォローしてるからなんだぞ!!!

 今の所凶悪犯罪者というレッテル貼られてないのは私のおかげなんだぞ!!??

 

 『将来的に面倒くさくなる海賊NO.1』には選ばれてるけど!流石モンキー一家!

 

「安心しろって、こいつは悪いヤツじゃないからよ!」

「あぁ、その点に関しては俺も同意見だな」

 

 珍しい事にゾロさんまでルフィに同意見を出した。

 

「気配に敵意が無い。それに、だな」

 

 ゾロさんは周囲を見渡して言った。

 

「敵であろう人物1人。俺らが勝てないとでも思ってるのか?俺達は麦わらの一味、未来の海賊王の船員だぜ?」

 

「──勝てぬ」

「空気を読めこの残念鬼畜娘」

 

 カッコつけてる所すいません。

 

 私がその立場だから絶対に口に出さないけど。組織において、内部崩壊程楽な壊滅方法はないからな。

 だからいくら危険でもスパイって言う存在があるんだよ。一人の人間によって滅ぶ海賊なんていくらでもある。

 

「ま、まぁ…。リィンが居れば」

「待つしてダントツ残念の人」

「ダントツって事は自分も残念だって認めてるのか」

「ゾロさんは黙る!!!」

 

 発言の切れ味が鋭くてリィン泣きそう!

 

「ニコ・ロビン、滅びるしたオハラ出身のハナハナの実の能力者。8歳にて考古学者と賞金首、罪状は軍艦を沈めるした事」

「おいおい詳しいな…」

「革命軍に聞くしたぞ。悪党に付き従う事にて生き延びた賢き裏の住民……。ハッキリ言うして、この船は向かぬと思うです。革命軍を紹介すますよ?」

「あら…貴女がそれを言うのかしら」

「………はい?」

 

 革命軍はニコ・ロビンを求めていて、ニコ・ロビンは隠れる場所を探している。これ以上にないくらい向いてると思うんだけど。

 世界政府や海軍を敵に回し………、回される。海軍敵に回される。ま、大丈夫、だよね?え、だよね?一応個人では協力関係だよね?

 

 ニコ・ロビンは私の心境に気付かず笑って言う。

 

「『取り引き』じゃなかったかしら?」

「うぐっ!」

 

 痛い所を付かれて変な声が出る。

 確かウィスキーピークから出航してすぐだったか。『見て見ぬ振りをする事』と『魚人島の歴史の本文(ポーネグリフ)閲覧許可』を交換として無事に逃げ出したのは。

 

「小さな勇敢なる天使さん。船長さんの許可は貰ったわ、乗せてくれるかしら?」

「いや、結局見て見ぬ振りは無意味に終わるした訳でしてその約束ぞ反故な」

「それを無しにしても、この船はもう既に出航しているわ。島に引き返す事も海軍が居て危険、私を海に沈める程ここの船長さんは無情でも無ければ恩知らずでも無いと思うけれど?」

 

 ニコニコと逃げ道を塞いでいかれる。

 この船に乗る以上船長という1番大事な所を抑えられると船の中での反逆者は私になる。船長の意思に反する行動は私だ。

 

「ゔ…うぅ……」

「何か反論でもあるかしら?」

「……………ありま、せぬ」

 

 負けた。私が口で負けた。

 自分の発言に首を絞められる。

 

 何故出航する前に船の中を確認しなかった。ビビ様も念を押して島にとどめておかなかった。勝手に大丈夫だと決めつけて続行したのは私の判断だ。

 

 ……………詰めが甘いのは私も同じって事ね。

 

「そう、宜しくね」

 

 敗北の言葉には充分だった。

 

 

 

 


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